白神岳

 白神岳 1231.9m 蟶山 841.1m
山域:白神山地
2001.8.19.



東北の山旅2日目は白神岳です。2年前に一度計画したことはあるのですが、台風の接近のため大事をとって他の山に変更しました。世界遺産という名前に惹かれて ということもあるのですが、東北のブナの森を代表する山域にある山は、一度はたずねてみたい山ですね。

1.朝の登山口

朝、能代のビジネスホテルを出ると、快晴の空が待っていた。空気は凛として冷たく、もう初秋になったのかと思わせる。散歩やジョギングをしている人々に時々出会うだけの住宅街を抜け、人影もまばらな能代駅に着いた。
東能代発岩館行きの始発の五能線に乗る。米代川を渡り田園地帯を走っていくうちに眠ってしまい、いつの間にか岩館駅に着いていた。この列車は客の数のわりには5両編成で、折り返しは通勤通学列車となるのだろう。岩館から接続の弘前行きに乗る。次の大間越までの間で県境を越えると、車窓に海が接近してくる。ここからが五能線の車窓から終始海が見える楽しい区間である。
大間越の次が白神岳登山口駅になる。この駅は最近まで陸奥黒崎駅といっていたが、最近改称された。そのものズバリでわかりやすいが、なんとなく寂しい感じもする。岩崎村はサンタクロースの村としても売り出しており、観光には熱心なようだ。
駅で降りたのは2人である。確か昨日能代で声をかけられたハイカーの方だ。能代で泊まっているようだったので行き先は同じかな?と思っていたがどうもそのようであった。お話をさせてもらうとタクシーを呼んであるとのこと。これはラッキーと同乗をお願いした。
岩崎タクシーは、最近東京から引き継ぐ為に帰ってきた運転手さんが、実質1人でやっているとのことであった。そういうことなので、予約していないと駅からは乗ることはできない。比較的すぐに登山口に着くとはいえ、40分の車道歩きを省略できるのはありがたい。登山口の大きな駐車場にはすでに10台以上の車があった。天気もいいことでもあり、繁盛しているようだ。

2.白神岳

登山口からは少しの間広い道が続く。ひとつ急坂を上がるとすぐに山道に入るが、ほとんど緩やかな歩きやすい道である。ヒバの植林の多い暗い道を淡々と進んでいく。タクシーで同乗させてもらった方は300名山にあと11とのこと、齢68ということであるが、ものすごいパワーである。つられて快調なペースで進んでいくうちにあっという間に二股分岐まで着いてしまった。
二股分岐からもしばらくは緩やかな登りが続く。途中に2ヶ所ほど水場があり、最後の水場との看板が掲げられていた。水場をすぎると道の傾斜はどんどん増していき、つづら折りの急登になる。このあたりからブナ林が多くなるが、あえぎ登るばかりで、あたりを見る余裕がない。蟶山分岐まで一気に上がりたいと思っていたが、急登の連続に耐えきれずあえなく休憩した。同行のおじさんはピッタリとついてきており、私にとってはペースが上がり過ぎかもしれない。
やっとのことで登り着いた蟶山分岐で、直進するおじさんと別れ、蟶山へ登りに行く。僅か100mほどの緩やかな登りの寄り道だが、それほど立ち寄る人は多くないようだ。山頂は少し盛り上がった感じで三角点が真ん中にあった。周囲は木に囲まれ展望のない山頂だが木の間越しには海が見えていた。
再び登山道に戻って白神岳を目指す。ブナの大きな木が所々見られるようになり、これが白神山地かと思う。道は緩やかにアップダウンを繰り返していく。前半のオーバーペースのためか足が重くなり、ブナの森を楽しみつつも、展望の無い道や、繰り返すアップダウンがだんだん効いてくる。少し傾斜が出始めるが、なかなか展望の得られる所まで着かないので、ついに再び足がとまり座り込んでしまった。
道は傾斜が強くなっていくと、時々木の間に展望が見え始めた。青い日本海や、山頂部の笹原がちらちらと見えるようになる。階段の登りを過ぎてなおも樹林の中を行くと、やがて木々の背丈も低くなり、一気に展望が開けていた。背後には広く青い日本海が広がる。白神岳の山頂部もだんだん近くに見えてきた。手前に大きな小屋のようなものが立っているのが見える。爽快な展望の道は花も多く、とくにモイワシャジンの可憐な花が印象的であった。気分も軽くなり、明るい道をどんどん高度を上げていくとやがて稜線に合流した。
稜線を白神岳山頂へと辿る。最高点を微妙に巻くように、稜線の右側左側と折り返しながら道は延びていく。左側には向白神岳が大きく、その向こうに岩木山の立派な姿が見える。花の道は黄色も目立つようになった。トウゲブキやキオンだろうか。
明るい稜線を辿ると大きな建物前に出た。避難小屋かと思っていたら、なんとトイレであった。これはすごく立派だ。その先にトイレよりは小さいが、そこそこ立派な避難小屋があり、その先の小高い高まりが一等三角点のある白神岳山頂である。
山頂からの展望は素晴らしい。今日はよく遠望が効くようで、鳥海山まで見ることができた。岩木山や八甲田山はもちろん大きく見える。その南には森吉山から八幡平そして岩手山だ。山頂にいた人が、今日は津軽富士も南部富士も出羽富士も見えると行っていた。なるほど、そういう言い方もあるもんだなと感心した。
山頂の手前から踏み後を2〜3分下ったところに水場があった。地元の人たちがおいしい水と話していたので下ってみると、まさにとても冷たくで最高においしい水だった。後で読んだのだが、どうもこの水場が汚染されるほど人が多くなったということもあって、あの立派なトイレをつくったという話もあるようだ。今現在汚染されているかどうか定かではないが、とにかくおいしい水だ。
山頂の展望を楽しんだあと、まだまだここにいたいと後ろ髪を惹かれつつ下ることにする。帰路はは元きた道を忠実に辿るのだが、展望の下りは正面に日本海を見ながらの下りで爽快である。やがて樹林の中に入ると、行きに感じたとおり、長い道のりであった。下りはしっかり2時間以上かかり、行きに登りがいがあったこともうなずける。蟶山からの下りは、行きは登りの厳しさに気がつかなかったが、意外とブナの木が多かった。やがてブナ林を抜け、道も緩やかになると、ヒバの林に入る。二股を過ぎるとあとひとがんばりで、登山口も近い。

3.次の町へ

登山口付近の藪の中にデポしてあった荷物を回収し、駅までの車道歩きに備えてサンダルに履き替える。荷物の中に置いてあった時刻表を見ると、ちょうど1時間後に列車がある。予定より1本早い列車である。駐車場を過ぎ、海に向けてスタスタと下っていく。40分ほどの車道歩きではあるが、山を降りて海に向かっていると思うと何となく楽しく、快調に下っていった。国道を渡り、黒崎の集落の中に入る。小学校の正門の前を右に曲がると駅であるが、となりの店にビールが見えたので、さっそく入って1缶買った。
少し道を登って無人駅のホームに立つ。10分ほどで東能代行きの2両の気動車が到着。冷房の無い車内ではあったが、風にあたって田園地帯の汽車に乗っているのが、なんとなく懐かしくて楽しかった。そんな雰囲気だったので、明日東京に帰ってしまうのが、なんとなく惜しくなった。
東能代から秋田までは2両編成の普通電車だが、ちょうど帰省のUターンシーズンでもあり、かなり混みあっていた。秋田から東京行きのこまちに乗る。喫煙車ではあったが、なかなか換気のいい車両で感心した。一応座れたが、これも満員で出発。このまま乗っていけば夜には東京に着くなと思いながら、夕暮れの田沢湖駅で下車する。秋田駒を間近に望む町で、駅前の旅館に入り荷物を解いた。近くのスーパーで翌日の買い物をしたあと、食堂に入る。いよいよ明日は最終日である。

本文中の写真

  • 登山道のブナの木
  • 道を彩るモイワシャジン
  • 谷を挟んで、向白神岳を見る
  • 稜線を進むと山頂が近づいてくる
  • 山頂から岩木山を見る



  • 記録

    日 程

    2001年8月19日(日)

    天 候

    晴れ

    コース

    0720 登山口 → 0745/50 二股分岐 → 0845/50 蟶山 → 1010 稜線 → 1025/1110 白神岳 → 1215/20 蟶山分岐 → 1305 二股 → 1330/35 登山口 → 1415 白神岳登山口駅

    山頂から最高点あたりの山稜を見る


    参考図書・地図 その他のコース
    アルペンガイド旧 東北の山
    アルペンガイド  八甲田・白神・早池峰
    25000図 十二湖 白神岳
    50000図 深浦 川原平
    白神岳から、大峰岳・崩山を経て十二湖
     若干道が細く、6時間程度かかるようです。
    二股コースがありますが、整備中ということで入山は制限されているようです。
    バス
    蟶山コースの場合は必要ありませんが、十二湖登山口を利用する場合は、十二湖駅〜十二湖間のバスが利用できます。
    時刻表は、弘南バスでご確認下さい。
    また、岩崎タクシーのTELは、0173-77-2131です。

    温泉
    五能線 艫作駅前に不老ふ死温泉があります。