先日、岩崎元郎氏の「登山不適格者」を読んでいると、普通の山歩きがしたくなりました。金曜日は前々から休暇でも取ろうかと思っていたので、蛭ヶ岳山荘に雪の具合を聞くと、稜線には全く雪が無いとのこと。さっそく計画を立て、平日運行の月夜野方面のバスを利用して焼山から蛭ヶ岳を目指すこととしました。
1日目
元々、あまり丹沢に通っていなかったこともあって、ロングコースとなってしまう、丹沢山〜蛭ヶ岳にはまだ登ったことがありませんでしたが、今回は2日間時間がとれたので、思い切って出かけて見ることにしました。今年は異常なほどの暖冬のため、まだ2月というのに稜線にはもう雪が無いとのことで、ほぼ無雪期と同じ山歩きとなりそうです。ただし、金曜日は寒波の為、気温は平年並みに下がるとのこと。それなりの覚悟と期待をもって出かけました。
橋本からバスを乗り継ぎ、三ヶ木発10時の西野々行きをつかまえます。青野原から月夜野方面に向かうバスは、いまや平日のみの運行となってしまい、今回のように会社を休まない限りは利用することが出来なくなってしまいました。そして乗ったバスも最後まで客は私一人。人の流れとは逆方向なのでしょうが、寂しいものです。
焼山登山口でバスを降りて、少し先から「焼山近道」の道標に従い左折します。車道に沿って進むと正面にこれから登る焼山が見えてきました。そして、橋を渡ると作業場があり、そこで舗装は途切れますが、登山口はさらに少し行ったところにありました。この林道を直進しても、もう一つ登山口があるようですが、今日はここから登ることとしました。
登山道に入って少しジグザグに登ると、東海自然歩道に合流しました。植林地の中のゆったりした登りとなり、少しづつ高度を上げて行きます。今日は5時間以上のロングコースです。それも、時間的余裕がそれほどある訳ではありません。まずは調子を作ろうと、スタートして1時間は、じっくりと歩きに集中することとしました。
時々植林が切れて回りの山々が見えると、自分が、少しづつ高くなっていくのが解ります。やがて植林地から抜け雑木林になると、道は尾根の左側をトラバースするようになりました。このトラバースの途中で、スタートした登山口よりさらに先から登ってくる道が合流しました。東海自然歩道の「副道」という標識がありました。
トラバースが終われば、急な尾根を九十九折りで登るようになりますが、そろそろ出発して1時間でもあり、道端に座って休憩しました。陽の光が当たっているところは暖かく、もう春の強い陽射しになったなと感じました。
しばらく明るい尾根道を進むと、左側に見えていた尾根がだんだん近づいてくるので、山頂も近いことが解ります。道は再び植林地の中に入り、暗い斜面の中の道となります。これを登りきれば再び明るい尾根に出て、緩やかに少し登れば焼山頂上と巻道との分岐となりました。山頂への道を辿ると、ひと登りでシラカバが立ち並ぶ山頂直下の斜面へと出ました。
焼山山頂には展望台があり、登ると宮ヶ瀬湖や丹沢三峰を見ることが出来ました。山頂は、広く三角点や石の祠があり、園地のような雰囲気です。山頂周辺のシラカバは植えられたもののようです。休んでいるうちに頭上に雲が出てきて陽が陰ってしまい、今日は気温自体は低いようで、陽があたらないとやはり肌寒く感じました。
焼山からは緩やかな縦走路となります。元の道と合流し、ほとんど傾斜の無い雑木林の明るい道を行きます。すぐに鳥屋からの道が合流し、尾根を回り込んでいくと、これから向かう蛭ヶ岳が姿を現しました。まだまだずいぶん遠くに見えます。
頭上には厚い雲が現れて陽を遮っていますが、ここより北の方はよく晴れていて、何とも恨めしい限りです。平丸への分岐を過ぎると、黍殻山の登り口となりますが、今日は先を急ぐ為にパス。さらに進んでもう一つの登り口を過ぎ、黍殻山を巻き終わるころ、大平への分岐が下っていきます。そして左下の広場の中に黍殻避難小屋を見ると、ベンチのある青根の分岐へと着きました。焼山からここまでは、ほとんど平坦な道でした。
まだ陽が陰っているので肌寒く、姫次に向けて出発します。ここからは緩やかな登りになり、少しづつ高度を上げて行きます。このあたりでやっと雲が切れて、暖かくなって来ました。八丁坂ノ頭で再び青根からの道が合流し、さらに進んでいくと、カラマツの林が出てきます。稜線の葉を落とした木々の下は青笹が茂り、ちょっと雰囲気が変わってきました。姫次の最高点のあたりを過ぎたあたりで、道は粉のようなカラマツの落葉で埋まり、広くなってきます。そして緩やかに少し下ったところが、蛭ヶ岳と神ノ川方面との、姫次の岐で、開放感のある広場でした。
姫次から正面に富士山が見えましたが、雲がかかって全体を見ることは出来ませんでした。そして、これから登る蛭ヶ岳や、檜洞丸と犬越路を挟んでは大室山、奥には御正体山と名山が連なっています。そして、臼ヶ岳の向こうに一際とんがった山が見えています。地図で見ると同角ノ頭らしいのですが、なかなか堂々とした山容でした。姫次にいる間は陽が射して暖かく、明るい風景を存分に楽しむことができました。
姫次を出発し荒れた道を下って行くと、原小屋平の広場に出ます。確かに小屋跡という雰囲気がありました。ここから蛭ヶ岳への登りが始まります。しばらくは小さなアップダウンを繰り返していきますが、このあたりは地蔵平との名もあり、深い森の雰囲気がある所です。道は尾根通しではなく、ピークは避けながら進んでいきます。雲っているので、よけいに深山の雰囲気が強いのかもしれません。
道はやがて最後の登りへと向かって行きます。道の周辺にいた鹿たちが何頭か逃げて、遠巻きにこちらを見ていました。最後の登りに入るあたりから、道には木道や階段が整備され、道の崩壊を防いでいます。急坂の階段を登っていくと、やがて崩壊地の横を通ります。新たな崩壊を防ぐべくいろいろと対策を打っているようですが、なかなか崩壊の進行は厳しいようです。
斜面を登って行くとさらに崩壊地があり、ここで道は右に向きを変え、残り300mの最後の登りとなります。あたりはすっかり雲がたれ込めてしまい、いずれガスに包まれそうな雰囲気です。時折白いものが舞っているようでもあります。ここにきて、いままで歩きづめできた足がそろそろ疲労を訴え、時々足が止まるようになってしまいました。そして、頂上に向けて最後のひと登りを頑張り、山荘のある頂上に到着。雲が出て薄暗く、寒い頂上でありました。
山荘で宿泊の手続きをすると、今日は3名とのこと。どこでもいいから適当に寝ていいという感じなので、嬉しい限りです。ストーブにあたって歓談しつつ時間を過ごしました。夕食後あたりが明るくなったので頂上に出てみると、いつの間にか随分と雲がとれています。丁度陽が沈む頃、富士山にかかっていた雲もほとんど無くなってしまい、真っ赤な空の中の富士山を楽しむことができました。あたりはいつか暗くなり、ビデオを見ながら消灯までの時間を過ごします。消灯の前に一度外を見てみると、眼下には素晴らしい夜景が輝いていたのは見事でありました。消灯は20時でした。
2日目
朝の山頂はすっかりガスに覆われていました。前夜の小屋番さんの話では、今年は天気のいい日が多くて霧氷があまり出ないという話でしたが、今朝はガスと充分な低温のおかげで、「今日は霧氷がついているよ」という小屋番さんの声が聞かれます。そして、すっぽりとあたりを包んでいたガスも、食事を終わる頃には晴れ始め、日の出と共に少しづつ青空が広がってきているようでした。
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今回は、丹沢の主要部分を歩くことができました。これで、東京近郊の山の中で、未登で、もっとも気になっていた山を歩くことができて、ひとつ胸の支えが取れたような感じです。そして、丹沢の核心部を歩いてみて、丹沢の山の魅力がまた少し解ったような気がしてきました。まだまだこの周辺は歩いていないところも多く、楽しみは尽きません
鬼ヶ岩への登りから蛭ヶ岳を振り返る
参考図書・地図 | その他のコース |
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エアリアマップ 丹沢 アルペンガイド 丹沢(山と渓谷社) 25000図 青野原 大山 50000図 上野原 秦野 |
その他のコースについては、今回の行程自体が長い縦走の為、途中の合流・分岐は多岐に渡り、書き尽くせません。 主要分岐は本文中に記入しましたが、必要に応じエアリアマップを参照願います。 |