四日市にいると、よく福王山という行き先のバスを見かける。麓に福王神社があり、参拝する人の絶えない大きな神社である。この山は三池岳の東に伸びる尾根が八風牧場まで高度を落としたあと、再び高く盛り上がったところにあり、山頂は今は灌木に覆われ展望は無いらしい。雨後思った程天気が回復せず、山々が深く雲に沈んでいる日に、ちょっと歩いて見ようと神社まで車を走らせた。
参道の下の広大な駐車場には、車が1台も止まっていなかった。1軒だけ開いている茶店の前を通り、コンクリートの急な坂道を上がって行く。遥か上に鳥居が見え、息が切れるような登りである。鳥居の脇には毘沙門天と書いた旗がはためいている。ここは毘沙門天を祀る商売の神様なのだ。
鳥居をくぐると暗い森の中へと入って行く。朝方まで降っていた雨を杉の木がたっぷり含んでおり、時折水滴に打たれる。森の中は激しい雨の音とも聞こえるような水の音が響きわたっているが、どうやら左手遠くにある沢の水音のようだ。巨木に囲まれた、濡れた石段を一歩一歩登るとやがて福王神社の境内に出る。ここは少し明るいが、山の中腹にある為か、思ったより小振りな建物であった。
神社の脇に木の鳥居があり、そこから奥の院への道が続いていた。植林の中の暗い道が続き、一本調子にどんどん登る。路傍には時折七福神の石像が現れ、いいアクセントでもあり、楽しくなる。しかし、真っ暗な森は見上げると果てしなく高く、先が長そうだと感じるような登りであった。
だんだん息が切れてきた頃、正面に稜線が現れ、ゆっくりと斜度を落としていく。登りついた所はT字路になっており、ここも薄暗い植林の中である。左手にガスの霞むように鳥居が見えていたので、まずそこに行ってみる。小さな祠があり、奥の院の広場である。
さて、福王山は横から見ると山頂に微かな凹みがあり、小さな双耳峰のように見える。登りついた所が小さな鞍部といえるところで、奥の院とは反対側が山頂になる。再び分岐に戻って山頂を目指すと、はじめて雑木林の中のわずかな踏み跡を行くようになる。そして再び植林の中にでると、平坦な方向感覚を失うような場所で、これといった踏み跡もなく、テープを探しながら少しでも高い方へといく。帰りはちゃんと辿れるかなと不安になるような場所である。やがて、灌木の繁る山頂に着くと、いくつかの山名標が掛けてはあるが、単なる雑木林の中であり、かつて展望が良いとされていた山頂も、今では木々の繁るがままだ。
山頂にいると、霧の中から鹿の鳴き声が響きわたった。街に近い山なので、思いもよらなかった。下りは案の定道に迷い、5分そこそこで登ってきたところを15分もかかってしまった。鞍部に戻ると、そのまま奥の院の方向に直進し、東海自然歩道に下る踏み跡を下ってみることにする。道は、山頂の少し先で左に折れて落ちていく顕著な尾根に付いており、こちらは雑木林の中の下りとなる。テープや境界杭を追って下って行くと植林地に入り、直進する道がなんとなくあやふやになったあたりで、右に細いがしっかりした仕事道のような踏み跡を見つけ、これを辿った。道はなんとか途切れず斜面をトラバースして行き、最後にあまりにも広く立派に感じるような、東海自然歩道の小道に出た。これを辿るとすぐに三叉路に出て、左に折れれば程なく小沢を渡って、神社の入り口の鳥居の前であった。
国道からの入り口から見る福王山
参考図書・地図 | その他のコース |
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エアリアマップ 御在所・鎌ヶ岳 25000図 御在所山・竜ヶ岳 50000図 御在所山 |
特にはありません。 この山は道標は無いので、あらかじめ地形や方向を地図等で頭に入れてお出かけ下さい。 |