雌阿寒岳

 雌阿寒岳 1,499m
 山域:道東

記録
 山行日2014年8月9日(土)
 ルート雌阿寒温泉→雌阿寒岳→オンネトー→雌阿寒温泉
 コースタイム0752 雌阿寒温泉登山口 → 0830 三合目 → 0845/52 四合目 → 945 火口壁 → 0955/1027 雌阿寒岳 → 1047 阿寒富士分岐(八合目) → 1058 阿寒富士分岐(七合目) → 1118/29 五合目 → 1211 オンネトー登山口 → 1234 オンネトー展望台 → 1306 雌阿寒温泉登山口
 天候曇り時々晴れ

深田久弥が登頂して日本百名山に取り上げたのは雄阿寒岳の方。標高が高いのは雌阿寒岳の方。位置的にもかなり離れていて全く別の山なのですが、日本百名山では阿寒岳としか表記されない為、登る山が分かれるようです。道東の山2日目は、この2つの阿寒岳から、派手な活火山で標高の高い雌阿寒岳に登りました。

雄阿寒岳の麓である阿寒湖温泉の湖畔の宿で朝食をゆっくりとったあと、温泉街のコンビニで準備を整え、雌阿寒温泉の登山口へと向かいました。阿寒湖のある釧路市から国道を足寄町へ入り、さらに分かれて、オンネトーに向う道の途中に雌阿寒温泉の登山口があります。立派な駐車場やトイレがあり、国立公園としてよく整備されています。
登山道に入るとアカエゾマツの原生林となり、最初は笹の中の緩やかな道でしたが、すぐに木の根を踏んでグイグイと登って行くようになりました。二合目まではこのような鬱蒼とした森の風景が続きます。三合目の手前まで来ると林が背の高いハイマツに変わります。こんなに高く成長したハイマツは初めてで背丈以上に真直ぐ伸びており、風が弱い場所ではこうなるものかと改めて認識した次第です。北海道では標高1000mでハイマツが現れます。
やがてハイマツも低くなり道も緩やかになると、ナギ状の部分を渡って四合目に着きます。すでに樹木も低くなっており、眼下に広大な原野とそれを貫く一条の道路という展望が広がりました。昨日と違って、今日は高曇りの様相、高い所は雲がかかりますが、まずまずの明るい風景が見られました。時折オンネトーも見え隠れしますが、原野の中の湖は大変神秘的です。
やがて、ハイマツ帯も抜け、岩礫帯をひたすら登って行くようになります。いかにも夏山という感じで、本州の高い火山でよく見られる景色と同じです。下から見えていた所まで登りつくと一旦平坦になり、さらに頭上の火口壁を目指して最後の急登を登って行きます。岩のゴロゴロした道が、今度は粗い砂のザラザラした道に変わり、随分歩きやすくなりました。しかし、登っている途中で雲が山頂を覆い始め、気ばかり焦りますがこれは如何ともしがたく、火口壁まで登りついた頃には少し暗く、靄がかかったようになってしまいました。
火口壁からは火口の中を覗くことができます。眼下には泥のような色の赤沼と、新しい噴火口の跡がポッカリ黒い穴として開いているのが不気味です。その上の壁にシューという大きな音を立てている噴気孔があり、蒸気を吹き上げています。まさに活きた火口の様子です。
山頂に向けて火口壁の縁に沿って登って行き、頂上の稜線に出た時にはすでにほとんどガスに覆われていました。そして頂上に着くと、時既に遅く、あたりは真っ白で、遠望はききませんでした。再び雲が晴れることを期待し、上着を着てしばらく腰を落ち着けました。
時間も経過し山頂にいる登山者も入れ替わり、ガスの状況も変化無く、残念ですが出発することにしました。下りはオンネトーへの道を辿ることとして、ザラザラした斜面を少し下ったところで、なんと回りのガスが少しずつ薄くなってきました。正面の阿寒富士がだんだんと姿を現し、火口の中もクリアに見えるようになってきます。噴気孔は激しく蒸気を噴き上げ、青沼もきれいに見えてきました。そして阿寒富士は完全に姿を現し、阿寒湖温泉からの登山道のある白い尾根も見えました。まさに天の配剤でここまで来た労力に報いてくれたようです。
阿寒富士は木の生えていない、スリバチを伏せたような形の山です。その斜面に頂上までジグザグに道がつけられています。あまりにも均整がとれていて、木も岩もない開けっ広げな斜面で、どうも今ひとつ登高意欲が湧いてきません。八合目で阿寒富士分岐を見送り、さらにザラザラの斜面を下っていきます。このあたりは噴気孔からのガスが流れてくるようです。七合目でも阿寒富士分岐があり、さらに下るとオンネトーが眼下に見えてきました。それの束の間で樹林帯へと下って行きました。
樹林帯の様相は登りと同じで、最初は背の高いハイマツ、そしてアカエゾマツへと変わります。途中で休みながら長い原生林の下りを緩急繰り返しながらどんどん下ります。突然背後のガサッという音に驚かされましたが、トレランの人でした。鈴でもつけといて欲しいものです。一合目まで下ると階段の道になり、最後に小さな沢を渡って広い道に出てオンネトー野営場へと下山しました。
下山後は、雌阿寒温泉までの登りになります。オンネトー茶屋から車道を辿ってオンネトーを右に見ながらの散歩道です。途中で、湯の滝方面で熊に出くわしたという人がいました。このあたりは多いようです。オンネトーの水の色は青や緑に場所によって変わり、神秘的に美しく、展望台からは湖面の向こうに雌阿寒岳と阿寒富士が並びます。いい風景です。オンネトーが終われば車道が二車線に広がり雌阿寒温泉までの登りになります。途中右に赤い錦沼を見てさらに登りつめたところが朝出発した駐車場でした。まずまずの天気に恵まれ、いろんな風景に出会えた一日でした。

下山後、翌日の目的地である斜里岳の麓まで一気に走り、札弦の道の駅で温泉に入りました。清潔感のある温泉で値段も安く、空いていて大変ありがたいです。道の駅で若干の食料を調達し、そのまま清岳荘へ。清岳荘は新しくなったとのことで、設備の整ったいい山小屋でした。宿泊客は11人ほど、眼下にオホーツク海の夕景を楽しみました。台風は丁度西日本で猛威をふるい各地に被害を出していますが、こちらは元々の天気予報に反し、明日の天気は晴れとのこと。最終日でもあり期待ができます。

本文中の写真

  • 登山口からアカエゾマツの道を行く
  • 岩礫の斜面から山頂部を見上げる
  • 噴火口と赤沼
  • 阿寒富士と青沼と噴気孔
  • 整った形の阿寒富士

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド 北海道の山(2000年4月 初版1刷)
    エアリアマップ 利尻・羅臼(2014年版)
    25000図 オンネトー 雌阿寒岳
    50000図 上足寄 阿寒湖

    オンネトーからの雌阿寒岳と阿寒富士
    その他のコース
    ・阿寒湖温泉登山口〜雌阿寒岳
    交通機関
    かつて、阿寒湖からオンネトーへのバスがありましたが、現在は廃止されたようです。