20世紀も押し詰まってきて、今日あたり歩く山が今世紀最後に歩く山になるかもしれないなと気にしつつ、行き先を決めた。三峰山は、日本三百名山・近畿百名山・一等三角点の山とたくさん肩書きのついた山で、記念の山としては申し分ない。
三峰山は霧氷で有名な山で、もしかしたらと早く出かけたが、残念ながたまだ暖かく、冬の冷たい風のみが通り過ぎる山頂であった。
国道166号線の、柳瀬橋のバス停の少し手前から、のり面に大書された三峰山登山口の標識に従って福本に向かう。林道で順調に高度を稼いでしまい、登山口に着く頃には夜が明けて随分明るくなってきた。
三重県側からのルートは近畿自然歩道にもなっており、入り口に立派な看板が立っている。登山口からすぐに植林地の中に入っていき、少し進むと背後から真っ赤な光が植林の中にも差し込んできた。このような夜明けの光の中を歩くのも久しぶりである。空気が凛として心地よい。登山道はひたすら植林地の中を折り返しながら上がって行く。変化には乏しいが、傾斜はゆったりとつけられており歩きやすい。じわっと高度を上げつつ淡々と行くと、八丁平まで900mの標識があり、さらに行くと山腹の大きな折り返し道から、いつしか小尾根上の小刻みな折り返しに変わっていた。やっと右手に雑木林がでてきて、明るく気持ちいいと思ったら再び植林地に戻され、若干傾斜が急になったかと思うとあと400mの標識である。
今日は風が強いようだ。小尾根の西側に入るとかなり冷たい風に吹きつけてくる。休むきっかけもないまま登っていくと、植林地から出て、左への水平な道に入っていく。このあたりは、葉の落ちた雑木林にアセビなどの緑の低木が混じる。植林地から出て明るく、一気に爽快になった。すると、僅かで八丁平着。あれ、もう着いた!という感じだった。
八丁平はカヤトの原にアセビの点在する綺麗なところだと思ったが、とにかく風が強く、とりあえず山頂に向けて出発した。霧氷は無いが、風はかなり冷たい。土も凍って堅い。緩やかに雑木林のトンネルを抜けていくと山頂着。一等三角点があり、たくさんの標識がかかっている。さすがに人気の山だ。展望は北の方だけ、室生の山々や学能堂山が近くによく見える。山頂もちょっと寒いので、そのまま稜線を大日如来の石碑まで下った。
下山は往路を辿るとあまりにもあっけないし、新道峠まで行けば林道をかなり戻らないといかないのでちょっと悩むが、とりあえずは八丁平にもう一度戻ってみた。主稜線の方から戻っていくと、ちょっと面白い地形になっていることが解る。谷間にはススキが広がり、中を獣道が走っている。逆光の朝日に、ススキが白く輝く。八丁平の尾根の方に少し行ってみると、テントが一張りあった。このあたりから三峰山の山頂を見ると、背景の空の青が深い。八丁平の谷間は風の通り道になり、山頂への取り付きとの交差点に吹き上げてくるようである。少しはずれるとそう強くはない。それに日が少し高くなって、風の冷たさも緩んできた。
大きなアセビの影で少し休んだあと、再び主稜線に戻って新道峠に向かう。この道はゆったりした広い雑木林が主体の道で、なかなか楽しい。アップダウンは緩やかで、峠の手前の1102mへの登りが少しあるかなといった程度である。1102mを越えると、意外と早く新道峠着。ここも樹下の広々とした峠でなかなか雰囲気が良い。馬頭観音がかつての往来を偲ばせる。
月出登山口への下山は再びもっぱら植林地の中を下る。時々左手に八丁平の高みが見える。最後の方は階段の道になり、ここは駆け足で降りて林道に立った。福本の登山口までは林道を緩やかに登り、尾根を乗り越えたあとは下りになる。風が強いのには閉口したが、途中振り返ると、高見山の尖峰が良く眺められた。尾根の乗越からは、尾根に沿って林道が延びており、福本登山口からはさらに局ヶ岳に向けて林道が延びているようである。このあたりは、林道がどんどん延伸している。登山口に戻ると、山頂は遙か上を見上げる様な感じであった。透き通るような青空が良かった一日で、帰路も局ヶ岳や烏岳など、麓から綺麗に展望することができた。
八丁平の風景
参考図書・地図 | その他のコース |
---|---|
分県ガイド 三重県の山 三重の自然を歩こう 伊勢文化舎 関西の山歩き100選 昭文社 エアリアマップ 赤目・倶留尊高原 25000図 菅野 50000図 高見山 |
三重県側 本文中の福本登山口と月出登山口 奈良県側 神末より 不動滝または登り尾経由で三峰峠 神末より 新道林道経由で新道峠 |