堂岩山 | ![]() |
堂岩山 2051m 地蔵山 1802m |
山行日 | 1996年4月29日(月) |
ルート | 野反湖→地蔵山→堂岩山(往復) |
コースタイム | 0505 野反湖 →0650 地蔵山 →0840/0920 堂岩山 → 1035/1055 地蔵山→ 1150 野反湖 |
天候 | 快晴 |
堂岩山は、野反湖から三国峠に伸びている上信・上越国境稜線上で、三国の境である白砂山の野反湖よりにあり、夏のシーズンともなればハイカーで賑わう野反湖から白砂山に登るコースの途中にある稜線上ピークである。通過点とはいえ、2000mの標高があり、残雪の多い4月末では周囲の木も低く条件が整えば絶好の展望が楽しめる。 まだ寒い4月末の早朝、雪の上に一歩を踏み出した。明るくなっていく野反湖畔の風景。そこにあるはずの青々と水をたたえているはずの湖は、白く凍りついている。朝5時の空気は冷たく張りつめているが、もう冬のそれではない。水たまりは薄氷程度。もう春の朝だ。 一歩一歩踏みしめ地蔵山に到着、その先から眼前に堂岩山が姿を現した。そして、堂岩山から北に向かう尾根上の八十三山と大倉山もその全貌を現す。二つとも堂岩山よりは少し標高は高い。 頂上の雪は地面から1〜2メートルくらいであろうか。木もそのほとんどを雪に没しているため見通しがよく、夏季には得られない360度の展望である。正面には、三国の国境である白砂山が端正な姿を見せており、そこに至る稜線は高山の雰囲気のある歩きたいという意欲をそそられる道だ。白砂山から北には苗場山に至る、2000メートル前後の稜線が延びており、その稜線上で佐武流山が大きく立派である。また、白砂山からすこし北の鞍部から、その向こうに平標山が最前列となる谷川連峰が顔を覗かせており、白砂山まで行けばその全容を見せるだろう。堂岩山から北への稜線にはどてっとした八十三山。南西方向の展望は、草津白根山をはじめとする志賀草津の山々・浅間山・浅間隠山・妙義・榛名・赤城、そして妙義の向こうには奥秩父の山々、赤城と白砂山との間の延長線上でまだ雪をかぶっているのは上州武尊であろうか。この快晴の大展望の前では何も言うことはない。 山頂は風もなくポカポカと暖かくしばらく飽かずに展望を楽しんでいたが、雪が融けて歩きにくくなる前に名残惜しく立ち去ることとした。山頂からの下山はいきなり、志賀草津の山々の大パノラマに向かって雪の斜面を駆け下りることから始まる。下山はほとんど展望を正面にみての下降。最高の贅沢である。 |
参考図書・地図 ヤマケイアルペンガイド上信越の山(1994年9月第1刷) アルペンガイド別冊 東京周辺の山(1994年3月改訂7刷) エアリアマップ 谷川岳(1993年版) 25000図 野反湖 50000図 岩菅山 |
![]() 堂岩山より白砂山 |
その他のコース 野反湖または野反峠から八間山を経て堂岩山。 | |
交通機関 長野原草津口発 花敷温泉経由野反湖行き中之条町営バスにて終点下車(5月1日〜10月20日運行) 詳細時刻は、中之条町ホームページをご参照ください。 |
絵のような風景【堂岩山・野反湖】 先週浅間隠山を登った時、頂上から眺めた国境稜線は白一色の世界でした。それを 見て、あの稜線の山々をもっと近くで眺めてみたい。できればそのただなかを歩い てみたいと思う様になりました。 運良く4月29日は快晴の予報。いろいろな候補を持って、山に向かいました。 【日 程】96年4月29日(月) 【目 的】堂岩山(本来は白砂山を予定) 【天 候】快晴 【コース】0505 野反湖→0650 地蔵山→0840/0920 堂岩山 → 1035/1055 地蔵山→ 1150 野反湖 (往復) 【山 名】堂岩山 2051m・地蔵山 1802m 【メンバー 】妻と2人 【山 域】上信国境の山 【参考書】ヤマケイ・アルペンガイド 上信越の山 ヤマケイ・アルペンガイド 別冊 関東周辺の山 昭文社 エアリアマップ28 谷川岳 2万5千図 野反湖 1.登山口まで(千葉〜野反湖) 前日の20時に千葉を出発。野反湖畔に早朝2時に到着する。車の中で仮眠するが毛布を車に積んでいなかったため、寒くて1時間ほどで起きる。なんだかんだやっているうちに、4時には少し空が明るくなりはじめたため、もう眠るのはやめにした。少しづつ明るくなっていく野反湖畔の風景。そこにあるはずの青々と水をたたえているはずの湖は、白く凍りついていた。 今日の山行は3つ候補を持っていた。1つが、野反湖から白砂山。他には吾妻耶山・稲包山。第一候補は白砂山。国道の冬季閉鎖が解除されているかどうかが第一関門であったが、難なくクリア。雪上にトレールがついているかが心配だったが、朝登山口を探してみると、しっかりした踏み跡があり一安心。計画通り、白砂山を目指すこととした。 朝5時の野反湖の空気は冷たく張りつめている。といっても、もう冬のそれではない。素手でアイゼンを付けても、手が冷たいと思わない。水たまりの氷は薄氷程度。もう春の朝なのだ。5時でこの程度であれば、今日は相当暖かくなるぞと思った。 2.登山口〜山頂 駐車場からまずハンノキ沢をめざす。先人の足跡は昨日のもので、まだカチンカチンに凍った状態である。急斜面を下ると、雪の下に所々清流が流れるハンノキ沢に降りた。対岸に渡り、今度は斜面を急登して、尾根にとりつく。カチカチに凍った足跡を辿る急登は予想以上に気を使い体力も使う。出発後約1時間強かかってやっと尾根にたどり着いた。さあ、ここからは稜線通しの緩やかな登り下りだ。そう思うとがぜん楽しくなってくる。 樹林帯の中を、緩やかに登っていく。木の葉は茂ってはいないので、樹間越しに北の方の山々を見ながらの登りである。北に流れる千沢の対岸の山は三引山か。そのずっと先を北に辿ると、鳥の羽を広げたような形の山は鳥甲山だ。昨年苗場山に登った時、その特徴的な形ははっきり記憶に残っている。目指す堂岩山は見えない。その代わり、堂岩山から北に延びる尾根上の大倉山はいつも左に見えている。稜線から南に厚く張り出して積もった雪の上を登るところで右側の視界も開けてくる。今登ってきた、野反湖とその廻りをとりまく山々が一望に見える。 ある程度高度をかせいだところで振り返ってみると、そこに素晴らしい光景が広がっていた。南に浅間山と浅間隠山が距離を置いて並び、先週よりもだいぶん雪の少なくなった山肌を登ったばかりの朝日が照らしている。かなり、日は昇った後なので朱に染まるというものではないが、雲一つ無い青空のもと、朝の柔らかい光を一身に浴びて輝いている浅間山の姿は感動的であった。南そして西に遮るものの無い展望は複雑に入り組む草津白根山の山々も浅間山と並んでその全貌を見せていた。 今日は久しぶりの長い登りを歩くことになる。ここのところずっと、2時間以内で頂上に立てる山ばかりを登っていた。ところが今日は無雪で4時間40分のコースタイム。はおまけに雪上の歩きでもあるので気を使い、思った以上に疲労が重なっていく。なかなかたどり着かない地蔵山を目指して休み休み歩いていくが、寝不足もありなかなかピッチが上がらない。また、白砂山まで歩いて帰ると下山は16時くらいになり、もう日がでて少しづつ緩み始めた雪が、今日の暑さで下山するころには、ズブズブに足が潜ってしまうのではないかと不安になる。トレールは南斜面に厚く張り出した堅い雪のうえについているので、これで足が潜るようになってしまうとコトだ。樹林の中を歩けば、木々の廻りの雪は薄くなっているので、今の時間でもボコボコ潜ってしまう。そのうち、そんな危惧があるのであれば早く下山したいと思う様になった。という訳で、軟弱にも予定を変更し、白砂山の手前の堂岩山に目標を変更しようかなぁと考え始めた。もっとも堂岩山は一つの顕著なピークでもあるし、目標の展望は十分果たせると考えたからだ。そして堂岩山までは何がなんでも登るぞという風に都合良く気持ちを切り替えてしまった。 一歩一歩踏みしめ地蔵山に到着。初めて人にあった。頂上付近でテントを撤収している単独行の方だ。今日は下山するだけとのこと。雪の状態はやはり午後になると太股まで潜ることがあるが、昨日相当気温が上がって雪が下がったので、だいぶ締まっているんではなかろうかとのこと。まああんまり午後遅くまで歩くのはよろしくないだろうと考えつつ、妻に計画変更を宣言。これはすんなり受け入れられた。 地蔵山を過ぎると眼前に堂岩山が姿を現した。そして、堂岩山から北に向かう尾根上の八十三山と大倉山もその全貌を現す。二つとも堂岩山よりは少し標高は高いが登山地図には線の引かれていない山。つまり今の時期にこそ登るべき山である。 ここで気づいたのだが、今日は登山地図ではなくずっと2万5千図を見ながら歩いていた。今の時期のこのような山では登山地図の赤線は無雪期ほどの意味をもたない。かえって2万5千図のほうが地形がはっきり解ってはるかに使いやすいのであった。 堂岩山まで登れば、堂岩山とその北に向かう尾根が隠している山々の展望が見られる。それを楽しみにして、どんどん進む。道は真っ白な雪原を稜線に忠実についている。ただそれを辿っていくだけだ。白一色の中の道を歩くのはとても気持ちがいい。地蔵山からは、少し下って右へ一つ、左へ一つと小ピークを踏み、三つ目の高い盛り上がりが目指す堂岩山の山頂である。2つめのピークを越えて下から見上げ、よしあれが山頂だと一頑張り。良くある話で、そこは肩の部分で、そこに登って見れば遥か上に頂上があった。なかなか往生際が悪い山である。最後はなかなかの急登になり6本歯のアイゼンでは前に爪が無いため登りにくい。10本歯が欲しい。そしてやっと堂岩山の山頂に着く。 3.山頂 頂上の雪は地面から1〜2メートルくらいであろうか。大きな木もそのほとんどを雪に没しており、展望はすこぶるよい。たぶん夏季には得られない360度の展望である。まず東はもともと目標だった白砂山。白砂山は奥秩父の甲武信岳と同様三国の境界となる山で、同じような名前を付ければ上信越岳となってしまう山である。堂岩山から白砂山への稜線は今まで歩いてきた広い稜線ではなく、高山の雰囲気のある稜線である。とっても歩いてみたいと思うような道だ。 白砂山から北に2000メートル前後の稜線が延びている。この稜線では佐武流山が大きく立派だ。そして、この稜線は佐武流山で向きを変え苗場山に至るが、残念ながら前の稜線に隠れてしまって見えない。佐武流山の陰から頭をだしているのは、折り返したあとの稜線のナラズ山だろう。 白砂山からすこし先の鞍部から、その奥の山が顔を覗かせている。平標山が最前列となる谷川連峰と、その北の八海山・守門岳など越後の山々。これらは、白砂山まで行けば全容を見せるはずだ。 堂岩山の真北にはどてっとした八十三山。西は草津白根山をはじめとする志賀草津の山々。南は浅間山・浅間隠山・妙義・榛名・赤城・そして妙義の向こうには奥秩父の山々そして、赤城と白砂山との間の延長線上でまだ雪はっきりかぶったごつごつした山は上州武尊であろう。 この大快晴の展望の前では何も言うことはない。 山頂に着いた時は単独行の方が一名休んでいた。八間山の方から登ってきて、八十三山の方に向かうらしい。この時期だからこそ歩けるコースだ。そのあと男4人のパーティーが白砂山の方から登ってきた。テント山行だろう。無線をやっている。そのうちに今度は男性2名女性2名のパーティーがやはり白砂山の方から登ってきた。後で聞いてみると三国峠からテント2泊でやってきたようだ。男性の一人はどうみても苗場山の遊仙閣の小屋番さんである。きづいた時はすでに長靴でさっさっと下っていってしまったので、この時は声をかけそびれた。 山頂は風もなくポカポカと暖かい。お昼寝にも絶好といっていい日和である。今回の失敗はサングラスを忘れたことと、真っ白な雪の中あまりにも強い日差しのために、顔が大いに日焼けしてしまったが、予防をしていなかったことだ山頂のすべての方が立ち去ってしまったあともしばらく飽かずに展望を楽しんでいたが、帰りのことも考え名残惜しく立ち去ることとした。 4.下山 山頂からの下山はいきなり、志賀草津の山々の大パノラマに向かって雪の斜面を駆け下りることから始まる。下山はほとんどの部分が展望を正面にみての下降に終始する。最高の贅沢である。時折尻セードを織りまぜながらの調子のよい下降である。朝堅かった雪も大分柔らかくなった。ごくたまに、ズブッと足が潜ってしまうのはご愛敬である。展望と雪を楽しみながら、あっというまに地蔵山まで降り立ち、先行して下山した男女混成グループに追いついた。 2こと3こと話を交わすが、その中で、遊仙閣の小屋番さんですよね。と問いかけてみる。泊まられた方ですか?との問いに、いや食事をしただけです。でもそれよりもテレビ(日本百名山)でしっかりと拝見しましたから....というコトで。 今年は6月1日から山に入って、6月中旬から営業開始とのこと、例年になく雪が多いので、うまくいくかどうか....ということでした。 野反湖に降り立った時には、ゴールデンウィークでもあり、観光客も結構でていた。 野反峠に立ち寄り、野反湖の全景を改めて眺めてみた。湖面は、パステルカラーの氷のうえに雪の模様。廻りをとりまく山は白を基調にして、レーズンのような針葉樹と時折茶色く地肌を出す笹原。そして、青い空。まるで、美しい水彩画のような、また印象派の絵のような風景であった。そして、今日1日のたくさんの美しい展望の末尾を飾る風景であった。 帰途は、川原湯温泉に立ち寄りました。さすがにゴールデンウィーク前半の最終日だけあって渋滞し6時間ほど要しました。今日は美しい光景をこれでもかというほど見た一日でした。また、この時期1〜2メートルの積雪のある山に登るのは初めての経験ですが、幸い天候にも恵まれ、雪質にも恵まれて大変楽しい経験ができました。今の時期だからこそ行ける山がこのあたりにたくさんあるみたいです。やはりほんとは、テントを背負って、ピッケル・10本歯アイゼン・わかんを持っての世界ですね。ただとても楽しそうです。 白砂山は今回行けませんでしたが、そこから谷川連峰はじめ越後の山々の展望を眺めてみたいと思っています。いつか再挑戦必要です |