日野山

794.5m
山域:南条山地
2003.3.21.



久しぶりに週末の出張があったので、遠くの山に登りました。最近、福井の方を訪ねることが多いので、一度越前の里山に親しんでみたいと思っていたところでした。
日野山は、越前富士の名もあり、紫式部も歌の詠んだといわれる名山で、確かにそう思って見ると、ひときわ風格のある形をしていました。そして登ってみると、素晴らしい展望が待っていました。

始発電車で王子保駅で降りたのは一人だけでした。駅前から真っ直ぐ伸びる道を辿ると、雪解け水を湛える日野川を渡り、中平吹の集落へと入っていきます。田園の夜明けの空気は冷たく、草花にも白く霜がついていました。日野山登山口の看板に導かれて進むと、広い境内のある日野神社につきました。
境内の左奥の方から登山道が伸びていました。使われなくなった林道といった感じの少し広い道で、とりあえず普通の靴のまま歩いて行きます。暗い感じの堰堤に沿った道ですが、路傍に今年始めてのスミレを見るとこができました。
しばらく登って行くと、細い道が右に別れました。古道と看板があるので、面白そうなのでそちらを選んでみます。落ち葉の積もる細道で、路面は泥が固まったような感じなので、凍結と溶解を繰り返しているのでしょう。広い道と何度か交わりますが、入り口の土ののり面には、縄ばしごが掛けられているのには驚きました。広い道と交わる度に、看板が古道2・3・4と番号が上がって行きます。最初は、区間も長かったのですが、だんだん短くなり、煩わしいので5は見送りました。その先で立派な、舗装路と合流し、これから先の雪の出現に備え、登山靴に履き替えました。そして、再び登山道に入ると、程なく立派な休憩舎と仏像のある、室堂につきました。
登山道は日野神社を出て以来、1000mおきに王子保小児童会作成の看板が残りの距離を示しています。それぞれ工夫をこらした絵がかかれており、大変ほほえましく、また励みになります。古道を通ってきたので、途中の看板や、焼餅岩、弁慶の三枚切りなどを通過してしまったのは、ちょっと残念でした。
室堂を過ぎるとやがて残り1000mを切るのですが、看板が50mおきになりました。こうなると、どんどん次のものが現れてくるという感じになります。雑木林の中を、看板を励みに登っていくと、何度か目の車道の横断があって、小比丘尼ころがしになりました。比丘尼ころがしとは、女人禁制時代に登ろうとした尼僧が神の怒りにあい転落したということだそうですが、一枚岩の露出した道にうっすらと土が乗って、確かに滑りやすくなっています。小比丘尼ころがしの次は、大比丘尼ころがしです。こちらは幾分傾斜は緩いものの、長く続きます。そして途中から雪が現れ、ついに締まった雪上歩行となりました。
比丘尼ころがしが終われば最後の登りで、雪を踏みしてていくと、程なく山頂広場の一角に出ます。雪がおかげで、すっかり低くなった鳥居をくぐり、山頂の立派な奥社まで登りました。そして、奥社の広場から見る風景は、しばらく忘れていたような、素晴らしい風景でした。
日野山はこのあたりでは突出した高さなので、周囲の山が良く展望できます。奥社からは白銀の両白山地がぐるりと一望でした。富士写ヶ岳・大日山と立ち上がった稜線は、雄大な加賀白山、どっしりした部子山とその奥に見える荒島岳、姥ヶ岳から能郷白山、その横には特徴的な冠山と並んでいます。あまりの美しさに言葉もありません。
奥社からさらに行者碑のある広場に向かうと、ここからは、三周ヶ岳など、琵琶湖岸の領域の山が連なります。日本海の方向には、意外と目立つホノケ山の向こうに西方ヶ岳、その奥に野坂岳が見えています。全くまたとない天候に恵まれたという感じで、山頂に腰を下ろし、しばらく展望を楽しみました。
下山は萱谷を目指します。山頂からはしばらく急な下降が続きます。ロープは所々にありますが、雪のついた岩の急斜面で、いやな所です。木につかまり慎重におりているので、顔を上げれば白山を見ながらということになるかと思いますが、とてもその余裕はありません。やっと急斜面を下りきると荒谷分岐となり、ほっとするところで、少し休憩しました。
あとは所々急にはなりますが、落葉樹の楽しい道が続きます。イワウチワの葉がたくさん出てきていますが、もちろん花にはまだまだ早いようです。少し気温が上がり、泥に足をとられるようになった道を下ると、宮谷への分岐となります。ここからは少し掘れたような道になりますが、その傍らに今年初めてショウジョウバカマを見つけました。しばらく見ていなかった様な気もしますし、ついに春がきたという実感があって、とても楽しくなりました。ショウジョウバカマはここから先点々と咲いており、久しぶりの花を楽しむ山歩きです。普段は下りは登りほど楽しめないのですが、この道は下りも登りと同様楽しめるいいコースでした。
やがて、緩やかな道となり、萱谷の登山口にでました。ここで装備を解き、電話でバスの時刻を確認したあと、なんとも、のんびりとした田園風景の中を、春の日を浴びて味真野のバス停へと歩いて行きました。

味真野のバス停ですが、市民バスの味真野町というのが別にあり、時刻も全く違うので、ちょっと混乱しました。しばらく右往左往して歩き回ったあと、福鉄バスの東運動公園前のバス停に出ましたが、注意が必要です。
さて、久しぶりに納得の展望の山に登った気がします。これだけ白銀の山がずらっと並ぶ山は久しぶりでした。ショウジョウバカマもまた随分久しぶりです。やはり春の花はきれいです。今回は両白山地の山々を見て、行ってみたい山が、一気に沢山増えてしまったのでした。なかなか行けないのですがね。

本文中の写真

  • 鯖江市街から見る日野山
  • スミレと、王子保小学校の看板
  • 山頂の日野神社奥社
  • 山頂からの白山の展望
  • 荒谷分岐付近の雑木林
  • ショウジョウバカマ



  • 記録

    日 程

    2003年3月21日(金)

    天 候

    晴れ

    コース

    0615 王子保駅 → 0645 日野神社 → 0740 室堂 → 0830/0920 日野山山頂 → 0935/40 荒谷分岐 → 1010 宮谷分岐 → 1045/55 萱谷登山口 → 1130 東運動公園前バス停

    帰路の稜線で、日野山山頂部を振り返る


    参考図書・地図 その他のコース
    分県ガイド 福井県の山
    アルペンガイド 白山と北陸の山
    25000図 
    50000図 
    主要なコースは、 平吹コース(本文登り)
    西谷コース・荒谷コース・宮谷コース・萱谷コース(本文下り)
    牧谷(牧谷峠経由)コース
    があります。
    西谷〜萱谷の4コースは途中で合流します。
    バス
    武生新〜味真野・越前の里のバスが、西谷〜萱谷の4コースで利用できます。
    時刻は、福井鉄道バス 武生営業所 0778-21-0712