岳・旭山

 岳 781.3m 旭山 755.6m

山域:鈴鹿
2000.11.3


石榑峠を越えて杠葉尾の里に降り立ったあたりに、名実ともに気になる山がある。岳という名前自体が興味をそそるとともに、山容も名前にふさわしくすっきりした三角錐を見せている。以前天狗堂から眺めたノタノ坂から南に派生する鉄塔の並ぶ尾根にも興味があり、すっきりしない天気ではあったが、黄和田に向けて石榑峠を越えた。


黄和田の日枝神社から山に向けてあぜ道を進み、再び車道に出ると小さな祠がある。そして、その横に関電巡視路の標識があり、山道はここから始まった。石垣をきれいについただんだん畑のような植林地を登ると、大きなご神木のあるところで、巡視路は右に分かれ、こから坂道は急になる。しばらくは堀割の中の様な道を行き、緩やかに左にまがりながら、充分な広さのはっきりした歩きやすい道を登っていく。右に巡視路が分岐していくが、はっきりした道をそのまま直進していくと、道はだんだん悪くなって、ガラガラ石が落ちて滑る急坂になった。これは僅かの区間で、左にトラバースしていく狭いが明瞭な踏み跡に変わり、これを辿ると再び巡視路の看板が現れ、ゴムの階段が時々現れるようになった。しばらくジグザグに登ると左から別の巡視路が合流し、右が植林で、左が雑木林の小尾根の登りとなる。左の雑木林越しに鉄塔が近くに見える。雑木林の紅葉を見ながら歩きやすい登りをゆっくり行けば稜線に出て、黄和田への下降点を示す小さな標識があった。
岳の山頂に向けて、稜線を右に進む。ガイドには猛烈なヤブコギとなるとあるが、殆どヤブはなく、稜線の左に出て、枯れてすっかり地面に張り付いてしまったススキの原を過ぎると、水の流れる湿地の中の道となった。このあたりは苔をも踏みながらの道で、いかに登山者が入らないかということだろう。水の湧きだすところを過ぎて山腹を絡むと、やがて暗い植林地の中を赤テープに導かれて登るようになる。正面に明るく見える小尾根に出て、左にブッシュの中の歩きやすい所を高みに向けて登っていくと山頂の一角で、すぐ右隣りに、広く刈られた岳の山頂があった。

山頂で少し休んだあと、お目当てのノタ場を探しに行った。反対側に踏み跡があり、少し下ると黄色く紅葉した雑木林に囲まれた平坦地に出て、確かに真ん中に見事な広いノタ場がある。雰囲気のいい場所で、黄色い落ち葉で埋め尽くされた窪地をしばらくうろうろと歩き回った。ここは鹿ならずとも嬉しくなるようなところだ。
山頂に戻ると、忠実に来た道を下る。水の湧き出すあたりに、大きな杉の木があったが、登りの時はすぐ横を通っているにもかかわらず気がつかなかった。黄和田への下降点を過ぎ、落ち葉の積もった雑木林の中を今度はぐんぐん登って行く。登り着いたところから、山の神峠へ向けて左の植林との間の道を下って行く。そして一面伐採された鉄塔の立つ台地に登ると一気に展望が開けた。今日は曇が低く、1000m以上の展望が無いのが残念だが、竜ヶ岳から西に伸びる尾根が綺麗に紅葉しているのがわかる。日本コバの台地状の山頂部も近くに眺められた。
稜線の巡視路を北に向かうと三叉路になり、ここは左に折れるのが正解である。このあたりで、鹿が走り去っていき、しばらく警戒のような鳴き声を谷の方で発していた。次の鉄塔は稜線の少し左にあるが、ここからは東山が良く見える。この先でも道は二分し、左は雑木林の中の綺麗な道になるが、ジグザグに下降して行くので、右の植林混じりの道を行く。やがて再び鉄塔を通過すると、しばらく暗い林の中を行き、左から別の巡視路が合流したのち、再び鉄塔に出て、斜面を下れば看板のある山の神峠に立った。

旭山

山の神峠から、ガイドの通り旭山を往復してみる。暗い植林を登っていくと鉄塔のあるところで再び展望が開け、竜ヶ岳から静ヶ岳の西側の尾根の紅葉が素晴らしい。南に見える割山が良く目立ち、これはいつか登ってみたいと思った。ここから先は植林と雑木林が混ざったような感じになるが、黒々とした樅の木も混じり、山深い雰囲気を出している。一箇所凹地を通過したあと、少しアップダウンしながら行くと、左に東山への尾根が別れる。巡視路の看板には小さく東山と書いたテープが巻いてあった。そこから僅かで旭山の山頂だが、三角点のある緩やかな稜線上の一地点という感じで、あまりピークという雰囲気ではない。しかし紅葉の中の静かな山頂は充分満足できるものであった。
山の神峠まで戻る途中で、凹地のあたりにはノタ場があるはずだと、少し左の方に行ってみると、いかにもというような囲まれた地形の中に、やはりきれいなノタ場があった。そして、山の神峠の鉄塔まで戻り、今まで歩いた稜線を見ると、まさに錦秋の山という感じであった。

山の神峠から政所への道は地図には廃道化とあるが、出だしは美しい雑木林の中の峠道で、順調にジグザグに下って行く。鹿の糞がよく落ちている所を見ると、人間よりも鹿に良く利用されているのかもしれない。途中に大きな木に囲まれた小さな祠があり、さらに下って行くと宮の谷の流れに降り立った。流れの右側にある踏み跡は、倒木が放置されたり、道が所々崩壊したりして多少歩きづらくなる。ただし、巡視路のゴムの階段で補修されているところもあり、多少心強い。右から流れ込んでくる小沢を合わせしばらく進むと、流れが落ちていくあたりで右岸の踏み跡は行き詰まってしまい、落ち口から左岸に渡る。この後もしばらくは細いへつりで、多少崩壊していたり、倒木に邪魔されたりするが、やがてしっかりした道に戻る。ふたたび流れの高さに戻ると、岩を一旦右岸に出て回り込み、すぐに再度右岸に出てしっかりした道に出る。右からの沢を鉄の橋で渡り、その後本流を再び鉄の橋で渡ると、大崩壊地を乗り越えることになった。この先にはパワーショベルと林道終点が見え心強いが、どうもここは林道の延伸工事の先端で、拡幅の為の人為的な崩壊のようだ。石や泥の山の乗り越えは、なかなか難儀した。
工事現場を過ぎ、林道を辿ってしばらく行くと、谷が綺麗に護岸がなされているのが見える。その先の工事のプレハブのあたりで休んでいると、工事の方が出てきて、言葉を交わす。そして、もうすぐ帰るから乗せていってあげるよ。ということになり、トラックの助手席に座り、黄和田の車を停めたところまで連れていってもらった。護岸工事をやっているおじさんとおばさんのお二方に感謝したい。帰りに須谷川の橋の上に立って正面に見える岳を眺めると、なるほど岳だなあと思えるような端正な山であった。

本文中の写真(順に)

  • 岳山頂
  • 岳山頂直下のノタ場
  • 旭山手前のノタ場
  • 紅葉の山の神峠道

    記録

    日 程

    2000年11月3日(金)

    天 候

    曇り

    コース

    1120 黄和田日枝神社 → 1225/50 岳 → 1355/1405 山の神峠 → 1430 東山分岐 → 1435/50 旭山 → 1520/25 山の神峠 → 1600 林道終点 → 1615 車に拾われる

    最初の鉄塔から岳山頂を振り返る


    参考図書・地図 その他のコース
    エアリアマップ 霊仙・伊吹・藤原
    25000図 竜ヶ岳
    50000図 御在所山
    明瞭に登山道と言える物はありませんが、巡視路が縦横に走っていそうです。
    岳へはノタ場の方に直登するような道もあるようです。(過去のエアリアは今の道とは違っています)
    山の神峠へは東の焼野の方からも登れるはずですが、状況は不明です。
    バス
    黄和田・政所へは、八日市から永源寺役場まで近江バス(0748-22-5511)
    永源寺役場よりさらに永源寺町営バスで君ヶ畑方面へ