斜里岳

 斜里岳 1,547m
 山域:道東

記録
 山行日2014年8月9日(日)
 ルート清岳荘→旧道経由→斜里岳→新道経由→清岳荘
 コースタイム0459 清岳荘 → 0514 旧登山口 → 0547 下二股 → 旧道 → 0722/41 上二股 → 0810 馬ノ背 → 0828/59 斜里岳 → 0911 馬ノ背 → 0935 上二股 → 1020/25 熊見峠 → 1104/18 下二股 → 1148 旧登山口 → 1202 清岳荘
 天候晴れ時々曇り

夜明けの清岳荘から外を見ると、眼下にあったはずの斜里から網走に掛けての平野はすべてオホーツクの低い海霧に埋まっていました。雲海の上は晴れ渡り、それほど標高の高くない場所から見る風景としては初めての経験でした。
道東の山3日目は、斜里岳。日本百名山でもあり、知床への入口にあたります。ここまでくれば、日本の一番端までもう少しという位置になりますので、どのような風景なのか、期待が膨らみます。

清岳荘を朝の5時出発。夏の山に登るには理想的な時間でしょう。小屋の後ろの登山口から下り気味の道を森の中を回り込んでいくと、やがて林道に降り立ちます。かつての登山口はもう少し林道を下っていったところにありますが、清岳荘から先はロープが張られ、車は入れないようになっています。林道を緩やかに下っていくこと10分ほどで道が広くなっている斜里岳清里コースの旧登山口に到着しました。
登山口に入るとすぐに一の沢に沿う道となり、沢を何度も渡渉していくこととなります。水量は十分ありますが、石を飛べば靴底を濡らす程度で渡っていけます。勿論一度滑ってしまえば、足が水の中に落ちることとなりますが、意外と滑らない岩なので、注意してバランスをとっていけば大丈夫のようです。野趣に富んだ道を楽しみながら歩いていきますが、渡渉は何度も右へ左へと繰り返され、小さなへつりも出てきたりしていくうちにだんだんご馳走様という気分になってきました。前方が少し明るく開け、正面に山頂部の稜線らしきものが見えてきたところに、建物の遺構らしきコンクリード枠があり、その先が下二股で、旧道と新道の分岐となりました。
旧道は、数々の滝を見ながらのコースと聞いています。二股から斜度が上がり、沢に沿った道を行くと、水蓮の滝と名のついた立派な滝がありました。さらに登っていくと、今度は大きな滑滝が現れ、羽衣の滝とあります。このあたりは左右に渉りながらも、滝の横を直登するようになってきます。滝見のコースというよりは、簡単な沢登りコースだったのです。フリクションは十分で斜度もきつくないので問題ありませんが、こういうコースを歩くのは久しぶりで楽しくなりました。さらに万丈の滝。これも羽衣の滝同様、大きな滑滝で、流れの横を直登していきます。このような美しい滝が続きます。
このあたりを歩いていると、沢の横から出ている木によく頭をぶつけました。歩きやすいところへと道の端に寄ってしまうと、ぶつけやすいようです。いくつか滝を越えれば、右から竜神の滝が落ちてきます。このあたりから流れは少し細くなってきて、さらに細く長い滑滝の直登のあと傾斜が緩み、樹林の中の細い流れの中を歩くようになったので、幾分ほっとしました。さらに樹林の中に出入りしながら進むと上二股に着き、新道と合流しました。
上二股からも斜里岳の山頂部の稜線が見えていましたので、これを眺めつつしばらく休憩し、さらに流れの中の樹下の道を進んでいきます。やがて道は左斜面に上がり、かなりの傾斜が出てきます。だんだん木は低くなって明るくなりますが、細かい浮き石の多いガラガラ道になりました。木々も背丈より低くなり、周囲の稜線が見渡せるようになってきたので、どれが山頂だろうと首を巡らせながら急坂を登って行きます。胸突き八丁の看板を過ぎ、更に傾斜を増した木のない岩屑のガレ場を登りきると馬の背に到着。ここでは涼しい風が吹き渡り、青空の下で山頂が目の前に現れました。馬の背は爽快な展望の稜線でした。
馬の背から眼前の急坂を登ると、アルミ製の祠のあるピークに立ち、山頂がぐっと近づいて来ました。小さな鞍部を渡って、さらにひと登りすると斜里岳山頂、この爽快な登りは、まさに登山の醍醐味を感じます。そして、今回の北海道で初めての晴れ渡った山頂に立つことが出来ました。眼下には斜里平野、遠望は霞んだり雲がかかっていたりという感じですが、知床の方向にあるゆったりとした山は、連山の入口になる海別岳でしょうか?斜里岳のたくさんの山頂はどれも良く見えていて、南斜里岳は端整な風貌で、帰路に通る新道の稜線も眼下に横たわっていました。
しばらく山頂を楽しみましたが、さすがに吹く風が冷たく、下山することとしました。一段下の三角点に立ち寄り、往路を戻っていきます。山頂直下のガレ場には黄色や紫の花がたくさん咲いていました。下りつつ斜里岳のたくさんのピークの風景を見ていると、八ヶ岳を思い出しました。ちょっとミニチュアではありましが、雰囲気が良く似ているような気がするのは、やはり古い火山に共通するものなのでしょう。
上二股までの下りで、沢山の子供たちとすれ違いました。なんとなく、親子登山大会という雰囲気で、みんな頑張って登っていました。上二股まで下り、新道へと入ります。しばらく樹林の中のトラバースが続き、見通しも悪く人影の無い樹林の中なので、熊でも出てきそうな雰囲気です。2箇所ある竜神の池への分岐は見送り、緩やかなアップダウンで尾根や沢を回りこんだあと、いつしか緩やかな尾根の登りとなり、1250mのピークに到達します。ここは斜里岳山頂部の展望台で、さっきまで立っていた山頂を眺めながら休憩しました。
1250mのピークから緩やかな稜線を辿る途中で、山はガスに覆われ始めました。熊見峠の看板のあるピークからは、下二股までの下りに入ります。最初は、ひねくれたダケカンバの多い尾根の緩やかな下りが続き、途中から一気の急下降となりました。滑りやすい斜面も多く、ちょっと疲れました。
やがて、下二股に降り立ち小休止したあと、往路と同様に渡渉を繰り返しながら下っていきます。いったい何回渉るのだろうと数えてみると13回でした。旧車道に出てからは緩やかに登り、登山口に着いたのは丁度12時頃。一夜を過ごした宿に名残を惜しみつつ、清岳荘をあとにしました。

帰路、昨日と同様に札弦の道の駅で温泉に入り、飛行機までの時間小清水の原生花園に立ち寄りました。原生花園から見る斜里岳は雄大で風格があり、登っている間はそれほど北海道「らしさ」を感じていた訳ではないのですが、改めてこれほど美しく目立つ山だったのかと、深田久弥による百名山選出に頷いた次第です。北海道の3日間はこれで終了となり、台風の余波の中の羽田に戻りつつ、低い標高で高山帯の雰囲気が味わえ、花の多い山々に再訪を誓ったのでした。

本文中の写真

  • 朝の下二股からの稜線遠望
  • 万丈の滝
  • 竜神の滝
  • 手前のコブからの山頂ドーム
  • 馬の背から見る斜里岳山頂

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド 北海道の山(2000年4月 初版1刷)
    エアリアマップ 利尻・羅臼(2014年版)
    25000図 斜里岳
    50000図 斜里岳

    熊見峠の稜線から見る斜里岳山頂部
    その他のコース
    ・豊里登山口〜斜里岳
    交通機関
    かつて、斜里岳登山口付近までのバスがありましたが、現在は廃止されています。