喘息患者さんがお酒を飲むと発作を起こすことは意外と知られていません。日本人の喘息患者では6割もの人がお酒を飲むと発作を起こすと言われています。
一方、欧米の医学書ではアルコールには気管支拡張作用があり、重症の喘息には効果があると100年も前に書かれています。この違いはどこから来るのでしょうか?
実は人種による違いがあり、お酒に弱いアジア人種はお酒で発作を起こしやすいのです。
酵母やお酒に混入しているカビ、ビールのホップなどに対するアレルギーが発作を起こす場合もありますが、実際にはめったにありません。
アルコールが体に吸収されると、主に肝臓で分解されてアルデヒドという物質にかわります。このアルデヒドが気道を刺激して気管支の収縮を引き起こすことが最近わかってきました。人種による違いもこの分解酵素の違いから来るようです。
アルコールに対するアレルギー反応で発作が起きるわけではありません。
また、お酒にはいろいろな添加物が含まれていますが、これによる発作という場合もあります。たとえば、ワインの防腐剤として添加されている亜硫酸化合物が喘息発作を起こすことは有名です。
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気管支の収縮はお酒を飲んで15分ほどで出現し、2時間以上続きます。いったん起きた発作は気管支拡張薬も効きにくくやっかいです。
抗ヒスタミン薬をのんでおくと、この症状は1時間程度で落ち着くようです。ただし、抗ヒスタミン薬の眠気やふらつきといった副作用がお酒によりかえって強くなる危険性があります。自分の判断で飲まないで下さい。
逆にDSCG(インタールなど)はお酒の前に吸入しておくと、飲酒後15分から30分間は症状を抑えてくれますが、1時間ほどすると症状が出てしまいます。そのほか、お酒を飲む直前に気管支拡張薬(メプチンなど)を吸入すると、いくらか効果があるようです。発作が起きてからあわてるよりはいいでしょう。くれぐれも使いすぎに注意し、発作がおさまらない場合は早めに病院を受診しましょう。
実際、お酒で発作がおきる人に聞いてみますと、体調により、ほんの少量で苦しくなるときもあれば、かなり飲んでもへーきなときもあるようです。
完全な予防法のない現在、結局、「体調の悪いときにはお酒をのまない」これが最善。それでも付き合いでどうしてもという方、薬の装備は忘れずに。無理にすすめられたら「発作が起きるから」とはっきり断りましょう。「今日は車で来ちゃったから」なんていいわけで、かわすのもいかが?
ここまで読んで、私はお酒が強いから、今度発作のときに薬として飲んでみようと思った、そこのあなた。やめてください。気管支を広げるにはジン、スコッチなどの強いお酒を大量に飲まないとならず、すぐに効きも悪くなるので、発作がよくなる前に急性アルコール中毒になります。現在ではお酒は喘息の薬としては使われておりません。あしからず。
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