白泰山(十文字越え)

 白泰山 1793.9m
 山域:奥秩父

記録
 山行日2012年04月29日(日)
 ルート栃本関所→白泰山→十文字峠
 コースタイム0825 栃本関所 → 0842 登山口 → 0851 両面神社 → 0927/40 林道登山口 → 1002 栃本広場分岐 → 1013 一里観音 → 1127 白泰山分岐 → 1141/1214 白泰山 → 1235 白泰山避難小屋 → 1410 三里観音 → 1437 奥秩父林道 → 1451/1505 大山南面の水場 → 1539/1546 奥秩父林道分岐 → 1616/21 四里観音 → 1624 柳小屋分岐 → 1650 十文字峠(十文字小屋)
 天候晴れ

今年のゴールデンウィークの山旅は、久しぶりに奥秩父の山小屋一泊の旅です。主脈からは外れた十文字小屋に一泊とし、そしてそこに至る道を十文字越えの古道と決めました。初日は通常の十文字越えルートだけではピークハントできないので、中間点の白泰山だけはピークに立つこととし、起点である栃本関所へと向いました。

都内を発ち、朝の川又行きのバスに乗るためには、早朝の保谷始発の電車に乗る必要があるようでした。そこで秩父に近く、駅前にビジネスホテルがある駅ということで、前日飯能まで進んでいくことにしました。そしてすっきりと晴れた春の朝、飯能駅から電車に乗れば、すぐに山の懐へと入って行きます。いつもはまず東京を横断してから山に向うので、ちょっと勝手が違います。西武秩父で秩父鉄道に乗り継ぎ、三峰口から大滝方面のバスに乗ります。乗客は一人だけで道の駅のある「大滝温泉遊湯館」で降り、さらに「川又」行きの秩父市営バスを待ちました。マイクロバスを利用した小さなバスでさらに山の中へと分け入り、着いた栃本関所跡は意外なことに高台の展望のいい場所でした。
栃本関所の前から、目を惹いたのは正面の和名倉山からの大きな尾根と、川又の向こうに見えている雁坂嶺でした。雲ひとつ無い青空の中、関所の桜と雁坂嶺の取り合わせはなかなか絵になるものでした。関所の横の舗装路を登り、民家の前を抜けてカーブして植林地に入ったところに登山道の入口はありました。地図よりはかなり手前のようでしたが、標識に導かれて植林地の中の登山道を登っていくとやがて両面神社の前を通過します。そのまま坂道を登って行くと、骨組みだけの小屋のような東屋を過ぎ、道はぐっと緩やかになりました。暗い杉林の中をしばらく進み、再び登り始めると舗装された林道を横断しますが、ここは上の登山口で車が1台停まっていました。 再び杉林の中を緩やかに登って行きます。少し斜面に岩が出るようになると、杉林に雑木林が混じるようになり、やがてほとんど笹と雑木林の道になって、栃本広場への分岐を通過しました。さらに進むと一里観音でまだ冬枯れの雑木林の明るい所です。
道は緩やかにアップダウンしながら進み、少しずつ高度を上げれば奥秩父らしい黒木も混じってきます。樹間からは白泰山のピークも時折見えていますが、多少コースタイムに遅れ気味で、ちょっと意識してピッチを上げました。道は緩やかにアップダウンを繰り返しながら高度を上げていきますが、さしたる展望も無い中で黙々と歩いていくところです。白泰山の北の巻き道に入ると白泰山の山頂への標識があり、崩れやすい急なかすかな踏み後を登って行くと、獣に破壊されて柱だけ残った標識のあるところで稜線に出て僅かに折り返せば白泰山の山頂でした。山頂は、展望は無く三角点が静かに鎮座していて、山名の標識は熊にでも齧られたのか半分が欠けたものでした。とりあえず今日の唯一の山頂であり、第一の目的地でもあったので、ここで休憩し、昼食としました。
白泰山からは、分岐に戻らず尾根をそのまま西に進みました。微かな踏み跡と古い赤テープを追って、尾根を外さないように進みます。このあたりは石楠花も多く、奥秩父の一角にすでに入っているという雰囲気です。やがて踏み跡は登山道と合流しますが、こちら側には特に標識はありません。そして僅かに下って白泰山避難小屋に到着。のぞき岩の標識に導かれて岩の上に出ました。ここは今日唯一の展望地で、南に奥秩父の主脈が横たわり、正面に破風山が特徴ある姿を見せていました。西のこれから進む尾根では赤沢山が双耳峰として見え、その向こうに八ヶ岳の白銀の稜線が見えていました。
白泰山避難小屋からしばらく下ったあと、赤沢山を目指して道は緩やかにアップダウンしながら進んでいきます。尾根が右に曲がって岩ドヤと言われるあたりの南斜面では、山中で今回唯一の花を見ることができました。ハシリドコロの小さな群落ですが、早春の花でもあります。岩ドヤの南面から赤沢山の北面に回り込みしばらく進むと、道は崩れやすく狭い巻き道となります。鍾乳洞入口の標識のあるあたりで、踏み跡も乱れて歩きづらく、かなり疲れる部分でもありました。ここを抜けてしばらく下ると三里観音があり、難渋した後での観音様はホッとする所でした。
三里観音の先から再び登りになりますが、久しぶりのまとまった登りで、ちょっとスッキリしました。これを登りきると奥秩父林道にでますが、廃道化して崩壊も激しく、道の真ん中にも木が成長している様な状態でした。なにやら廃墟のような雰囲気を思わせます。この林道をしばらく辿ると再び登山道となり、大山の南面を回りこんでいきます。途中に水が湧き出しており、特に水場というものでは無さそうですが、ここは一服の清涼剤ということで、自己責任でいただきながらしばらく休憩しました。さらに緩やかにつづら折りを登ると稜線を越えて北面に移り、少し下って大山の先の鞍部に出ます。次に1867mのピークに向けて再び登り、途中から北面の巻き道となって再び下っていきます。さすがにここまで来ると相当疲れも溜まって、いつまで続くのかと精神的にもつらいところです。また、このあたりまで登って来ると黒々とした木の占める割合が多くなり、立派に苔むした倒木も出てきて、いよいよ奥秩父の原生林の中に入ってきた雰囲気になってきます。そして北面の道は僅かですが雪が出るようになり、最後の十文字峠の手前の巻き道が思いやられてきました。下った鞍部からは、奥秩父林道経由中津川林道へと下る道が分岐していました。そしてその先に四里観音避難小屋への分岐があり、避難小屋の屋根が見えていました。
道は再び次のピークに向けて登っていきます。ここは急坂ではありませんが着実に高度をあげ、再び北面の巻き道になります。巻き道が終わるとほとんど下らず次の鞍部に到着。そこには四里観音があり、これまでの長い歩きを経て本当に救われた気分でした。ここまでくれば、あと少しの登りで、十文字峠への水平道に入ることになるのです。そして、僅かな登りで柳小屋への分岐があり、そこから尾根の北側に向えば最後の北面の巻き道に出ました。
さて、この部分はガイドブックには、「奥秩父でも有数の原生林の森林美が味わえるところ」とあり、実はとても期待していた部分で、ゆっくり森林を堪能しながら歩くこととします。とはいっても、危惧した通り残雪の凍りついた道となってしまい、必然的に最徐行でしか進めなくなってしまったのですが。あたりは期待通り苔むした緑の美しい道で、時折足を止め写真も取りながらゆっくり進みました。やはりここまで歩いて来たかいがあったという感じでした。やがて、この道も終わり甲武信からの道に出ると、ホッとしたと同時にちょっと名残惜しい感じがしました。十文字峠までは僅かな下りで、石楠花に囲まれた十文字小屋に入り、宿泊の手続きを済ませました。

十文字小屋は、他の奥秩父の小屋と同様、落ち着いた静かな小屋でした。この日の宿泊者は10数人でしょうか。夕食は春の味覚の山菜の天麩羅で、同宿の方々と今日の行程についてなど歓談し、夕食後は暖炉の周りで小屋番さんとやGWのお手伝いの方々の間に、一人図々しく混じって、いろいろなお酒やつまみをいただきました。程よいお酒の大変楽しい一夜でした。久しぶりの山での泊まりでしたが、やはりこれはしみじみといいものでした。

以下 十文字山 に続く

本文中の写真(順に)

  • 栃本関所前の桜と雁坂嶺
  • 一里観音手前で、稜線の雑木林の道
  • 路傍の一里観音
  • 春の花「ハシリドコロ」
  • 奥秩父の森の苔むした切り株
  • 苔むした林と凍結した道

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
    エアリアマップ 奥秩父1(1992年版)
    エアリアマップ 奥秩父2(1998年版)
    25000図 中津峡 居倉
    50000図 三峰 金峰山

    樹林に囲まれた白泰山山頂
    その他のコース
    白泰山へは、一般にはこのルートのみとなりますが、十文字越えの稜線に至るルートとして、
    ・栃本広場から
    ・中津川林道〜奥秩父林道経由
    ・川又〜柳小屋経由
    の道があります。
    交通機関
    秩父鉄道三峰口から、大滝老人福祉センター・秩父湖・三峰神社方面、西武観光バス「大滝温泉遊湯館」乗換、秩父市営バス川又行き「栃本関所跡」下車。
    詳細時刻は、西武バス 秩父市をご参照下さい。