秋田駒ヶ岳

 男女岳 1637.4m 男岳 1623m 横岳 1583m 焼森
山域:八幡平周辺
2001.8.20.



東北の山旅3日目は秋田駒ヶ岳にしました。手軽に登れて東京に余裕で帰ってこれる山ということでいろいろ探していると目に留まったからです。登って見ると予想以上に展望と花の大変素晴らしい山で、かなり感動的でした。

1.八合目へ

早朝の田沢湖駅前から乗った乗客は私1人であった。今日も快晴の青空が広がっており、今回の山行はとても恵まれていたと思う。バスは市街地を抜けると、田沢湖畔に寄り、高原温泉へと上がっていく。田沢湖から1人乗客があり、高原温泉からはたくさんのハイカーが乗り込んできた。温泉街に泊まるのが普通なのかもしれない。
広大な駐車場を過ぎると、狭いつづら折りの道に入っていく。現在はマイカー規制期間中で、その代わりバスが30分に1本くらいの頻度で走っている。大型車が通ると離合はできないような道で、マイカーがこれに混じって走ることは不可能であろう。
樹林の中の坂道を上っていくと、やがて視界が開けて秋田駒ヶ岳の山頂部が見えてくる。こんもりと盛り上がった感じで、なによりも背景の深い青空が素晴らしい。道は八合目が近くなると傾斜は緩くなるが、カーブが急になったような気がする。そして程なく八合目駐車場に到着。涼しい空気だが、日が照っていてちょっと暑さを感じた。今日は焼けそうである。

2.秋田駒ヶ岳

登山口から見晴らし台を経て、山道に入る。しばらくは背丈ほどの樹林の中の、ゆったりした登りが続く。火山性の露岩の尾根の見える谷を越え、緩やかに駒ヶ岳の山頂を周回するように登っていく。やがて木の丈も低くなり展望の道となった。背後には笹森山や湯森山の穏やかな山稜が綺麗にみえている。
それにしても花の多い道だ。ノコンギクが咲き、トリカブトの紫が揺れる姿に、もう秋を感じる。ゆったりと尾根を回りこんでいくと、斜面がシシウドの花に真っ白に彩られる。想像していたより遙かに見事な景観である。しかし、これはまだまだ序の口であった。
やがて片倉岳と表示のある肩に着く。ここで秋田駒ヶ岳山頂部のドームが青空に浮かび上がった。部分的の崩壊はあるが、鉄兜のような山容である。そらにこのあたりから眼下に田沢湖が見え始める。移りゆく景色のある、本当に飽きない道である。登山道はまた花で彩られる。ツリガネニンジン属の花は、ハクサンシャジンだろうか。そしてウメバチソウ(エゾウメバチソウ?)がたくさん咲いている。
だんだん道が平坦になり、男岳と男女岳の間の平地へと入っていく。このあたりは花の草原である。ハクサンシャジンが一面に咲き、アザミの花も多い。しばらくすると阿弥陀池が見えてくる。向こうに見える小屋は今改修中だ。
湖岸の木道を進み、まずは男女岳の山頂に登る。階段の1本調子に登りだが、少しの辛抱で周りの風景がどんどん変わっていくのが楽しい。ここから太平洋側は一面の雲海になっている。ちょうど東北の脊梁にあたるこの山塊を中心に、はっきりと天候が分かれているのだ。その雲海の上に孤島のように早池峰山が頭を出している。岩手山も、雲海の上にゴツゴツした特徴的な山容を見せていた。
山頂はまさに360度の展望だ。早池峰山、岩手山から乳頭山、八幡平、森吉山その奥には岩木山と八甲田山。南の方には鳥海山に和賀岳、焼石岳と、東北北部の山々が勢揃いである。これほど楽に登れて、花が多くていろんな形の特徴のある山々が見られるという山も珍しいのではなかろうか。ここは山々の中心のような場所であった。そして、和賀岳の北あたりの山稜の低くなったあたりから、太平洋側の雲海が広大な滝のように落ちているのも面白い光景であった。
男女岳から下山し、阿弥陀池の反対側を通って男岳に登る。ガラガラした道を稜線に出ると、花の多い尾根道になる。反対側は大きく切れ落ちており、下にはまだ溶岩が固まったばかりという雰囲気の女岳と、小さな吾妻小富士を思わせる小岳が見える。国見温泉からの道がそれらの火山地帯の中を通ってきており、なかなか面白い地形の中の興味深い道だ。
男岳へは若干岩間じりのヤセ尾根を登って行く。山頂は立派な祠が祀られており、ここも大展望の山頂であった。ここから見るべきは田沢湖と鳥海山そして眼前の和賀岳である。そして、中生保内コースの伸びやかな笹の尾根や、姿見の池なども見えて、なかなか気持ちのいい山頂であった。
男岳からは稜線伝いに横岳を目指す。鞍部から稜線の最高点までは、岩の多い痩せた道が続くが、花も大変多い。多いのはウメバチソウだが、ヤマハハコやフウロソウの仲間なども見ることができた。この稜線は、男岳や女岳、そして阿弥陀池越しに男女岳と、秋田駒ヶ岳の峰々を眺めるのにも良い。この稜線のピークは、ハイマツの生い茂ったこんもりしたところであった。
少し下ると阿弥陀池への道を分け、横岳山頂に出る。あまり山頂という感じは無いが、国見温泉への分岐と三角点がある。正面には草木の生えない、丸い焼森へと続く道が延びており、さらに進んでいく。このあたりから振り返ると、男女岳と男岳が並んだ形で、秋田駒ヶ岳山頂部の全景を見ることができる。
柵に仕切られた広い道を行くと、饅頭の頭のような焼森である。ここから先は湯森山を経て乳頭山に向かう縦走路が続いている。また湯森山から笹森山を経て八合目に戻ることもできる。今日はなんとなく疲れを感じたので下山することにしたが、ここから乳頭山までは、実に伸びやかな草原の稜線を見せており、いつか必ず縦走してみたい。
焼森からの下りは滑りやすい土の道だ。そして乳頭山方面への分岐を分けると、今度は砂走りのような道になる。いつ滑ってしまうかと、ヒヤヒヤしながら下って行く。ここを過ぎれば小さな沢に降りたって、対岸に登り返し、少し木の丈が高くなった道を淡々と下るようになる。これを下りきれば八合目の駐車場に出た。丁度高原温泉行きのバスが出るところでこれに乗り、高原温泉で乳頭温泉からのバスを待った。
さて、東京に帰らなければならない。「こまち」に乗ってみたが自由席はデッキや通路まで満員。とりあえず盛岡まで我慢して連結した「やまびこ」に乗り移るが、自由席まで車内を通って行こうとすると、混雑していて手前の指定席から先に進めなくなった。しかたがないので空いているデッキを探してザックを椅子にして座り込んだ。幸いこのデッキは空いていて、終始2〜3人しかいなかったのと、仙台・宇都宮・大宮しか停まらない新幹線だったので、ザックに座ってビールを飲みつつ、意外と楽に帰ることができてラッキーであった。

東北の3日間は連日素晴らしい晴天に恵まれ、たいへんいい旅ができました。展望あり花あり湿原あり、これほど満足したのも久しぶりです。帰ったらまた行きたくなってしまいました。今度はどこにしようかな〜!

シシウドの仲間ハクサンシャジン?アザミトウゲブキ
ヤマハハコチシマフウロ?ウメバチソウトリカブトの仲間

本文中の写真

  • 片倉岳付近からの秋田駒ヶ岳(男女岳)
  • 片倉コースの草原と男岳
  • 男女岳への登りから見る岩手山
  • 阿弥陀池に写る男岳
  • 山頂部が黒々としている女岳



  • 記録

    日 程

    2001年8月20日(月)

    天 候

    晴れ

    コース

    0710 八合目バス停 → 0815/20 阿弥陀池 → 0835/0900 男女岳 → 0910 阿弥陀池 → 0930/45 男岳 → 1020/25 横岳 → 1035 焼森 → 1110 八合目バス停

    秋田駒ヶ岳山頂部全景


    参考図書・地図 その他のコース
    アルペンガイド旧 東北の山
    アルペンガイド  八甲田・白神・早池峰
    昭文社エアリアマップ 八幡平
    25000図 秋田駒ヶ岳
    50000図 雫石
    秋田駒ヶ岳に登るコースとしては、
     中生保内コース (旧3合目〜男岳へ)
     横長根コース  (国見温泉〜横岳へ)
     笹森山コース  (乳頭温泉〜笹森山〜八合目へ)
    いずれも山麓からじっくり登るコースですので、本文のコースよりは遙かに本格的になります。
    バス
    田沢湖駅前〜駒ヶ岳八合目(羽後交通)
    あるいは、田沢湖駅前〜高原温泉(乳頭温泉行き等にのり途中で下車)さらに高原温泉〜駒ヶ岳八合目へ乗り継ぎ
    シーズン中は本数が多く出ています。
    羽後交通 田沢湖営業所 0187-43-1511

    温泉
    周辺には、田沢湖高原温泉・水沢温泉・乳頭温泉郷など、よりどりみどりです。