国見山

 国見山 1409.1m
 山域:四国山地

記録
 山行日1998年3月14日(土)
 ルート後山峠→国見山→大歩危駅
 コースタイム0925 後山峠 → 1100/1115 国見山 → 1255有宮神社 → 1315 大歩危駅
 天候晴れ時々曇り

久しぶりの帰省のついでに四国の山に登ろうと駅から登れる山を探したところ、登りがいもあり駅に直接降りられ、また静かな山のを楽しめそうな国見山が目に付いた。そして山を楽しみしてに寝台特急で前夜東京を出発した。

国見の付く山は西日本に多い様な気がする。四国にもこの徳島以外に高知にもある。語源はいかにも文字どおりであるが、西日本では地形上か歴史上か、山に登って国を眺めるということに意義をより強く感じていたのだろうか。
大歩危駅からの後山峠を通るバスは12時まで無いとのことで、駅前のスーパーでタクシーを呼んでもらい峠に向かった。標高780mの峠まで約600mの標高差を一気に稼ぎ、西の吉野川と東の祖谷川を分ける後山峠から国見山に向けて山道に入る。峠からはそこそこの急登で暗い植林地の中を登ったあと、林床に笹が目立つ様になってくると植林と雑木林が混じるようになり、明るい尾根道も繰り返し現れてくる。途中右側が大きく刈られている場所は展望もよく、また笹の林床と冬枯れの雑木林と見上げる青空という取り合わせは大好きでとても気持ちがいい。出発して1時間を過ぎる頃、道は防火帯として切り開かれたところを辿る様になり、やがて尾根を忠実に登ってきた道がピークを巻き始めると1370m地点で、ここから山頂までは緩やかな稜線歩きだ。道は小さなピークは巻きながら辿り、しばらくしてブナ並木が現れる。一本一本特徴のあるブナの古木が並んだ道は、それぞれの歴史を持っているようで、木に語りかけられている様な気になってしまう。並木は山頂に向かって左側に続いている。右側にもあったということであるがすべて切り出されてしまったそうだ。残念である。山頂直下に祠があり、小さな避難小屋を回り込むように先に進み、最後にちょっと登ると三角点のある頂上に立った。遠望はシルエット程度となってしまうが、近くには国見山から北に向かう尾根が見渡せる。たぶん踏み跡があるとは思うが、今日は予定していない。
下山は大歩危駅までの標高差1200mの下りである。山頂の北端から北の尾根通しの踏み跡と別れ、南西の尾根へと踏み出す。薮っぽいが人が歩くくらいの幅は刈られており、踏み跡もある。ただ、この道は薮が被る季節はちょっと歩きにくいかもしれない。見納めにと振り返ると、国見山の尾根にブナの木が並んでいるのがわかる。道が本格的に下りはじめると時折植林も出てくる様になる。2つ程小さなピークを登り返した1114m地点は少しの間防火帯の切り開きとなり、これを過ぎると一気の下りが待っている。落ち葉等で滑りやすい道を慎重に降りるが何度か尻餅をついた。このあたりは春の草花も少しづづ出てきており、自然林も多く楽しい所である。急下降のあと尾根の左に山腹を下り、枝尾根へと移っていく。落ち葉のふくよかな道で歩きやすい。そして暗い植林地へと入っていくと、見るべきものも少なくなってきて、長い下りがそろそろ足に応えてくるところである。しばらく下ると一本のコケ蒸した大木が目に留まり、すごいなと思ってあたりを見回すと、そこは有宮神社の裏になっていた。神社の境内から、参道の階段を下り車道に出る。さらに直進する尾根がわからなかったので、正面にある民家の方から、無理矢理薮の中につっこんでうろうろすると踏み跡をがあった。それを辿るとさらに車道を横切り、少し下れば眼下に吉野川の流れが樹間から見えはじめ、やがて駅や吉野川を一望できる斜面上に出た。駅に向って茶畑の中を通り、民家の軒下から車道に出て、今朝タクシーに乗り込んだスーパーの前に降り立った。缶ビールを一気に飲んで春の日溜まりのホームに座り、ぼんやりと山々を眺めていると、高知行きの気動車がゆっくりと1両で入ってきた。


参考図書・地図
アルペンガイド 中国・四国の山(1997年5月改訂3刷)
25000図 大歩危
50000図 川口

国見山稜線のブナ林
その他のコース
北方の川崎からの道もあるようです。
交通機関
大歩危駅よりかずら橋(閑定)行き。「峠」下車
三好市(町営バス)をご確認下さい。


Nifty FYAMA 投稿文

後山峠から国見山【四国山地】

3月15日の日曜日に高知の方で用があったので、それに引っかけて、四国の山をどこか登ろうと考えていました。金曜日の夜に飛行機で入って早朝からどこかとも思っていましたが、切符を手配するのが遅くて飛行機がとれず、夜行で入ることになりました。土讃本線沿線の山が都合がいいので、ガイドブックを見てJRの駅を起点にできる国見山を選び、ひと登りするのを楽しみに東京を出発しました。

【日 程】98年3月14日(土)
【目 的】国見山
【天 候】晴れ時々曇り
【コース】0925 後山峠 → 1100/1115 国見山 → 1255有宮神社 → 1315 大歩危駅
【山 名】国見山 1409.0m
【メンバー 】単独
【山 域】四国山地
【参考書】ヤマケイアルペンガイド 中国・四国の山
     2.5万図 大歩危

1.後山峠へ

国見の付く山は西日本に多い様な気がする。四国にもこの徳島の国見山以外に  も高知にも国見山がある。語源はいかにも文字どおりであるが、西日本では、地形上か歴史上か、山に登って国を眺めるということに意義をより強く感じていたのだろうか。
特急「瀬戸」が朝6時ごろ岡山を過ぎて四国へ向かう頃、目を覚まして下車する準備にかかる。昨日着ていたスーツはしまい込み狭い寝台の上段でハイキングスタイルに切り替える。瀬戸大橋を渡り始めたころやっと準備ができたので下に降りて瀬戸内海を眺めるが、天候はまずまずだけどモヤが多い。今日の天気予報は、長期予報では晴れになったり雨になったりとコロコロ変わっていたので、そこそこの天気というだけでも儲け物と考えよう。坂出で下車して土讃線の特急を待つ間にホームの讃岐うどんを食べる。四国への出入りの時に讃岐うどんを食べるのは、連絡船で渡っていたころからの儀式になっているのだ。
乗り換えた「しまんと3号」は空席も多く、ゆったりとローカル特急に乗ってしまうと、なんとなく旅気分が増してくる。かつては急行の気動車で延々と乗った高知への鉄路は、振子式の新型特急用気動車の出現で飛躍的に快適になった。ポカポカと暖かい車内でひと眠りすると、阿波池田を過ぎて見慣れた大歩危峡に差し掛かった。
大歩危駅で下車するのは初めてである。特急停車駅ではあるが無人駅で駅前も急傾斜地に面しているだけに狭い。コインロッカーに不要な荷物を預けて、駅前の酒屋で後山峠を通るバスの時刻を問うと、次のバスはトンネルを通ってしまうので、12時まで無いとのこと、それではあまりにも遅いのでタクシーで行くことにする。ところが困ったことに駅前にタクシーが1台駐車してあるが運転手は姿形もない。では電話でと思うが、公衆電話も無い。さすがに山深い駅だなあと思い、帰りの列車の時間を確かめたあと、駅前の「歩危マート」というスーパーで食料の調達を兼ねてタクシーを呼べないか訪ねてみたところ、すぐに電話で呼んでくれた。なるほどこの店が地域の生活の中心になっている様である。
タクシーは10分ほどで到着し、乗り込んで峠に向かう。有料道路の料金所の手前から脇道にそれて山間の人家も時折ある道を折り返しつつ登っていき、標高780mの峠まで約600mの標高差を一気に稼ぐ。料金は2460円であった。西の吉野川と東の祖谷川を分けるこの峠には石碑も立っており、また神社もある。準備を整えて出発するころ夫婦のハイカーが自家用車で登って来た。

2.国見山へ

峠からは結構な急登で植林地の中を登って行く。いきなり結構汗をかくはめになるが、ここは一歩一歩しっかり登っていく。しばらくするとだんだん林床に笹が目立つ様になってくる。植林も途切れて雑木林となったりと明るい尾根道も繰り返し現れてくる様になる。途中右側が大きく刈られているところがあり気持ちの良い展望がひらけた。いずれにしても笹の林床と冬枯れの雑木林と、見上げる青空という取り合わせは大好きでとても気持ちがいい。
道は植林になったり雑木林になったりまた緩急繰り返して小一時間登った所で休憩していると、車で来た夫婦が追い抜いていった。こちらも決してゆっくり歩いていつもりでは無いので、結構早い人たちだと思う。やがて道は防火帯として切り開かれたところをいつしか辿る様になっており、少しだけ広々としてきた。急登の先には青空が覗くが、そこまで行くと緩斜面になるだけで、また再び急登にかかるという感じで結構しごかれる。今日は気温もかなり上がっている様で、まだ木の葉は出てきていないものの、そろそろ春を感じさせる様な陽気になってきている。
やがて尾根を忠実に登ってきた道がピークを巻き始めた。どうやら1370m地点まで辿りついた様だ。ここから山頂までは、緩やかな稜線歩きが楽しめるのではないかと期待していた。そしてそれは期待以上のものだった。
防火帯はあいかわらず稜線を進んでいくが、道は小さなピークは巻きながら辿っていく。しばらくして現れたのはブナ並木だった。一本一本が特徴ある、ブナの古木が並んだ道は、それぞれの木の形にそれぞれの歴史を持っているようでなんだか木に語りかけられる様な気になってしまう。この並木は山頂に向かって左側に続いている。右側にも林があった様だがすべて切り出されてしまった様だ。残念である。山頂直下には祠があり、小さな避難小屋がある。小屋を回り込むように先に進み、最後にちょっと登ると三角点のある頂上に立った。他には途中から先行した夫婦だけの静かな山頂で、ちょっとモヤモヤしているので、遠望はシルエット程度となってしまうが、近くには国見山から北に向かう尾根が見渡せる。たぶん踏み跡があるとは思うが、今日は予定していない。

3.下山

しばらく休憩の後下山にかかる。コースは大歩危駅までの標高差1200mの下りである。山頂の北端から道はまっすぐ北の尾根通しの踏み跡と別れ、南西の尾根へ踏み出す。多少薮っぽい道であるが、人が歩くくらいの幅は刈られていて、ちゃんと踏み跡もある。またかなり赤テープがあるので、忠実にテープを辿れば迷うことは無さそうである。ただ普通の登山道と比べればブッシュは多く、体にあたる薮を払ったり、髪の毛が薮でとかされたりと、なかなか野趣溢れる道ではある。ある程度進んで大きく下る前に見納めにと振り返ると、国見山の山頂から登ってきた方の尾根に向けてブナの木が並んでいるのがわかる。
道は斜度をある程度もって下りはじめると時折植林帯も出てくる様になる。ただ、あまり上の方までは手入れが行き届いて無い様である。また倒木等があれば避けて通らなければならず、そこで薮をくぐら無ければいけないという様なこともある。2つ程小さなピークを登り返した1114m地点には少しの間防火帯の切り開きとなり、またこれを過ぎると一気の下りが待っている。落ち葉等で滑りやすい道を慎重に降りるが何度か尻餅をついた。このあたりでは春の草花も少しづづ生えてきており、また木々も自然林が多く、楽しい所である。またいつのまにか道もずいぶんはっきりしたものになっている。急な下りを終えると、尾根の左に山腹を下り、枝尾根へと移っていく。落ち葉のふくよかな道で歩きやすくなる。このあたりからは植林地の中に入っていくのであまり見るべきものも少なくなってきて、長い下りがそろそろ足に応えてくるところである。列車の時刻の気になりはじめ、当初16時のに乗る予定であったが、これなら一本早い13時44分のに間に合いそうなので先を急ぎがちになる。植林地の中を下る道の両側には、杉や桧の種が落ちて自然に生えてきた苗木がたくさん出ており、結構たくましさも感じられる。
一本のコケ蒸した大木が目に留まり、すごいなと思っているとそこは有宮神社の裏になっていた。神社の境内に入り、参道の階段を下っていくと、車道に出る。左に降りれば広い車道に出るがそれでは遠回りになるので尾根を直進する道を探すが、なかなかわからない。時間が立つ毎に汽車に間に合わないのではと焦る。良くわからないので、神社から下ったところから正面にある民家の方に直進して、無理矢理薮の中につっこんでうろうろすると、下の方に踏み跡を見つけた。その道が心細くなると次の立派な踏み跡が合流した。それを辿るともう一度車道を横切り、少し下れば眼下に吉野川の流れが樹間から見えはじめやがて駅や吉野川を一望できる斜面上に出た。駅の方向に茶畑の中を通り、民家の軒下を経て車道に折り少し下ると、今朝タクシーに乗り込んだ歩危マートの前に出て駅前に着いた。缶ビールを一気に飲んで日溜まりの駅のホームに座ってぼんやりと山々を眺めていると、高知行きの気動車がゆっくりと1両で入ってきた。



国見山は、歩いた時間の割には急登や急下降、そして野趣に富んだ道となかなか歩きがいのあるコースでした。一般には自家用車で来て、後山峠から往復するのがいい様です。大歩危駅から直接登るのは、入り口が分かり難く標高差1200mの登りとなってしまい、体力も必要だと思います。
高知まで2時間、このあたりを普通列車で行くのは久しぶりでした。かつては最低3両は繋いでいたのですが、今では、1両で丁度という感じでした。高知ではもう一部で桜が咲いていましたが、本格的な開花までにはあと一週間は必要でしょうか。その日の夕方から雨が降り始め、山の方では雪も降った様で、翌日遠く北の山が白くなっていました。