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007 生きがい療法・生きがい登山 この日の朝、福島駅前で代表世話人の小形武氏の車に拾われる。曇天で山は見えない。降り始めるのは時間の問題のように思われるくらい空。と思う間もなく雨が空をたたき始め、ワイパーが動く。 登山口の奥岳で車を降りるや、すぐに雨具を着込む。ともかく行ける所までは行きましょうと、準備体操をしてからゴンドラリフトに乗り込む。灰色の中をあがっていくと明るくなってきた。そして、ぽっと雲の上に出たのである。点はわれわれに微笑んでくれたのだ。 1991年9月、拙著『山登りでも始めてみようか』が山と警告者から出版された。「山登りがトレンディ」とした第一章の第一項には、「山は素晴らしい心の病院」と題した拙論を展開した。「病は気から」といわれるとおり、心が病んで気がなえると、肉体はボロボロ、ガタガタになる。 「歩けば頭が軽くなる」とは、医学の祖ヒポクラテスの至言だが、山に登ると心がいやされ、気が充足されて肉体はバリバリの健康体なれるというのが、ぼくの考えだ。 それを証明されたのが、小形さんである。胃がんの抗がん剤治療は終わったものの、再発と死の恐怖から精神的に追い込まれていた頃、知人に薦められた登山でご自身を取り戻したとおっしゃられている。そして、支え合ってともに生きようと「ひいらぎの会」を誕生させた。活動は生きがい登山だけではなく、がん患者の体験発表と医療関係者の話を聞くがんコンベンション、がん克服講演会など、非常に積極的である。 生きる意欲こそが、人生を意味あるものとするのは自明で、「生きがい療法」は、がん克服の有力な方法論の一つとして注目されているという。 生きがい療法=生きがい登山でがんを克服できるのであるとすれば、登山インストラクター岩崎の出番ではないか。せっかくの生きがい登山で、ハーハーゼーゼー息苦しく、足がつってしまってギブアップしては話しにならない。それで、この安達太良登山では「ばてない歩き方」をご指導したのであった。 「岩崎流ゆっくり歩きで、山でバテない5つのポイント」、1.歩幅を小さく、2.足音をたてない、3.靴裏をみせない、4.2本のレール、5.パクパクはダメ、まず吐く。40人いらっしゃったので、一人の持ち時間は5分間。ぼくの後ろに付いて、バテない足運びの勉強をしていただいた。 無事山頂に立ち、くろがね小屋経由で下山。会員のお一人、木村治子さんが女将の岳温泉「鏡が池碧山亭」で開催された親睦会では、「いつもと違って息切れもなくスーッと山頂に立てた」「もう一度登ってこいといわれれば登ってこられる」などという感想を頂いた。お役に立てたようである。 (山の遠足連絡帳 平成15年9月10日発行 138号より) |
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