大菩薩嶺

 大菩薩嶺 2056.9m
 山域:大菩薩

記録
 山行日1995年3月21日(火)
 ルート裂石→上日川峠→赤岩尾根→大菩薩嶺→大菩薩峠→上日川峠→裂石
 コースタイム裂石→上日川峠→赤岩尾根→大菩薩嶺→大菩薩峠→上日川峠→裂石
 天候晴れ

陽春のころ、中央高速を塩山に向かっていた。車のラジオはひっきりなしに前日の地下鉄サリン事件関係のニュースと解説を伝えている。そして、別件での弁護士の会見が並行して流されている。世の中は騒然としていた。大菩薩に登ったのはそんな日であった。

大菩薩嶺の名前は大菩薩峠という小説の題名によってあまりにも有名である。私自身は読んだことも無ければ、内容も良く知らないという不勉強さだが、名前だけは知っていた。そのインパクトの強さから、旧知の山のような錯覚を持ってしまう山名である。
塩山から裂石までは、騒然としている東京とは別世界ような穏やかな道をたどった。裂石から上日川峠に登る林道は、まだ冬季閉鎖の為ゲートが閉まっており、車を停めて下から登って行くこととなった。沢を越えてから車道と別れ昔から長く歩かれているであろう緩やかな山道に入り、折り返しながら登って行く。まだ気温が上がらず、泥道が凍っていて前日の足形が堅く残っていた。何度か折り返すうちに背後が開ける場所があり、遠く南アルプスの白嶺の繋がりが眺められた。
左下にチラチラ見えていた林道に合流して上日川峠に着く。この付近から上は道に雪が残っている。少し車道をたどった後、再び山道に入り、背の低い笹の被さる緩やかな道をしばらく歩いたあと、道はぐいぐいと高度を上げていくようになる。急登の背後には富士山が大きく、展望を理由に時折足を止め休み休み登っていった。最後の笹の斜面を登り切ると雷岩である。大菩薩嶺の山頂はさらに10分ほど樹林を入ったところにあるが、気分的にも雰囲気も雷岩が山頂のようだ。本当の山頂を往復したあと、眺望を楽しみながら休憩した。
雷岩からは、冬枯れの明るいカヤトの尾根が大菩薩峠まで続く。歩いていて本当に幸せな気分になるような尾根だ。青空と冬枯れのカヤトと所々に残る雪と明るい展望の取り合わせは、最高の道の一つではなかろうか。小さなコブをいくつか越えると、眼下に大菩薩峠の介山荘の建物が見えてきた。峠に立つと丹波方面への道が緩やかに分岐していっている。これもいつか歩いてみたい古道である。峠からは陰になって雪の多い道を少し辿ると車道に出る。残雪の景色を楽しみながらのんびりと上日川峠まで歩いていった。裂石への下山は、朝凍っていた泥が融けて何度も滑り、頭の先から泥だらけになってしまった。
車中の人となると、再び現実の世界に戻ってしまう。ラジオでは地下鉄サリン事件の犯行グループが少しづつ名を伏せつつも囁かれ始めている状況だった。そして、富士周辺の大自然を舞台に信じられないような動きがしばらくの間続くこととなったのである。


参考図書・地図
アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
エアリアマップ 大菩薩連嶺(1994年版)
25000図 大菩薩嶺
50000図 丹波

大菩薩峠周辺のカヤトの尾根
その他のコース
裂石周辺からは、他のコースとして
・裂石〜丸川峠〜大菩薩嶺
・上日川峠〜富士見新道〜大菩薩嶺
丹波側からは、長いが歴史のあるコース
・丹波から丹波大菩薩道〜大菩薩峠
・小菅から小菅大菩薩道〜大菩薩峠
・小菅から牛ノ寝通り〜石丸峠〜大菩薩峠
交通機関
裂石へは、塩山駅より甲州市市民バスで大菩薩登山口下車。
時刻は、甲州市ホームページにて確認下さい。
丹波、小菅へは、奥多摩駅より西東京バスで、丹波または小菅へ
時刻は、西東京バスにて確認下さい。