滝谷の峰(タワ尾根)

一石山 1007m 人形山 1176m 金袋山 1325m
篶坂ノ丸 1456m ウトウノ頭 1588m 大京谷ノ峰 1602m
滝谷ノ峰 1710m


山域:奥多摩
2000.3.25


奥多摩もある程度登山道を歩きまわっていると、エアリアに赤線の無い尾根が気になってくる。特に目に付くのが、名前の面白い尾根(二軒小屋、ハンギョウ....)や、途中に名前のあるピークのある尾根(鳥屋戸、タワ..)である。特にタワ尾根は、ウトウの頭や金袋山など、名前自体面白いピークが連続し、また長大な尾根でもあり、特に気になるところであった。この尾根をついに友人の誘いを得てまだ冬枯れの早春の日に目指すこととなった。

バスの時間や長い行程のことを考えて利用したタクシーを、日原鍾乳洞の前の一石山神社で降りた。境内に上がると、裏手の細道に踏み跡があり、これに取り付くことにする。ジグザグの高度を上げて行く道は、かなりの急登で、いきなり息が上がる。最初は、ちょっとはっきりしない踏み跡だったが、急なザレた場所を過ぎ、樹林に入るとしっかりしてきた。植物の名前の古い標識が時折かかっていたり、時々セメントも使った階段の跡があるところを見ると、かつて遊歩道的に整備されたのかもしれないが、今ではそれほど登る人も多くは無さそうだ。永遠に続くとも思われるような、樹林の中の急登を頑張って行けば平坦な小尾根の肩状のところに出てベンチがあり、展望台とあった。しかし木が育っており、展望は無かった。小憩のあと、さらに急登をこなして行く。途中で岩場を登る道となり、しっかりしているが、かなりきつい階段も出てくる。この岩場を登り切れば一石山の肩で、反対側に下る道があり、タワ尾根方面は通行止と書いてあった。一石山の山頂標識は、ここから少しタワ尾根を登った所にあり、静かな所である。ちなみに一石山というのは、山が一つの石で出来ているからつけられたということらしい。

急登を終えると一仕事終わった感じで、あとはゆったりとした尾根歩きが待っている。まずは人形山を目指す。左手に鷹ノ巣山の勇姿を見ながら、冬枯れの道を行くと、やがて植林地と雑木林の境界を登るようになる。登りはいたって緩やかで気持ちがいい。人形山は地図で見ると、尾根の合流点の高みであり、確かに右前方からゆったりと尾根がが合流してくる。まったく障害もなくいい道が続き、特に尾根の合流するあたりは、広々とした雑木林で、なかなか雰囲気が良かった。山頂標識はやはり尾根が合流した場所にある木に、しっかりと打ち付けられていた。
次は金袋山である。この様に等距離にチェックポイントがあるのはいい励みになる。雑木林のゆっくりした登りが続くと、しっかりした道の水源巡視路がクロスする。さらに登っていくと、笹藪が出てくる。笹の葉がすべて枯れ落ちて堅い茎の部分だけになっているのが不思議である。笹の間の道は丁度両足の幅くらいだろうか。体が通るには狭すぎるので、これから終始笹をかき分けて行くこととなった。2匹の鹿が白いお尻を見せて駆けていったのはこのあたりだったかもしれない。金袋山にもしっかりした標識があり休憩した。
次は篶坂ノ丸だ。「すずさかのまる」と読む。ここは今までの肩状の山とは違って、なだらかであるがピークを形成している。相変わらず続く笹藪は道を辿っていけば問題ないが、時折倒木なんかにだまされて横道にそれると、藪が激しくなる。このあたりから時折日陰に雪が残るようになった。篶坂ノ丸の最高点を通過しそうになったので、高みに向かって修正すると、そちらにも踏み跡があり山頂に着いた。「鈴坂丸」という標識になっていた。

さて、いよいよタワ尾根中の唯一の三角点であるウトウの頭である。それほど気にならないほど緩やかに下ったのちに150mの急登となる。この尾根上の唯一の岩稜地帯で、ここまで歩いてきたあとでの登りは結構厳しい。このあたりは笹藪は無く、黒木の森に変わり、暗い樹林の登りである。途中で立ち止まると再び歩き出すのが大変だと思い、ゆっくりと登っていく。だんだん高みが近づき、道は平坦に近くなるが、山頂は少し奥にあるので、さらに小さなアップダウンを進む。三角点が見え、辿り着いた山頂は、写真でもみた、鳥を木に彫り込んだ看板がかかっており、この尾根の名所にたどり着いて一つの目的を達成した気分であった。
ウトウの頭からはしばらく稜線上を辿ったのち、大京谷のクビレに向けて稜線の途中から左に下っていく。そのまま直進すると崖に出て行き詰まってしまうので、左手を注意して、赤テープを見逃さないようにする必要がある。この下り自体も急な斜面で、降り立ったのはキレット状の鞍部であった。ここから孫惣谷に向けて下れば、途中で水源巡視路に出て下ることのできるエスケープルートということである。さて、下った分を登り返す。多少雪の着いた急坂を頑張ると、傾斜はゆるみ1602mに出る。そこには大京谷の峰という看板がかかっていた。左下に降りていく黄色のテープがあったが、ここから派生する尾根上を辿る道であろうか。
1602mを過ぎれば、黒木の森は終わり再び明るい雑木林の笹藪の中となる。もはや縦走路まではたいした標高差はないが、ひたすら笹をかき分けての道となる。笹の間の道は最初からかなり鹿の糞が落ちていたが、このあたりになると糞の密度が濃く、また重なっており、新しいやつから苔むした糞まである。それらを踏まずに行くとこは不可能である。土と同じと思った方がいい。おまけに熊がひっかいた跡が木の幹に頻繁に見られるようになってくる。獣の密度が濃くなってきたようだ。
やがて樹間から見える長沢背稜の稜線が近づいてきて、尾根が平坦にだだっ広くなってくると、縦走路に飛び出した。藪道を歩いたあとではすごく懐かしい気がした。さぁ、最後のひと登りで、滝谷ノ峰へと詰める。傾斜は急になり、雪も少し着いて滑りやすい道を、両側の笹をつかんで上がっていく。この間15分であるが、藪に傾斜が加わったため、意外に苦労した。立木に小さな看板がある山頂は、県境よりは若干東京都側にあり、特に広場はなく、今までの道の延長のようであった。足の踏み場もない鹿の糞を避けてなんとか場所を確保しコーヒーを沸かす。この来る人の少ない山頂は、昔ながらの長沢背稜のピークの雰囲気を残した静かな山頂という表現があっているのかもしれない。とにかく長い登りを終えての満足の山であった。

バスの時間もあり、30分ほどで下山することとした。縦走路に出て今回下山路として選んだゴンバ尾根を目差す。平坦な道を、右にタワ尾根を眺めつつ、とにかく急ぎ足で歩き、酉谷分岐を通過。最後のゴンバ尾根の分岐である七跳山直下へは、50m程登っており、疲れた体にはちょっとつらかった。とにかく歩き続けた1時間半であった。ゴンバ尾根の下りは早い。いい道を一気に下ることができる。それほど特徴の無い道だが、途中の平坦地と、2つの雨よけトタン小屋は良いアクセントである。それも過ぎて、しばらくすると遥か下に林道が見える。一心不乱に下ればあっという間に近づいてきて小川谷林道に降り立った。
最後はひたすらの林道歩き、バスは1時間半後で、あまり期待せず右上にタワ尾根を見ながら、タワ尾根の下を忠実に降りていく。四方山話をしながら下っていくと、カロー谷から団体が降りてきた。このあたりで、残り時間から辛うじてバスに間に合いそうなことが解ったので、かなりの早足に切り替え、日原の集落に入ってからは、時折ダッシュしながら東日原のバス停に滑り込んだ。時間との戦いの興奮さめやらぬまま、今日の山行はすべてうまく行ったという満足感を持って、バスで奥多摩駅へと向かった。



記録

日 程

2000年3月25日(土)

天 候

晴れ時々曇り

コース

0810 一石山神社 → 0835/45 ベンチ → 0900/10 一石山 → 0937/45 人形山 → 1005/22 金袋山 → 1045 篶坂ノ丸 → 1125/35 ウトウノ頭 → 1152/1200 大京谷ノクビレ → 1215 大京谷ノ峰 → 1300 長沢背稜縦走路 → 1315/45 滝谷ノ峰 → 1355 縦走路 → 1440/50 酉谷分岐 → 1530/35 ゴンバ尾根 → 1610/20 小川谷林道広場 → 1747 東日原バス停

長沢背稜から樹間越しに見るウトウの頭付近


参考図書・地図
奥多摩の尾根と沢(東京新聞社)
奥多摩一周トレール
25000図 武蔵日原
50000図 秩父