三池岳

971.8m

山域:鈴鹿
2000.4.22


登山地図というものを初めて買って出かけた山が、中峠と八風峠を周回するコースであった。再び今日その場所に行く気になったのは、三池岳の山頂に立ったことが無かったこと。なんとなく懐かしかったこと。そしてお手軽な山をと、ちょっと疲れの残る週末にふらふらと車を走らせた。

新聞社の小旗がかかるキャンプ場を過ぎ、射撃場の先のスペースに車を停める。射撃場の音に驚かされながら、横の林道を少し進むと、右に三池岳の小さな看板が現れた。ゆっくりと山道に足を踏み入れる。疲れ気味と思っていた体が、いつしか躍動感に満ちてくる。この山の臭いと、時折現れる白くざれた花崗岩独特の地面。あの頃不安を感じながら登ったのはこのあたりだった。そして、春から夏にかけて足繁く南鈴鹿に通った。今でも原点のように感じる山々。それは春から夏にかけての森の香りの強い花崗岩の山でなくてはならぬ。足元に可憐にイワウチワが咲き乱れる。ツツジは紫の花をたくさんつけている。アセビの花が満開。そして、突然あらわれた花をたくさん咲かせたタムシバに驚く。木々はまだまだ新緑にはほど遠いなかで、花は春から初夏へと向かっていく。
道はいつしか急坂を繰り返すようになっていた。足元には桃色の花を咲かせたショウジョウバカマが多くなった。御池まで1時間のコースタイムを1ピッチでと考えていたが、とてもとても..。岩角や段差の連続する尾根に音をあげ、志半ばで座り込んだ。急いでいる訳でもないが、ただただ息が切れた。道に笹が出てくるようになると、気持ちだけ傾斜がゆるむ。はやる心は、前方に池のある平地を期待する。道が交錯し、下りにとれば少し迷いそうな笹の中の踏み跡をゆっくり登っていくと、小広い平地となり、待望の御池である。静かな池のほとりで休む。あたりの笹原の上に、低木の幹がたくさん伸びる光景に感嘆する。すでに山頂まではあと100m余り。余裕も出てくる。
御池から程なく大きなガレの縁を通過する。急に視界が開け、竜ヶ岳の大きな山頂部と、静ヶ岳の方に伸びる草原の尾根が目に入った。ガレから10分程で、笹の中の道を登り詰めれば山頂である。三角点が立派。それほど高い木も無いので、意外と明るい。
縦走路に出て八風峠へと向かう道は、白くざれた道の下りで始まる。あの時は八風峠からせめて三池岳に登りたいと思ったのだが、霧に阻まれた初心者ゆえ、ここまでは辿り着けなかった。どのあたりまでは来たのかなと思い出しながら進む。当時と比べると道がずいぶん歩きやすくなった様に感じる。たしかあの時は、笹を体で押し分けて進んだが、いまはその必要もない。
八風峠は先客が2人。いい陽気でしばらく横になった。釈迦の方に続く尾根がとても気分良く見えて、直接降りる予定を変更し、中峠まで行ってみることにした。小さなアップダウンの末に着いた峠から下る道は、一見心許なそうに見えたが、降りてみれば往時の峠道。一部桟道が朽ち、自然の色が濃くなる中でも、しっかりしていた。程なく豊潤な流れが道を横切る。稜線から僅かで、これほどの流れは驚異的で、花崗岩の山ならではの楽しみである。この道でもイワウチワの群落を楽しみ、高度をぐんぐんと落とせば再び沢に沿う。あとは傾斜も緩く、八風峠からの道を併せたのち右岸にわたる。かつてたくさんの人の行き来した道は、石畳も残っており、その脇を清流が流れ落ちる楽しい道だ。
やがて、夏はプールになりそうな感じで水をためている堰堤を過ぎると、左岸の荒れた林道にでる。大きな椿の下には、落ちた花が赤い絨毯のよう。旧街道は林道に寸断されてしまうが、窪みでそれとわかる。しかし今や石碑や鳥居の点在するのみのその道は、ほぼ自然に帰ろうとしている。右の尾根高くに、大きなツツジの木がいくつか、所どころ山を紫色に染めていた。今年のツツジはどの木もたくさんの花を付けている。楽しみな春になりそうだ。

初めての単独行(中峠〜八風峠)

記録

日 程

2000年4月22日(土)

天 候

晴れ時々曇り

コース

1030 射撃場 → 1035 登山口 → 1135/45 御池 → 1200/10 三池岳 → 1225/58 八風峠 → 1310 中峠 → 1332 分岐 → 1350 堰堤 → 1410 射撃場

笹にかこまれた、静かな御池(お菊池)


参考図書・地図
エアリアマップ 御在所・鎌ヶ岳
分県ガイド 三重県の山
25000図 御在所山
50000図 御在所山