フロンガス

喘息患者が環境を破壊する?

最終更新日: 1999/12/27.

フロンで吹き消せどうしてフロンなの?どこがいけない?対策

フロンで吹き消せ

環境問題で騒がれているフロンガスと喘息。一見、何の関わりもないように思えますが、実は大いに関係あります。喘息の治療に使われるMDI(定量式吸入器)は、ほとんどのものがフロンガスを使用しているからです。

環境を破壊するようなものを吸入して大丈夫?心配は御無用。フロンガスはもともと化学的にとても安定で、人体には無害な物質です。1930年、フロンを開発したジェネラルモーターズ社のミッジリー氏はフロンがいかに安全かを示すために、肺いっぱいにフロンガスを吸い込んでろうそくの炎を吹き消してみせたそうです。現在では、このフロンガスが気管支の炎症のほのおを消しているわけですね。

用語解説 MDI気管支炎症

どうしてフロンなの?

学校の化学の時間を思い出してください。炭素が中心となる化合物を有機化合物といいますが、フロンもその1種です。、主に炭素の周りがフッ素と塩素で囲まれています。「フロン」という名前は、実は和製英語で海外では通じません。最初に開発されたフロンガスの商品名「フレオン」からきているようです。

MDIのスプレーに使う場合には、このフロンに圧力をかけて液体にして薬を混ぜておきます。缶を押すと噴射口の圧が下がり、中身が霧状になって吹き出します。この霧によって薬を肺に運ぶのがスプレー式吸入器のしくみです。フロンは化学的に安定なので喘息の薬と混ぜても変化しないためによく使われているわけです。

どこがいけない?

とても安定なフロンですが大気中に出て成層圏まで上ると、太陽の光で分解されます。この時にでる塩素ガスが地球のオゾン層と反応してしまうのです。オゾン層は太陽の紫外線を吸収する作用がありますので、オゾン層が破壊されれば、地上に降り注ぐ紫外線の量が危険な量まで増えてしまう可能性があるのです。

可能性どころか、もともと北極にあるオゾン層の穴が急速に広がっていることから、フロンガス問題が浮上してきたのですから、すでに危機は始まっているわけです。協議のすえ、すでに1995年には塩素を含む特定フロンの製造は全面的に禁止されています。

医療用のフロンガスは割合としては少なく、例外としてその対象から外されていますがいずれは全面廃止になります。

対策はどうする

対策としては、塩素を含まない代替フロンを使うか、まったく別の方法にきりかえるかのどちらかです。すでに代替フロンを使用した喘息の治療用MDIが発売されています。

別の方法としては、液体の吸入薬を使う、粉末を吸入するなどが考えられています。気管支拡張薬やインタールなどの吸入液は日本でも以前から使われていますね。ただし、吸入器は一番コンパクトなものでも500g程度あり、吸入に時間もかかります。

MDIと同じ使い勝手のものとして、ドライパウダーという薬の粉末を吸入するものがあります。古くはインタールのカプセル式の吸入器があります。まもなく国内でも発売になる吸入ステロイド、フルチカゾンは新しいタイプのドライパウダー式吸入器で、コンパクトな割にいちいち薬を詰め替える必要がありません。今後はこうしたものが喘息治療薬の中心となっていくかもしれません。

用語解説 気管支拡張薬インタール

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