笹子雁ヶ腹摺山

 笹子雁ヶ腹摺山 1,357.7m 米沢山 1357m お坊山1,430m
 門井沢ノ頭(トクモリ) 1412m
 山域:大菩薩

記録
 山行日1998年03月07日(土)
 ルート笹子駅→笹子雁ヶ腹摺山→お坊山→大鹿峠→滝子山登山口→笹子駅
 コースタイム0740 笹子駅 → 0815 登山口 → 1030/1110 笹子雁ヶ腹摺山山頂 → 1220/1230 米沢山 → 1330 お坊山 → 1400/1415 大鹿峠 → 1540 滝子山登山口 → 1655 笹子駅
 天候晴れ

週間予報によると久しぶりに天気が良さそうなの週末を心待ちにしていた。そんな時はやはり明るい山がいい。ということで爽快な展望が期待できそうな大菩薩方面にして、昨年の続きの大鹿峠以南を歩いた。

早朝の笹子駅に降り立ち笹子トンネルの方へと甲州街道を歩く。周囲の山は北面は白い部分が多く、まだまだ雪が深そうだ。ちょうど通学の時間で、中学生以上はスクールバス、小学生たちは背の高い年長者を先頭と最後尾にしてに4〜5人で隊列を組んで歩いており、すれ違う度に孤独な登山者に対して「おはようございます」と声をかけてくる。都会に住んでいると全く見られない光景だ。笹子川を左右に渡りつつ進むと、右の方に遥かに高く奥深く尖峰がみえてきた。頂上付近に反射板のある特徴的な笹子雁ヶ腹摺山である。
旧道笹子峠への入り口付近の登山口からしばらく植林帯の中を登っていく。落ち葉の上に薄く積もって融け初めている雪は急斜面になると滑りやすく、アイゼンをつければすぐにダンゴになってしまって歩きづらい。南斜面の伐採地あたりはすでに雪も解け、春の雰囲気あがる。しかし、その正面の御坂山塊の北斜面は白銀に輝いている。再び断続的に急登が続く苦しい登りだが、松林や落葉樹が主体の明るい道は美しく、一方で登る楽しさが尽きない。尾根は少し下り気味に曲がったあと最後の急登にかかり、登りきったところが反射板でその先が山頂であった。山頂からは素晴らしい展望が広がっていた。良く見えるのはお坊山から大谷ヶ丸、大菩薩連嶺である。南アルプスはちょっともやがかかっている。富士山も大きいはずだが、この時見えたのは裾野だけだった。
山頂からは米沢山を目指して北に向かう。少し北に下った後右に大きく下るが、一歩踏み出したとたんに、一転してズボッと腰まで潜ってしまった。先行者がワカンをつけて下っていったので後に続くが、壷足はかなり潜り薮もちょうど顔の高さになっているので身をかがめなければならず、時折尻セードでトレイルの上を滑って降りてしまった。鞍部から先は雪は少なく、北の谷から時折風が雪をとばしつつ吹き上げてくる中を痩せた稜線を歩く。振り返ると笹子雁ヶ腹摺山が壁の様に立ちはだかり、結構な高度を下ったことがわかる。米沢山への登りは岩混じりの急登となり、鎖に掴まりつつ喘ぎながら登り山頂にたどり着いた。
米沢山から少し下り、再びお坊山へと登っていく。晴天の中の明るい落葉樹の素晴らしい道が続いおり、また朝よりも一段と空気が澄んできたようで、落葉の木々の向こうの青空の色がとても深い。緩やかな雪のトレイルを踏んで1412m(門井沢の頭)を過ぎ、お坊山への最後の登りで振り返ると視界が一気に開け、朝より遥かに澄んだ空気の中で、富士山が全貌を現して白く輝いていた。南アルプスも北から南まで峰々がずっと繋がっており、間ノ岳付近は大きな雪煙が上がっている。この素晴らしい光景にしばらく足をとめた。
お坊山から大鹿峠へは雪深い北斜面の下りである。落葉樹の下で、ふかふかの雪を蹴ちらしつつ、風で表面に模様ができた斜面を爽快に駆け下っていき、たどり着いた大鹿峠では滝子山とその上に出ている月を眺めつつしばらく休憩した。大鹿峠から笹子に下る道は、登山地図にはコースとして書かれてはいないが立派な道がついていた。ただしこの道は道標がなく、途中少々分岐や合流がある。先人のトレイルが1本ついた道に踏み出すと、北面のトラバース道なのでかなり雪深い道であった。落葉樹の続く樹間から、滝子山をずっと眺めつつ緩く山腹を巻いていき、高度を落とすと植林帯となってやがて沢に沿う道に合流する。ここには、大鹿峠と山道の分岐を示す看板があり、私は山道の方から降りてきたようだ。沢沿いの道の方が正しい登山道の様だが、こちらは荒れている様子である。しばらくして工事中に林道に出ると滝子山への登山道の入り口の近くであった。工事の人に話を聞くと大和村までで、トンネルは作らず切り取りながら進んでいくらしい。ということは、あの大鹿峠の静かなたたずまいも、大鹿峠に向かう静寂の広葉樹林ももう数年の命かもしれない。残念なことである。あとは林道を下って笹子駅を目指す。中央高速を越えるあたりで振り返ると滝子山が美しく登高意欲をそそる姿を見せていた。吉久保の集落を通り、甲州街道に出て、右側にお坊山から東に下る尾根を見ながら笹子駅に向かった。電車の客となって中央本線のもう日も暮れようとしている車窓から高畑山、倉岳山、矢平山などを心の中で指呼しつつ、充実した一日を振り返りながら帰途についた。


参考図書・地図
アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
エアリアマップ 大菩薩連嶺(1994年版)
25000図 笹子
50000図 都留

お坊山からの大谷ヶ丸
その他のコース
・甲斐大和駅〜北尾根〜笹子雁ヶ腹摺山
・甲斐大和駅〜笹子峠〜笹子雁ヶ腹摺山
・甲斐大和駅〜景徳院〜大鹿山〜笹子雁ヶ腹摺山
その他バリエーションルートがあるようです。
交通機関
駅から歩く山ですので、特にバスの利用はありません。


Nifty FYAMA 投稿文

笹子雁ヶ腹摺山〜お坊山・大鹿峠【大菩薩】

週間予報をみると久しぶりに週末の天気が良さそうなので今週はずっと期待していました。期待に違わずいい天気でそんな時は明るい山の方がいいです。最近行っていた奥多摩方面は道中植林帯が多く、明るく爽快な展望が期待できそうな鷹ノ巣山あたりはまだ雪が多く大変そうなので、今回は、比較的雪が少なそうで爽快な展望が楽しめそうな大菩薩方面に行ってみることにしました。昨年秋に大鹿峠まで行っているので今日はその続きになります。

【日 程】98年3月7日(土)
【目 的】笹子雁ヶ腹摺山
【天 候】晴れ
【コース】0740 笹子駅 → 0815 登山口 → 1030/1110 笹子雁ヶ腹摺山山頂 →
     1220/1230 米沢山 → 1330 お坊山 → 1400/1415 大鹿峠 →
     1540 滝子山登山口 → 1655 笹子駅
【山 名】笹子雁ヶ腹摺山 1357.7m 米沢山 1357m お坊山 1420m
【メンバー 】単独
【山 域】大菩薩
【参考書】ヤマケイアルペンガイド 奥多摩奥秩父大菩薩
     昭文社エアリアマップ 大菩薩連嶺

1.笹子雁ヶ腹摺山

早朝の笹子駅を降り立って笹子トンネルの方に向けて甲州街道を歩いて行く。周囲の山は南面は雪があまり見えないが、北面は結構白い斜面の部分が多く、まだまだ雪が深そうである。丁度通学の時間で、路線バスを利用したスクールバスが運行されており、中学生以上の学生たちが乗り込んでいく。小学生たちは背の高い年長者を先頭と最後尾にしてに4〜5人で隊列を組んで歩いておりすれ違う度に孤独な登山者に対して「おはようございます」と声をかけてくる。都会に住んでいると全く見られない光景である。
笹子川を左右に渡りつつ進んでいくと、右の方に高い峰が見えてきた。頂上付近に反射板のある特徴的な尖峰である。高い峰なのでこれから縦走していく峰の一つには違いないがどの山にあたるのだろうかと考えていた。
笹子トンネルの方へカーブして橋を渡って行くところで、国道と別れ旧道の笹子峠への道に入る。旧道の橋を渡ってすぐに笹子雁ヶ腹摺山への登山口があった。
登山口からしばらく植林帯の中を登っていく。雪はあったり無かったりであるが、落ち葉の上に薄く積もって融け初めている雪は急斜面になると滑りやすくて歩きにくい。どうしても滑るのでアイゼンをつけてみたがそのような雪のためすぐにダンゴになってしまった。でも滑るよりはいいのでそのまま行く。
かなりの急登が続く中で雪のあまりない道をアイゼンをつけて歩いているのでちょっと歩き方が不自然になり、足が痛くなったり、それをかばって腰がいたくなったりと不調である。南斜面が伐採された緩やかな尾根を通過する。ここは雪が融けてしまってすでに春の雰囲気で、正面は御坂山塊の山々の北斜面の白銀の峰々が見える。ここから再び急登になり、以降断続的に急登が続いていく。松林が多くなり、また落葉樹の林が主体になってくる。南斜面の尾根は表面に5センチほど雪が付いた状態でもう春の低山である。数回急登を登っていると、山頂がまだかまだかと待ち遠しい。この登りを過ぎればと期待しつつ登るがまた先に道が続いている。尾根が左に緩やかに回りこむとそろそろかなと期待していたが、右奥に車道から見た反射板のある山がずっと高く遠くに見える。このあたりで、一番高い山といえばやはり目的の笹子雁ヶ腹摺山である。
「あれがそうだったのか....」と意気消沈..なかなか簡単に登らせてくれない山である。尾根は再び少し下り気味に右に曲がり、最後の急登にかかっていく。そして急登を登りきると反射板に下に出、その上が山頂であった。
ちょっと細長い山頂からは素晴らしい展望が広がっていた。良く見えるのはお坊山から大谷ヶ丸、大菩薩連嶺である。大谷ヶ丸の双耳峰は特徴的である。南アルプスも見えるがちょっともやがかかっている。南は富士山が大きいはずだが、裾野だけ見えており、ここもすっきりしない。また八ヶ岳から奥秩父と展望の広がる素晴らしい山頂であった。

2.お坊山へ

山頂に後続の単独の人が登って来たあと、米沢山を目指して北に向かう。少し北に向かったところで、右に大きく下る様になる。下りに一歩踏み出したとたん、いままでの雪の少ない道とは一転してズボッと腰まで潜ってしまった。這い出して、少し行くとまた潜ってしまう。下りなので潜っても降りるのは問題は無いが、ワカンを持っていないので、もしこんな斜面が登りで現れると苦痛である。やっぱりやめとこうかな?と考え再び山頂に引き返した。山頂では先の単独行の人と、笹子峠からの往復の人がいた。引き返して来たので様子を聞かれたが、ワカンがあれば問題ないと答えた。彼はザックにぶら下げていたのである。彼を見送り、笹子峠から往復の人も峠に戻っていくと、今度は中高年3人組が登ってきた。彼らもお坊山に向かうという。一人だと心許ない部分もこれだけいればこわくないという状況に変わってきたので、再び北に向かった。先に単独行氏が行っているので、この時以来私はトレイル泥棒に変身したのである。
さて再び急斜面の下降に挑むが先行者はワカンで降りているので、やはり結構潜る。おまけに薮がちょうど顔の高さになっているので、ずっと身をかがめなければならず、結構歩きにくい。ということで、時折尻セードでトレイルの上を滑って降りてしまった。鞍部に降り立つとそこから先は雪は少なくなり、笹子雁ヶ腹摺山に登ってきた時と同じ様な道になる。稜線は結構やせていて、北の谷から風が雪をとばしつつ吹き上げてくる。振り返ると笹子雁ヶ腹摺山が壁の様に立ちはだかっていて、結構な高度を下ったことがわかる。2〜3のピークを越えていき、今度は米沢山の登りにかかる。大変な岩混じりの急登である。後続の3人が追いついてきたので抜きつ抜かれつとなって急登を鎖に掴まりつつ喘ぎながら登った。登り切った米沢山には先行した単独氏が休んでいたので、「みんな行く様だから歩いてきた」と告げた。他力本願の告白なので少々心苦しい。彼が出発すると入れ替わりに後続の3人が追いついて来たので私も出発していった。少し下ったあとお坊山の登りにかかる。
道は笹子雁ヶ腹摺山の登りの後半以降ずっと、晴天の中の明るい落葉樹の素晴らしい道が続いている。朝よりも一段と空気が澄んできたようで、落葉の木々の向こうの青空の色がとても深い。
1412m(門井沢の頭)への登りでは結構疲れてきたので、後続の3人に道を譲る。1人が踏んだトレイルが今度は4人が踏んだトレイルを歩くこととなり大変歩きやすくなってしまった。重度のトレイル泥棒となってしまった。(^^;;
お坊山への最後の登りの途中で風景が一気に開けるところがある。朝よりかなり空気が澄んできており、富士山も白く輝く全貌を表しており、南アルプスも北から南まで大きな峰々がずっと繋がっている。間ノ岳付近は大きな雪煙が上がっていた。なかなか飽きない光景でしばらく眺めていた。
お坊山に着くと単独氏に再び会ったので、礼を言った。3人組はゆっくり昼食に入っている。お坊山も縦に長い頂上で、そこそこ展望もあり、滝子山や大谷ヶ丸の美しい姿も見られる。

3.下山

大鹿峠へは雪深い北斜面の下りである。ここからは再び先頭でトレイルの無い道を下る。落葉樹の下で、ふかふかの雪を蹴ちらしつつ、風で表面に模様ができた斜面をどんどん爽快に下っていく。大鹿峠への道を半ば過ぎたあたりで、引き返していくトレイルがあった。さすがにこの斜面を登りにとると大変だろうと思う。大鹿峠から滝子山方面を眺めると山の上に月が出ているのが見えた。
峠のベンチに座ってしばらく休憩していると、単独行氏が追いついてきた。彼は景徳院の方向に下っていった。私はここから笹子に下る道をとる。登山地図にはコースとして書かれてはいないが立派な作業道的な道がついている。但し、ずっとこの時期タブーの北面のトラバース道で結構足が潜ったりする。幸いトレイルが一本あり、それを辿っていく。この道は道標が無いのが難点だが、なかなかいい道で、途中ベンチもあったりする。ただし同じくらいの太さの道がいくつか離れたり合流したりしてちょっと解りにくいが、どれをとっても何となく下れるかもしれない。樹間からは滝子山をずっと眺めながら傾斜が緩く、山腹を巻いていく雪のトラバース道を下って行く。高度を落とすと植林帯になり、やがて沢に沿う道に合流した。ここには、大鹿峠と山道の分岐を示す看板があり、私は山道の方から降りてきた様だ。
沢沿いに進むとすぐ工事中の林道の下に出た。林道工事で道が途絶えており、3メートルくらいの泥の斜面を這いあがった。わずかだが結構苦労したが、道をつぶしたのであれば、ハシゴか階段でも作っておいて欲しい。滝子山への登山道の入り口のすぐ先の所である。工事の人がいたので話を聞くと、林道工事は大和村までで、トンネルは作らず切り取りながら進んでいくらしい。ということは、あの大鹿峠の静かなたたずまいも、大鹿峠に向かう静寂の広葉樹林ももう数年の命であろう。しかしこの工事も下の橋の竣工時期からみると、1年半で100メートルくらいしか進んでいないようである。但し本当にやり始めたらどんどん進んでいくので何とも言えないが..
あとは林道を下って笹子駅を目指す。途中で泥を洗い落としたりしつつ中央高速を越えるあたりで振り返ると滝子山が美しい姿を見せていた。なかなか登高意欲をそそる姿である。吉久保の集落を通り、甲州街道に出て笹子駅に向かった。右側にはずっとお坊山から東に下る尾根が見えている。お坊山は笹子駅の正面にある山だったのだ。
笹子駅が近づくと、無念にも登りの普通電車が通っていった。次の電車まで待たねばならない。駅には続々と中高年登山者の団体が降りてきたところであった。大沢山に行って来たという。こういった団体にしては、結構マイナーなコースに入ったものである。
電車の客となって甲州街道を見ていると、ちょうど私が電車を見てあ〜あと思っていたあたりを歩く登山者が一人。ああいう風にして歩いているのか....と思う。薄暗くなった車窓から高畑山、倉岳山、矢平山などを心の中で指呼しつつ帰途についた。



なんだか他力本願の山行になってしまいました。この時期あるくには万一に備えての装備と体力をつけておかないとダメですね。やはり....
しかし天候は尻上がりによくなり、最後にずっと眺めつつ歩いた滝子山はまだ登っていないので、これは近々登ってみたい山だなあと思いました。昨年の秋の山行と併せて湯ノ沢峠から笹子雁ヶ腹摺山までが繋がりました。