今週は多少疲れもあり、また前日も飲んでいたので、ハードな山は避けてちょっと気軽な山へと向かいました。ちょうど春がいっぱいという感じで、思ってた以上に楽しめて、毎度のことですが、山はいいなと思った次第です。
東名高速の大井バス停を過ぎ、カーブを曲がると、正面に富士山が大きく見えてくる。その前景には箱根の特徴ある山々がある。それらの中でもっこりとひときわ異彩を放っているのが矢倉岳である。
関本から足柄峠へ向かうみちはかつての足柄古道のルートである。民家が少なくなり、道が少しづつ登りになると目指す矢倉岳が堂々とした形で視界に入ってくる。いかにももっこりとした。山という感じの山だ。再び集落に入れば桜の木の下の地蔵堂で、ここの大駐車場に車をとめて出発した。
地蔵堂の前から、万葉うどんの店の横を抜け、車道を渡って、畑の中へと降りていく。小川を渡るあたりは春爛漫の茶畑で、タンポポの花が眩しい。植林地の中へと入ると、道にはスミレの花が満開で目を楽しませてくれた。植林を抜けて、再び荒れた茶畑の間を通って登ったところが、万葉公園へと登っていくコースの分岐である。今日登っていく山伏平へのコースは、ここで分かれて、植林の中を再び奥の沢へと下っていった。
丸太のかかった沢を渡って、再び植林地の中を登っていく。このあたりは道の両側に延々とスミレが続く。これほど咲いている道は大変珍しいと思う。単調な植林地歩きの道だが、正直言ってこれは素晴らしいと思う。
あまりにもよく立ち止まるのでスピードが上がらないまま、ゆったりとした道を登っていくと、鉄塔の切り開きに出た。鉄塔周辺は草が刈られているが、そこにはちょうど顔を出したばかりのワラビがたくさんある。それが目的であれば、大喜びというところだろう。そうだ、もう四月に入ったのだなと、改めて実感した。第1の鉄塔からしばらくは、平坦なトラバース気味の道が続く。2台ほど自転車とすれ違う。植林地から出たり入ったりしながら3番目の鉄塔まで来て、少し休憩する。あかるい鉄塔の下には、朱色のボケの花がたくさん咲いていた。
鉄塔から暗い道を少し下ったあと、最後の稜線への登りに入る。ちょっと気分の緩んだあとなので、少しきつく感じる。相変わらずスミレの花が多く、このあたりは、タチツボスミレではなく、葉の長いものも見られる。今日見る中では4種類目になるかもしれない。
道は着々と高度を上げつつ、小尾根をいくつか回り込むように進んでいく。あまり地形がはっきりせず、はっきりとした尾根に乗らない道である。それでも久しぶりに前方に人の声を聞くと、いつのまに?という感じで稜線に合流した。
矢倉岳方面に少し進むと、すぐ左に泗水の滝への道を分ける。そして時々遙か高くに思える矢倉岳山頂を見ながら、山頂への登りが始まる。
このあたりは交通量も多く、道も荒れ気味である。しかし、雑木林の明るい道に変わり、道ばたには桜の花が咲く。時折現れる展望は、もちろん大きな富士山に丹沢の山々である。御正体山がひときわ目立っている。登り詰めていくと、明るいカヤトとの道となり、足下にはここにもたくさんのスミレの花はもちろんのこと、ボケの花が多く色を添えている。最後には緩やかな登りとなって、たくさんの人が休んでいる、山頂についた。
山頂からの展望は、下から見て想像した通りの広く気持ち良い場所で、正面の富士山をはじめとして、大きな展望が広がる。富士の横には愛鷹山があり、正面の箱根を見れば、右に金時山、左に明神ヶ岳、そして真正面に煙の上る大涌谷と神山がある。ここから見ると、どれも高く立派な山に見える。そしてこの山頂の一角には石の祠があり、これは矢倉明神社とのことである。それにしても気持ちの良い場所なので、ゴロンと横になると、いつのまにか小一時間が経過していた。
下山は、万葉公園の方まで稜線を歩いてみることにする。正面に富士を見ながらの下りは、あっという間に過ぎて、地蔵堂への分岐まで下る。あとはそれほどアップダウンの無い巻き道を進む。時々切り開かれているところから、矢倉岳が見えるが、やはりこのもっこりした山頂部は見応えがあった。道の明るいところには相変わらずスミレが満開で、かなりの群落になって咲いている。
ゆったりとアップダウンを繰り返しながら、左から道が上がってくると、万葉公園の最上部である。ここまできたので、公園の一端を周遊する。ひとつ詩の石碑があり、
「鳥総(とぶさ)立て 足柄山に 船木切り 樹に切り行きつ あたら船木を」
とある。大意は、
「神まつりして足柄山で船木切ろうとしていたのに、その木を他の人が伐っていってしまった。大切に思っていた木なのに」
とのこと。これだけだと、あちゃ〜!!という詩なのであるが、解説には続きがあって、「他の人のところに行ってしまった恋人を惜しむ気持ち」も秘められているらしい。なるほど奥が深いと思うと同時に、妙に若い日々のことも思い出してしまう。別にそういうことがあった訳ではないのだけれど。
万葉公園の山上部を一回りする。ここもスミレの群落がいっぱいで、その中に桜が咲く。のどかないい場所であった。このあたりでゆっくりするのも楽しいかもしれない。近くにこんなところがあったらなぁと思う。
下山は、直接地蔵堂を目指して下っていく。しばらくは植林地の中をどんどん下る。ここは思ったほどはいい道ではなく、広い植林地の中を適当に歩いている感じで、多少斜面も荒れ気味である。ひと下りするとあずまやで、この周辺はいろんな種類の木々をまとめて植えてある園地となっており、今の時期は桜やタムシバの花が目を惹いた。
ここからは、歩きやすい遊歩道のような道となる。ずっと足下のスミレを愛でながらやがて、左に沢の流れを聞くようになると、行きに登った山伏平への道が合流した。そして、茶畑を抜け、道を渡れば地蔵堂である。茶店で少し休憩しつつすっかりと春になってしまったなと、を改めて感じいったのであった。
ここ、数回は北面の道を歩いていたので、遙かに標高の低い南面の道を歩くと、季節がかなり違いました。このコース植林も多く、あまりぱっとしたコースではないのかもしれませんが、とにかく終始スミレが咲いていて、ベストに近いタイミングで歩けたのではないかと思います。タチツボスミレがほとんどですが、ナガバノスミレサイシンらしきものも少しありました。こんなにたくさん有ったのは初めてなので、とてもいい山歩きだったと思いました。
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タチツボスミレ | アカネスミレ? | アカネスミレ? | イチゴ | タチツボスミレ? |
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クサボケ | ナガバノスミレサイシン | ミヤマネコノメソウ | タチツボスミレ | タチツボスミレ |
万葉公園への稜線から振り返る矢倉岳
参考図書・地図 | その他のコース |
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東京付近の山(実業之日本社) アルペンガイド旧版 東京周辺ワンデイハイク(山と渓谷社) 25000図 関本 50000図 小田原 |
本文の往復のコース以外に、 矢倉沢バス停から、矢倉岳 足柄峠・万葉公園から矢倉岳 山北から泗水の滝・21世紀の森を経て矢倉岳 があります。 |