出勤日に挟まれた休日でもあり、あまり疲れを残したくないので、短めのコースを探しましたが、アプローチも含めてなかなかこれだという山が思い当たらず、随分悩みました。いよいよ朝になって、ここであれば駅からも歩けそうだし、歩行時間もそこそこだろうと鶏鳴山に決めて、久しぶりに北関東に向けて出かけました。
久しぶりの東武の快速電車は席が埋まるくらいの混雑で、ご婦人方の話し声が絶えず、とても賑やかでした。車窓から晴れ渡った空の向こうに見える日光連山の山並みは、雪を纏って美しく、久しぶりのご対面です。明神駅で降り立ち、駅から左に辿ると広い道に出て、これを右折。あとはひたすら正面に鶏鳴山を見て真直ぐ進むのみです。
集落の中心部である郵便局などのある辺りを過ぎると、視界も開けて民家の点在する田園風景が広がります。歩くにつれて、遠くに霞んでいた鶏鳴山とその前にある中山が、だんだんはっきりと大きくなって来ました。ゴルフ場への入口を過ぎ、ゴルフ場専用の橋をくぐると、やがて道は未舗装の林道となり、中山の南麓を辿って植林地の中に入って行きます。未舗装とはいえ、かなりしっかりとした林道です。さらに、林道の三叉路となり、これを右折、右に清流を見ながら良く手入れされた植林の中を進み、左岸に渡り、右岸に戻り、すぐに左岸に渡り返した少し先に登山口の標識がありました。車2〜3台のスペースがあり、1台車が停まっていました。駅から70分の行程でしたが、車も少なく、総じて気持ちの良い里の道でした。
看板のある登山口からは、車の通れる作業道を辿って植林地へと入って行きます。すぐに左にログハウスの見えるY字路があり、これを右に進むと山道への入口になります。登山道は、整備された植林地の中を登って行くものですが、柔らかく歩きやすい道が続きます。作業道はつかず離れず、何度も寄り添い、時には登山道を交差しという状態が続きますが、どうやらこの山腹に縦横無尽に張り巡らされているようです。それだけ植林の維持が徹底して行われているということですが、確かに荒れた植林地が多い中で、ここは手入れが行き届き、維持する方々の意気込みが感じられます。道は緩急繰り返す以外は、基本的に風景は変わらず、敢えて言えば大変地味な道です。それだけに淡々と登って行きます。
しばらく登ると、尾根上の道は傾斜が緩くなるところで作業道と合体し、小広い作業道を登るようになりますが、傾斜が急になると作業道が途絶え再び山道となり、さらにまた作業道が交差し、切通しとなっている所にでます。ここで初めて雑木林が見られました。切通しを、作業道を右に辿ると再び尾根の山道へ入る桟道があり、山頂まで12分の表示がありましたので、最後の登りに備え休憩としました。
ここからは、山頂部への急坂となり、左が植林、右が雑木林の境目を登るようになります。葉の落ちた林の間から、時折北の白い山々が望まれます。ロープの張られた最後の急坂を登って行きますが、特段ロープを使わなければいけないということも無いようです。そして、これを登りきれば、残雪の残る道となり、山頂部の北の肩に登り着きました。山頂部を少し南に辿ると、祠の並ぶ場所に出て、西側と北側が切り開かれた展望台となりました。
ここからの展望は、言葉も無いといいますか、筆舌に尽くしがたいといいますか、素晴らしいものでした。日光連山をはじめ、それらから幾重にも南に伸びる足尾や安蘇の山々のパノラマとなり、久しぶりの感動を味わえました。それは、旧知の山々との再開でもあり、まだ山頂を踏んだことの無い山々への意欲を掻き立てるにも十分でした。
鶏鳴山の最高点はこのあたりのようですが、さらに南に進み登り返すと三角点のある山頂に出ます。小さな木に囲まれた明るい山頂で、丸太を並べただけのベンチがあり、ここに座ると丁度男体山が木の枝で囲まれた額の中にすっぽりと納まり、なかなかいい感じを出していました。大変くつろげる山頂で、ここでしばらく休憩しました。
下山は小来川にも下れる道があるようですが、鹿沼へのバスは1時が最終です。(実は鹿沼側だけ調べていたのですが、3時頃今市へのバスもあったようです。)従って、もと来た道を辿ることとしました。山頂部の急な下りは慎重に辿り、植林地に入ると、歩きやすく柔らかい程よい下りで、あっという間に登山口まで降り立ちました。
帰路、登山口から駅までは再び長い山里の歩きになりますが、半分ほど過ぎた所で、幸運にも1台の自動車が停まり、乗せて貰いました。朝私が歩いて行くのを見ていたとのこと、地元に住んでいらっしゃる退職された東武鉄道の運転手さんで、大変ありがたく、いろいろとお話をしながら、新鹿沼まで送って貰いました。駅に着くと、ちょうど区間快速がホームに入ってきたところで、慌ててホームへと駆け込んだのでした。
素晴らしい展望と、地元の方の暖かい心遣いに触れることができ、大変充実した1日でした。車で登山口に入るのは楽ですが、こうして電車やバスを使い、山里に触れながらの山行は、事前の体と心の両方のウォーミングアップもでき、またいろんな意味で充実して、さらに楽しみが増えるものでした。
本文中の写真
長畑集落から鶏鳴山(山頂は右端)
鶏鳴山山頂
鶏鳴山最高点からの日光連山