鳳凰三山

 観音岳 2840.4m 薬師岳 2780m 地蔵岳 2764m
 山域:南アルプス

記録
 山行日1996年7月6日(土)
 ルート青木鉱泉→中道→薬師岳→観音岳→地蔵岳→鳳凰小屋→青木鉱泉
 コースタイム0415 青木鉱泉→0455中道登山口→0815/0830御座石→0950/1005薬師岳→1035/1110観音岳→1216アカヌケ沢の頭→1226地蔵岳→1255/1320鳳凰小屋→1345五色滝→1405/1415白糸滝→1515/1530南精進滝入り口→1700青木鉱泉
 天候快晴

梅雨明けも近づきいた頃、夏山シーズンへ向けて久しぶりにロングコースを歩いてみたいという願望があり、鳳凰三山に出かけた。鳳凰三山は南アルプスの展望台・南アルプス入門の山などと言われており、ちょっと格下のイメージをもっていたが、実際は立派な大きな山で歩きがいもあり地蔵岳のオベリスクをはじめ見所も多く、麓からも見え親しまれている第一級の山であった。

朝4時、明るくなった山々を眺めながら青木鉱泉を出発する。「薬師ヶ岳」の道標に導かれつつドンドコ沢を渡り堰堤を越えて河原を歩くとやがてドンドコ沢登山道を分け林道に出る。林道は小武川に沿っていて、堰堤工事が連続するのを見ながら歩く。だんだん空の色が本当に青くなってくる。4時55分中道登山口に到着。さて山道だ。
登山口から、ジグザグの密林の中を順調に登る。急登ではないが緩むことはなく確実に高度を稼ぐ。木のとぎれた場所から八ヶ岳の全貌が展望できた。息が切れたところで車道に出る。
再び山道に入り、カラマツ林を緩やかに登っていく。平坦になることなく確実に登る道だ。右の樹林が時折切れるがそこから遥かかなたに今日の最終目的地である地蔵のオベリスクが見えた。道は新緑美しいダケカンバ林に変わるがすぐカラマツに戻る。しばらくして道は平らな笹原と点在するダケカンバの明るい場所に出る。ここで鳳凰三山がその全貌を表した。見上げる三山は遥か頭上高くに聳え、先の長いことを思い知らされる。
今度は密集したシラビソの針葉樹林帯にはいる。暗くジメジメした道で森の香りが強くなってくる。暗い樹林帯の中は急登の連続であり、それが長く続く。かなり登ったのちやっと登山道脇に御座石が出現した。さてここから1時間半、一息入れる。
相変わらずコメツガの急登が続くが、それでもだんだん道が明るくなってくる。左が開けた所から千頭星山を前景とした富士山が見えた。ダケカンバの樹林にかわり明るくなると正面に薬師岳が大きく見えてきた。大きく立ちはだかる薬師への登りは胸をつく急登になる。しかしもう目標が見えてからの急登は苦ではない。ついに花崗岩の白砂とハイマツの道になり、巨岩がバラバラと配置された山頂部に入っていく。一際高い所に向けて登ると薬師岳山頂の看板があった。
なんといっても鳳凰三山からの展望といえば白峰三山だ。正面から北岳と向かい合い、大樺沢は右俣も左俣の雪渓が良くわかる。まっすぐ目の前に池山尾根が延びてきており、そこに飛び移ることができればそのまま北岳まで行ってしまえそうだ。左に間ノ岳・農鳥岳その奥に塩見岳。右の方を見れば仙丈岳とその奥の中央アルプスの峰々である。晴れた空のもとすべてが手に取る様にみえる。
観音岳方面に向かう。今日は見事に人が誰もいない。こんないい条件の晴天の土曜日に絶景の山頂を独り占めするのは、すごいことではないかと思う。薬師から左手に白峰三山、右手に富士山を見ながらの白砂の展望の稜線の縦走である。贅沢このうえない。観音岳は大きな岩の積み上がった頂上で一つの平らな岩の上でゆっくり休むこととする。
観音岳まで来ると甲斐駒ヶ岳が出現する。ここから見る甲斐駒は他の南アルプスの山々とは違って一人異彩を放つ岩山である。甲斐駒の向こうには北から南へズラっと、北アルプスの頂上部のまだ白い稜線が延々と延びている。
再び南アルプスの山々をゆっくりと眺める。北岳は大樺沢の雪渓によってきりっと襟元をただした二枚目で、間ノ岳はその後ろでデンと控える親分、農鳥岳は二つのピークを突き出したお調子者という感じ。仙丈岳は両翼を大きく張り出し中心に大きなカールを持つ優雅な山で、甲斐駒は一番北にあって孤独に連峰を衛っている司令官というところだろうか。しばらく腰を落ちつけてのんびりする。いつまでも見飽きない光景だ。
観音岳からアカヌケ沢ノ頭の鞍部までは大きく下る。観音岳からの下りで踏み跡がハイマツやタケカンバ帯の中に紛れ込んで結構歩きにくい道になったので、変だなあと思っていたら、程なく砂礫の道と合流した。結局かなり下ってじっくり登るという行程を経てアカヌケ沢ノ頭に着くが、この間の鞍部の松は強風が通り抜ける地帯に生えている為か白峰側から甲府盆地側に向かって、どれも奇妙に折れ曲がって育っている。アカヌケ沢ノ頭も岩がゴロゴロしており、さらに高嶺・アサヨ峰へと道が続いている。地蔵のオベリスクが大迫力で迫ってきた。地蔵のオベリスク、これは大きく鳳凰三山の象徴である。砂の道を下って賽の河原まで降りてみて見上げるてみる。穂先の岩の基部までは一筋の足がかりの多い帯があるので登れそうだ。穂先へは....ちょっと難しい。見ているうちに、何となくこれは登る対象ではなくて、見る対象だなあと納得してしまった。単に登るだけの気力がもう残っていなかったといえばそれまでなのであるが....
鳳凰小屋へは砂の急下降のあと樹林帯に入り、小沢を渡って到着。ゆっくり荷物をおろして水をいただく。3時間くらいだよと小屋番さんに言われ、ドンドコ沢登山道を下りはじめた。
道はすぐに花崗岩の沢の広い河原に出る。花崗岩の沢は明るく水がとてもきれいに見えて大好きだ。その後樹林帯を急下降する様になる。ずいぶん下ったなあと思う頃、五色滝に到着。落差の大きい立派な滝である。しかし、ドンドコ沢登山道は急峻な沢に沿って降りる道だけあって結構な急下降だ。あるときは急下降し、あるときは尾根を横切り小沢を横切りしていく道は延々と続き、時おり道が崩壊して高巻いていたりする。白糸滝も落差の大きい滝だが滝の美しさという点では少し劣るかも。鳳凰の滝への分岐はやり過ごし、南精進滝の見える場所で滝を眺める。2段になった滝は中段の岩に大穴をあけた様な滝壷も美しい。
だんだん岩の出た道からおだやかな道になり、小尾根の斜面を歩く道からジグザグに斜面を下ると、ほとんど下り切ったような気がしてくる。もうそろそろかなあと考えつつ歩いていくと看板があり、「これより山側の道経由で80分・川沿の道経由で40分」とある。まだまだ長い。ドンドコ沢の河原に降りいくつか堰堤を越える。やがて、登りの時に通った道に合流し青木鉱泉の庭に疲れ切ってたどり着いた。
日帰りの駆け足山行ではあったが、南アルプスの大きなスケールと深い森を存分に体験した一日であった。これをステップとして、南アルプスの山々にどんどん挑戦していきたいと思った。

本文中の写真

  • 中道登山道より八ヶ岳
  • 北岳・間ノ岳(薬師岳より)
  • 観音岳(薬師岳より)
  • 仙丈岳(観音岳より)

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド 北岳・甲斐駒・仙丈(1996年5月改訂3刷)
    エアリアマップ 甲斐駒・北岳(1995年版)
    25000図 鳳凰山
    50000図 韮崎

    地蔵のオベリスク
    その他のコース
    夜叉神峠から薬師岳
    青木鉱泉〜千頭星山〜辻山〜薬師岳
    御座石鉱泉〜鳳凰小屋〜地蔵岳
    広河原〜白鳳峠〜地蔵岳
    交通機関
    韮崎駅から御座石鉱泉経由青木鉱泉までGW及び夏季に登山バスが運行されています。
    山梨中央交通でご確認下さい。
    甲府駅から夜叉神峠、広河原へ夏季にバスが運行されます。
    山梨交通でご確認下さい。


    Nifty FYAMA 投稿文

    鳳凰三山で夏山スタート

    梅雨明けも近づき夏山のシーズンになりつつあります。ここのところずっと2時間程度で頂上に立てるコースばかり歩いているので、そろそろ長い登りのあるコースを歩きたいと考えて、以前から鳳凰三山の計画をたてていたのですが、金曜日会社から帰って天気予報を聞くと土曜日が晴れ日曜日が曇り時々雨とのこと。土曜出発にすれば、途中でばてても小屋に転がり込めばいいので用意をして出かけました。
    御陰様で土曜はこの時期珍しいほどの快晴、人も少なく充実した歩行と白峰三山の最高の展望を楽しみました。ただ今回は登ることにあまりにも意識を向けすぎた為か、その後が結構いい加減に流れてしまったような気もします。長い時間登れば長い下りが待っているというのは考えてみれば当たり前のことでした....

    【日 程】96年7月6日(土)
    【目 的】鳳凰三山(1996年15回目)
    【天 候】快晴
    【コース】0415 青木鉱泉→0455中道登山口→0815/0830御座石→0950/1005薬師岳
         →1035/1110観音岳→1216アカヌケ沢の頭→1226地蔵岳→1255/1320鳳凰小屋
         →1345五色滝→1405/1415白糸滝→1515/1530南精進滝入り口→1700青木鉱泉
    【山 名】薬師岳 2780m 観音岳 2840.4m アカヌケ沢ノ頭 2750m 地蔵岳 2764m
    【メンバー 】単独
    【山 域】南アルプス
    【参考書】ヤマケイ・アルペンガイド北岳・甲斐駒・仙丈
         昭文社・エリアマップ甲斐駒・北岳
    1.登山口まで(千葉〜青木鉱泉)

    金曜の夜、千葉は雨まじりの強風で会社から帰りつつ今週はダメかなと思っていた。しかし天気予報を聞いてみると、土曜日は朝のうち曇りで後晴れとのこと、昨日聞いた時は午前中は雨で午後から晴れだったので、少し早くなっている。これはよい兆しである。ちなみに日曜日は雨。これは今すぐ出かけるしかない!ということでさっそく準備をして(といっても、着替えと温泉セットと雨具にランプ程度)食料をコンビニで買い込み22時出発。順調で青木鉱泉には1時半に着き、駐車場で仮眠する。

    2.薬師岳へ

    朝4時、明るくなった山々を眺める。今日は期待に違わず快晴である。こんな透きとった空を山で迎えるのはずいぶん久しぶりの様な気がする。4時15分青木鉱泉から「薬師ヶ岳」の道標に導かれつつドンドコ沢を渡り、堰堤を越えて河原を歩くとやがてドンドコ沢登山道を分け林道に出る。林道は小武川に沿っていて堰堤工事が連続するのを見ながら歩く。だんだん空の色が本当に青くなってくる。4時55分中道登山口に到着。さて山道だ。
    ・04:55〜05:35 (登山口〜車道)
    登山口には看板があり「中道コースは急登が連続し体力の無い方には不向きです」とある。体力の無い人って私のこと?
    さて、ジグザグの密林の中を順調に登る。傾斜は急過ぎはしないが緩むことはない。とにかく確実に高度を稼ぐ。一カ所木のとぎれた場所から八ヶ岳の全貌が展望できた。道に笹薮が覆い被さっている場所があり、全身びしょぬれになってしまう(ー_ー;)。そろそろ息が切れてきたころ車道に出る。休憩。
    ・05:45〜06:18 (御座石を目指せ・・・1)
    先は長いのでマイペースつまり「30分歩いて10分休憩」でここから歩くことにする。御座石までは登山口からコースタイムで3時間。車道からでは、4〜5回で着くことになるであろうとの勘定である。カラマツ林を緩やかに登っていく。平坦になることはなく、確実に登る道だ。右の樹林が時折切れるがそこから遥かかなたに今日の最終目的地である、地蔵のオベリスクが見えた。見えると少し安心する。道は新緑美しいダケカンバ林に変わるがすぐカラマツに戻る。休憩。
    ・06:25〜06:57 (御座石を目指せ・・・2)
    左側が開けたところからは、千頭星からの尾根が見えた。しばらくして、道は平らな笹原と点在するダケカンバの明るい場所に出る。ここで鳳凰三山がその全貌を表した。見上げる三山は遥か頭上高くに聳え、先の長いことを思い知らされる。三山を見上げながら呆然と歩いていると倒木に引っかかり頭から笹薮の中にもんどりうってコケてしまう(T_T)。
    今度は密集したシラビソの針葉樹林帯にはいる。暗くジメジメした道で森の香りが強くなってくる。休憩。
    ・07:05〜07:35 (御座石を目指せ・・・3)
    暗い樹林帯の中の急登の連続である。ときどき立ち止まって息を整えながらの牛歩になってしまった。岩混じりの急登を登っていくうちに先のことをあれこれ考える。砂払岳にちょっと寄って行くにはや〜めた、とか地蔵のオベリスクの基部まで這いあがるのもやめトコ、とか....情けない....(^^;;。状況変わらず、休憩。
    ・07:50〜08:15 (御座石を目指せ・・・4)
    少し道が明るくなり、林がまばらになる。そこそこ大きな岩があったので、これが御座石かなあと思って期待し、カメラもザックから出して首にかけ、少し解放された気分。でも時間的には怪しい....案の定しばらく行くと再び暗い針葉樹林に逆戻り。途中小広場には、空き缶やらなんやらゴミがたくさん放置されている。とんでもない人がいるものだ。下ってくる単独の青年に出会う。今日初めて会った人だ。
    暗い樹林を行くうちに登山道脇にやっと本物の御座石が出現。大きな岩だ。ここで一息。ここからは1時間半の登りなので、いつもの低山ハイクと同じポジション立った訳である。
    ・08:30〜09:00 (薬師岳へ・・・1)
    この間、相変わらずコメツガの急登が続く。特になにも状況変わらず休憩。
    ・09:10〜09:40 (薬師岳へ・・・2)
    だんだん、道が明るくなってくる。今度こそ山頂に近づいてきた証拠。本物だ。
    左が開けた所から、千頭星山を前景とした富士山が見えた。富士は中腹に少し雲がかかっているもののはっきりと見える。ダケカンバの樹林にかわり明るくなると、正面に薬師岳が大きく見えてきた。大きく立ちはだかる薬師への登りは胸をつく急登になる。しかしもう目標が見えてからの急登はそれほど苦ではない。
    ついに、花崗岩の白砂とハイマツの道になり、巨岩がバラバラと配置された、山頂部に入っていく。ここで平らな岩のうえに胡座をかき八ヶ岳や秩父の山々を正面に見ながら休憩。時間も遅くなってきたので山の中腹からどんどん水蒸気が上がっていっている。
    ・09:45〜09:50 (薬師岳へ・・・3)
    岩の間を少し登り、ウロウロしているとどうやら広い山頂に入っているようだ一際高い所に向けて登ると薬師岳山頂の看板があった。青木鉱泉より5時間半の歩きはここで成就したことになる。考えようによっては、このコースは鳳凰三山に登るには結構登りやすいコースかもしれない。ただひたすら登るだけで、登ったり下ったりのある沢コースよりは楽な様な気がする。しかし、ただひたすら登るだけである。
    今回の登りで、忘れかけていた頂上に立った時の感動を思い出した。快晴の日、絶好の展望、暑くもなく寒くもない気温、誰一人いない白砂の広い山頂、そして長い登りの後の開放感、すべて条件が整ったのだ。

    3.薬師岳〜地蔵岳

    ・薬師岳山頂
    なんといっても鳳凰三山からの展望といえば白峰三山である。正面から北岳と向かい合っている。大樺沢は右俣も左俣も雪渓となっている。まっすぐ目の前には池山尾根が延びてきており、そこに飛び移ることができれば、そのまま北岳まで行ってしまえそうだ。左に間ノ岳・農鳥岳、その奥に塩見岳。右の方を見れば仙丈岳と、その奥の中央アルプスの峰々である。晴れた空のもと、すべてが手に取る様にみえる。
    最初予定していた砂払岳を見てみたが、とりあえずパスして観音岳方面に向かうことにする。しかし、今日は見事に人が誰もいない。薬師や南御室に泊まった方はもう過ぎたあとなのであろうか。こんないい条件の晴天の土曜日に絶景の山頂を独り占めなのである。すごいことではないだろうかと思う。
    ・観音岳山頂
    薬師から白砂の稜線を歩く。左手に白峰三山、右手に富士山を見ながらの展望の中の縦走である。贅沢このうえない。観音岳は大きな岩の積み上がった頂上で一つの平らな岩の上にゴロンとなりゆっくり休むこととする。観音岳まで来ると甲斐駒ヶ岳が出現する。ここから見る甲斐駒は他の南アルプスの山々とは違って一人異彩を放つ岩山である。甲斐駒の向こうには北から南へズラっと、北アルプスの頂上部のまだ白い稜線が延々と延びている。
    再び南アルプスの山々をゆっくりと眺める。北岳は大樺沢の雪渓によってきりっと襟元をただした二枚目で、間ノ岳はその後ろでデンと控える親分、農鳥岳は二つのピークを突き出したお調子者という感じ。仙丈岳は両翼を大きく張り出し中心に大きなカールを持つ優雅な山で、甲斐駒は一番北にあって孤独に連峰を衛っている司令官というところだろうか。
    しばらく腰を落ちつけてのんびりする。いつまでも見飽きない光景だ。
    ・地蔵岳へ
    観音岳からアカヌケ沢ノ頭の鞍部までは大きく下る。下る途中で今日2人目の単独行の人とすれ違う。それほどまでに人が少ない。観音岳からの下りで踏み跡がハイマツやタケカンバ帯の中に紛れ込んで結構歩きにくい道になったので、変だなあと思っていたら、程なく砂礫の道と合流した。結局いやという程下ってじっくり登るという行程を経てアカヌケ沢ノ頭に着くが、この間の鞍部の松は強風が通り抜ける地帯に生えている為か白峰側から甲府盆地側に向かって、どれも奇妙に折れ曲がって育っている。
    アカヌケ沢ノ頭も岩がゴロゴロしており、さらに高嶺・アサヨ峰へと道が続いている。地蔵のオベリスクが大迫力で迫ってきた。
    地蔵のオベリスク、これは大きく鳳凰三山の象徴である。砂の道を下って賽の河原まで降りてみて見上げるてみる。穂先の岩の基部までは一筋の足がかりの多い帯があるので登れそうだ。穂先へは....ちょっと難しい。見ているうちに、何となくこれは登る対象ではなくて、見る対象だなあと納得してしまった。単に登るだけの気力がもう残っていなかったといえばそれまでなのであるが....
    というのも、最高峰の観音岳を下り始めてからすでにゆったりと青木鉱泉に入っている情景が頭の中を去来しているのである。地蔵岳に着いたころにはすでにもう今日の歩きは終わった気分になっていたのであった....

    4.鳳凰小屋へ

    鳳凰小屋へは砂の急下降のあと樹林帯に入り、小沢を渡って到着。人待ち顔な小屋番さんと通過客が一人。私もゆっくり荷物をおろして水をいただく。ビールを買って一服、もうほとんど下山したも同然の気分である。
    鳳凰小屋はいつも空いているとのこと、薬師岳山荘はピークになると超すし詰め状態になるらしい。奈良から今度50人の団体を連れてくるので下見に来ているという方が登ってくる。しばらく休憩して出発。3時間くらいだよと小屋番さんに言われたので、軽く聞いて3時間かそうかそうかと思いながらドンドコ沢登山道を下りはじめた。

    5.ドンドコ沢登山道を下る

    道はすぐに花崗岩の沢の広い河原に出る。花崗岩の沢は明るく、水がとてもきれいに見えて大好きだ。
    その後樹林帯を急下降する様になる。ずいぶん下ったなあと思う頃、五色滝に到着。落差の大きい立派な滝である。それにしてもまだ五色滝なのである。ここでやっと気がついたのである。3時間の下りとは相当な長い下りであることを。鳳凰小屋について下山した気分になっていたのは大いなる誤りであった。鳳凰小屋は青木鉱泉から5時間以上もかけて登ってくる位置にあるのである。
    このあたりから登ってくる人と時折すれ違う様になる。私の様な日帰りスタイルと違い、大きなザックを背負ったテント山行スタイルの人が多い。
    あわてて降りると膝に効いてきたのでゆっくり下山に切り替える。急峻なドンドコ沢に沿って降りる道だけあって結構な急下降である。白糸滝も落差の大きい滝だが滝の美しさという点では少し劣るかも。あるときは急下降し、あるときは尾根を横切り小沢を横切りしていく道は延々と続く。時おり道が崩壊して、高巻いていたりする。鳳凰の滝への分岐はやり過ごし、南精進滝(だと思う)の見える場所で滝を眺める。2段になった滝は中段の岩に大穴をあけた様な滝壷も美しい。南精進滝への分岐にはベンチがあり休憩。滝までは50mとのことであるが..行かない。(^^;;
    あとコースタイムで1時間半。だんだん岩の出た道からおだやかな道になりほっとする。小尾根の斜面を歩く道から、ジグザグに斜面を下ると、ほとんど下り切ったような気がしてくる。もうそろそろかなあと考えつつ歩いていくと、看板があり、「これより山側の道経由で80分・川沿の道経由で40分」とある。まだまだ長い。もう足は棒状態、足の裏が痛いぞという感じになっておりスピードは出ないのでゆっくり歩く。ドンドコ沢の河原に降り、いくつか堰堤を越える。堰堤から落ちる滝のすぐ前を横切る橋がかけてあったりして、怒涛のごとく流れる水の上を滝の飛沫をかぶりながら歩く。暑い時だと気持ちがよさそう。
    やがて、登りの時に通った道に合流し青木鉱泉の庭に疲れ切ってたどり着いたのであった。

    6.帰路
    青木鉱泉の風呂もたった一人。ゆっくりと鉱泉の中で漂う。7時ころ双葉のサービスエリアによると今日は渋滞がないみたい。雨に挟まれた土曜日で、人出がとても少なかったようだ。
    結局箱崎で少し渋滞しただけで、きわめて順調に走り9時半に帰宅。その後爆睡したことは言うまでもない。



    いざとなったら、小屋に泊まろうという日帰り山行でしたが、十分明るいうちに帰ることができました。思いもかけず、青空のもと静かで充実した一日でした。オベリスクの基部まで行ってみたいなあなんて今になって思ってますが、また次に機会があれば行ってみたいと思います。
    それにしても下りを歩くのが下手だなあとつくづく思った次第です。
    さて、夏山シーズン、次はどこにしましょうか。