浄土山・五色ヶ原・越中沢岳

 浄土山 2,831m 獅子岳 2,714m
 鳶山 2,616m 越中沢岳 2,591m

山域:北アルプス
2000.08.06〜08.10



久しく日本アルプスに出かけなかったのは、体力や長い行程に不安を持っていたからだと思う。しかし、しばらく行かないと、雑誌やホームページで写真などを見るたびに思いはつのるばかりで、久しぶりに縦走を計画してみた。登りも楽な室堂からの道で、薬師への縦走がメイン。その後は日程の中で、どこへ下るかはその時の調子次第というものである。最初はテントを考えていたが、最近荷物をあまり持ったことがないので、小屋泊まりにしてしまった。

浄土山

土曜の夜の「ちくま」はそこそこ空いていた。ただ最近の車両は、夜間に減光せずちょっと寝づらい。今は夜行列車はマイナーなので、その様な設備をわざわざ取り付けることも無くなったのだろうか。
塩尻から「アルプス」に乗り換え、電車の中で快晴の朝を迎えた。信濃大町駅で相乗りタクシーの呼び込みに思わずのってしまう。相乗りした人たちはそれぞれ単独の若い方で、目的は剣岳とのこと。1人は室堂からの1泊コース。もう一人は黒部湖から一ノ越経由とハシゴ谷乗越経由で周回を考えているとのことであった。切符を買ったあと、一緒にトロリーバス乗り場に並んで、自分の立山〜薬師のコースを話したりしていると、前に並んでいた少し年長の方が話に加わった。立山〜薬師に行ったあと、新穂高かまたは槍を考えていて、調子次第で最終確定はさせていないとのこと。計画日数も全く同じで、まさに話がピタリであった。読売新道もいいなという話に、それも面白そうだということになった。ただ、このコースの場合、3日で水晶小屋か最悪でも三俣山荘に入らなければならない。健脚の方のようで、いやぁ行けますよ....との心強い言葉で、このあたりでなんとなく読売新道案が現実化してき始めた。
黒部ダムで、一ノ越まで歩いて登る方と別れ、立山黒部貫光の区間に入って行く。テントをやめたついでに軽量化に走ったので、荷物はなんと10kgで荷物券も不要だった。ロープウェーの待ち合わせの時間に朝食を済ませて、赤牛岳あたりを眺める。目線はいつもとは違い、あそこまで行けるのかという期待と不安を宿していた。そして最後のトンネルバスに乗ると、久しぶりの室堂である。素晴らしい天候に感謝し、計画書を提出して、立山の懐に飛び出していった。

室堂から一ノ越へ少し進んだところで、雄山に向かう方と別れ、2人になった一行は浄土山への登りと入っていく。基本は単独なので、どうぞ自分のペースでということで先行してもらった。最初は花の中の緩やかな広い道をゆったりと登って行くと、少しづつ傾斜が増し、室堂山の展望台への分岐に出る。このあたりは雪が残っており涼しい歩きである。先行した彼とは登りが急になると差がつまり再び一緒になった。どうもこれは、私が10kgしか背負っていないのに、彼は18kg持っているための様だ。展望台の分岐からは岩のガラガラしたところもある急坂となり、右手に五色ヶ原が見え始めた。その先には薬師が大きく見える。あそこまで行くと思うと、いっそう楽しみが大きくなる。急坂を上りきれば浄土山山頂であった。
山頂の祠があるあたりは、ツアー客でごった返しており、それよりも少し高い平坦地で休憩した。このあたりは、立山連峰や大日岳、そして行く手の五色ヶ原や薬師岳が良く見える。ただ少しづつ雲が出始めているのが気になるところであった。祠のあたりに行かなかったことをあとで考えると、少し宿題を残してきたような気分になり、ちょっと残念である。
浄土山からそのまま平坦な頂上部を行くと、富山大の施設を経て、龍王岳の直下に出る。このあたりで、ベテランの雰囲気を持った方が追い抜いて行った。この時点では、五色ヶ原泊か、スゴ乗越まで行くか最終的に決めていなかったが、龍王岳山頂は、五色で泊まると決めていれば登ってみるんだが....ということで、そのまま巻いていき、ザラ峠に向けての道に入っていった。ここで、もう一つの小さな宿題が残ったことになる。龍王岳から大きく下ったあと、鬼岳の巻き道に入ると、雪渓がまだ多く残り、その縁には白や黄色や紫の花々の咲くお花畑の道となる。鬼岳の肩を越え、いくつか雪渓を渡りながらたどり着いた獅子岳直下で一休みのあと、ひと登りで獅子岳山頂に立つ。ここからは、黒部湖も眼下に見ることができた。

五色ヶ原

獅子岳を過ぎると、ザラ峠までは一気に400m弱の下りとなる。ここはただひたすらに足を動かして峠に降り立つ。佐々成政が越えたという峠であるが、実際ここに立つと時代劇という雰囲気にはどうしてもなれず、現実感がちょっと乏しい。しかし、実際越えていくのは大変だったことと思う。
五色ヶ原を目指して緩やかに登りっていくと、正面の五色ヶ原の平原とは対照的な赤い断崖が印象的であった。またこの道は青い花の多いのが記憶に残っている。チシマギキョウだろうか。五色ヶ原の端に登り着いたが、すでにガスが出てしまい、青空の平原が見られなかったのが残念であった。五色ヶ原ヒュッテを左に見て進んでいくと、雷鳥の親子が草原の中を歩いて行った。ガスがかかってきたので、出てきたのだろうか。雷の予感である。
さて、五色ヶ原山荘の前まで来たら、これからの進路の相談である。明日からの行程を考えるとさらに進みたいのはやまやまなのだが、エアリアでは6時間超、アルペンガイドでは5時間とのこと。思案していると、龍王岳のあたりで抜いていった単独行のおじさんが休んでいた。話を聞いてみると、5時間くらい見ておけばいいのではないか。昔は4時間で行ったとのこと。彼もこれから向かうらしい。これは心強いと思って、雷に一抹の不安をおぼえながらも、結局行くことに決めてしまった。
雪田の残る五色ヶ原を緩やかに登っていく鳶山までの道は、驚くほど花が多い。お花畑とはこういうもんだなということを改めて実感した。ここでは一株のキバナシャクナゲを見ることができた。また雷鳥がここでも行く手の登山道を駆けていった。最後に五色ヶ原の平原を振り返る。半分はガスに覆われてしまったが、是非青空が有るとき再訪したい。

越中沢岳

鳶山の山頂から下り、越中沢乗越からの越中沢岳への登りは緩やかな広い尾根の道である。樹林の斜面から砂礫の道に変わりゆったりと歩ける登りだ。しかし、このあたりでガスがますます激しくなり、遠雷が一つ二つ。激しくならないうちに越中沢岳を越えてしまおうと頑張って進むが、ついに途中で雨が降り始め雨具を着けることとなった。
最後に岩の出た道を登ると、越中沢岳の山頂に着く。そこには空身のの母親と子供2人が休んでいた。お父さんが荷物を持っているとのこと。雷の音は、遠く弱く、稲妻も見えないので、少々安心ではある。早々に出発し下りにかかると、ザックをたくさん背負ったお父さんが登ってきた。大変そう!!である。
越中沢岳からは長く急峻で、結構気を遣う下りで、かなり疲れてしまった。この日の行程で一番まいっていた部分かもしれない。ただ、急峻な岩場にニッコウキスゲがたくさん咲き誇っていたのが印象的であった。
断続的に降る雨に打たれてのスゴの頭への登りはなかなかつらい。室堂からの歩きでかなり疲れてきたので、足元を見て一歩一歩足をただただ踏み出す。スゴの頭は雨の中で、残念ながら巻いていく。これも後々への宿題ということだろう。スゴ乗越への下りは、樹林の多い中を水が流れるような下りである。雨はますます激しく雨具を打ち据え、このあたりは「どうにでもしてくれ」という心境であった。スゴ乗越からは、なおも小さなアップダウンがあるが、もうこのあたりになると、惰性になってそれほど疲れも感じず、淡々と歩いた。そのうち雨もあがり青空が少しのぞくようになると、最後の登りとなって、賑わうスゴ乗越のテント場に出る。平坦な道を少し行けば小さなスゴ乗越小屋。ちょうど満員といった感じで、厨房の上の部屋に布団一人一枚を確保することができた。今日は濡れて小屋に着いたのは我々だけらしく、乾燥場を占領して濡れた衣服や荷物を乾かし、部屋の中に潜り込んだ。下の厨房では小屋のサービスや自然保護についてのスタッフの熱い議論が続いており、そうこうしているうちに夜も更けていった。

本文中の写真(順に)

  • 室堂からの浄土山
  • 浄土山から見る立山連峰
  • 五色ヶ原と山荘を振り返る
  • 夕暮れの越中沢岳(スゴ乗越小屋から)

    2.スゴ乗越〜薬師岳〜太郎兵衛平
    3.太郎兵衛平〜黒部五郎岳〜黒部五郎小舎
    4.黒部五郎小舎〜三俣蓮華岳〜鷲羽岳〜水晶小屋
    5.水晶小屋〜水晶岳〜赤牛岳〜黒部ダム

    記録

    日 程

    2000年8月6日(日)

    天 候

    晴れのち雨

    コース

    0815 室堂 → 0830 一ノ越との分岐 → 0930 浄土山 → 0940 竜王岳下 → 1100 獅子岳 → 1140/45 ザラ峠 → 1220/45 五色ヶ原 → 1315鳶山 → 1345 越中沢乗越→1450越中沢岳→1600 スゴの頭 → 1630 スゴ乗越 → 1720 スゴ乗越小屋

    浄土山への登りから見る五色ヶ原から薬師岳への峰々


    参考図書・地図 その他のコース
    アルペンガイド 北アルプス
    アルペンガイド 立山・剣・白馬岳
    エアリアマップ 立山・剣
    25000図 立山・薬師岳
    50000図 立山・槍ヶ岳
    黒部ダムより一ノ越までは歩くルートもある
    黒部湖岸の平ノ小屋から五色ヶ原に登ることができる
    バス
    室堂へは、信濃大町からのルートと富山からのルートがある。
    信濃大町からは、夏期のハイシーズンは、大町発5時15分。扇沢6時半発で、室堂着は8時半頃となるが、通常その1時間後となる。
    詳細は、立山黒部貫光(株)のホームページを参照下さい。