編笠山

 編笠山 2,523.9m 西岳 2,398m
 山域:八ヶ岳

記録
 山行日2014年8月23日(土)
 ルート富士見高原→編笠山→西岳→富士見高原
 コースタイム0602 富士見高原ゴルフ場 → 0626 五叉路分岐 → 0634 盃流し → 0704/15 臼久保岩小屋 → 0904 岩石帯 → 0924/58 編笠山 → 1018/25 青年小屋 → 1031 乙女の水 → 1115/52 西岳 → 1238/53 最上の林道 → 1326 不動清水 → 1332五叉路分岐 → 1347富士見高原ゴルフ場
 天候曇り

南八ヶ岳の山々にあって、編笠山はその穏やかな名前から、簡単に登れる山という印象を持っていました。岳と山の違いも結構大きかったと思います。いつでも登れると思えば、後回しになりがちなのですが、実はしっかり標高差はあり、このコースでは美濃戸〜赤岳に若干足りないくらいです。今回はスケールの大きめの山で、じっくりと登りを楽しみたいということもあり、思い切って出かけました。

前日の夜、富士見高原の駐車場に到着。冬はスキー客で賑わう大駐車場には車は1台も停まっておらず、その一角で夜を明かす。静かな高原の夜、星空もきれいに見えていたが、残念ながら、翌日は雲が垂れ込め、薄暗い朝を迎えることとなった。早朝、登山口に一番近い富士見高原ゴルフ場の駐車場に移動し、ゴルフ場の従業員が次々と出勤してくる頃、装備を整えて出発した。
ゴルフ場の前から道標に従って進む。登りは編笠山に直登する道をとることとし、まずは、盃流しへの道を目指す。スタート直後からパラパラと雨が落ちてきたが、予報自体はそれほど降るようにはなっていなかったので、とりあえず雨具無しで進む。チェーンの車止めを越え、道標に従うと、やがて車道から分かれて笹の茂る遊歩道へと入っていった。しばらくは何度か車道を横切ることになり、緩やかに登っていく山道を、長い登りの最初のペースつくりということで、淡々と進む。
登り始めて30分ほど、盃流しに到着。流れに穿たれた岩の谷筋ではあるが、水流は無かった。盃流しを超えると、若干傾斜が増してくる。さらに車道を横切り、樹林帯の登りを進む。雨は落ちたり止んだりでそれほど支障を感じない。カラマツ林の中を登って、再び雨が強くなったころ、丁度臼久保岩小屋に到着し、雨のかからない岩の下で初めての休憩とした。
再び、カラマツ林の道を登って行く。道は傾斜が出てくるにしたがって、つづら折になってくるので、胸を突く急登にはならないが、コンスタントに高度を上げて行く、まさに登っている実感のある道である。林も、コメツガ、シラビソなどの針葉樹に移り変わっていく。適度に道標があり、書いてある距離や時間の数字に今ひとつ納得感が得られないのだが、励みにはなる。そして、この樹林帯の登りは長く長く続く。
周囲の樹林の様相は高度を上げるに伴ってだんだん変わってくる。シャクナゲ公園の標識があるあたりから、だんだんと木が小さくなり、苔むした庭園のような様相を帯び始める。そして、道に岩が出てくるようになると、木や岩に捉まって登っていくようになる。ここまで登ってきた体には堪えるところだが、一方で情景の変化が楽しみともなる。そして、やがて樹林帯も終わって道はついに岩礫帯に突入する。
この登りは最近登った蓼科山と雰囲気がそっくりである。あちらは八ヶ岳の北端、こちらは八ヶ岳の南端に位置し、山の形も似てまさに好対照だ。岩礫の登りは一歩一歩大きく足を上げるところも多いが、眺望が開けて爽快である。相変わらず雲は低いがそれでも、ガスの中を歩いている訳ではないので、周囲の景色は灰色の空の中に十分見えている。隣に見える西岳の高度を越え、標識に励まされながらさらに登っていくと、目標となる山頂も視界に捕らえられ、ついに頂上に登りつめた。二等三角点のある頂上は、登山者が一人いるだけで、開けた山頂であった。
山頂の西岳側に座り、時折雲が切れて見える展望をしばらく楽しんでいた。正面には西岳からの尾根があり、待っていると権現岳への山頂までの稜線が姿を現した。その向こうの尾根は、立場岳から阿弥陀南稜への稜線があり、今日は残念ながら阿弥陀岳の山頂はずっと雲の中で姿を現すことはなかった。山頂にいる間に、何組かの登山者が登ってきて、また出発していった。そして、権現岳が安定して眺められるようになった頃に、青年小屋に向けて出発した。
青年小屋への道は山頂からすぐに始まる樹林帯を下る。編笠山の東面は山頂まで樹林帯が来ているのは、風の吹き方の関係だろうか。下りの中で時折樹林帯が切れ展望が開けると、正面に権現岳と眼下に青年小屋の青い屋根が見える。下りの後半は岩礫帯となり、岩を跳びながら下って行くようになる。青年小屋の周囲には数人の登山者が、次の行程に向けての出発準備をしているところで、女性が多く目立っていた。
青年小屋から西岳に向う。テント場を通り再び樹林の中の道を緩やかに下ると、乙女の水の水場となる。ここで一杯水をいただき、緩やかな微かな登りの道を辿っていくと、やがて権現岳と西岳を結ぶ稜線にでて、尾根の下りへと向きを変える。ここから西岳は緩やかな尾根で顕著なアップダウンは無い。最初の鞍部は開けていて、その先に編笠山を眺めることができる。再び樹林の中の道をたどる。さらに緩やかなピークを越え、次の鞍部はあまりはっきりしないまま再び緩やかな登りとなり、最後だけ若干の急坂があって、ガレた感じの西岳山頂に飛び出した。
西岳山頂は花の宝庫であった。樹林の無い斜面に色んな種類の花が咲いていた。マツムシソウやホタルブクロなどなど。斜面に座り込んで、正面の編笠山を眺めながら、一日の行程に満足感を感じつつしばらく休憩した。下山の準備をしている頃、ちょうど立場川キャンプ場の方から、学生の集団が登ってきて一気に賑やかになり、入れ替わるように山頂を去ることとなった。
西岳からの下りは樹林帯の急な下降となる。途中に樹林が途切れザレ場となり、展望が広がって、山頂同様に花のある場所があった。急な下りをどんどん高度を下げていくと、樹林帯の中の小広場を通過、さらにどんどん高度を下げる。しかし、高度も若干低い所からスタートしている為か、編笠山への道と比べると植生も単調のような気がした。やがて、一番上の林道に到着。最後の下りに向けて小休止とした。
林道を越えると傾斜も随分緩くなり、カラマツ林の中を下っていく。林道と交差しつつ、どんどん下って、不動清水に到着、滾々と水の沸く立派な水場である。ここから林道を少し歩いて朝通過した五叉路から、登りに辿った道と合流。カラマツと笹の道を富士見高原ゴルフ場へと下っていった。朝とは異なり、行楽客の姿も見られる高原の風景であった。

今年は、これで蓼科山と編笠山、北と南の対照的な山を登ったこととなりました。大きな八ヶ岳連峰ですが、主要なピークで立っていないところも数少なくなってきました。北の方がポッカリ開いているので、次は白駒池周辺の散策でもしましょうか?という感じです。どこに行っても、どの季節でも楽しめる、八ヶ岳は本当に楽しみの詰まったフィールドだと思います。

本文中の写真(順に)

  • 編笠山への登り:苔むした森
  • 編笠山への登り:岩と苔の庭園
  • 編笠山への登り:岩礫の登りからみる西岳
  • 権現岳と青年小屋
  • 西岳への尾根から見る編笠山
  • 西岳山頂付近

  • 参考図書・地図
    ヤマケイアルペンガイド 八ガ岳・北八ガ岳(1993年改定2刷)
    エアリアマップ 八ヶ岳・蓼科(1994年版)
    25000図 八ヶ岳西部
    50000図 八ヶ岳

    編笠山山頂から権現岳の展望
    その他のコース
    ・観音平〜青年小屋
    ・観音平〜編笠山
    ・立場川キャンプ場〜西岳
    交通機関
    バスは無く、信濃境駅より徒歩1時間40分で登山口です。
    7〜8月に鉢巻周遊リゾートバスが利用できることがあります。
    その場合、小淵沢駅発「富士見高原花の里」下車となります。