鼻曲山

 鼻曲山 1655m 留夫山 1590.8m
 山域:上信国境(浅間山周辺)

記録
 山行日2012年5月12日(土)
 ルート長日向〜鼻曲山〜留夫山〜旧碓氷峠〜旧軽井沢
 コースタイム0839 長日向バス停 → 0849 登山道入口 → 0922 林道交差 → 1017/27 鼻曲山(小天狗) → 1032/1103 鼻曲山(大天狗) → 1118 鼻曲峠 → 1159/1231 留夫山 → 1346 登山口 → 1350 旧碓氷峠 → 1357 遊覧歩道入口 → 1425 吊り橋 → 1450 旧軽井沢バス停
 天候曇りのち晴れ

鼻曲山を意識して見たのは恐らく16年前の春のこと、浅間隠山に登った時のことと思います。山頂の変わった形が印象的でいつかはと思っていましたが、いつの間にか長い年月が経過してしまいました。ここのところ高崎から上越線や吾妻線を利用した山に行く機会があり、その延長線にあるこの辺りの山が週末の山として視野に入ってきたような感じで、晴れの予報も幸いと訪ねてみることにしました。

上野からの長野新幹線の車窓は予報どおり確かに晴れていた。上州の山々が間近になる高崎あたりでも、最近登った子持山や小野子山まではっきり見えていた。但し、北の方は若干雲が多いかなという感じがあり、多少の危惧があったのは事実である。
新幹線は、高崎からはトンネル区間が多くなる。急激に高度を上げる碓氷峠を避け、北を大きく回りこみながらトンネルの中で高度を稼いでいく格好である。そういった車窓なので天気の変化には気が付かなかったが、軽井沢に着いてみると肌寒く曇っており、季節が1〜2ヶ月逆戻りしたような空気であった。
駅前から草津温泉行きのバスに乗り、まだ人気の無い軽井沢の町並みを抜け、白糸ハイランドウエイを登って行く。長日向のバス停は「ふれあいの郷」別荘地の入口となっており、まだ人も車も通らないどんよりとした朝の道に一人降り立った。
バス停には鼻曲山へは別荘地入口から入るように指示されており、それに従い朝の別荘地の砂利道を抜けていく。時節柄ほとんどの建物は人の気配が無い。別荘地を抜けたところで車道のゲートを越え、さらに広い道を奥へと分け入って行く。あたりはちょうど芽吹き始めたカラマツ林で、まさに新緑一歩手前である。やがて左右から林道が交差し、これを横切って更に進む。道幅はちょうど車一台分でカラマツ林の中を緩やかに登る。
このあたりの林床はオシダと思われる大型のシダ類が一面に新芽を出しており、その姿は不思議な光景でもあり、壮観であった。一般に笹が生えづらい砂礫地の林床によく生育するとのことで、このあたりの火山砂礫の林は絶好の条件なのだろう。そして、周囲がザラザラと音がし始め、なんともアラレまで降り始めてしまった。これは結局一時的なことだったが、低温かつ風も強いので雨具を羽織って歩くこととした。
やがて道は広い林道を横切り、再び山の中へと入って行く。道幅はだんだん狭くなってきて、普通の登山道へと近づいてくる。自然林も見られるようになり、明るい山腹を緩やかに辿っていく感じになってきた。しばらく進むと「この先崩壊の為通行止め」とあり、左上に登って行くように示されていた。きっと崩壊地の高巻きだろうと思い、面倒だが、今までずっと緩やかな道だったので、それも良かろうと、土嚢で補強された山腹の急坂を登って行く。ある程度登ると右手に大きな修復された崩壊地が見えた。いつ高巻きは終わるのかな?と思いながらではあるが、道はどんどん登り続ける。一旦緩やかになったかと思うと、今度は笹の中の細道となってさらに登り続ける。このあたりは高度も上がっているのか、あたりの木々はまだ芽吹かず冬枯れのままだ。そして時折日差しも出るようになり、明るく開放的な雰囲気もなって、右手に見える鼻曲山から留夫山への尾根の高さがだんだんとこちらの高度に近づいてきた。
これは高巻き道ではなく、まさに頂上へと向う道のような雰囲気である。ここでやっと思い当たった。通行止めなのは鼻曲峠へ出る道で、看板のあった場所は頂上と鼻曲峠への分岐であり、今歩いているのは高巻きなどではなく、分岐から小天狗に直登する登山道なのだ。そう思い当たると、登山口から休まず歩いてきたこともあり、日当たりの良い笹の上で、しばらく休憩した。
さて、最後の登りをと腰を上げ笹の道を登り始めると、すぐにロープがあるざれた道となり、これを登れば山頂に出てしまった。あまりにもあっけなく、また開けっ広げな山頂にちょっとポカ〜ンとした感じで、本当かいな?としばらく半信半疑であった。しかし、風が強くとても寒い。眼前に浅間山が大きいが、そのあたりは北西からどんどん雲が流れてきて、山頂部は雲の通り道になって隠されている。むしろ北の浅間隠山が素晴らしく立派に見える。だいたい空の三分の一くらいは青空が占めるようになってはきたが、断続的に吹く風を遮るものの無い山頂ではどうにも落ち着けず、大天狗の方が樹林の中なのでちょっと落ち着くかもと早々に移動することにした。小天狗を去り際に一輪のショウジョウバカマが咲いているのを見つけた。冬枯れの中での春の花を見て少し気分が暖かくなった。
大天狗まではすぐであった。樹林には囲まれるも、冬枯れで十分明るい山頂であり、山名の標識などもこちらにある。東の方に少し展望があり、角落山が見えている。以前下から眺めていつか登りたいと思っていた山だが、上から見るとそれほど意欲をそそられないのは、やはり山は下から仰ぎ見るものであるということだろう。山頂にいるとここでもやはり風が当たるので南斜面で場所を見つけて休憩とした。
鼻曲山からは留夫山を経て軽井沢駅までの長い行程を歩く予定である。大天狗から滑りやすい急坂を下り、さらに緩やかに小さなコブを越えると鼻曲峠に出る。ここは霧積温泉からの道が登ってきており、長日向への道には通行止の看板が出ていた。振り返ると特徴的な大天狗が見られ、東には角落山への稜線が良く見えていた。すでに青空が多く占めるようになっており、冬枯れの森は明るく、笹の稜線歩きも楽しくなってくる。
鼻曲峠から緩やかに2つのピークを越える。その先が留夫山なのだが、2つ目のピークの下りはかなり長く、眼前の山がどんどん高くなっていく。どうやら100m級の登りを覚悟しないといけないようだ。(実際は150mであった。)降り立った鞍部のすぐ脇には林道が通っているのが見えていた。
留夫山へは急登では無いがしっかりと登っていく道である。鞍部を通る強い風に吹き付けられながらの登りである。かなり木も茂っているので、夏になれば緑の濃いところでは無いかと思う。斜面を一歩一歩登り詰め、山頂が近くなると道は東よりに方向を変えて緩やかな道となった。登りついた山頂には立派な一等三角点があり、樹林に囲まれているが、今は冬枯れの明るい静かな山頂である。日射しもあるので暖かく、久しぶりのしっかりした登りのあとだったので、満足感を感じながらゆっくりと休憩した。
留夫山を発ち、滑りやすい斜面を下りきり、鞍部から再び緩やかな登りとなるが、今度は稜線を外れ、西側斜面をゆったり登るような道である。登りついたのは一ノ字山の領域であり、平坦なテーブルのような稜線がしばらく続くような感じで、素晴らしく気持ちが良い。林床は笹ではなく再びオシダになっているようだ。途中に一ノ字山1336mの看板があったが、これはどうも地図の1419mのあたりである。そしてしばらくの間道は緩やかに下り続ける。標高も低くなり、だんだんと木々の芽吹きが始まってきた。
道はある程度下ると左に向きを変え、植林の中に入って行くと、程なく右下に建物の屋根が見えるようになる。どうやら碓氷峠も近い。植林地の中で踏み跡を間違えそのまま下ると、正規の登山口ではなく、お墓のあるところから車道に出てしまった。車道を少し戻ると、思婦石や石碑が並ぶ登山口に出た。そしてここから中山道が坂本に向けて下っていた。さらに僅かで熊野神社のある、観光客で賑わう旧碓氷峠に到着した。
旧碓氷峠に着くと同時に旧軽井沢への遊覧バスが出発して行った。このバスの存在は調べていなかったが、あるのだったら乗りたかったと思わないでもない。気を取り直して峠から展望台の方に進むと、遊覧歩道の入口があった。思いのほか普通の山道でかつ良く踏まれている。また、傾斜も緩やかにつけられていて歩きやすい。ここまで下ると森は新緑の風情となっており、沢を絡みながらの道をせせらぎの音を聞きながら、足任せに一気に下っていき、吊り橋を渡って車道まで降り立った。
車道に出てから別荘地の間を抜け、旧軽井沢へと下っていく。二手橋を渡ればそこは観光客の領域で、朝とは打って変わって賑わう旧軽銀座をスタスタと歩き去っていく。さすがにこういう旅の後では、この雰囲気はどうにもなじめず、足早に旧軽井沢のバス停まで来たところで、丁度草津からのバスが到着した。もういいだろうと、最後の軽井沢駅までの歩きを省略し、バスの客となった。

帰路は横川駅までバスで下り、すっかりローカル線になってしまった信越本線で高崎へと向いました。相変わらず外は肌寒い日でしたが、バスや電車の中は暖かく、車窓から見る新緑の妙義などを楽しみました。また、安中あたりの車窓から浅間山のシルエットとともに、浅間隠山から鼻曲山、留夫山のシルエットが良く見え、稜線を目で追いながら今日の行程を思い出すことができました。今日の行程は山に「登ったぞ!」という部分が比較的少なく、また花のシーズンには早すぎましたが、春が来ようとしている静かな山を楽しむことができました。

本文中の写真

  • 林床に林立するオシダの若芽
  • 鼻曲山小天狗への登りから見る留夫山への稜線
  • 鼻曲山小天狗への最後の笹の中の登り
  • 鼻曲山小天狗から見る浅間隠山
  • 鼻曲山大天狗を振り返る
  • 鼻曲峠付近から見る角落山の稜線
  • 冬枯れの留夫山山頂
  • 旧碓氷峠の熊野神社


  • 参考図書・地図
    アルペンガイド 妙高・浅間・志賀(2000年10月第1刷)
    エアリアマップ 軽井沢・浅間(1996年版)
    25000図 軽井沢
    50000図 軽井沢

    鼻曲山小天狗山頂と浅間山遠景
    その他のコース
    ・霧積温泉〜鼻曲峠〜鼻曲山
    ・二度上峠〜氷妻山〜鼻曲山
    ・国境平〜鼻曲山
    交通機関
    軽井沢駅発草津温泉方面行きバス利用。「長日向」下車。
    詳細時刻は、草軽交通をご参照ください。