薬師岳は北アルプスでも屈指の大きな山である。隣接して大きな山が無いだけに、余計に膨大に見える。今回の縦走の中では、常にその雄大なすがたを見せ続けており、その山頂に雲がかかっていくのを常に一喜一憂しながら眺めていたものである。そして薬師岳は、今回の縦走の第一の目標であった。
2日目も快晴の朝で始まった。正面に見える越中沢岳は、標高こそ高くないので遠くからは目立たない山だが、スゴ乗越から見ると立派な大きな山に見える。昨日はアップダウンに苦労したなと思い出した。
さて、今日は薬師を越える日でもあり、また黒部五郎小舎まで行ければ、明日からの行程が楽になり、ほぼ今回のもくろみが成功することとなる。まずは太郎平小屋まで行って判断ということで、薬師岳に向けて歩き始めた。
薬師岳までは4時間の行程である。間山、2832峰、北薬師岳、そして山頂と四つのポイントを区切りと想定し、まずは間山を目標に歩き始めた。今日も引き続き2人である。スゴ乗越の小屋から樹林帯を少し上がると平坦地に出て前方に穏やかな間山が見えてきた。朝日に輝く間山の奧に見える鋭鋒は北薬師岳かと一瞬思ったが、まだまだそこは2832峰である。しばらくは緩やかにハイマツの斜面を登っていく。先を焦ることはない、1時間歩くと着くのだから..といい聞かせながらゆっくり進む。
朝の光に照らされながら急な斜面をの登り切ると間山で、ここで展望を楽しみながら少し休憩した。広々とした肩のような所で、かつてはキャンプ指定地だったらしい。次に目指す2832峰に向けてどんどん高度を上げていく。朝、スゴ乗越出発してきたいくつかのパーティーと相前後しながらの登りである。途中で溝状の所を通過していくところには、たくさんの花の咲くお花畑で、思わずカメラを向けた。2832峰まで上がると、山の向こう側には有峰湖があり、湖面に山々が映っているのが見える。北の方にある傾いた平原は弥陀ヶ原だろうか。展望のいい休憩にもいいポイントで、ここで宿で貰った弁当を拡げた。
北薬師への道は、最初は西側のガラガラした道を辿った後、狭くなった稜線をゆっくり登っていけば、僅かで到着できる。このあたりで谷間からガスが上がり始めた。そのまま通過して本峰への道に入る。少し行くと、金作谷カールの縁に立ち、雄大なカールの展望と、山頂が大きく見渡すことができた。しかし残念ながら、すでにガスが多く、山頂部を時折覆い始めている。カールの縁に沿った道を進み、かなり痩せている岩稜を高度を落とした後、最後の登りとなる。山頂は高く見えるが登り初めてしまえば、あとはただただ足を進めればぐいぐいと高くなっていき、今日の第一目標である、大きな祠のある薬師岳の山頂に到着した。折立方面から来る人も多く、山頂はたくさんの人で賑わっている。南の方を見渡すと、北ノ俣岳から黒部五郎岳への山並みがあり、今後の行程を想像しながら休憩した。
団体さんの到着と入れ替わるように山頂から下る。ザラザラした道を薬師岳山荘まで一気に降り、薬師平への道へと入る。急坂の道をいくと、ここもお花畑が多く現れた。樹林帯を抜けて平坦な薬師平で小休止し、沢状に掘れた道をさらに薬師峠へと下る。最後は樹林の中の沢の流れに沿った道となり、薬師峠へと降り立った。沢沿いの部分にキヌガサソウが咲いていたのが、珍しくも美しかった。
薬師峠から、良く整備された登りやすい階段道を少し高度を上げれば太郎兵衛平へと入っていく。山頂付近で出始めたガスは、いつの間にか重苦しい色に変わっており、いまでも降り出しそうな雨と競争するように木道を太郎平小屋へと急いだ。小屋に着くと殆ど同時に雨が落ち始めた。
青空の下の北薬師岳と薬師岳(奧)
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折立から太郎兵衛平を経て薬師岳 |