千葉・御殿山 苦渋の道

この時期ちょっと不似合いの千葉の山のレポートです。夏休みをとっていたけど、ハワイから帰ってきて、次ぎに立山・剣に行く間のぽっかり空いた日に、どっか歩いてくればちょっとダイエットになるかなというような気持ちで出かけました。
どんどん汗をかいて気持ちよく歩こうというのが目的ですが、意外な落とし穴が..


【日 程】96年8月22日(木)
【目 的】御殿山
【天 候】晴れ
【コース】1400林道入口→1430/1440法経塔山→1520林道→1525ハイキングコース入り口→1537/1545展望ベンチ→1602/1622御殿山→1647ハイキングコース入り口→1716林道入口
【山 名】御殿山 364m 法経塔山
【メンバー 】単独
【山 域】房総
【参考書】分県登山ガイド 千葉県の山


1.法経塔山へ

館山道終点の木更津から、清和県民の森を経由して410号線を南下し、御殿山の登山口のある林道畑塩井戸線へと向かう。林道に入るとまもなく道がせまくなり、舗装もとぎれてしまったので少し道が広くなったところに車を止め、歩くことにする。少し歩き始めるとすぐに再び道が少し広くなり舗装路に戻ったが、まあ今日は少し歩きたい気分でもあるのでそのまま進む。林道は谷を大きく回り込むように延びていく。まわりはツクツクボウシの鳴き声で埋め尽くされている。もう夏も終わりであろうか、風も気持ちよく照りつける様な陽射しはない。ガイドブックによると「山火事注意」の看板が法経塔山への登り口だとある。確かにそれらしい感じではあるが、道は背丈を越えるススキの薮に埋め尽くされている。樹林に下に入れば大丈夫だろうと思い、思いきり体を押しつけるように入っていく。
実は、昨日までハワイで遊んでいた為、体中が日焼けで、さわっただけでも痛い状態なのである。おまけに今日は軽いヒルウォーク程度と考えて、Tシャツと半ズボンなのだ。この薮が日焼けして露出した肌に効かないはずはない。飛び上がりそうな痛みをぐっとこらえて、5〜6メートル進むと、やっと樹林の下に出た。先が思いやられる。
樹林に入るとしっかりした踏み跡がついているが、なにせ蜘蛛の巣が多い。とにかく払いながら歩くが、時折払い漏れたやつが顔に張り付く。ときどき薮が足に触れ、顔をしかめながらしばらく登ると、左手に別れて上がって行くわずかな踏み跡があったので辿ると法経塔山の山頂に出た。法経塔山の山頂は遠くからでもそれとわかる、マテバシイの大木の樹冠になっており、立派な石塔がある。展望はなく大樹の下の暗い広場だ。しばらく休憩する。

2.御殿山へ

法経塔山から稜線を経ての御殿山への道は、ガイドブックによると荒れているとある。頭の中で薮の責め苦が再燃する。とにかく御殿山の方向へねらいを定めて少し進んでみるが、薮は深まるばかりで踏み跡がない。薮は茨の蔓やアザミなど結構混ざっており、容赦なく日焼けしてヒリヒリしている足を攻めつけてくる。とにかく痛みに耐えかねて叫びたくなるくらいの攻撃だ。どうもこの道ではないようなので、法経塔山の山頂まで戻ることにするが、ほんの20メートルくらい戻るだけなのに、茨の責め苦に難渋し、ついにはぽっかり空いている穴に膝まで落ちてしまう始末。もういや!という感じである。這々の体で山頂に逃げ戻り、ひょっとして、法経塔山の山頂に分かれて登ってきたところから直進するのが正解ではないかと思い、もときた道を少しおりて分岐から御殿山の方向に進む。今度はちゃんとした踏み跡があり、これが正解だった。
最初はちゃんとした踏み跡だったが、だんだん倒木で道が被されたり、薮に覆われたりするようになってきた。そうなると、いずれにしろ茨の責め苦は容赦なく襲ってくるのである。こんな状態から少しでも脱しようと、まずタオルで左足の膝から下を縛って覆い、右足の露出部全部を予備のTシャツで覆った。それで少し進むが今度は、唯一露出している左足の膝から上が攻められるので着替えに持ってきたパンツまで総動員してガードした。これでいくらか楽になった。布を通り越してチクリと刺される程度で引っかかれないし、ススキで傷つけられることはなくなった。道は踏み跡程度で、5メートル平穏な所を歩けば、5メートル薮を歩くの繰り返し、タオルはしっかり足を守っているが、Tシャツとパンツは一度薮を通過する度にずり落ちてしまって結び直さなければいけない。それを繰り返しながらコースタイム20分のところを倍以上かかって薮っぽい車道にでた。ガイドブックによるとさらに稜線を進むようになっているが、これ以上この状態で歩きたくないので、一旦林道にでて正規のハイキングコースの入り口へまわることにする。薮に覆われた車道を少し下ると林道に出た。トイレがあり、車を止める広いスペースもある。ここまで車で問題なく上がってこれるようだ。林道を少し進むと御殿山の正規の登山口に着いた。
ここからは遊歩道のように整備された道になり、薮対策の足ガードをとっても安心して歩ける道である。階段を登ると、すぐに再び稜線にでて、本来歩くつもりであった法経塔山からの踏み跡と合流し、広々と整備された稜線歩きとなる。こんなにちゃんと道を整備してくれる人に頭が下がる思いだ。途中開けた所から、伊予ヶ岳や富山がよく見える。また反対側に御殿山の特徴ある姿がせまってくる。御殿山は頂上がマテバシイの樹冠になっており、遠望すると乳首のようなのである。このあたりはセミが多いのか、時折体に飛んできたセミがぶつかるほどだった。階段の急登を一登りしベンチのあるピークへ。今の時期、薮が育っているため展望はあまりよくない。ベンチに座って、足ガードにつかったTシャツとパンツとタオルについた、衣服に付く草の種を取る。タオルにはさすがにつきやすくビッシリついてしまったが、取ろうとすると糸も一緒に取れてしまい、ついにオシャカにせざるをえないという結論に至った。
御殿山へは大きく一旦下ったあと、再び階段の急登を登りかえす。帰りも同じ道を通らないといけないだけにつらいところだ。急登を登り切ると緩やかな登りになり、両側に植えられた椿のトンネルを行くようになるとまもなく山頂に到着。明るい伸びやかな山頂で、2つの石の祠と、三等三角点がある。そしてなんといっても圧巻は5本のシイの木だ。5つを併せて大きな丸い山頂を作っている。展望は鴨川の海と、伊予ヶ岳や富山がやはり特徴があり、また近いのではっきり見える。頂上付近にあるあずま屋でのんびり休憩する。

3.下山

帰路はもときた道を戻る。アップダウンを忠実にもどり、途中から、法経塔山から繋がる尾根を展望し、また御殿山をじっくり見て満足感を得ながら、林道に降りる。あとは蝉時雨のなか林道をゆっくりと下った。



今の時期低山ハイクで薮装備をしていなかったのは失敗でした。長袖長ズボン手袋装備なら簡単に通過できた道だと思います。おまけに、日焼けしていたために、2重の苦しみでした。
でも、御殿山自体はのびのびしたいい山です。お手軽なヒルウォーク、冬の日溜まりハイクなど、是非お勧めの山です。