備前楯山

1272m
山域:足尾
2001.7.7.



ついに四日市の単身赴任生活に終止符が打たれ、再び千葉に戻ってきました。最初の休日は雨の天気予報であきらめていたのですが、前夜から天気予報が急に変わってしまい、晴れるとのこと。もったいないので、山に向かうことにしました。備前楯山は以前にニフティの会議室のレポートで知り、以来足尾の荒れた光景の展望が気になって、何度か計画はしたのですが、今回やっと登ることができました。

1.足尾へ

土曜日は図らずも晴れてしまったので、家を出るのが7時と、遅くなってしまった。時間も時間だし、準備も万全ではなく、行程の短い備前楯山をとりあえずの候補にして、途中で本当によく晴れてくるのであれば、上州武尊山でも行きたいなと思いつつ関越道を北上する。上里SAで9時半。この時点で武尊はあきらめ、北関東道へと入っていった。
足尾の町に入ると鉱山や精錬所跡の寂しい風景が目に入ってくる。荒涼とした山肌は、普通に山に向かう時と少し雰囲気が違う。以前北九州に住んでいたときに、筑豊の炭坑跡の町を通った時の風景を思い出す。本山あたりの精錬所跡は、なんとなく郷愁を憶えさせるものがある。今回は車で足早に駆け抜けてしまったが、間藤駅からゆっくり歩いてこそのコースかもしれない。
舟石林道は舗装された良い道で、かつての集落跡とも思われる石積の中を行く。登るにつれて緑が多く。道の脇には猿が時折姿を見せていた。舟石峠は最近造成されたのか、広い駐車場が造られており、ここは以前とはずいぶん雰囲気は変わっているのだろう。一角が仕切ってあり、休憩舎など造るつもりかもしれない。

2.備前楯山

登山道へは駐車場からも入れるが、峠に出て従来の道を進む。備前楯山の由来、備前出身の農民「治部」と「内蔵」が銅鉱脈の露頭(楯)を発見したことからつけられたことが書いてあった。登山口からしばらくは、林床は青々とした丈の低い笹に覆われ、瑞々しい。カラマツの植林と落葉樹の森は明るくてなかなか気持ちが良く、荒涼とした風景を忘れさせる。登山道は関東ふれあいの道として整備されており、階段も多いが広く立派な道である。しかし階段は笹に覆われ、横に立派な踏み後ができているのは、よくありがちな光景である。10分少々でベンチのある場所にでる。平坦で綺麗な森の中なので、楽しくなる。
道は緩やかにアップダウンしながら、回り込むように登っていく。アカマツが点在し、ミズナラなどの落葉樹の森から、いつしか地面の笹が無くなっていた。今の季節は花が無いなと思いながらのんびり行く。やがて山頂が近づいてくると、少しの間、岩混じりの急坂があり、岩の出た稜線に出れば、一気にあたりの風景が開けてくる。ご夫婦が一組だけの静かな山頂だった。
この山頂の展望は素晴らしい。前日光の山々から始まって、阿世潟の向こうに男体山。社山・黒檜山の南岸尾根。松木川からたどれば、中倉山、沢入山の尾根と、庚申山。その奥に皇海山が頭を出していた。その南には袈裟丸連峰がつながっている。あいにく雲が多く、男体山の山頂部が隠れていたのが残念であったが、周囲をぐるりと囲まれた、山見の展望地であった。
眼下には足尾の町と、その周りに亜硫酸ガスの影響で裸地化し、崩壊してしまった荒れた山肌が見える。陰の部分の緑と、鉱山に向いた部分の茶色が対照的だ。今ではかなり植林も進み、植生の回復に向けて、努力が重ねられているとのことで、少しづつ緑が戻ってきているらしい。
いつしか一人になった静かな山頂を楽しむ。ドウダンらしい木があり、花の後の鈴なりの実が付いていた。1時間くらいのんびりして下山する。往路を戻って、舟石峠。今度は銀山平に下る。峠のすぐ下に峠の名の由来である舟石があった。
銀山平のかじか荘で温泉に入り、足尾の町に出て銅山観光を楽しむ。通洞坑の中に造られた銅山の歴史を学ぶ施設である。備前楯山の地下は全長1200mの坑道が掘られているとのことであった。歴史年表などを見つつ、一度じっくりと足尾の歴史の本を読んでみたいなと思った。

関東に帰着後の第一弾なのですが、3週間ぶりでもあり、お手軽なハイキングコースを歩きました。登山道は瑞々しい森の道、そして荒涼とした風景と、郷愁漂う精錬所跡。山歩きということ以外に、いろいろと見所の多いコースでした。このあたりはあまり出かけいなかったので、時々たずねてみたいと思いました。今回行き損なった武尊にも...
帰路は鹿沼の標識に誘われて、粕尾峠を越え栃木インターから帰りました。どうもこちらの方が、時間も多少早くて、料金もかなり割安でした。

本文中の写真

  • 緑多い登山道
  • 明るく開けた備前楯山山頂
  • 足尾銅山観光の通洞坑入り口



  • 記録

    日 程

    2001年7月7日(土)

    天 候

    晴れ のち 曇り

    コース

    1120 舟石峠 → 1155/1305 備前楯山 → 1335 舟石峠

    山頂から見下ろす足尾と荒れた山肌


    参考図書・地図 その他のコース
    昭文社 エアリアマップ 赤城・皇海・筑波
    アルペンガイド 奥日光・足尾・西上州
    東京付近の山(実業之日本社)
    栃木の山120(随想舎)
    25000図 足尾
    50000図 足尾
    備前楯山へは他には、コースはありません。
    また、銀山平の上に銀山平展望台があり、ここへは往復25分ほどとのことです。
    バス
    わたらせ渓谷鉄道の間藤駅から徒歩で行くことができます。沿道にかつての鉱山の遺構を見ながらの歩きとなりますが、林道歩きが長くなります。
    温泉
    銀山平の国民宿舎かじか荘にあります。600円で、露天風呂あり。

    足尾には、かつての鉱山の歴史を学ぶことができる、足尾銅山観光があります。トロッコ電車で坑内に入り、通洞坑の坑道にそって造られた人形から、江戸時代より現在に至る鉱山の歴史をたどるものです。
    時間:AM9:00〜PM16:30・料金:800円