菰釣山

 菰釣山 1379m ブナ沢ノ頭 1229m
 中ノ丸 1270m 城ヶ尾山 1199m


山域:丹沢
2002.3.23


ずいぶんと久しぶりに丹沢に向かいました。調べてみると、四日市に転勤前の99年10月の鐘ヶ岳以来です。2年半もご無沙汰していたことになります。丹沢の山が嫌いな訳ではないのですが、人が多い・人工的な道が多い・登りがきついというイメージがあって、どうも二の次になっていました。
しかし今回の山行はそのようなイメージを一新し、丹沢の山をすっかり見直したのでした。

前日の雨が朝まで残るどんよりした空だった。21日の祭日にもこの山を目指したのだが、中央道の気の遠くなるような渋滞の報を聞き、途中であきらめて引き返してしまった。今日はこの天気なので、そこまでは混まないだろうと、出発する。しかし湾岸は千葉から都心まで渋滞、京葉に回るとそこそこ流れる。1時間以上かけてやっと都心を抜けた。普通なら八王子付近まで到着している時間である。
高尾の山並みも今日は雲に沈んでいた。相模湖ICで降りて月夜野へと向かう。よくバスで通った山間の道である。月夜野から山並みを縫って道志川沿いに平地の広がる、明るい山村に入る。このあたりまで来て、やっと青空がのぞき始めた。今日の天気は晴れ時々曇りなのである。遅くなるほど良くなるはずなのだ。
道志村の中心部を過ぎ、都留への分岐を過ぎたあたりで、道志の森キャンプ場へと入る。キャンプ場付近からから未舗装となり、右に西沢林道へと入っていく。この林道は路面が荒れ気味で、車高の低い私の車は時々底をこすることになる。ゆっくりと進むと、三ヶ瀬西沢を林道が渉るところに出るが、ここで鎖が張ってあり、車はここまで。しかし、もう登山口は近い。
車から降りて林道を奥へと進む。西沢から分かれてブナ沢に沿って道は続いていく。右側の斜面は崩壊が始まっているが、崩壊した斜面にフキノトウが咲いていた。林道がブナ沢を横切ったところが登山口である。西沢林道は、そのまま山腹を巻いて三ヶ瀬東沢の方へと延びる。登山口には水が引いてあり、勢いよく流れ出ていた。
道志山塊の主脈の方の雲はほとんどとれて、春の日差しが戻りつつあった。しかし、丹沢の上はまだ曇ったままだ。階段を登ると植林の中の道になり、すぐにブナ沢に下る。なんだ、これならそのまま沢に沿ってくればいいのではないか?と思う。道はブナ沢に沿って登るようになる。沢には苔むした石が転がり、周りにブナの木が林立する。素晴らしい道である。苔むした岩は上流に豊かな森があることを約束してくれる。ふと、鈴鹿の森を思い出す。木の種類は違うが、雰囲気がよく似ている。近くにこんな道があったのかと、思いを新たにする。
道はしばらく沢を左右に絡みながら登ったあとで、源頭部の緩やかな笹の斜面を折り返しながら行くようになる。振り返るとブナの森が広がり、その先に明るい道志の山が見えている。そして折り返しが終わると稜線上の東海自然歩道に合流した。
稜線の道は広く笹が刈られていた。菰釣山の方に少し登ると、菰釣避難小屋が現れる。頭上にはちょうど暑い雲があり、この時空から白いものが少し落ちてきた。避難小屋の周囲がしっとりとしてなぜかいい雰囲気である。
避難小屋から菰釣山までは、ブナ林の中、笹の道が続く。傾斜はきつくはないが、緩むことなく高度を上げる。美しい森の中の淡々とした登りである。目指す山頂を正面に見上げるようになると、位置的にちょうど富士山が見えるはずだと想像を膨らませる。しかし、この曇天では期待薄かもしれないとも思う。
山頂に着くとやはり富士山は裾野しか見えなかった。しかし、御正体山さすっかり青空の下で大きく見えており、その先には石割山や杓子山が見える。富士山の手前には、三国山と山中湖が広がる。左側には愛鷹連峰が連なる。いい展望に満足である。
菰釣山の山頂にも一瞬陽が射した。陽が射すと同時に小鳥のさえずりがわきあがる。陽が射すと、山頂周辺のブナ林はとても明るい雰囲気になる。富士山の方を見れば、雲が少し上に上がっていた。もう押し寄せる雲もなさそうなので、このまま待っていれば雲はすっかり無くなってしまうのかもしれない。明るい雰囲気は気分が良く、長居を決め込んで缶ビールを出した。
再び山頂を雲が覆う。いつの間にか麓から聞こえる車の音もやみ、鳥もさえずりをやめる。しばらく静寂の音を聞く。眼前の御正体山・杓子山・石割山そして、今倉山。すべて四日市時代に、夜行バスで東京に戻った時に登った山だ。ひとつひとつ新しいピークを踏み、今それらがあちこちにある。静かな山頂で山々を眺めると、登った時のことを思い出す。歩き続けてきて良かったと思う。
再び明るくなってくる。富士山の雲もすっかり消た。この山頂からの眺めは良い。石割山からは遮るもののない富士が見られるが、ここでは、ブナの木を前景にたてて、富士を見ることがでくる。やはりここは素晴らしい山頂だと思った。
山頂をあとに、避難小屋へと引き返す。すっかり明るくなり、雰囲気は違っていた。中を覗くと、きれいに整備されたいい小屋であった。ブナ沢への下降点を過ぎて、城ヶ尾峠を目指す。分岐からは道幅も狭くなり、普通の山道になる。ブナの木の立ち並ぶ雰囲気のいい道が続く。ゆったりとブナ沢の頭に登ると、急な下降で鞍部に降りる。目の前に中ノ丸が立ちはだかる。この登りが今日の行程では一番の急登であった。最後は古い階段がついていたが、階段でもないと、雨でも降れば滑って大変だろうと思う。登り切って少し息を整える。中ノ丸はその先のピークである。ベンチのあるブナに囲まれた笹原の中の山頂だ。
中ノ丸からは、いくつかの小ピークのアップダウンがあったのち、三角点のある城ヶ尾山に着く。このあたりから植林が出てくるようになる。そして一くだりで城ヶ尾峠である。すでに時間は午後3時であるが、春の日差しがあり、夕刻でも寂しさが無い。城ヶ尾峠から相模側は崩壊等があり、立ち入らないようにとの看板が立っていた。
城ヶ尾峠から道志側へと下る。しばらくは斜面のトラバースが続くが、途中急な崩壊地があり、注意が必要だ。尾根に乗れば歩きやすい雑木林の中を、どんどん下っていくことができる。そして植林の中に入るとあとはひたすら足を動かすのみ。すぐに林道に出た。
林道に出たので、サンダルに履き替える。ずいぶん上まで林道を造ったものだと思う。切り崩した斜面は崩壊しやすいようで無惨である。しばらく下ると水晶橋に出た。ここからキャンプ場まで下って、車で走った林道を歩いて戻ることもでくるが、ここから菰釣山への登山口までも林道がつながっているので、そちらを歩くことにする。林道は水平につけられているように思ったが、実は常に少しづつ登っているようである。ただただひたすらあるく。陽は射しているもののこの時間になると多少肌寒い。
山襞を何度も回り込むと、頭上に中ノ丸やブナ沢の頭らしき稜線を見る。林道は意外に稜線に近く、また植林も実は稜線近くまで上がっていることがわかる。ただし、菰釣山周辺はあまり植林は無いようである。いつまでもあの素晴らしいブナ林が保全されることを願ってやまない。
尾根の切り通りが崩壊し、車道を覆っているところを過ぎれば、道は下りとなりまもなく、先ほど分け入った登山口を通る。そしてまもなく三ヶ瀬西沢についた。あたりはすっかり冷え込んでいた。

このあと、すぐに帰っても渋滞に巻き込まれるだけだと思い、道志の湯に入ってゴロゴロしていました。そして、帰路は首都高4号は渋滞しているようでしたので、横浜ICまで向かいましたが、鶴間でしっかり渋滞してしまいました。厚木に出れば良かったかもしれません。鶴間の交差点は夕方は通ってはいけませんね。
今回は丹沢に久しぶりに登りましたが、なかなか良かったのでまた遊びに行きたいと思いました。あのあたりはほとんど立ち入ったことが無いので楽しみです。

本文中の写真

  • ブナ沢と苔むした道
  • ブナ沢源流
  • 静かな佇まいの菰釣避難小屋
  • 山頂から御正体山の展望
  • 冬枯れで明るい城ヶ尾峠



  • 記録

    日 程

    2002年03月23日(土)

    天 候

    曇りのち晴れ

    コース

    1130 三ヶ瀬西沢徒渉点 → 1140 登山口 → 1205 国境稜線 → 1212/15 菰釣避難小屋 → 1240/1330 菰釣山 → 1350 ブナ沢分岐 → 1430/35 中ノ丸 → 1500 城ヶ尾山 → 1505/10 城ヶ尾峠 → 1527 林道 → 1545 水晶橋 → 1635 菰釣登山口 → 1642 三ヶ瀬西沢

    菰釣山山頂からの富士山


    参考図書・地図 その他のコース
    エアリアマップ 丹沢
    アルペンガイド 丹沢(山と渓谷社)
    25000図 御正体山 中川
    50000図 山中湖 秦野
    山伏峠方面から縦走してくると、菰釣山に到達することができます。
    他には、白井平から前ノ岳を経ても登ることができます。
    バス
    富士急行(都留中央バス)
    月夜野発 富士吉田方面(道志乗り換え)あるいは、
    富士吉田発 道志方面で、下善之木下車
    富士吉田発、朝の便は東京からでは無理です。月夜野からは接続の神奈川中央交通のバス路線が変更になっていますので、以下を参考に確認をお願いします。土曜と日祝日でも違います。
    時刻等は、富士急行ホームページをご参照ください。
    また、関連路線の時刻は神奈川中央交通をご参照ください。(かつての藤野駅〜月夜野の路線は、現在藤野駅〜やまなみ温泉・やまなみ温泉〜東野に分割されて運行されております。)