牛の寝通り

 框ノ尾山 1,429.4m
 山域:大菩薩

記録
 山行日1999年10月9日(土)
 ルート小菅→モロクボ平→框ノ尾山→石丸峠
 コースタイム0825 小菅 → 0830 登山口 → 0925/30 モロクボ平 → 1020/30 大ダワ → 1140/50 框ノ尾山 → 1325 石丸峠
 天候曇り

牛の寝通りという大菩薩連嶺から東にのびる尾根は、その穏やかそうな名前と地形に惹かれ、長らく歩きたいコースであった。そして、ちょうど通算150回目の節目にあたり、自分自身のこだわりの山として、このコースに登るべく小菅を目指したのである。

早朝の電車を乗り継ぎ、奥多摩駅から小菅行きのバスに乗る。小菅まで乗ったハイカーは私だけで、どうやら静かな山が楽しめそうだ。今日は長期予報に反し、ちょうどこのあたりの南関東の一部が曇りになってしまい、空は重く残念である。少しでも青空が出て欲しいと祈りつつ、小菅の役場前から大菩薩方面に向けて歩き始めた。
川久保のバス停の先から左に折れ、小菅川を渡ると養魚場がある。この養魚場を回り込んだことろに小さな「モロクボ平」の標識がり、ここが牛ノ寝通りの登山口である。養魚場では、今日は熊が出やすい天気だと注意され、時折拍手したりしながら行くことにした。民家の横を通って山道に入り、しばらくはつづら折りの道を高度を上げていく。最初は植林が多いが登るに従って落葉樹もでてくる。紅葉には、まだちょっと早いようだ。しばらくの間はワサビ田でびっしり埋まった沢に沿って登っていく。栗のイガもたくさん落ちており、あちこち引っかいたような跡がたくさんあるのは、猪の仕業だろうか。
登山口から約1時間、順調に高度を稼いで、広葉樹の中の登りがやや緩やかになってくると、小菅の湯・田元方面との分岐になった。分岐からは、なおも緩やかな登りが続き、少しづつ高度を上げる。ほぼ尾根の右側を巻きながら登っていく道で、登るほどに傾斜が緩んでくる。やがて、道の左手にトタン屋根だけの休憩所があり、大ダワの分岐に到着した。大ダワの先は切り開かれて展望があるので休憩する。展望と言っても、曇っており、1500mより上は雲の中だった。向かいの長峰が見える程度、その先の雁ヶ腹摺山方面は見えない。
ここからが牛ノ寝通りの尾根道となる。ゆったりした登り下りはあるが、框ノ尾山までは高低差のない牛の背を行くようで、言い得て妙とはこのこと、面白い名付けである。もっとも由来は、交易に使役される牛が長い尾根を道中あちこちで野宿しながら歩いて行ったからという話もある。この道は時節柄キノコがすごい。どれが食べられるか解らないが、枯れ木に鈴なりになっている姿は壮観であった。時々音を立てながら進んでいくと、ガサガサという音。見てみれば、ドラムカンに4本足をつけたような茶色いやつが、広い尾根を横切って、驀進していく。なるほど、猪突猛進である。
ずっと続く自然林の道を行き、少し登りが出てきたと思うと、刈り開かれた場所に出る。三角点と標識で、框ノ尾山と解る。しかし山とはいえ、平坦な尾根から傾斜が立ち上がる地点である。相変わらず展望は無いが、ここで少し休んで石丸峠への登りに備えることにした。
石丸峠までは500mの登りになるが、思ったほどの急登はなく、平均的に登っていく。しかし3時間以上歩いたあとだけに、休み休みでゆっくり歩をすすめて標高を稼ぐ。やがてガスの中に入ってしまい、これからの連嶺縦走が思いやられた。途中、自転車の2人とすれ違ったが、たしかにこの道はMTBには最適かもしれない。
苦しいのぼりも、概ねコースタイムを歩くと終わるものである。途中の長峰への分岐は気づかずに過ぎてしまい、壊れた小屋のある石丸峠の上方に出た。幸い、この周辺はガスが晴れ、熊沢山周辺の明るいカヤトの尾根やが眺められた。爽快な見通しのいいところだ。厚い雲がどんどん流れていっているが、時折隙間が出来て青空から日が当たる瞬間がある。全体的に肌寒い中で、その時だけは暖かく、小金沢連嶺へと続くこれから歩く草原の縦走路を見ながら、しばらく休憩した。


小金沢連嶺に続く

参考図書・地図
アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
ブルーガイド 東京付近の山(1998年第1刷)
エアリアマップ 大菩薩連嶺(1994年版)
25000図 丹波 七保 大菩薩峠
50000図 丹波

牛の寝通りはキノコの宝庫
その他のコース
・松姫峠〜大マトイ山〜牛の寝通り
交通機関
奥多摩駅から小菅行き
西東京バスを参照下さい。



Nifty FYAMA 投稿文

小菅から牛ノ寝通り (150回記念の1)

通算150回目の山は、やはりこだわりのコースがいいと思って計画しました。最終的には、このコースと奥鬼怒、表妙義が候補に残りましたが、気軽に行けて、また、以前より久しく考えていたコースを繋げたこの計画ができあがりました。
100回目の山が湯ノ沢峠から、大谷ヶ丸・大鹿峠だったので、そのお隣のルートになります。3つのポイントを繋げた贅沢なコースです。

【日 程】99年10月9〜10日
【目 的】150回記念にロングコースを歩く
【天 候】9日 曇り 10日 快晴
【コース】9日
     0825 小菅 → 0830 登山口 → 0925/30 モロクボ平 → 1020/30 大ダワ
     → 1140/50 框ノ尾山 → 1325/45 石丸峠上 → 1455/1505 小金沢山 →
     1600/10 牛奥ノ雁腹摺山 → 1625 賽ノ河原 (泊)
     10日
     0600 賽ノ河原1050 → 0650/0710 黒岳 → 0800/0815 大峠 →
     0905/30 雁腹摺山 → 1005/10 雨量観測所 → 1115 百軒干場 →
     1120/40 金山峠 → 1255/1300 金山鉱泉 → 13:40 遅能戸
【山 名】框ノ尾山 1429.4m 小金沢山 2014.3m 牛奥ノ雁腹摺山 1994m
     黒岳 1987.5m 雁腹摺山 1874m
【メンバー 】単独
【山 域】大菩薩
【参考書】エアリアマップ 大菩薩連嶺
     5万図 丹波 2.5万図 七保・大菩薩峠・大月

1.登山口まで

牛ノ寝通りの登山口は小菅だが、朝の小菅行きのバスに乗る為には、隣の駅の津田沼発4:27の始発電車に乗る必要がある。2番目のバスは午後にになり、それに乗って牛ノ寝通りの途中で夜を明かすことも考えたが、せっかくの休日をフルに使いたいのでなんとか始発電車に乗ることにした。ちょうどタイミングよく、家の郵便受けにタクシー会社のポケットティッシュが入っていたので、さっそく電話をして、翌日4時前の迎えを頼み、準備を整える。津田沼駅までは2500円。奥多摩から小菅までのタクシー代を考えると安いもんである。翌日は、ちょうど目が覚めたら立川の駅だったという幸運もあったが、順調に電車を乗り継ぎ、奥多摩に着いた。
奥多摩でバスを待つ人はすべてが小菅行きに乗るわけではなく、30分後の留浦や鴨沢行きを待つ人もいる。小菅行きで深山橋から歩くという選択はやはりしない様だ。小菅行きはハイカーは僅かで若い釣り人が多い。ハイカーは早々に下車してしまい、釣り人も金風呂でみんな降りてしまった。ということで、金風呂から先は乗客は私一人と新聞だけということになってしまった。ハイカーにも人気の無い方面の様だ。静かな山が楽しめそうで嬉しい。
小菅は大菩薩と牛ノ寝通りと鹿倉山の登山口であるが、大菩薩ならは林道歩きの少ない丹波の方が人気があるだろうし、牛ノ寝通りも同様だが、どちらかというと下山に使われるケースの方が多そうである。鹿倉山は大丹波峠から登れば、小菅も丹波も同じ様なもんだが、尾根が丹波の方を向いているので、どうしても、丹波から登る人が多くなるだろう。そういう意味では小菅起点の登山者はかなり少ないかもしれない。
さて、長期予報では今日明日の2日間は晴れの予定だったが、残念ながら今日は南関東の一部は曇りになってしまった。明日は良さそうだが、秋はどうも予想通りの天気にならないなぁと思う。ただ、全体的にはいい傾向にあるので、降るまでには至らない曇りという天気である。小菅の役場前でバスを降り、途中でパンを買ったりしながら、大菩薩方面に向けて歩き始めた。

2.牛ノ寝通り

川久保のバス停の先から左に折れ、小菅川を渡ると養魚場がある。登山口はこのあたりかな?と思って養魚場のおじさんに聞くと、丁度養魚場の少し先の回り込んだことろに小さな「モロクボ平」の標識があった。小さな入り口でここはちょっと解りにくいかもしれない。養魚場のおじさんには、
 「この尾根には熊がいる。今日のような曇った日は出やすいから危ない」
と言われた。で、時折拍手したりしながら行くことにした。
入り口は民家の軒先になっており、家の横を通って山道に入っていく。しばらくはつづら折りの道を高度を上げていく。最初は植林が多いが登るに従って落葉樹もでてくる。牛ノ寝通りは紅葉が美しいらしいが、まだちょっと早いようだ。しばらくの間はワサビ田でびっしり埋まった沢に沿って登っていく。道は栗のイガがたくさん落ちている。あちこち引っかいたような跡がたくさんあるのは、動物がかき回したのであろうか。この栗の実も食料になったことだろう。そういえば昨年熊と鉢合わせした時は、落ちた木の枝からどんぐりを取っているところだった。何か出そうなので音を立てながら行き、広葉樹の中の登りがやや緩やかになってくると、小菅の湯・田元方面との分岐になった。ここまで、1ピッチ、約1時間弱。ここからは框ノ尾山までは傾斜は緩くなり一段と歩きやすくなる。このあたりで初めて人と会った。地元の人らしかった。
分岐からはなおも緩やかな登りが続き、少しづつ高度を上げていく。ほぼ尾根の右側を巻きながら登っていく道で、ある程度登るとさらに傾斜が緩んでくる。樹林の中の道なので、目指す牛ノ寝通りがどれなのか判然としないが、緩やかな道を行くと、道の左手にトタン屋根だけの休憩所があり、大ダワの分岐であった。大マトイ山へは一投足だと思うが、先が長いのでパス。大ダワの先は切り開かれて展望があるので休憩する。展望と言っても、曇っており、1500mより上は雲の中である。従って向かいの長峰が見える程度、その先の雁腹摺山方面は雲の中であった。
さて、ここからが牛ノ寝通りのメインである。ゆったりした登り下りはあるが結局框ノ尾山までは高低差のない牛の背中である。面白い名前だと思う。注目すべきはキノコがすごい。どれが食べられるか解らないが、枯れ木に鈴なりになっている姿は壮観である。いくつか写真を撮ってきたので、あとで調べてみようと思う。時々音を立てながら進んでいくと、ガサガサという音。見てみれば、ドラムカンに4本足をつけたような茶色いやつが、広い尾根を横切って、驀進していく。なるほど、あれが猪突猛進というやつである。
尾根の途中で下山者2人とすれ違う。そして出会った村人が興奮した面もちで、話しかけてくる。
 村人「猪、見たか?」
 私「見た、見た」
 村人「大きいのか?小さいのか?」
 私「こんなに大きいの」 と言っててを広げる。
 村人「そうかそうか、おら、4匹も見た。ドーン....もうすぐ狩だ。なぁっ」
 私「そ、そうですね....(^^;;」
手にはキノコのいっぱい入った袋を持ったこの大声で話しかけてくる村人は、ドラゴンクエストなんかで森の中で突然であう村人の雰囲気であった..(^^;;しかし、林道が奥まで延び、次々とダムが出来て人の手が浸食していく大菩薩だが、まだまだ自然の恵みは大きい。
ずっと続く自然林の道を行き、少し登りが出てきたと思うとそこだけ刈り開かれた場所に出る。三角点と標識で、框ノ尾山と解る。しかし山とはいえ、平坦な尾根から傾斜が立ち上がる地点である。相変わらず展望は無いが、ここで少し休んで石丸峠への登りに備えた。
石丸峠までは500mの登りになるが、思ったほどの急登りはあまりなく、平均的な登りが続く。しかしもう3時間以上歩いたあとだけに、結構応える。休み休みでゆっくり歩をすすめ標高を稼ぐ。やがてガスの中を歩くようになり、これからの連嶺が思いやられる。幸い深いガスではなく、見通しはある程度効いている。途中、自転車の2人とすれ違ったが、たしかにこの道はMTBには最適かもしれない。早くからこちらを見つけ、車を脇に避けて待っていてくれていて有り難かった。これが牛ノ寝通りで出会った最後の人である。ハイカー2名 村人2人、MTB2人ということであった。
苦しいのぼりも、概ねコースタイムを歩くと終わるものである。途中の長峰への分岐は気づかずに過ぎてしまい、壊れた小屋のある石丸峠に飛び出した。幸い、この周辺はガスがかかっていず、熊沢山周辺のカヤトの尾根や、そこを歩く登山者の姿が眺められる。なかなか爽快な見通しのいいところだ。出たところは、本来の石丸峠よりも少し登ったところになる様だった。麓も展望も良く以前は無かったはずなのは、新しくできたダム湖である。雲は厚いのがどんどん流れていっているが、時折隙間が出来て青空から日が当たる瞬間がある。全体的に肌寒い中で、その時だけは暖かい。天狗棚山へと続くこれから歩く草原の縦走路を見ながら、しばらく休憩した。