十文字山

 十文字山 2071.9m 悪石 1849.8m
 山域:奥秩父

記録
 山行日2012年04月30日(月)
 ルート十文字峠→十文字山→悪石→三国峠→梓山
 コースタイム0610 十文字峠(十文字小屋) → 0627/37 十文字山 → 0704/12 のぞき岩 → 0740 弁慶岩 → 0837 梓白岩 → 0925/1000 悪石 → 1025 三国峠 → 1206 日本基橋 → 1236 梓山バス停
 天候曇り

白泰山 より続く

十文字小屋泊まりの山行の2日目は、主目的である十文字山です。そして、行程は三国尾根を経て、三国峠へと辿る道です。山小屋の朝はいつも通り早く、朝食後主脈方面へと早々に出発していく人たちのあと、ゆっくりと準備をして再び一人となって十文字峠を出発しました。

シャクナゲの茂る十文字峠を後にして、黒々としたコメツガ、シラビソの森に入り早速十文字山への登りとなり、広い緩やかな尾根道をゆっくりと踏みしめるように一歩一歩進んでいきました。奥秩父の森の歩きは雰囲気もよく、朝の森の空気をいっぱいに吸い込みながらの道です。峠から山頂までは約20分。辿りついた十文字山は三角点のある樹林の中のピークで展望はありませんが、今回の行程の最高点。一つの目的を果たしたという形で少し休憩しました。
十文字山からは北に緩急を繰り返しながら下っていきますが、このあたりは一帯がシャクナゲのトンネルとなっていて、花の時期は素晴らしい場所になることが想像されます。苔むした倒木とシャクナゲの道は、このあたりならではの美しい森の姿です。途中で十文字山の北の肩と思しき場所で、のぞき岩の標識があり、岩の上に立ってみました。西と北の方向が開けており、両神山やこれから歩く稜線を眺めることができました。
のぞき岩からさらにシャクナゲの道を下り高度を下げていくと、黒い森からだんだん落葉樹が混じるようになります。小さなピークを幾つか越えていきますが、それも今までの広い尾根から岩混じりの痩せた尾根道となり、雰囲気が少しずつ変わっていきます。小さな岩場を上り下りしながら進むと、ひと際大きな岩が尾根に現れますが、これは弁慶岩で、道は長野県側につけられた桟道を巻いていきますが、この雰囲気は西上州の山に近づきつつあります。それもそのはずで、この先の三国山の向こうは西上州の領域なのです。このあたりは南面が雑木林、北面はシャクナゲという形で、まさに奥秩父と西上州が交じり合う山域なのでしょう。
弁慶岩を越えた後の次の顕著なピークでは大変見晴らしのいい岩峰で、雄大な景色が広がりました。眼前に大きく目を惹くのは三宝山の雄大な姿で、そこから西に奥秩父の山々が並んでいます。谷間を見下ろせば、冬枯れで芽吹きの準備をしているカラマツが、微妙な琥珀色の色合いの絨毯のようになっていました。しかし今日は青空が無いのがかえすがえすも残念でした。
さらに稜線を辿り梓白岩を長野県側から巻いて過ぎていきます。この岩は南面がつるつるの白い岩ですが、北面は樹林に覆われていました。梓白岩からさらに今日の第二の目的である悪石に向かいます。まだシャクナゲも続いていますが、林はすでに明るい雑木林が主体になっています。そして今までの険しい岩尾根も終わり、幾分広い尾根となって幾つか小さなピークを越えていきました。尾根は少し西に向きを変え、1794mのピークを過ぎて、再び尾根が北に向きを変えると悪石への登りとなります。小さなピークを2つ3つ登り返して登りついた小さな岩稜が悪石の東の肩でここに立つと正面に三国山が良く見えます。三国山は文字通り三つの国の境ですが、こことほぼ同じ高さです。少し進んで悪石の山頂に立てば、ここも素晴らしい展望が待っていました。今まで展望の主体であった三宝山に加え、金峰山から朝日岳のまだ雪をかぶった奥秩父の高嶺、そして白銀の八ヶ岳の稜線が良く見えます。そしてもう一つ立派な形をした大きな山は小川山です。多少平凡な名前の為、あまりマークしていなかった山ですが、なかなかどうしてこれは立派でした。開放的な悪石の山頂で最後の休憩を楽しみました。
悪石からは三国峠に下るのみ。すっかり雑木林の道になった登山道を下ると左手に無線中継所が見え、さらに下って中継所に向う車道に合流しました。車道は次の小さなピークを巻いていくので再び登山道に入り、意外にも一山登って越えたあと、車道に削られた三国峠へと降り立ち今回の山道の歩きが終わりました。
三国峠から梓山までは車道歩きです。用意していたサンダルに履き替え軽快にカラマツの植林地の中の舗装路を下って行きます。車道はご他聞にもれず遠回りに山腹を巻いていきますが、このあたりのカラマツ林は緩やかで、どこでもショートカットして下っていけそうです。サンダルに履き替えたのを少々後悔しましたが、また履き替えるのも面倒なのでそのまま舗装路を歩いて行きました。こういった感じであれば、廃道となっている三国峠への旧道も、かつての道に付かず離れず適当に降れるのかもしれません。
2時間の長い車道歩きでは、時折自動車や峠を走りにきたバイクと出会いますが、それほど頻繁にくる訳ではなく、総じて快適に下れました。しかし、最後に道が大きくヘアピンカーブを切って遠回りするあたりで足の裏が傷み始め、日本基橋を過ぎて川沿いの平らな道に出るあたりからは、かなりの痛みになりました。梓山の集落に入るころは相当耐えがたくなり、だましだまし歩いてやっとバス停に着いて足の見ると大きなマメができてあり、この後2日ほど苦労することとなりました。バスの時間までは15分ほどで、荷物などを整理して過ごし、誰も乗せずに川端下から来たバスに乗って、車窓の高原風景を楽しみながらもいつしか眠りにおちて信濃川上駅へと向かいました。

信濃川上駅から小淵沢で満席のあずさに乗換え帰路につきました。信濃川上駅で指定券がとれていたのはラッキーでした。今回はちょっと地味なコースでしたが、やはり久しぶりに長い距離を歩くと充実感があります。そして、最後に見た三宝山や小川山は未踏でもあり、また次の山行への期待が膨らむこととなりました。このあたりはアクセスも遠く、そう度々来られる訳ではありませんが、近郊の山とは違った奥深い雰囲気を楽しみにしておきたいと思います。

本文中の写真(順に)

  • 十文字山山頂付近の森
  • 樹間に見る十文字越えの尾根道
  • シャクナゲのトンネル
  • 弁慶岩(南面より)

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
    エアリアマップ 奥秩父2(1998年版)
    25000図 居倉
    50000図 金峰山

    三宝山と奥秩父の山々の展望
    その他のコース
    十文字山へのルートとしては、白泰山経由のルート以外に、
    ・梓山〜毛木平〜十文字峠(十文字越えの西側)
    ・奥秩父主脈〜三宝山〜十文字峠
    ・川又〜柳小屋〜十文字峠
    の道があります。
    交通機関
    信濃川上駅から、川端下行き、川上村営バス「梓山」下車。
    詳細時刻は、川上村ホームページをご参照下さい。
    三国峠の埼玉県側は、中津川が最寄となりますが、20km、4〜5時間は必要です。三峰口駅発西武観光バス中津川行き
    詳細時刻は、西武バスをご参照下さい。