明星ヶ岳・明神ヶ岳・金時山【箱根】

どこか手軽に行けるところはないかなといろいろ本を見ていたら、箱根には一回も行ったことのないのに気づきました。
そうだ箱根にしようということで、ガイドブックに書いてあるコースをつなげてみて縦走です。
関東でも、中央線以南のエリアに山に行くのは95年11月の三ツ峠以来となります。


【日 程】97年3月29日(土)
【目 的】明星ヶ岳・明神ヶ岳・金時山
【天 候】曇り
【コース】0815 宮城野橋→0830 明星ヶ岳登山口→0915/0920 明星ヶ岳→
     1025/1035 明神ヶ岳→1105 火打石岳→1150/1220 矢倉沢峠→
     1300/1315 金時山→ 1345 長尾山→ 1355/1405 乙女峠→ 1425乙女峠バス停
【山 名】明星ヶ岳 924m・明神ヶ岳 1169m・火打石岳・金時山 1213m・長尾山 1144m
【メンバー 】単独
【山 域】箱根
【参考書】ヤマケイ・アルペンガイド 東京周辺ワンデイハイク


1.明星ヶ岳

幕張本郷駅を4:42の初電で出発。こんなに早いには久しぶりだ。津田沼から快速に乗って一眠りすると大船へ。東海道線に乗り換えて一眠りすると小田原へ。さらに箱根登山線に乗って..今度はさすがに寝なかった。
湯本のバス停で待つこと15分。仙石原方面のバスに乗り宮城野橋下車。さっそく歩き始める。いろいろな団体の山荘のある道沿いを指導標に沿って歩くと登山口。見上げる明星ヶ岳は標高差はあまりなさそうだが、結構急斜面に見える。空は曇って暗く、雨よ降るなと念じつつ山道に入った。急登をせっせ、せっせと登って行くが、さすがに朝は体が寝ているのか酒が残っているのか、空の暗いのも相まって、気分は爽快とはいかない。それでも、しゃにむに足を動かす。何だか、いろんなことを足を動かすことによって振り払おうとしているように思えてくる。小さなことから、大きなことまで、いい事もよくない事も確かにいろんなことがあるのだ。単独で行動する時の最初の登りは時々こういう心境で始まることがある。
といううちに美しい笹と林の道をコンスタントに高度を稼ぐと、大文字焼の所に出て一気に視界が広がる。金時山を前景に富士山が灰色のキャンパスに大きく書いた絵の様に見える。空は相変わらず曇っているが、富士の雪はキラキラと光っているのが救いだ。なんとか天気は保ってほしい。西の方は大涌谷にたち登る煙と神山が高い。雲は結構高いので、視界だけは非常に良好なのだ。
ここを過ぎると道は平坦になり、突然切り開きの山頂部に飛び出した。明るい!と思った。広々とした開放感。たおやかな明神ヶ岳につづく峰々。これほど開放的な山稜は久ぶりだった。この時点で純粋にこの山のことしか考えられなくなったようだ。時折心中を一掃する瞬間に出会うことがある。その時だなと思った。
少し、南に辿ると御嶽大神の石碑と山頂標識があった。今日は故あって最初の山頂でお祈りすることにしていたので、この山頂で合掌する。

2.明神ヶ岳

さて、この稜線をどこまで歩くか?最高は乙女峠まで最低でも明神ヶ岳と思っていたが、何となく調子がでてきたので、乙女峠の方に傾きつつある。緩やかな登降を繰り返しながら、立派な山容の明神ヶ岳が近づいてくる。切り開きは芝生の上を歩く様で、広く明るく、晴れた日に数人で騒がしく歩いてみたい様な道だ。
宮城野への下りの道を分ける地点から道は狭く普通の山道になり、明神ヶ岳への登りがスタートする。今度は明星への登りほど急ではなく、しばらく歩くと山頂部の端に出た。この山は広い山頂部を持っていて、きっとあのあたりが最高地点だろうと考えつつ進んで行ったが、さらに山頂は遠く奥まっているようなところだった。稜線の左は火山の爆裂火口壁らしく、急峻で崩壊がかなりすすんでいる。さらにその崩壊が意外と高山の雰囲気を与えるのだ。山頂にでると、大きな展望が得られた。富士はもちろん、丹沢、愛鷹連峰(これは面白い形をしていると思った)御坂の山など、曇ってはいるが雲が高いので良く見える。但し、山頂は強風にさらされており、相変わらず雨の不安もつきまとうので、早々にスタートした。

3.矢倉沢峠

明神ヶ岳の山頂部から一気に急下降すると再び切り開きを歩く様になる。ここは 今まで歩いてきた、明星〜明神の稜線がよく見えるので楽しい。道の真ん中に雉が歩いていた。近づくと笹の中に入っていったが、思わずおいしそう!と思ってしまった(^^;;。そして火打石岳の看板があった。道は山頂を巻いて通るが、山頂の方まで切り開きあるので往復してみた。特に何も無かったが、たくさん「ふきのとう」が咲いていた。いままで見かけなかったところをみると、道沿いのものはみんな誰かが持っていってしまったのかもしれない。
巻道はやがて再び稜線に合流していくが、まるで庭園のように落葉樹の並ぶ森の中を抜けていく。最高の林だと思った。そして、このあたりから穏やかに連なる起伏は一面の笹で覆われており、その中を一本の道がどこまでも整備されて金時山の方に伸びている。その中を通れば、両側の背丈をこす笹に囲まれたトンネルを雪のように降り積もった竹の枯葉を踏みしめながら歩く、これも素晴らしい最高の道だ。ピークに向かって伸びる笹のトンネルの向こうに青空が覗いておれば、これは私にとって天にも繋がる道のように思える。とにかくこういう道は最も好きな道だ。
最後のピークは結構登りがいもあり、また大きく下る。そして、茶屋(ただし、閉店中)のある矢倉沢峠に着いた。笹の中を歩いているあたりから、時折青空も出てきて暖かく明るくなった。ポカポカした陽気の中で、ここまで長い休止をとってなかったので、20分ほど気分よく寝転がり、金時山の登りに備えた。

4.金時山

峠から見ると黒くもっこりした金時山は結構遠く見える。しかし休憩の効果か、前半の金時神社分岐まではあっけなく着いた。あとは岩混じりの道を一歩一歩登って行く。人も多くなった。いろいろ看板も多くなるが、頑張って頂上に到着。ここは結構な人出で茶屋も繁盛していた。ビールを買うと漬け物がついてくるのはありがたい。これがまたいい。ベンチでくつろぐがいつのまにか富士は雲の中に隠れている。また雨が心配になってきた。
長尾山へ最後の登りを辿る。だんだん疲労がたまっているのが解るが頑張って歩こう。山頂は大きく切り開かれているが展望はそれほどでも無かった。乙女峠への下りは一直線に降りていく道だが、道が荒れている。乙女峠から、箱根側に下るか御殿場側に下るか迷ったが、御殿場側に下ってみることにした。バスの便はどちらでも一緒であるが、箱根側に下ると、いざとなれば仙石原に歩くことができる。でもなぜか御殿場に下ってみた。
樹林の道をどんどん下ると20分で乙女峠バス停に着いた。今は2時25分。御殿場行きをみたら18分に行ったばかりで、あと1時間半近くもない。湯本行きを見てみたら、これまた22分。茶屋でゆっくり蕎麦でもと思ったが、3分なら遅れて来ることもあると思ったので、ちょっと待ってみると下の方からバスが登ってくるところだった。
バスの客となり再びトンネルを抜けて箱根の町に下っていくと、いつの間にか本格的な雨になっていた。湯本まで1時間弱かかっただろうか。眠っているうちに終点に着いていた。

箱根は観光地というイメージが強く、今まで登る山としてあまり考えていなかったのですが、さすがにとても素晴らしい所でした。交通の便がいいのはとてもいいですが、車も多いので、これだけ電車やバスが発達しているのですから、わざわざ自家用車で入ってこなくても....と思いました。今まで、この会議室で何度も書かれている山なのですが、実際に行ってみるととても新鮮に感じました。

注:この記録は1997年に書いた物をそのまま掲載しています。