天祖山

1723m

山域:奥多摩
2001.3.17


この日は以前から約束して、昨年中止になった二軒小屋尾根に行く予定にしていましたが、一名風邪でダウンしたこと。今年はまだ雪が深そうなこと。午後から天気が悪いという予報であること。などから、もし八丁橋以遠に車が入れるなら挑戦するという条件付きで、天祖山に行き先を変更しました。現地ではやはりゲートが閉じており、天祖山に向かうこととしました。

1.登山口へ

前夜、大阪に長期出張中のYさんに、四日市まで迎えに来てもらい、中央高速を東京に向かう。途中双葉で仮眠をして夜明けを迎えると、この時点ではまだ少し晴れ間ものぞいていた。八王子を経て、日原の奥の八丁橋に着いたのはすでに8時過ぎ。八丁橋から先はゲートに鎖がかかっており、天祖山に行くことが決定した。北面の谷になるこのあたりは、まだまだ道の周囲に雪もみられ、八丁山の斜面は雪がしっかりとついていた。

2.天祖山

天祖山への道はいきなりの急登で始まった。石のガラガラした急崖にジグザグにつけられた道で、昨年歩いたタワ尾根の先端の一石山への登りを思い出す。きついが、グイグイと高度を稼いでいく道だ。小さな尾根に出ると、小さな祠が二つまつられており、さらに再び斜面を登っていくと、やがて尾根の先端に出た。ここでひと休みとしたが、丁度登り初めて30分程経ったところだった。
ここからは幾分傾斜は落ちるが、それでも厳しい登りが続く。振り返ると見える八丁山の山頂が、現在地の高度を推し量る基準になる。しかしこれは、なかなか低くはなってくれない。ずっと、落葉樹の冬枯れの森が続いており、これは思っていた印象と少し違った。植林などの多い、展望のない暗い道を思い描いていたが、実際は明るい雑木林が続いていた。
途中で僅かに流れる水場を過ぎ、雨量計のある久しぶりの平坦地に出て休憩する。ちょうどこの先に、立派な建物の大日天神社があった。少し休んだあと、さらに急な尾根の登りをこなす。時折現れる緩やかな登りに、一息つきながら高度をあげて行くと、やっと八丁山と同じくらいの高さになった。あと450mである。
今日は、冬枯れの森の高曇りの天気で、樹間からの見通しが良く、本仁田山や川苔山、鷹巣山にタワ尾根などを見つつ、それらが低くなっていくことを励みに登って行くことができた。鷹巣山はとくに格好の良い山で、振り返るといつも見えたいた。Yさんも言われていたが、なかなか風格のある山である。
高度を上げると、平坦な場所は雪を踏むようになり、道にはスズタケが現れる。ウトウの頭や滝谷の峰が良く見えるようになると、狭くやせた尾根を登っていく。タワ尾根と見比べると、あと山頂までは標高差200mくらいだろう。
前方を鹿が駆け登って行くのが見えた。道には鹿の糞も増え、また皮を剥がれた木も多くなり、笹にも葉が全くついてないのが気になった。これらは食べられてしまったのだろうか。緩急をこなしながら行くと最後の急坂になった。多少気もはやり、疲れる所だが、登り切ると傾斜も緩やかになって、今や採石場に出てしまう旧参道の分岐を経て、山頂直下の籠堂に到着した。
籠堂の前は刈り払われて展望が開けていた。富士山は山頂が雲に隠れてしまってはいるが、大きな裾を見ることができた。その前に大菩薩連嶺が黒々と横たわっており、ちょうど七ツ石と雲取の間の尾根の上にこれらの展望が開ける。こちらから見る雲取山は、ちょっと印象が違って平べったい山に見えた。
山頂を前に、籠堂の中で休憩させてもらう。しかし中でしばらく居ると、どうにも寒さが身にしみてきた。この中は、どうも気温が上がらず、夜の冷気をそのまま維持しているようだ。事実外に出てみると暖かく感じた。
山頂までは、両側に植林された道を僅かであった。50cm程度の雪に埋まっており、三角点は見つけられなかったが、立派な天祖神社のある山頂だった。

3.孫惣谷へ下山

下山は、北の梯子坂のクビレへと下って行く。北面になると雪深く、ときどき大きく潜ってしまうが、下りなのでそれほど問題なく進むことができた。展望のあるところでは、北の芋ノ木ドッケとそれに突き上げる二軒小屋尾根が見えており、まだ雪が深そうであった。それもしばらくすると、予報通りに北の方からガスに沈みはじめ、梯子坂のクビレに下る頃には我々の上にも雪が舞い始めた。
梯子坂のクビレからの下山路は崩壊のため通行禁止ということでロープが張ってある。しかしガイドブックには、「道は不明瞭な部分があるものの通行に支障はない」とあり充分歩けるコースのようだ。同行のYさんもこのルートを辿ったことがあるのは心強い限りである。
道は、孫惣谷に向けて斜面をジグザグに降りていくはっきりしたものであるが、通行止めの標識の為か入る人が少ないようで、少しあれ加減になっていた。素晴らしい落葉樹の谷間の道だけに、通行止めを解除して整備して欲しいものだ。流れが近づいてくると、谷底になるためか雪が深くなり、道をすっかり隠してしまった。沢まで降りるとさらに雪が深く、時折腰まで潜ってしまう、思わぬラッセルとなった。先頭を変わったりして少し沢沿いに下っていくと、左上に上がって行くテープがあり、その先に道形があるので、やっと雪から脱出である。
ここから谷は採石場の中へと下っていきますが、道はそれを避けて尾根を2つほど回り込んでいく。途中は岩場のトラバースもあり、しっかりした桟道がつけられていた。やがて採石場の対岸に出て、緩やかな笹原の中の素晴らしいブナ林を通っていく。このあたりは、なかなか雰囲気のいい場所である。しかしここでも笹の葉がひとつも無く、植生は荒れ加減であった。
その後、どこかで下りすぎたためか、獣道に入り道を失ってしまった。眼下の対岸に小道が見えるので、雪で埋まった斜面をトラバースしながら下っていく。そして沢に降り、沢沿いの登山道を下ると木の橋を渡って、採石場のはずれに出た。ここから採石場の中を通れば、目と鼻の先の距離に林道終点があるのだが、道は大きく高巻いて採石場を避けていく。あまりにも落差の大きい道なので、今日は車両も動いていないことでもあり、採石場の中を通らせていただいた。林道終点までは僅か5分であった。
林道にでればあとは1時間の車道歩きである。しばらく淡々と歩いたあと、足がずいぶん痛みはじめたころ、眼下に八丁橋が見え、一気に高度を落として橋に降り立った。登山口からスタート前に林道を見上げて、随分高い所を道が走っているなと思ったのですが、なるほどと思った。

天祖山は予想通りの歩きがいのあるコースでした。こんな道をいつも登っていると、いいトレーニングになるなぁと考えながら登っていました。一方で、予想と外れたのは、明るい落葉樹の多い道だったことでした。広大な採石場の光景は玉に瑕ではありますが、鹿が走り回る自然の色濃い山ですし、登って満足感を感じることが出来る山だと思いました。

本文中の写真

  • 登山口から登り着いた尾根の突端付近
  • 道中に時折現れる小さな祠
  • 北面に雪のついた鷹巣山



  • 記録

    日 程

    2001年3月17日(土)

    天 候

    曇りのち雨(雪)

    コース

    0825 八丁橋 → 0935/40 大日天神社 → 1120/50 籠堂 → 1155/1200 天祖山 → 1225 梯子坂のクビレ → 1415 鉱山 → 1420 林道終点 → 1520 八丁橋

    山頂の天祖神社


    参考図書・地図 その他のコース
    東京付近の山(実業之日本社)
    アルペンガイド旧 奥多摩・奥秩父・大菩薩
    エアリアマップ 奥多摩
    25000図 雲取山 武蔵日原
    50000図 三峰 秩父
    梯子坂のクビレからさらに長沢背稜に出て、酉谷山などを経由して下ることができるが、かなりのロングコースとなる。
    バス
    奥多摩駅から日原鍾乳洞(休日は東日原止まり)へ
    西東京バスを参照下さい。