バッハ・コレギウム・ジャパン
「モンテヴェルディとその周辺 IV」フランドルからヴェネツィアへ

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指揮:鈴木雅明
主催:バッハ・コレギウム・ジャパン / 日本文化財団
1996年2月12日(月・祝) 2:00pm
上野学園・石橋メモリアルホール(東京・上野)

★バッハ・コレギウム・ジャパン結成5周年を記念して行われているシリーズの 最終回。今回は Monteverdi の作品はプログラムされていない。 連休で合唱陣のみの演奏ということもあってか、客の入りは6割程度に留まった。 なお合唱は総勢20人で構成され、曲によって演奏人数が変化する形態となった。

★プロの演奏を聴くのはちょうど2週間前にカザルスで行われたタリス・スコラーズ に続いてこれが2度目である。 タリス・スコラーズの演奏が非常に素晴らしいもの だったので、正直なところ今回はかなり見劣りするかなと心配していた。 しかし、最初の Lassus を聴いてすぐにそんな心配は無用だったと思った。 個人の力量はタリス・スコラーズの面々には敵わないものの、全体としてのバランスが よいので物足りなさは感じられなかった。

★だが、2曲目の Josquin の 「Ave Maria (4声)」はテノールのファルセットに なる部分が不安定で、同声部での声の重なり方もいま一つであった。 最後の「Amen」の出だしもかなりバタバタしてしまった。テンポも 意識的にかもしれないが一定しておらず、あまりいただける演奏とはいえなかった。 (わたしはこの曲に思い入れがあるのでどうしてもシビアにみてしまいます。) 改めて Tallis Scholars はすごいと思った。 全員で演奏した「Ave Maria (6声)」のほうは安定感があってまずまずだった。

★Willaert を聴くのはこれが初めてだったが、とくに後半最初に歌われたダブル コーラスを聴くと Lassus や Monteverdi の出現も間近かと思われて歴史的に 興味深いものがあった。また、オルガン独奏の「3声のリチェルカーレより」 では鈴木雅明自らがキーをたたき、日本のオルガン指導第一人者の腕を披露した。

★A.Gabrieli の「すべての国々よ、神に向かいて歓呼せよ(8声)」では、 ソプラノの高音域で音が上がり切らず、やや絶叫気味になってしまったのが 惜しまれる。 G.Gabrieli のダブルコーラス「おお、いと優しきわがイエスよ(8声)」では、 追唱部のソプラノが誤って冒頭から歌ってしまうというハプニングがあったが、 テノールがこそっと制したのでなんとか事なきを得たようだった。

★次に演奏された「主の天使が(8声)」、これが小人数で歌われた中では 最も良い 出来だった様に思われる。2つの4部合唱が見事に対応しながら進行していて、 他方が歌っているとき休止側からも音楽の息使いが聴こえてくるようだった。

★最後に演奏された「すべての民よ、手を打ち鳴らせ(16声)」は4つの4声合唱 からなり、一声部 1〜2 人という下手をすると収拾がつかなくなる曲であったが、 本日最高の演奏だった。和音といい盛り上がり方といい文句のつけ様のないほぼ 完璧な演奏だったと思う。アンコールはなかったが、この曲が本当に素晴らしい 出来だったので、みな満足して帰路についていったようだった。

★総体的にみて、小人数より全員で歌われた曲の方が良かった。 冒頭に書いたように個人をとってみれば世界トップとは言えない (といっても一般的にみたら相当に高いレベルのあると思われる)が、全体での統一感は 予想外に取れており、もっと練習を積めば更に素晴らしい演奏が期待できそうだ。 平均年齢も若そうなので、この団体なら Bach のカンタータ全集でも (少なくとも合唱陣に関しては)コープマンの方に引けを取ることはないと感じた。

★演奏とは関係ないが、歌う前に特に女性がニコっと微笑むのが印象的だった。 指揮者との信頼関係が伺えて好感が持てた。また、いい声で歌っている女性は ほんとうに魅力的だと思った:-)。これからも応援したくなるような演奏会だった。

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Last Modified: 2008/Jun/10 00:11:08 JST
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