静ヶ岳・銚子岳

 静ヶ岳 1089m 銚子岳1019m

山域:鈴鹿
2000.9.3


鈴鹿の山々が見えるところまで車を運転してくると、山並みが秋の澄み切った空気にくっきりと見えていた。稜線の向こうにはかなり雲があるようだが、主稜線あたりは大丈夫のようだ。はっきりと目的を定めないまま山に沿って北に走っていると未踏の静ヶ岳が目に入り、今日はこれだと決めて登山口へと向かっていった。

登山口前の広場に車を停めて、すこし車道を登った所から山道に入り治田峠を目指す。かつて往来の盛んだった峠道ということで、歩きやすい道を想像していたが、いきなり細い道である。小沢を越える前に右に流れに降りて、丸太を組んだ橋を渡るのが正規の道のようだが、そのまま行きすぎてしまい、右岸をへつって行くこととなった。正しい道はすぐに渡りかえしてくるが、丸太が流されているので、いずれにしても徒渉が必要のようだ。正面に堰堤から落ちる滝を見ながら左岸に渡り堰堤を越えると、壊れた小さな小屋があり、その先で細い丸太橋を渡る。その先の右岸一体は堰堤のためにできた広い河原となっているが、概ね草に覆われて、その中の細い踏み跡を草を分けつつ進んだ。広河原を出ると再び右岸をへつる様になり、岩につかまりながら回り込んでいく。このあたりで、中年の夫婦の方が休んでいたが、先は蛭だらけで、おまけに蛇もいて、その上、半袖で来てしまいイバラだらけなので撤退するとのこと。なかなか一筋縄ではいかない道のようだ。
ここの徒渉では靴を脱ぐのが面倒なので、思い切って跳んだところ、やはり失敗して足を水の中に落としてしまった。さらに、もう一度沢を右岸に渡り返すが、ここは単に滑って思わず水の中に落ちてしまい、予期していなかったので、右半身が肩まで水の中に落ちてしまった。
このあたりから道は少し沢から離れていく。そろそろ蛭はどうかなと足元をチェックしてみると、両足で30匹くらいが靴を登ってくるところだった。靴の上を這っているのはもちろん、靴下から盛んに中に首を突っこもうとしているやつや、ズボンの中に入っているものなど。2ヶ所くらい喰われていたが、幸い傷は小さなものだった。大量に蛭を見てしまった以上は数歩毎に足元をチェックしながら行かざるを得ない。チェックする度に新手の蛭が登ってくる。そして手彫りのトンネルの通過となるが、そういった状況なので今一つ気分が悪かった。
トンネルを出て銚子谷を渡り、少しづつ高度を上げていくと人工的な雰囲気の地形と植生が現れる。ここには日岡稲荷があり、まだ真新しいお稲荷さんが祀ってあった。さらに谷筋の緩やかな道を行き沢を数本渡ると、道が斜めに大きく斜面をトラバースしながら高度を上げ始める。落ち葉の積もった道で、これでやっと沢に沿った道から開放され、本格的な登りとなった。やがて小尾根に出ると、尾根上の掘れた落ち葉の積もった道を、ぐいぐいと高度を上げて行くと、中尾地蔵のある広場である。すでにここまでで、治田峠までのコースタイムが経過していているのは、やはり徒渉と蛭で手間取ったという事である。
中尾地蔵を過ぎ、しばらく急坂を登っていくと、道端に笹がちらほら見え始め、それがだんだんと増えてくる。やがてトラバース道となり治田峠に出ると、こじんまりした静かな空間であった。
峠から、小さなコブを一つ越えると右側が展望の開けた稜線に出る。正面に銚子岳が大きく見え、また振り返ると御池岳と藤原岳が正面に大きく見える。ここは茅の尾根で、ススキの穂がなびき、夏の終わりが感じられた。再び林の中の道をゆったりと高度を上げて行き、道が直角に右に曲がるあたりから山頂に向けての急登になる。何度か傾斜がゆるむので、そろそろかと思わせるが、意外としっかり登らされるところだ。やがて傾斜が無くなると三叉路に出て、とりあえず銚子岳の最高点を往復した。山頂自体は展望がないが、すぐ先から、御池・藤原を眺めることができた。ここの往復は15分程度であった。
静ヶ岳へは100m以上下って200m登るような形になる。銚子岳からの下りはかなりの厳しい急下降で、正面に大きく静ヶ岳が見渡せるところに出ると、えぇ〜っ!これを下ってまた登るの!といいたくなるような感じである。ところが木に捕まりながら、鞍部まで下ったあとの静ヶ岳への登りは、実にゆったりとした道で、登りの苦労をあまり感じない気持ちのいい道だ。雑木林を緩やかに登っていくと、だんだん傾斜もなくなり、セキオノコバに出る。不思議な2重山稜状の地形で、尾根の谷間が樹下の草原となっており、一番低いところが池になっていて、なんとも綺麗であった。
静ヶ岳の登り口から山頂までは意外と距離があり、じっくり登っていく。だんだん尾根が細くなり、傾斜がでてくると、まもなく山頂であった。狭いが静かな山頂で、南面が開け、竜ヶ岳から釈迦・御在所・雨乞と南の山々が眺められた。
下山は往路を忠実に辿る。稜線は終始西風が吹いており、この風はたいそう涼しく、もう夏が終わったことを知る。長袖シャツ1枚で登ってくる季節もそろそろ終わりのようだ。さすがに帰りは足を動かすのも速く、登りの時ほどは蛭に絡まれなかったが、それでもかなりの蛭をつまみ上げ、車まで戻って点検するとさらに7匹発見した。朝方は曇りがちだった空も、下山するころにはすっかり晴れわたり、青川周辺には清々しい澄み切った空気が広がっていた。

静ヶ岳・銚子岳は笹の明るい稜線も無く、目立たない地味である。しかし、美しい2次林に覆われ、セキオノコバあたりなど、いい雰囲気を持った山であった。
問題の蛭は、広河原の先のへつりや徒渉を過ぎてから、日岡稲荷あたりまでが、もっとも密集地帯のようだ。それ以降も点々といるようで、少なくとも中尾地蔵あたりまではケアが必要である。

本文中の写真(順に)

  • 静かなたたずまいの治田峠
  • 稜線から藤原岳方面を振り返る


    記録

    日 程

    2000年9月3日(日)

    天 候

    曇り時々晴れ

    コース

    0945 登山口 → 1118/25 中尾地蔵 → 1145/53 治田峠 → 1227/31 銚子岳分岐 → 1236/43 銚子岳 → 1325/40 静ヶ岳 → 1424/30 銚子岳分岐 → 1505/10 治田峠 → 1630 登山口

    ガレが発達した銚子岳南面


    参考図書・地図 その他のコース
    エアリアマップ 霊仙・伊吹・藤原
    アルペンガイド 鈴鹿・美濃
    分県ガイド 三重県の山
    25000図 竜ヶ岳
    50000図 御在所山
    治田峠へは、峠の反対側の大君ヶ畑から茨川を経て登ってくることができる。
    静ヶ岳へは竜ヶ岳から北上して達することができる。また往復にせず、竜ヶ岳経由で下山しても良い。
    銚子谷を詰めて静ヶ岳付近に出る沢登りのコースがあり、これはエキスパート向き。
    バス
    近鉄北勢線 阿下喜駅から、三重交通バスで新町まで(終点)
    三岐鉄道 伊勢治田駅から徒歩
    新町バス停から登山口までは徒歩1時間20分。伊勢治田駅から新町までは徒歩40分。