大持山

 大持山 1294.1m 小持山 1273m
 山域:奥武蔵

記録
 山行日2003年2月1日(土)
 ルート名郷→妻坂峠→大持山→小持山→シラジクボ→生川→横瀬駅
 コースタイム0915 名郷バス停 → 0930 妻坂峠分岐 → 0958 ウノタワ分岐 → 1007/10 林道終点 → 1040/50 妻坂峠 → 1200 稜線 →1210/40 大持山 → 1315/25 小持山 → 1355/1400 シラジクボ → 1445 堰堤 → 1450 生川 → 1505 御嶽神社 → 1525 石灰工場前 =車= 1535 生川入口 → 1555 横瀬駅
 天候晴れ

一年の計がどうも気になるので、まず2月の月初めにその一つに向かいました。奥武蔵というと、なんとなく里山というイメージがつきまといますが、大持山ともなると、標高も高く、かなりの雪が見込まれます。以前この時期に行った武甲山の積雪をイメージしつつ、快晴の予報に期待して、山へと向かいました。

なんとなく布団を抜け出せなかったので、予定の電車には乗れない時間となってしまいました。あわてて準備をしながら時刻表を確認すると、まだ30分後のバスに間に合う時間です。これなら大丈夫と駅に向けて出発しました。
飯能駅に着くと雲一つない青空で、期待に胸がふくらみます。1時間のバスはうたた寝しているうちに、名栗川橋・河又と過ぎ、棒ノ折山への登山者を降ろして行きます。そのあたりで、そろそろ地図を確認しようと思ったのですが見あたりません。今日は途中の時間次第で、下山路を決めようと思っていたので、ちょっと困ったのでした。
名郷のバス停で数人降りましたが、他の人は蕨山の方に行ってしまい、妻坂峠の方に向かったのは私だけでした。時節柄そういうものかもしれません。武川岳への登山口を過ぎ、しばらく進むとキャンプ場である大鳩園のエリアになります。このあたりは奥に鉱山があるためか、大型車が時折行き交います。やがて妻坂峠と鳥首峠の分岐となり、妻坂峠方面は右に折れ静かな林道へと入っていきました。
分岐のあたりは渓谷美に惹かれましたが、すぐに平凡な谷沿いの道となります。例によって車のあまり通らない道は凍っており、注意しながら淡々と進むのみです。途中左に採石場への道とウノタワへの林道が分岐していきます。「入間川起点」の石柱を過ぎると、道はカーブをしながら上がって行き、まもなく林道終点となりました。そして小さな橋を渡って谷沿いの道へと入りました。
さすがに峠道らしく、ゆったりした道が延びていきます。しばらく進むと道は沢筋から離れてジグザグに登るようになり、少しづつ高度を上げていきます。昔から歩つがれた道で、快適に歩いていけます。頭上に稜線が明るく見えるようになると、程なく妻坂峠に到着しました。峠は雪に埋もれており、北からの風がよく通って肌寒いところでした。木々の葉のすっかり落ちた林を通して、北に武甲山が大きく見えていました。
妻坂峠でアイゼンをつけて、大持山への登りのスタートです。稜線は雪がけっこう積もっており、トレースをはずすと膝まで沈みます。しかし、トレースの部分はしっかり踏まれていますので、とても歩きやすくなっています。少しの間緩やかに進んだあと、一気に急坂になります。このあたりは、落葉樹が葉を落としているため、北からの風が直接吹き付け、顔が凍ってしまいそうです。坂道はちょうどアイゼンがガシガシと快適に刺さる固さで、グングン高度を上げていきます。見渡せる武甲山や武川岳と比べながら、確かに高度を稼いでいるのがわかります。しかし、ちょっと調子にのって歩きすぎたためか、すぐに息切れしてしまい、途中で座り込んで休憩となってしまいました。
ある程度登ると植林も出てきて、風もなくなりました。だんだんと傾斜も緩んできているようです。葉の落ちた木々の上にある空がとてもきれいで、特に正面の小さなピークの立木の上を見て、なんてきれいな青!と思いました。そして、そのピークは尾根の肩のようなところで、そこからはゆったりとした雪原と深い青空の道が木々の間に延びており、まさに心の中からすべての雑念を吹き飛ばしてくれるような風景でした。
緩やかなアップダウンの尾根歩きは快適で、樹間から右に武甲山、左に有間山への尾根を眺めながら、少しづつ高度を上げて行きます。目指す大持山の右には小持山が鋭く尖って見えています。小持山の山頂にも是非立ちたいのですが、折り返した時の時間や、直進したときの下山路の算段ができず、大持山で引き返すしかないのかな?と考えながら歩いていきました。やがて傾斜が急になり、ピークを目指すようになって、これを登りきれば、有間山からの稜線に合流しました。
ここは展望の大きく開けた場所でした。眼下には名郷も見えていますが、よくここまで歩いてきたなという感じです。そして、武川岳の向こうに都心まで関東平野が一望でき、その向こうには筑波山が見えています。筑波山は、実は関東では富士山の次に遠くから目立つ山なのかもしれません。
分岐から僅かな登りで大持山の山頂に立ちました。あまり広くない山頂ですが、奥多摩側が開けており、長沢背稜が正面に見えます。その向こうに富士山が顔を出し、遠くに雲取山、そして奥の方にある白銀の峰は八ヶ岳でしょう。素晴らしい展望でした。
山頂には、先客のご夫婦がいらして、奥さんは写生に余念がありませんが、旦那さんと話しているうちに、シラジクボから生川に下ってはどうかということになりました。バスの待ち時間などを考えると、時間的には大差ないんではないか?とのこと。生川から横瀬までの時間がよく解りませんが、まあそんなものかもしれません。小持山も捨てがたかったので、結局生川に下ることに決めました。
大持山からは、一旦少し下って登り返します。下から見えていたギザギザした峰で、ちょっとした岩稜になっています。北面の道は雪が深く、南面は雪が無いところもあるという登り下りの繰り返しです。この峰の北端までくると、正面に遮るもの無く、大きな武甲山が見えます。確かに甲のような立派な形です。
さらに一旦下ったあと、小持山への登りになります。立ちふさがる岩壁の右を巻くように登りきると、稜線は向きを西に変え緩やかな山頂部になります。下から見ていた鋭鋒とは、実は横長だったようです。小持山の山頂は北の展望が良く、正面に鎮座する武甲山の他には、やはり両神山や、先だって登った秩父御岳山も見えています。そして、ここでも御荷鉾山がよく目立っていました。早く登りに行かねばなりません。小持山からは、シラジクボに向けて一気に下ります。アイゼンを効かせてどんどん行きますが、尾根の痩せたあたりは、西からの風の為か、東側の雪が切れ落ちたように積もっており、低山とはいえ、北面の積雪はしっかりとあることが解ります。振り返ると、武川岳から妻坂峠への稜線が見え、妻坂峠がお椀の底のようになっています。なるほど、あのあたりの風が強いわけです。
道は下りきったあと、若干アップダウンを繰り返すようになります。幾分登り気味にも感じるので、地図を持っていないだけに少々不安ではありますが、顕著な分岐も無いのでそのまま行きます。そして、武甲山への登りへとさしかかる所にシラジクボの標識がありました。シラジクボには1人の武甲山へのハイカーがいて、生川から登ってこられたとのこと。私は幾分不安であった生川への道が確保できてほっと一息でした。
シラジクボから急な林の中の斜面を踏み跡に従って下ると、広い道に出ます。この広い道の周辺が荒れていて、部分的に雪も無かったため、どっちへ行ったものかと右往左往してしまいました。絶対先ほどの人の踏み跡があるはずと、行きつ戻りつ、探した結果、雪の無い崩壊を越えて、真横に右に行くと、立派な広いトレースがあるではありませんか!なるほどちょっとしたことで、わからなくなるものです。
ここからは車道に積もった雪の中のしっかりしたトレースを辿ります。今この道が車道として機能しているかどうかは、雪に埋もれているのでわかりません。途中に寺跡への分岐があり、これを過ぎるとトレースは時々車道をショートカットするようになって、やがて植林地の中のジグザグの山道となりました。どんどん足任せに下っていくと、沢音を聞いて堰堤の下に出ます。雪の積もった小さな橋を渡ると、コンクリートの道となりました。
ここからら全くの車道なのですが、急斜面の氷の道なのでアイゼンを着けたまま歩きます。妻坂峠からの道が合流し、武甲山の登山口である御嶽神社の鳥居の前まできてアイゼンを外しました。あとはひたすら車道歩きで、小さな別荘地を過ぎ、生川を渡ると工場が近づいてきます。どんどん下って行くと石灰の工場の前に出ますが、このあたりからとても埃っぽく、それを巻き上げながら大型車が通っていくので閉口しました。しかし、それも僅かで登山者の車にピックアップしてもらい、299号の生川入口の交差点まで乗せていってもらって、とてもラッキーでした。
あとは299号を秩父方面に歩き横瀬駅に向かいます。最後の駅への道は、武甲山の北面を正面に見ながら向かうので、よくぐるっとまわりこんできたなということと、南面とは違う姿を見て、感慨深いものがありました。

その後横瀬駅で特急を待ち、乗ってしまえば、僅か1時間と15分で池袋に着きました。ここ最近短いコースが多かったので、今回は充実感がありました。冬枯れですので、つねに展望と青空に恵まれていたのですが、このルートは木の葉が茂る時期ですと、印象が異なるのかもしれません。
そして、やはりこの時期は、気楽に行けるのは1000mまでで、それを越えれば相応の準備が必要だなと、改めて思いました。

本文中の写真

  • 妻坂峠よりの武甲山
  • 尾根の肩の立木と青空
  • 有間山からの稜線にて武川岳方面を振り返る
  • 大持山山頂
  • 小持山からの大持山
  • 小持山山頂

  • 参考図書・地図
    ブルーガイド 東京付近の山(1998年第1刷)
    昭文社エアリアマップ 奥武蔵・秩父(1996年版)
    25000図 原市場 正丸峠 秩父
    50000図 秩父

    武甲山南面(小持山手前のピークから)
    その他のコース
    ・名郷あるいは冠岩から鳥首峠を経て大持山へ
    ・山中からウノタワに上がり大持山へ
    ・浦山、武士平から高ワラビ尾根を経て小持山へ
    交通機関
    飯能から名郷または湯ノ沢行き
    時刻表は、国際興業を参照願います。
    また、浦山方面へは秩父市営バス 浦山大日堂行き
    時刻表は、秩父市内路線バスご案内を参照願います。