甲州高尾山

 甲州高尾山 1106m (剣ヶ峰 1092m) 富士見台 1178m

山域:大菩薩
2000.7.1


甲州高尾山は、大菩薩嶺から南にのびる日川尾根の末端から派生し、勝沼駅からすぐ北に見える山である。旧版の奥多摩・奥秩父・大菩薩のガイドブックの一番最後にあって、ちょっと目立たない山だが、所要時間もお手頃と思って選んでみた。予備知識をそれほど持たずに出かけたが、短いコースの中でもいろんなものが詰まった道であった。

勝沼駅からタクシーに乗り、深沢の分校までとお願いする。20号線から川沿いの道に折れてどんどん行くと、道が細くなってきた。どうやら随分行きすぎたらしく、運転手さんはUターンして、民家で道を訪ねる。国道から入って倍くらいは行ってしまったようだ。
あのあたりが分校だということで、タクシーを降り、斜面の道を登っていく。甲州高尾山の道標は無いが、ガイドの記述を頼りに、まずは分校を目差す。校門には、勝沼小学校深沢分校の木の看板がかかっていたが、かすれて読めなくなりはじめており、校庭にも草が生え初めていた。廃校になってそれほど時間は経っていないと思われるが、山中の小さな学校は、落ち葉を掃除する人も無く侘びしい。
分校の上に回り込むような舗装路を進んでいくと、やがて右側に「高尾山飯縄神社」の表札のある鳥居が現れた。道標は無いが、神社までは参道を辿るらしいから、この道でいいのだろう。鳥居をくぐって、山道に踏み入ると、よく踏まれた道は斜面をジグザグに登っていく。登りはじめは樹林の中を行くが、やがて植林地から出て明るい道になると、道を草が覆い始めた。日当たりのいいところは良く伸びるなと、思っていたが、だんだん道の真ん中にも草が生えるようになり、ついには茅の藪をかき分けるようになってしまった。手袋を持っていないことを悔やんでも遅い。道型がはっきりしているので、道を失う心配は無いが、まだ朝方の霧の影響もあって濡れておりちょっと鬱陶しい。また、焼け焦げた立木が時折現れる。そういえば、このあたりで山火事があったっけ。おぼろげな記憶が甦ってきた。
草木をかき分け登っていくと、小さな境内に辿り着いた。そこには神社があった跡があるだけで、資材が片隅に片づけられていた。ここも日を避ける木はなく、快晴になった夏の太陽に照らされて座り込むと、どっと汗が吹き出した。藪を分けているうちに、焼けた木の炭をも吸い込んでしまったズボンは、黒く濡れてしまっていた。
今度は境内の後ろの斜面の急登になる。信仰の道も神社跡までで、この急登区間は道型もほとんど無く、終始ブッシュの中をかき分けていく。時々イバラを纏った木もあるから始末が悪い。右上遥かに見える山頂直下の林道に励まされつつ、ブッシュの薄いところを狙って突っ込み、なんとか最大の難関を突破。このあたりは廃道化してしまっている。
急登区間を終えて肩状の所にたつと、伸びやかな展望が広がった。左右とも綺麗に伐採された草原上で、唯一これから登る小尾根に、繁った藪とともに、焦げてしまった木が並んでいる。左側の斜面は伐採地の中に、きれいに作業道がジグザグにしつらえて有り、山頂直下の林道へと登っていた。緩やかな、広々とした展望の中を歩くが、残念ながら今日は暑い。藪は神社裏の急登ほどではなく、時折かき分けるところが出てくる程度である。頭上の林道を目差して休み休み登っていき、最後に背丈を超える藪の中の踏み跡に潜ってガードレールの切れ目の林道に出た。これでほっと一息。少し南に林道を戻って、主稜線上の尾根道に入った。
大善寺から登ってくる尾根ルートは、しっかりと道標もあり、よく踏まれた道となる。ゆったり登って三角点のあるピークで、剣ヶ峰の標識があり、山頂はもう一つ先と示している。次のピークに甲州高尾山山頂の標識があった。稜線は南側が綺麗に刈り払われていて、展望はいいが、まったく日を避けるところが無い。キアゲハが乱舞し、大きなハナアブが飛び回っているのは、もう夏の風景である。あいにく遠望は効かないが、甲府盆地を見下ろし、また大菩薩の主稜線が折り重なるように見えていた。展望があれば、富士山や南アルプスが素晴らしいだろう。
今回は、富士見台を回ってから勝沼駅に下ることにする。しばらくは右下に林道を見ながら、開けっぴろげな稜線を行く。意外にアップダウンがあり、距離もあって、ジワジワと暑さがこたえてくる。大滝不動への道を分け、さらにピークを登り詰めて回り込んだところに富士見台の標識があった。とにかく、樹林帯に入りたかったのでそのまま通過し、富士見台から下った鞍部から大滝不動方面に折れる。この分岐にはさらに棚横手山への標識があり道が切り開かれていた。
稜線から折れると、なんの変哲も無い植林地の道だが、待望の日陰歩きがうれしい。しばらくすると荒れた林道に出て、これを進むと右に雄大な雄滝が見えた。そして祠を奉った展望台があり、甲府盆地が一望できる。ここには甲斐御嶽山とある。展望台の手前から再び樹林の山道を下る。涼しげな道をしばらくいくと、滝の下あたりで大滝不動尊の祠が続くようになる。立派な境内が続き、長い階段を下って仁王門を出た。あとは1時間以上の車道歩き。林道をしばらく下って、虚空蔵や前不動尊の中にある、大滝不動尊キャンプ場の中を通る。数々の祠の間にテントを張るようなキャンプ場である。鳥居をくぐれば、ひたすら炎天下の車道を勝沼駅まで行く。まだ固い葡萄の実を見ながら、時折甲州高尾山を振り返る。山中にはたくさんの神社や祠。高尾山・飯縄神社・御嶽山といろいろあった。信仰の厚い山である。



記録

日 程

2000年7月1日(土)

天 候

晴れ

コース

0815 深沢分校跡 → 0825 鳥居 → 0850 神社跡 → 1005 剣ヶ峰 → 1010/30 甲州高尾山 → 1100 富士見 → 1120/30 展望台 → 1145 大滝不動尊 → 1300 勝沼駅

登高中の小尾根より山頂を見上げる


参考図書・地図 その他のコース
アルペンガイド 奥秩父・大菩薩
エアリアマップ 大菩薩連嶺
25000図 笹子・大菩薩峠
50000図 大月・丹波
大善寺より主稜線登る
(林道を走れば頂上直下まで車で行ける)
バス
タクシー利用が有利
大善寺まで1000円・深沢まで1500円程度