小金沢連嶺

 天狗棚山 1,957m 小金沢山 2,014.4m
 牛奥ノ雁ヶ腹摺山 1,994m 川胡桃沢ノ頭 1,940m
 黒岳 1,987.6m
 山域:大菩薩

記録
 山行日1999年10月9日(土)〜10日(日)
 ルート石丸峠→小金沢山→牛奥ノ雁ヶ腹摺山→黒岳→大峠
 コースタイム9日
1345 石丸峠 → 1455/1505 小金沢山 → 1600/10 牛奥ノ雁ヶ腹摺山 → 1625 賽ノ河原(泊)
10日
0600 賽ノ河原 → 0650/0710 黒岳 → 0800/0815 大峠
 天候9日 曇り  10日 快晴

牛ノ寝通りより続く

小金沢連嶺も、長い間歩いてみたいと想い続けていた稜線であった。100回目の山行の時は、湯ノ沢峠以南を歩き、予想通りの素晴らしい尾根道を堪能したが、今回は通算150回目ということで、ついに想いを果たすべく縦走に向かった。

石丸峠から天狗棚のピークを越えると狼平の平原に下る。晴れていれば、「見渡す限りの笹原は太陽の光を受けて銀色に輝き」といい表される姿だが、ガスのかかる天気では、今一つぱっとしない。それでも、時折雲の切れ間から差し込む日の光で草原の輝きを数回楽しむことができたのは幸運だった。気持ちのいい狼平の草原を横切ると、小金沢山への登りとなる。最初は笹の下草の樹林帯が続く。踏み跡を笹が覆ってしまっており、地面がよく見えない。小さな登降を繰り返しながら高度を上げていくと、苔蒸した黒木の森に変わり、まさに奥秩父と稜線続きであることを知らされる。さらに、木の根岩角を越えて登って行くと黒木の森に代わって、紅葉の始まる落葉樹の森となり、今回の山行の最高点である小金沢山の山頂に着いた。残念ながら、陽もすっかり射さなくなり、ガスも深くなってきていた。

牛奥ノ雁ヶ腹摺山を目指して出発する。ますます笹が深く、時折背丈を越す。乱れる踏み跡に惑わされることなく、しっかりと踏み跡を拾っていくことが大切である。だいたい尾根の西側を通ることが多い様だ。緩やかに小さなピークをいくつか越えると、一面の笹原から首だけ出して、踏み跡を探って進んでいく様な場所があった。晴れていると楽しいが、ガスが出ており少し不気味ではある。
笹の登降を繰り返すとやがて牛奥ノ雁ヶ腹摺山の山頂に着く。本来は展望のいい、開けて気持ちのいい山頂だが、残念ながらガスで視界がほとんどきかなくなってきた。再び縦走する機会があれば、この山頂を楽しみに来てみたい。これから先、黒岳あたりで日没を迎えそうであり、湯ノ沢峠の避難小屋泊まりを変更して適当なところで幕営することに決めた。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山からの下りは概ね低い笹のなかの開けた道である。時折ガサガサという音とともに、鹿の鳴き声が霧の中にこだまするようになる。賽ノ河原の草原に降り立ち、付近の、カラマツの木の下の苔蒸して笹の生えていない場所に一夜の宿を求めた。夜半、外では、ガサガサいう音と、鹿の鳴き声が時々響きわたり、度々起こされることとなった。

朝の冷たい空気の中、5時半ごろ思い切って這い出すと、雲一つない快晴である。大自然に感謝し、さっそくツェルトを撤収していると、真っ赤な一条の光があたりを染めた。山で迎える、まさに至福の瞬間である。荷物を背負ってすぐ下の賽ノ河原に下ると、右手には南アルプスの山々が並ぶ。甲斐駒から白鳳三山が雲一つない空の下で、雲海に浮かんでいる。絶景である。
朝日に照らされる牛奥ノ雁腹摺山の斜面をしばし眺めたあと、賽ノ河原に別れを告げ、黒岳の登りにかかる。ここも、最初は笹の下草の登りが、だんだん苔蒸した森になる。そして登りついたのが、川胡桃沢の頭で、展望の開けた山頂からは、お待ちかねの富士山が大きく見えた。右には、南アルプス南部の山が連なり、雲海が高く、三ツ峠など限られた山が前景になていた。
黒岳までは再び樹林の中に入り、小さな登降や岩角と木の根の道をしばらく行くこととなる。意外と縦に長い山頂部を歩いて大峠への分岐を過ぎると、立派な一等三角点のある黒岳山頂である。木に囲まれて展望は無いが、朝食をかねて小休止した。
分岐まで戻り、大峠へと下っていく。苔蒸した林の急な下降をしばらく辿ったあと、笹が出てくると一旦平坦になり、再び下降する。下降を続けると巻き道状になり、小さな肩のようなピークに出る。この端の潅木をかき分けると、富士や黒岳の展望が得られた。いずれにしろ、川胡桃沢の頭から展望は無いので、せっかくの快晴がもったいないような気もしてくる。あとは下り一方の道をどんどん進み、あずま屋の屋根が見えてきて、大峠に降り立った。峠は車がすでにたくさん停まって賑わっており、雁ヶ腹摺山の人気の高さを思わせる。あずま屋で再度荷物を整え、雁ヶ腹摺山への登りに備えることとした。

天候こそ最高とはいかなかったが、明るい草原から、黒木の山、そして広葉樹の山頂部と、標高や斜面の方向によって植生が刻々と変化していく、楽しい道だった。快晴の日に必ずもう一度訪ねてみようと心に誓った。

雁ヶ腹摺山に続く

参考図書・地図
アルペンガイド奥多摩・奥秩父・大菩薩(1992年8月第1刷)
ブルーガイド 東京付近の山(1998年第1刷)
エアリアマップ 大菩薩連嶺(1994年版)
25000図 七保 大菩薩峠
50000図 丹波

川胡桃沢の頭からの富士
その他のコース
・大菩薩登山口〜上日川峠〜(大菩薩峠)〜石丸峠
・焼山沢林道〜湯ノ沢峠〜黒岳
交通機関
石丸峠方面へは、塩山駅より甲州市市民バスで大菩薩登山口下車。
時刻は、甲州市ホームページにて確認下さい。


Nifty FYAMA 投稿文

小金沢連嶺 (150回記念の2)

3.小金沢連嶺

石丸峠から天狗棚のピークを越えると狼平の平原に下る。見渡す笹原は太陽の光を受けて銀色に輝き..というのが本来の姿だと思うが、全体的にガスがかかって、今一つぱっとしなかった。しかし、東側はガスが沸き上がって切れないものの、時折雲の切れ間から差し込む日の光で草原の輝きを数回楽しむことができた。
気持ちのいい狼平の草原を横切ると、小金沢山への登りとなる。最初は下草に笹のある樹林帯の登りが続く。踏み跡を笹が覆ってしまっており、地面がよく見えないので歩きにくい。小さな登降を繰り返しながら高度を上げていくと、苔蒸した黒木の森に変わってくる。まさに奥秩父の雰囲気で、奥秩父と稜線続きであることを知らされる。さらに、木の根岩角を越えて登って行くと、黒木の森は終わり、標高が上がった為か、もう紅葉が始まっている落葉樹の森になった。今年の紅葉は鮮やかかもしれないと、少々期待する。そしてやがて小金沢山の山頂に着いた。今回の山行の最高点である。ここまでに数人のハイカーとすれ違ったが、もう時間も遅く、人とはこれ以降は会わなかった。狼平のあたりで出ていた陽もすっかり出なくなり、ガスも深くなってきていた。
牛奥ノ雁腹摺山を目指して出発する。ここからは笹が多くなり、時折背丈を越す。足元が見えない道が続くが、無理矢理笹を押し倒して分け入ったような踏み跡に惑わされることなく、しっかりとした踏み跡を拾っていくことが大切である。テープもあるので、迷うことはないと思うが、時折幾筋も乱れる踏み跡に出合い、選んでいくことになる。踏み跡はだいたい尾根の西側を通ることが多い様だ。小さなピークをいくつか越えると、笹の道もこれに極まったような場所がある。一面の笹原から首だけ出して、踏み跡を辿って進んでいくのである。晴れていると楽しいかもしれないが、ガスが出ているので、ちょっと不気味ではある。
笹の登降を繰り返すとやがて牛奥ノ雁腹摺山の山頂に着く。本来は展望のいい山頂らしく、また開けて気持ちのいい山頂だが、残念ながらガスで視界きかなくなってきた。しかも、これからは歩くと黒岳あたりで日没になりそうである。当初予定は湯ノ沢峠の避難小屋泊まりだったが、予定を変更して適当なところで幕営することにする。翌日は黒岳から大峠に下る予定なので、黒岳〜湯ノ沢峠間はカットである。
少し休んで牛奥ノ雁腹摺山を後にする。この連嶺の中では一番の展望が得られそうで、今回は残念だったが、また縦走する機会があれば、この山頂を楽しみに来てみたい。山頂からの下りは概ね低い笹原のなかの開けた道である。時折ガサガサという音とともに、鹿の鳴き声が霧の中にこだまする。150mほどの下りで、賽ノ河原の草原に降り立つ。このあたりで幕営しようとあたりを探るが、少しだけ牛奥ノ雁腹摺山側に戻った所にある、カラマツの木の下のそこだけ苔蒸して笹の生えていない場所に決めた。少し傾いているが、でこぼこもなく充分である。支柱や細引きを持って来なかったので、靴紐をほどいて、カラマツの枝にツェルトをかけ、底から潜り込んだ。
やがて、あたりも暗くなる。外は霧が流れていることは思うが、ツェルトの中は多少なりとも暖かい。すぐにツェルトの内部やシュラフの外は一面に結露してしまったが、シュラフに奥深く潜って過ごす。ラジオで日本対カザフスタンの生中継が始まったので、少しうとうとしながら聴く。ゴールの瞬間はなぜか2回とも起きていた。やがて眠りに誘われ、次に気が付くと2時くらい。外では、ガサガサいう音と、鹿(と思う)の鳴き声が時々響きわたるので、思わずラジオをつける。雰囲気として晴れているような気がして期待が大きい。ただ急速に冷えているようで、シュラフの中でも寒い。そしてもう一眠り。また鹿の声に起こされると、4時を過ぎていた。また、冷えるなぁと思いつつ朝のラジオを聴きながらうとうとと時間を過ごし、5時半ごろ思い切ってごそごそと底から這い出した。
おぉ....これはすごい、雲一つない快晴である。大自然に感謝し、さっそくカラマツからツェルトを外して靴紐を締める。かじかんで言うことをきかない手を激励しつつ撤収していると、真っ赤な一条の光があたりを染めた。なんだか山で寝るのが癖になりそうな一瞬である。荷物を背負ってすぐ下の広々とした賽ノ河原に下ると、右手には南アルプスが並ぶ。甲斐駒から白鳳三山が雲一つない空の下で、雲海に浮かんでいる。素晴らしい景色である。
朝日に照らされる牛奥ノ雁腹摺山の斜面をしばし眺めたあと、賽ノ河原に別れを告げ、黒岳の登りにかかる。幸いに笹に朝露が着いていないのが嬉しい。ここも、最初は下草が笹の登りであるが、だんだん苔蒸した森になる。そして登りついたのが、川胡桃沢の頭で、展望の開けた山頂で、お待ちかねの富士山が大きく見えた。右には、南アルプス南部の山が連なっている。今日は、雲海が標高1500mくらいのところにあるらしく、三ツ峠など、限られた山が前景になていた。
ここから黒岳までは再び樹林の中に入り、小さな登降や岩角と木の根の道をしばらく行くこととなる。意外と長い山頂部を歩いて大峠への分岐を過ぎると、立派な一等三角点のある黒岳山頂である。木に囲まれて展望は無いが、朝食をかねて小休止した。
次は雁腹摺山に向けて大峠の分岐から下っていく。最初は急な下降をしばらく辿る。苔蒸した林であるが、良く踏まれた道で、大峠からの登山者が多いのかな?とも思う。やがて笹が下草になりると、一旦平坦になり、再び下降する。ここで今日初めての団体とすれ違う。荷物を背負った、高校山岳部と思しき人たちである。以後すれ違う人が多くなってくる。下降を続けると巻き道状になり、小さな肩のようなピークに出る。この端の潅木をかき分けると、富士や黒岳の展望が得られた。いずれにしろ、川胡桃沢の頭から、雁腹摺山まではたいした展望は無いので、ちょっと快晴がもったいないような気もしてくる。
あとは下り一方の道をどんどん進むとやがて大峠の東屋の屋根が見えてきて、峠に降り立つ。峠は車がすでにたくさん停まって賑わっており、雁腹摺山の人気の高さを思わせる。東屋で再度荷物を整え、次の登りに備えることとした。