吾妻耶山

 吾妻耶山 1341m 大峰山 1254.5m
 山域:上越国境(谷川岳周辺)

記録
 山行日2012年5月19日(土)
 ルート上牧駅〜大峰沼〜大峰山〜吾妻耶山〜仏岩〜水上駅
 コースタイム0808 上牧駅 → 0900 登山道入口 → 0927/43 分水不動尊 → 1003 大峰山頂分岐 → 1006 大峰沼 → 1026 大沼越 → 1044 キレット → (休憩15分) → 1124/28 大峰山 → 1152 赤谷越峠 → 1215 山頂分岐 → 1225/1317 吾妻耶山 → 1347 中腹コース合流 → 1407 仏岩 → 1421 仏岩峠 → 1433/40 仏岩ポケットパーク → 1540 ふれあいセンター → 1620 水上駅
 天候晴れ

週末は関東一円どこも快晴の予報でした。今週は特にどこへ行くと決めていなかったので、なかなか意気が上がりませんでしたが、快晴の中で山を歩いていないと絶対に後悔すると思い、かといって交通機関などの調べ物をするまでの元気も無かった中で、ガイドブックを見ていて、駅から歩けてコースタイムも手頃な吾妻耶山が目につき、決定しました。かなり開発の進んだ山という印象があったのですが、意外とそういったストレスもあまり無く、絶好の展望を楽しむことができました。

朝の上牧駅のホームから、青空の下に吾妻耶山と大峰山がくっきりと見えていた。駅を出て、雪解けの水が奔流となって流れる利根川を渡り、大峰沼の標識に導かれてゆったりと登っていく。関越自動車道をくぐって高台に出ると、春の田園風景の先に目指す大峰山が見えてきた。小和知の集落も過ぎるとやがて舗装路は登山道へと変わり、暗い樹林の中に入っていった。
多少広めの登山道は、樹林の中のゆっくりした登りである。途中から道の上が水っぽくなり、ついに小さな流れとなってしまう。右手の小沢が滔々と流れており、そちらからあふれ出ているようである。靴が濡れないように、乾いたところを拾って歩く。道が高度を上げていくと水流も無くなり、時々擬木の階段や木道も現れるようになる。沢音も遠くなり、樹林の中を歩くうちに、左からの荒れた林道を越えると分水不動尊が見えてくる。湧き水も大量で、ここで休憩した。
少しずつ道は傾斜を増していくが、急登とまではいかず、若い植林地を登っていくと、再び暗い林の中に入っていく。植林地を登りきると大峰沼への道は左へと向きを変え、広葉樹の新緑の美しい平坦な道となった。途中に昭和の時代を思わせるホーロー看板を発見。同種のものをかつて荒船山の山頂でみたことがあるが、「全観連・国鉄・群馬県・日本交通公社」の文字が時代を感じさせる。更に進むと右に大峰山に直登する道を分け、緩やかに下って大峰沼に着いた。
大峰沼はそれほど大きくないが、山上の湖沼として素晴らしい風景である。湖面には新緑の大峰山と青空を映し、久しぶりに見るこのような風景に楽しくなる。左手の湖畔を周回する道に入り、湖面の風景を楽しみながら進む。丁度反対側まで来たところで、周回路から別れ稜線への道へと入る。急登ではあるが、距離はさほどでは無く、一登りで涼しい風の吹き抜ける大沼越に立った。
大沼越から、大峰山の細長い稜線に沿った登りとなる。少しの急登のあと細い雑木林の尾根を緩やかに登る。新緑の道は素晴らしく、どんどん足が進む。小さなアップダウンを繰り返し1179m地点まで登るとキレットになっていて、長い階段を下る。以前は鎖が三本あったらしいが、階段が整備され歩きやすくなっている。風の吹き抜ける狭い鞍部から階段を登りかえすと、再び雑木林の細い尾根となり、気持ちのいい尾根上でゆっくり休憩した。
キレットから登り返し、道が緩やかになってくると間もなく最初の電波塔が現れる。ここまでは作業車両など車で上がってこられるようで、登山道は未舗装の車道となる。その後展望台もあるが、木の梢より低そうなのでパス、されに幾つか電波塔の横を通る。このあたりは平坦な長い山頂部で、西側は緩やかな植林地だが、あまり整備されていず少々荒れている感じである。緩やかな道を歩くと大峰山の山頂に到着。笹の中の標識でそれと判るが、電波塔といい、植林地といい、どうにも雑然とした雰囲気だ。
山頂を過ぎて吾妻耶山との鞍部へと下る。最後の電波塔を過ぎ、樹林の中の下りとなるが、思ったほど長くは続かず、やがて小さなアップダウンを繰り返すようになる。このあたりは二重山稜となっていて、地形も複雑である。遠くスキー場の方からオルゴール音が聞こえてきた。スキー場のリフトが動いているのだろう。歩いているのは静寂の山の中のはずなので、今ひとつの雰囲気である。
小さなアップダウンの末、十字路となっている赤谷越峠に着き、そのまま吾妻耶山への登りとなる。緩やかな尾根の直登から、吾妻耶山の西斜面をジグザグに登る道に変わる。合計150mくらいの、今日最後の登りである。山の陰に入ったのか、スキー場からの音は消え、最後ののぼりを楽しむことができる。植林地と雑木林を出入りしながらのつづら折の道を行くとやがて傾斜も消え、吾妻耶山の西端に着く。吾妻耶山の山頂は平坦ではあるが、二重山稜のような形で、折り返すように東端の山頂へと向う。この山頂部でキクザキイチゲの群落に出会った。可憐な薄紫の花はこの時期ならではで、丁度いいタイミングで見ることができて幸運だった。
間もなくスキー場からの道に合流し、少し進めば山頂であった。山頂には大きな石の祠が三つ並び、その先に大展望が広がっていた。正面に谷川岳が大きく、平標山までの稜線と、白毛門までの稜線。その向こうに巻機山。上州武尊と尾瀬から会津にかけての山々。日光、足尾の山々と、まだ高い山は白く光り、丁度雪形が現れる季節。雲一つ無い大展望を思う存分楽しむことができた。しばらくの間山頂の風景を独占し、やがて人が増えてきた頃山頂を後にした。
山頂部の西端まで戻り、仏岩への道に入る。浮石の多い急坂の下りとなり、木につかまりながら注意して降りる。時折正面に谷川岳が顔を出すので、最後の展望を楽しみながらの下りである。このあたりはシャクナゲが多く、花は少ないが時々目を楽しませてくれる。やがて、赤谷越峠からの中腹を巻いてきた道と合流すると、傾斜は緩やかになり、様相は明るい新緑の道へと変わる。これをしばらく辿れば仏岩に到着。青空に突き出た仏岩はなかなか立派である。岩の基部に行ってみたが、鎖が切れており、登ることはできなかった。
仏岩から僅かな下りで仏岩峠に出て、あとは仏岩トンネルの出口に向うのみである。峠からは植林の中の下りを行けば、やがて車の音が聞こえてきて、仏岩ポケットパークと言われる大きな駐車場に降り立った。さて、水上駅まで2時間の車道歩きである。足元を整え、長い車道歩きをスタートし、歩くこと1時間。関越自動車道と交差するところに、高齢者向けの施設であるこぶしの里ふれあいセンターがあり、これが峠から歩いて初めて見る建造物。その先に日帰り温泉施設である仏岩温泉がある。
ここからは先は、阿能川の集落に入り、比較的平坦になった道を阿能川の急流を眺めながら歩けば、やがて国道291号に出た。さらに水上温泉の旅館街を抜け水量の多い利根川沿いに正面に谷川岳を仰ぎながら水上駅へと向う。かつては特急列車の行き来した水上駅は今では普通列車のみとなり、長大なホームが往時を偲ばせるばかりであった。

大峰山から吾妻耶山のコースは、古くからのハイキングコースのようですが、開発も進み人工物も交錯するような所もあるかと思っていました。しかし電波塔群以外はそういったものは目に入らず、ずっと自然の中を歩くコースでした。そしてなにより絶好の展望に恵まれ、見所も多く充実したハイキングとなりました。谷川連邦と尾根続きの一角を歩いたということで、この展望を見て、久しぶりに上越の山々に登ってみたくなりました。

本文中の写真

  • 小和知集落から見る大峰山
  • 大峰沼の風景
  • 大峰沼に姿を映す大峰山
  • キクザキイチゲ
  • 山頂からの谷川連邦の展望
  • 仏岩


  • 参考図書・地図
    アルペンガイド 谷川岳と越後の山(2000年6月第1刷)
    エアリアマップ 谷川岳(1993年版)
    25000図 猿ヶ京 水上
    50000図 四万

    吾妻耶山山頂に並ぶ三つの祠
    その他のコース
    ・古沼駐車場→大峰沼
    ・湯宿温泉→大沼越
    ・南ヶ谷林道→吾妻耶山中腹道
    ・ノルンスキー場→吾妻耶山
    ・千葉村市民ロッジ→仏岩峠
    大峰山は大峰沼側、吾妻耶山は西側の中腹道とそれぞれ山頂を巻いていく道があるので、幾つかの登下降路と組み合わせて、いろいろなコース取りができます。
    交通機関
    このコースでは、特にバス利用はありません。