005 鳥甲山でのできごと
8月6日、急な取材が入って、秋山郷の鳥甲山に登ってきた。鳥甲山は2回目の登山になる。初めてのときも取材目的の登山であった。20年以上も前のことになるが、その頃のぼくは、白水社が刊行している『日本登山体系』編者の一人として、忙しい日々を過ごしていた。
資料を集めたり、原稿をチェックしたり、そして、山域の概念をつかむため取材目的で登山したりもした。『南会津・越後の山』の巻の『上信越国境山群』の章、この部分は山の仲間「山椒魚」と徒登行山岳会にまとめを依頼した。
四万川源流、白砂川流域、長笹川流域、清津川源流、釜川流域、魚野川流域、鳥甲山の岩場と沢得この章は構成されていたが、どこにも足を踏み入れたことがなかったので、このチャンスに登ってみようということになって、
白沢から登り、白くら尾根をくだったのであった。
今回、某出版社から依頼が入ったので、憧れの和山温泉、仁成館に泊まっって鳥山に登ることを決行した。
仁成館のご主人が、車で登山口まで送ってくださったので、ずいぶんトクした気分での出発となった。このコースは、30年以上も前にご主人が一ヶ月費やして切り拓いたものであるとか。
ガイドブックにはけっこう怖そうなことが書いてあるが、以前に下った印象ではそんなに大変ではなかったので、それほど緊張感は持たなかったが、空は青く、気合いは入ってぐんぐん高度を上げていった。
岩場もよく整備されていて不安なく通過できるが、尾根はなかなかのナイフエッジである。木が生えているから怖くないが、生えてなかったら一般コースにはならなかったであろう。休憩するとき無造作にザックを路肩に置くことはできないくらいの、尾根の細さであった。
太陽が昇ると暑い。汗をダラダラ流しながらやせ尾根を一直線に登ってゆく。目の前に木の枝が道をふさいでいる。邪魔だなあと思って手でつかみ、脇に押しやると、枝の下、道のド真ん中には大キジが鎮座していたのであった。
「デモノハレモノ 所キラワズ」という俚言があるくらいだから、仕方ないというしかない。この一事もこの尾根の細さを物語っている。
仕方ないのだけれど、一つ解決法がある。「簡易トイレ」と呼ばれる大キジ持ち帰り袋の利用だ。ポータブルトイレがあると好都合なのだが、鳥甲山にそれを持ち上げるほどガッツのある登山者はいないだろう。持ち帰り袋でオーケーだ。登山道のまん中だっていい。袋をうまく広げ、その中に大キジを落っことす。底部の薬品が固形化、脱臭してくれるから、用事が住んだら袋の入口をぎゅっとしめ、丈夫な袋に入れてザックに収める。
なんていうことを考えながら急登に耐えていたら、あっという間に山頂に到着してしまった。メデタシメデタシ。