004 ポータブルトイレ

 7月5日〜7日、日高町から幌尻岳に登った。日高町山岳会と童人チロロの風のメンバーにお世話になった。おかげで、憧れの七ッ沼カールに泊まるという計画が実現したのであった。
「カールを汚したくないので、大は持ち帰って頂きます」、出発前に日高町教育委員会の高橋健さんから釘を刺された。「当然ですよ」と胸を張る岩崎。ポータブルトイレも背負い上げ、トイレテントを張って、中にしつらえて下さるとのこと。胸がしぼんで、頭が下がった。
 なんだかんだといいながら、無事七ッ沼カール着。居住用テントから50mほどはなれた所にトイレテントは設営された。
 翌朝、トイレテントに入り、ポータブルトイレにお尻を乗せる。お持ち帰り用の袋は、もちろん回収する。ほかっとした温かさと、ちょっとした重量感がある。
「大」持ち帰りという考え方は、異論をはさむ余地がなく、正しい。しかし、それが登山者の常識となるかという問題になると、おおきな疑問がある。一グラムでも荷物を軽くしたいという中高年登山者が、このお荷物をザックに収めて、自宅まで持って帰るだろうか。
 五月下旬、廻り目平から金峰山に登った。沢沿いの道から樹林の中に入って、どのあたりだったか、足下にビールの空き缶が二つころがっていた。なぜこんな所に捨ててゆくんだろうと疑問は浮かんだが、拾い上げるほどの正義感はなく、素通り。
 こうゆうのって本当に辛い。捨てていった奴を責めるより、拾い上げることのできなかった自分を責めてしまうものね。金峰山小屋に入って疑問は少し解けた。小屋の方針として、ビールの空缶の持ち帰りにご協力ください、ということだたのだ。たいていの登山者は、持って帰るのだろうが、中には捨てて行ってしまう人も出てくる。
 軽いビールの空缶だって捨てるくらいなのだから、「大」がどのように扱われるか、容易に想像がつく。
 なあんて、物事を否定的に考えていると、理想からどんどん遠ざかってしまう。ぼく自身の現時点での考えは、「大」は上手に始末したい、ということ。小屋や公衆トイレが使えるところでは使う。道中では、できるだけガマンしたい。やむをえず、という時は、持ち帰り袋を使って用を足し、これは持ち帰るようにしたい。
 ヘッドランプや雨具と同様、持ち帰り袋一つをザックに収めておくことは、登山者の常識としたいと考えている。

2000/08/20 記

いままでの「かんだ」
001 取材    2000年2月20日
002 会津駒ヶ岳 2000年3月20日
003 山高きがゆえに貴っとからず 2000年7月20日


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