御岳山

 剣ヶ峰 3063.4m 摩利支天山 2959.2m

山域:御岳山
2000.7.23


木曽の御岳山は、飛騨山脈や木曽山脈に属さない独立峰である。私としては、それゆえ日本アルプスの山々に目がいってしまい、それほど気にとめていなかった。今回でかけたのは、夏山シーズンになって、手軽に登れる高山という気持ちで選んだからであるが、実際行ってみると何度も来たくなるような素晴らしい風景が展開していた。

夜半に田ノ原に着くと、駐車場は観光バスや自家用車であふれんばかりであった。多少霧がでている中で、人々が次々と出発していく。どうやらご来光を求めての夜間登山も盛んらしい。ただ、他の山と違うところは、殆どが白装束と金剛杖という出で立ちであるということ。これほどまでの、信仰登山の情景を目の当たりにしたのは初めてのことであった。
車中で仮眠し、夜明けを待って登山道に入る。御岳山は8合目から上がすっかり雲の中に入っているが、周囲は青空で、完全に晴れ渡っている。この様子だと、日が昇れば快晴の天気が期待できそうだ。最初は緩やかな幅の広い道をいき、お詣りの人で賑わう神社を過ぎれば、傾斜がではじめ階段の道となる。前後に歩く人は大半が信仰登山の人々で、それぞれの「講」のはっぴを白装束の上に着ている。運動靴の人も登る。またかなりお年を召された方も多い。ゆっくりと、階段や石段の歩きやすい道を登っていくと、七合目を過ぎ、背丈の高かった針葉樹がだんだん低くなってくる。この時間ですでに下ってくる人たちともすれ違い、中には山伏のような服装の人もいる。すれ違うと「お詣りごくろうさんです」と声をかけられた。
祠の立つ八合目まで来ると、すっかり森林限界から出て、背後に出発した田ノ原が広がっている。少し登れば八合石室で、このあたりでガスの中に入ってしまい、風も吹きさらしなので肌寒さを感じた。だんだん傾斜が増した岩の階段状の道を、ゆっくり登ると九合目とあり、さらにひと登りしたところに九合石室があった。ガスの中で風の吹き付ける道に疲れも感じてきたので、石室の中に入り朝食にして少し休憩した。
石室から出ると、サッと一条の光が射してきた。そして青空が見えてくる。どうやら急速に晴れてきたようだ。登山道にでて、ぐんと急になった道を登っていくと、ガスが晴れて王滝頂上がそれほど遠くない所にはっきり見えた。気分も軽く、増した傾斜も気にならなくなり、今日は来て良かったと思いながら登っていけば、やがて王滝頂上山荘の前を通り、賑わう王滝頂上の神社に出た。
神社の前を通り岩の間を抜けると正面に剣ヶ峰が見える。地獄谷の方からわき上がってくるガスに時折頂上を隠されるが、背後にはしっかりと濃い青空が広がっている。八丁ダルミから石のごろごろした道を登って行き、銅像の建ち並ぶところから傾斜は急になって行く。しかし登りも長くは続かず、やがて二軒の小屋の間を通って、最後は急な階段を登る。登り着いたところが御岳山山頂で奥宮があり、講の人たちがお詣りをしていた。
山頂からの展望でまず目にはいるのは乗鞍岳。その向こうに穂高連峰がある。しかしまだガスが完全にとれていないので、隠れ気味である。眼下には二の池の碧水が美しい。山頂から一の池の回りの尾根を周回する道に入ってみる。三十六童子巡りとあり、童子の名前を書いた石碑が順番に現れる。一旦地獄谷側の鞍部に降りてから、再び登って岩混じりの道を行く。道は細いが、踏み跡をはずさなければ問題は無い。継母岳へ行く尾根状のあたりが一番高いようで、賑わう剣ヶ峰が良く眺められた。周回も最後の方は稜線を通らず一の池側の巻き道になるが、再び稜線を乗り越すと、二の池の方への下りとなる。砂ざれた道をどんどん下れば、朝日が反射する二の池が近くなり、二の池新館の前に降り立った。
二の池新館から緩やかな下りを行き、やがて一気に下って賽の河原に降り立った。これから目指す摩利支天が、左奧にずいぶん高く見える。砂礫の道を登っていくと祠と小社があり、このあたりから、中央アルプス・南アルプス・富士山・八ヶ岳と勢揃いの展望を大いに楽しむことができた。深い色の水を湛えた三の池への分岐を過ぎ、正面の祠のあるピークへと登る。ここからは飛騨側が良く見える。山がずれたような断層になっている地形が面白い。稜線づたいに摩利支天の三角点を目指す。少し進むと道は岩稜の賽の河原側をトラバースして行くが、このあたりは今日の行程では一番花が多かった。そしてこのあたりは他に歩く人もいず、ぐんと静かな道だ。岩稜の先端あたりで稜線に出ると三角点と摩利支天の標識があった。北側は切れ落ちるが展望がよく、乗鞍岳から北アルプスを眺めながら、しばらく岩に寄りかかっていた。
なんとなく雲も出始めたので、再び元来た道を戻ることにする。賽の河原に降り立つと二の池への登りで足に疲れがではじめた。そういえば登り初めて以来、長い休みをとっていない。とりあえず二の池で休むことにして、ゆっくりと登っていく。二の池小屋本館の前にたどり着けばそこは湖畔の素晴らしい風景が広がっていた。碧水に、池の奧に残る雪渓、そして深い青空。久しぶりに味わう至福の瞬間で、しばらく湖畔の砂地に横になり、贅沢な時間を思う存分味わうことができた。

下山は、八丁ダルミへの巻き道に入ろうと、剣ヶ峰から伸びる尾根に登っていくと、どうやら巻き道の入り口より高く上がりすぎたようで、ついでにもう一度剣ヶ峰に登ってみた。山頂直下の階段を数えてみると82段。意外と長い。山頂は朝よりも随分展望がよくなり、乗鞍岳の向こうに穂高連峰や槍の穂先、そして左側には笠ヶ岳の特徴的な山頂がよく目立っていた。
下りは王滝頂上でしっかり靴の紐を締め直し、一気に田ノ原まで駆け下りた。途中、六根清浄を唱えながら登ってくる大きな団体とすれ違ったが、摩利支天の方の静けさとは裏腹に、王滝側は信仰で賑わう山であることを再認識した。確かに何度も行きたいと思う山であることは間違いない。

本文中の写真(順に)

  • 王滝頂上を見上げる
  • 剣ヶ峰からの二の池と乗鞍岳
  • 一の池の対岸より剣ヶ峰
  • 摩利支天山から見た剣ヶ峰方面

    山のスナップ:御岳山頂より 賽の河原から剣ヶ峰 二の池湖畔より

    御岳山頂からのパノラマ



    乗鞍岳を中心に右が槍ヶ岳から穂高連峰、左が笠ヶ岳など

    記録

    日 程

    2000年7月23日(日)

    天 候

    晴れ

    コース

    0500 田ノ原 → 0710/20 王滝頂上 → 0740/55 剣ヶ峰 → 一の池周囲の稜線を回り → 0845/55 二の池新館 → 0905 賽の河原 → 0952/1015 摩利支天三角点 → 1105/55 二の池湖畔 → 1230/35 剣ヶ峰 → 1250/1300 王滝頂上 → 1405 田ノ原

    二の池より剣ヶ峰をのぞむ


    参考図書・地図 その他のコース
    アルペンガイド 中央アルプス・御岳山・白山
    エアリアマップ 
    25000図 御嶽山・御岳高原
    50000図 御嶽山・木曽福島
    黒沢口より二の池・御岳山
    開田高原より三の池・御岳山
    濁河温泉から飛騨頂上
    バス
    木曽福島より田ノ原 2150円
     8:56 10:35....
    木曽福島より御岳ロープウェイ 1590円(夏期)
     8:40 10:40....
    おんたけ交通(0264-22-2444)までご確認下さい