笠取山

1953m
山域:奥秩父
2002.3.16.



ここしばらく、一応いろいろな山には行っていたのですが、ちょっと捻ったような山の選定が多くて、いかにもオーソドックスな山???にはしばらくご無沙汰していました。そこで、そろそろ登りやすい季節になったのではないかと、久しぶりに奥秩父の主脈の山に出かけてみました。最近ほんとに行程の短いところばかりだったので、ちょっと体力気力が不足気味ですが、夏に向けてなんとかがんばらないといけません。

今回は一応正攻法な山歩きということで、久々に気合いを入れて、夜中の12時頃出発した。途中事故渋滞しつつ、八王子で高速を降りて夜中の青梅街道を行く。さすがに3時近くなると、一瞬意識が途絶え、センターラインをはみ出すことが何度か。イカンイカンと適当な場所で仮眠することにした。鴨沢西のバスの回し場であった。
さて、すっかり明るくなったころ、再び車を走らせる。街道脇のスペースには、必ずといっていいほど車が1台止まっている。渓流釣りの人たちだ。さすがに朝が早い
落合まで行ってから一ノ瀬へと入っていったので、犬切峠を越えていくことになる。里には春が来ているが、まだここには路肩に雪も残り、日陰には路面に氷がはっていた。作場平の登山口は通過して中島川の登山口に車を停める。うまくすれば、唐松尾山も登ってやろうという魂胆なのだ。
登山口から丸太組みの道を少し登ると、広々といい道となる。ただ、所々に雪が残っており、それが毎日溶けては凍る為、完全に氷になっていて歩きづらい。なんとか滑らないところを選んで植林地を抜けると、馬止の看板があった。
このあたりの道は、東京都水道局により、「源流のみち」として整備されており、ここで「天然林の中の長〜い歩道」という、作場平方面への道を分岐して、水干への登りに入る。ここもよく整備された水源巡視路なので、傾斜も歩きやすく緩くつけてあり、大変登りやすい。少し登ると、左手に大菩薩嶺と真っ白な富士山が見えた。大菩薩嶺は北から見ると、尖った端正な山に見える。
しばらく雑木林の中を登って行く。尾根上はあまり氷が無く歩きやすい。しかし今日は天気予報は晴れだったはずなのに、朝方出ていた青空もいつのまにかすっかりグレイの雲に覆われ、なんだか寒々しい日になったようである。一登りした所に富士山を正面に見るベンチがあり、一息ついた。
道はしばらく平坦になったあと、斜面を大きくジグザグを切って登るようになる。傾斜をあまり感じないほどに、丁寧に道が造られているのだ。林の中の笹の背丈が高くなってくる。奥多摩の笹はかなり枯れてしまったが、ここは元気なようだ。皮がはぎ取られている木を時々見かける。たぶん鹿ではないかと思うのだが、以前、熊と出くわしたのも、唐松尾山の南面である。時々手を叩いて音を出しながら行く。
傾斜が緩くなり、縦走路となっている水源巡視路に合流する。4年前に縦走した時に歩いた道だ。あのときは疲労困憊していたこともあり、このあたりになると古礼山・笠取山・唐松尾山・飛龍山とすべて巻いていってしまったのだ。その為もあって、今日は笠取山に立とうと、ここに登ってきている。道が黒槐沢を横切るあたりは雪が多く、時々固い雪を踏み抜いて膝まで潜る。これはたまらんと、あわててスパッツを付けた。
黒槐沢の先で、笠取小屋へと延びる縦走路と分かれ、水干へと急な坂を登る。ここは所々凍っているので、注意しながら行く。これを登り切ると水干神社が近いが、それは以前見たことあるので、折り返すように稜線への道を登る。すぐに、笠取山と黒槐ノ頭への分岐になった。
まずは笠取山を目指す。しばらく凍った土の歩きやすい道を登る。右に見える黒槐ノ頭は意外に高いなと感じる。歩きやすい道が終わると、びっしりと氷の付いた岩を登るようになる。僅かに手や足をおけるところを見つけてなんとか這い上がる。登り着いたところは小ピークで、先にいくつかピークが続いていた。笠取山へは、これらのピークを越えていかないといけないようだ。
岩の出た稜線は所々に氷が付いていて、なかなか気が抜けない。再びこれを戻って唐松尾山に向かうことを考えると気が重くなる。今日は7時までに家に帰らないといけないので、唐松尾山までの様子を想像すると、ちょっと時間もかかりそうなので、当初のもくろみはやめて笠取小屋経由で降りることにした。要するに易きに流れたということかもしれない。
さて、最後のピークに登ると埼玉県の立派な標識があった。ここは南面に富士山が良く見え、また西は古礼山の後ろに破風山や甲武信岳が見えている。そして一番立派に見えるのは国師ヶ岳だ。とても均整のとれたいい山である。下山を決めこんでしまったので、ここで腰を落ち着け弁当を広げた。
この山頂の少し先に山梨百名山の標識のある山頂があった。ここに立つとさらに遮るもののない展望が広がる。四年前に越えてきた山々が見え、その時のいろんなことが思い出された。
ここからは切り開きの一気の下りである。以前この登りを見て、あっさり巻き!と決めたことを思い出す。草付きであるが、この斜面こそ適度に雪が着いていてくれると面白いのだが。上から見ると笹の平原は今では8割程度が雪の下だ。以前見た、青々とした風景とはずいぶん違うものだ。
鞍部に降りると、前に小さなコブがある。これが、多摩川・荒川・富士川の分水嶺である。小さなものだが、尾根の張り方の問題なのだろう。平坦なピークにはうっすらと雪も積もっているが、この雪は溶けてどちらに流れるのだろうか。分水嶺から下れば、雁峠への分岐があり、さらに目の前の小さなコブを越える。道は巻いているがうっすらと固い雪に覆われた起伏のほうは歩くのに気持ちよい。見れば、普通の道の方は溝状になっている所が、しっかり凍っていて、ボブスレーになりそうだ。
開放的な道からは、右手に国師ヶ岳と、その前に乾徳山が良く見えている。乾徳山の国師ヶ原は、なるほどそこだけカヤトの原になっている様子が、遠くからでもよくわかる。そしてその向こうには真っ白い白鳳三山がならび、それに負けじと南部の山々も高さを競っている。笠取山から雁峠一帯は本当に伸びやかな展望のいいところであった。この起伏を越えると笠取小屋への下りである。仕方なく道に戻り、注意して下る。笠取小屋は閉まっており、冬季小屋のみの使用となっていた。
小屋から一休坂のルートを下る。前半は沢沿いに下ることになるが、沢沿いは雪が多く残っているため、アイスバーンで苦労する。やっと一休坂の尾根に上がればミズナラ林の素晴らしい道である。樹齢300年ほどの大木もあるようだ。ある程度下ると馬止からの「天然林の中の長〜い歩道」が交差する。たしかにそちらを辿ると、林道歩き無しで、中島川まで行けるが、水平道は谷に深く切れ込んで作られているため、とても長そうなので、今回はそのまま下ることにした。すぐにヤブ沢経由の道と合流し、植林地の中を下る。少し暖かくなった為か、凍っていた土が溶けて、滑りやすい泥に時折足を取られる。3月の時期の地面というのは本当にやっかいだ。
ヤブ沢の流れは雪解け水を湛えて澄んでおり、ここにきて少し陽光が射し、水面も輝いていた。この道は森に関していろいろと教えてくれる看板が並んでいるがそれらに書いてあった通り、苔むした、いい流れである。そして作場平の林道に出て、周囲の山を同定などしながら、舗装路を中島川の方へと戻っていった。

中島川口からは正面に黒槐ノ頭の稜線が見えます。その奥に唐松尾山がありますが、今度はそちらに行ってみないと行けません。また、笠取山からは唐松尾山の後ろに大きな和名倉山が見えました。ますます行きたいとこらが増えました。季節がもう少し良くなったらまた訪ねたいと思います。

本文中の写真

  • 笠取山山頂
  • 笠取山直下からの笠取山全景
  • 一休坂のミズナラ林


  • 参考:奥秩父主脈縦走

    記録

    日 程

    2002年3月16日(土)

    天 候

    曇り

    コース

    0653 中島川口 → 0710 馬止 → 0730/35 黒槐尾根上のベンチ → 0815/20 主脈の水源巡視路 → 0835 ミズヒ尾根への登り口 → 0855/0900 水干分岐 → 0920/0940 笠取山 → 1010 分水嶺 → 1025/30 笠取小屋 → 1110/15 馬止への分岐 → 1125 ヤブ沢 → 1145 作場平口 → 1210 中島川口

    小さな分水嶺付近の草原から国師ヶ岳を遠望する


    参考図書・地図 その他のコース
    昭文社 エアリアマップ 奥秩父1
    25000図 雁坂峠
    50000図 三峰
    奥秩父主脈縦走路を両方向から辿ってくれば、笠取山に達することができます。
    笠取小屋へは、一休坂コースの他にヤブ沢コースがあり、同じく作場平から登ります。
    また、新地平から雁峠経由で登ってくることができます。
    バス
    バスの利用はちょっと厳しいようです。
    公共交通機関を使った場合、塩山からタクシーと紹介されています。
    一番近いバス停は、丹波ということになりますでしょうか。