和名倉山

 和名倉山 2036.2m 西仙波 1983m 東仙波 2003.2m
 焼小屋ノ頭 1990m
 山域:奥秩父

記録
 山行日2014年5月25日(日)
 ルート将監小屋→山の神土→東仙波→和名倉山(往復)→三ノ瀬
 コースタイム0518 将監小屋 → 0526 将監峠 → 0545 山の神土 → 0633/42 仙波のタル → 0654 西仙波 → 0712/24 東仙波 → 0824 川又分岐 → 0835/57 川又分岐上の広場 → 0901 二瀬分岐 → 0918/27 和名倉山 → 0941 二瀬分岐 → 0950 八百平 → 1040/1115 焼小屋ノ頭 → 1130 東仙波 → 1146 西仙波 → 1158 仙波のタル → 1237 山ノ神土 → 1251 将監峠 → 1257 将監小屋<テント撤収>
1329 将監小屋 → 1448 三ノ瀬民宿みはらし
 天候晴れ時々曇り

和名倉山は地図の大きなスペースを占めている割に道が無く、登山地図の中の空白地帯みたいに思えるので、非常に興味を惹かれるのです。かつては奥秩父らしい黒木の森だったものが、皆伐と山火事で今の姿になったとのことですが、それはそれとして、いつか登りたい山でありました。道の無い困難な山という印象が強かったのですが、今や人気の山になっているようです。

1.将監小屋〜東仙波

空が明るくなり、周囲のテントから出発の準備をする音が聞えてきました。さて、予定通り和名倉山に行くべきか、昨日の疲れも残っているし、思案のしどころじゃのぅ…と御着の殿様状態になっている場合ではないのです。行かなければ後悔するに決まっています。と、もう少しゆっくりしたい気持ちを奮い立たせ、準備をして出発しました。
昨日も歩いた将監峠への道を登り、緩やかな笹原の奥秩父縦走路を山の神土まで登っていきます。このあたりは縦走路の中でも屈指の伸びやかなところです。山の神土から道標に導かれ、和名倉山への道に入ると、道幅は狭くなりますが、笹原を分ける歩き易い道が続きます。唐松尾山の東端の尾根を回り込むように続く樹林帯を抜けると、リンノ峰との鞍部に出るあたりで景色は一気に開け、笹の草原の谷間越しに進む方向に道が続いているのが見えてきます。とても爽快な風景です。
小ピークの山頂を巻いて過ぎたあと、再び鞍部に降りてリンノ峰の北西面の巻き道に入りました。この部分は細かいアップダウンや倒木が多く、足元も悪く歩きづらいのです。斜面には針葉樹林の若木が密生しています。コメツガなのか、シラビソなのか、自然の植生が回復しつつあるのでしょうか。この巻き道を抜け小さな鞍部で、かなり疲れを感じたので休憩としました。場所は仙波ノタルだと推測します。地図をみるとすでにかなりの距離を歩いてきたのが判りました。それでは、多少疲れを感じても悲観することは無いでしょうと言い聞かせました。
仙波ノタルで休憩していると、後から来る人たちが目の前の西仙波への道を登って行きます。なかなかしっかりした傾斜のある登りのようです。私も思い腰を上げ、西仙波の山頂の一角に登り上げていきました。稜線は暗い常緑樹主体で、やがてシャクナゲの木が出てきました。小さなアップダウンを繰り返し、明るい岩のピークである西仙波に到着。仙波ノタルから近いと思っていましたが、意外と距離がありました。山頂の一角にシャクナゲが花がだいぶ開いていて、最近の好天に一気に開花へと向うのかなと思いました。
東仙波に向けての稜線は、シャクナゲがトンネル状になっているところもあり、やはり奥秩父の一角にいるのだと改めて感じます。稜線は一旦下降し、正面に見えている東仙波に登るようになります。このあたりは大きく開けているので、和名倉山までの稜線が見渡せました。高度差こそあまりありませんが、幾つかアップダウンがあり、これが往復で効いて来るわけで、先が思いやられるところです。そして、一旦下ってゆっくりと登り返し、南面が笹原になっている東仙波の三角点のある山頂に到着です。

2.いざ和名倉山へ

東仙波で、これからの行程を復習。コースタイム的にも1時間強で和名倉山直下の八百平まで行けることを再確認し、先を考えず今を歩くことに徹することと思い直します。東仙波からは樹林の中を急下降して、なだらかに焼小屋ノ頭へと登り返していきます。このあたりは、広々とした感じですがちょっと荒れた感じにも見えました。焼小屋ノ頭を通過し、何回かの小さな急下降で再び鞍部に下りました。地図では吹上とありますが、名前からするとこんな地形かな?という感じの鞍部でした。次のピークは吹上ノ頭ですが、どうも道は巻いているようでした。
ここからも稜線上を緩やかにアップダウンしていきますが、尾根上には付かず離れずで、道は水平にちかく、或いは少し下り基調かと感じるくらいのイメージでした。途中には茶色いチャートの露岩あり、苔むした倒木や切り株あり、コバイケイソウの芽吹きありと次々と風景も変わり、展望が無い中で現在地が特定しにくい歩きではありますが、深い山中を歩く醍醐味を味わうことができました。
道は小さなアップダウンで進み、いつしか鞍部から緩やかにしかし連続的に登るようになっていました。もう、和名倉山への登りに入ったのか?と半信半疑でしたが、川又分岐の標識があり、八百平を越えたことを確信しました。川又分岐から少し登ったところの、焚き火の跡のある広い平地で、久しぶりに休憩とし、最後の登りに備えました。
さらに樹林の中の登りを行くと、二瀬分岐が現れました。ここには埼玉県警山岳救助隊の面白い張り紙があります。道は右に折れて少し下ったのち、見通しのいい植林地を過ぎ、さらに唐松の植林地を登っていくと、荒地にダケカンバが生える山火事跡といわれる平地に出ます。そして、ここから暗い森に分け入り、束の間奥秩父の雰囲気に浸ると静かな森の中の山頂に到着しました。先行の単独の方と会話をしていると、10人くらいの団体さんが到着しました。

3.そして下山へ

団体さんが到着したのを潮に和名倉山を発ち、もと来た道を戻ります。まずは八百平まで下り、東仙波までの登りにかかります。和名倉山と東仙波ではそれほど標高が違うわけではないので、こういった感じになるわけです。同じコースを逆から辿ると多少感じ方も変わるもので、そういったことも楽しみです。行きとは逆で、若干登り基調にも感じました。吹上から断続的な急登をこなし、登りついた焼小屋ノ頭で、東仙波の登りに備え大休止としました。
東仙波へは急坂ですが、それほど距離が長い訳ではありません。行きではそれほど意識しませんでしたが、山並みを眺めるにつけ、東仙波のもう一つ先のカバアノ頭が目に付きました。東仙波同様、あちらも気持ちよさそうな笹原のピークです。東仙波から西仙波へと登り返し、再びシャクナゲを愛でたあと、下ってリンノ峰の巻きに入りました。ここはこの先の気持の良い明るい笹の道を思い描いて、我慢して通過します。巻き終わってさらに小ピークを登って越えますが、この部分は忘れていたので、予想外で少々汗をかきました。
明るい笹の道に入り、あとは緩やかにアップダウンしながら唐松尾山の尾根を回りこんで山の神土へ向かいます。だいぶ足に疲れが溜まり、痛みを訴えていますが、更には、歩きづらいところは無いので、そのまま進み、将監峠を経て将監小屋に辿りつきました。もうテン場にテントは殆ど残っておらず、とりあえず撤収作業を行い、再び荷物を一つにまとめました。
後は再び重くなった荷物を背負い、未舗装の車道を三ノ瀬に向けて下ります。下るほどに何となく気温が上がってくるような気がしてきます。はじめは順調でしたが、足の裏の痛みが増してきました。軽いトレッキングシューズだと、重荷に耐えられないというのも原因かもしれないと思ったりします。痛くなった上に、下るほど傾斜がきついという状況も厳しいのです。もう我慢の限界だと思う頃、やっと車道に出て駐車した民宿みはらしに向いました。

この日和名倉山に登った人は20人を越えているでしょうか。かつては地図では山の神土からの往復のみ。それも難路とあったのが、一般コースとなり、川又や二瀬からも破線ながらも地図に記入されるようになったようです。以前にも増して登山ブームではあるのですが、この山は人気急上昇であることを感じました。
二瀬分岐にあった埼玉県警の張り紙は、

 
 ここまで来ていまさらですが…
 家族に伝えたか?
 登山先不明の行方不明事案が散発!!
 登山先を「メモ」で家に残すこと!
  (今さらなんで、次回から心がけること)
 道に迷ったら引き返せ(沢に降りるな!)
  (沢に降りると滝があって進退できなくなるぞ)  

というものでした。この山の中にこれを張るのはなんとなく判るような気がします…。

本文中の写真

  • リンノ峰付近の笹の草原
  • 西仙波に咲くシャクナゲ
  • 東仙波へ向う
  • 東仙波から西仙波の尾根の向こうに唐松尾山
  • 八百平へ向う道での苔むした切り株
  • 焼小屋ノ頭から東仙波・西仙波
  • テントの待つ将監小屋に下る

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
    エアリアマップ 奥秩父1(1992年版)
    25000図 雁坂峠 雲取山
    50000図 三峰

    和名倉山山頂付近の樹林
    その他のコース
     将監峠
      ・三ノ瀬〜七ツ石尾根〜将監峠
     和名倉山(いずれも不明瞭で熟達者向け)
      ・二瀬〜和名倉山
      ・川又〜和名倉山
      ・大洞川〜仁田小屋尾根〜和名倉山
    交通機関
    塩山駅から、一ノ瀬高原の入口である「落合」まで、季節運行で路線があります。
    詳細時刻は、山梨交通をご参照下さい。