鷲羽岳

 三俣蓮華岳 2,841m 鷲羽岳 2,924m
 ワリモ岳 2,888m

山域:北アルプス
2000.08.06〜08.10



鷲羽岳は奥まったところあっていかにも高く聳えている山である。名前の通り鷲が羽を広げた様な..といいたいところだが、元々は三俣蓮華岳が鷲羽岳で、今のは東鷲羽岳岳とか呼ばれていたらしい。しかし、実際は今の鷲羽岳の方がその名に恥じず、より風格のある大きな山に見える。伊藤新道という鷲羽岳直下に登ってくる道もあったが、今は主に縦走途中で登られるようだ。この日は、黒部五郎小舎を出発し、三俣蓮華岳を経て、鷲羽岳から水晶小屋までの行程であった。

三俣蓮華岳

今日は、単独での出発となった。同行者は、午後の時間を利用して、雲の平と高天原を周回してくるとのことで、早々に発っていったのだ。私の方は行程も短く、急ぐ旅でもないので、水晶小屋での再会を期して見送ってみたが、荷物もまとめてしまえば手持ちぶさたで、結局5時台に出発してしまった。
今日も朝は晴れているが、昨日一昨日より少し雲が多い。黒部五郎小舎から、裏手の三俣蓮華岳への道に入ると、樹林の中の石を踏み越えていくような急坂が続く。朝の期待の膨らむ元気のある時期なので、それほど苦にはならなかった。時折樹林が開けたところで振り返ると、黒部五郎岳が立派なカールをこちらに向け、朝日を浴びて大きく聳えていた。登り初めて1時間弱、ついに森林限界より上に出て、周囲に展望が広がった。一番目立つのは黒部五郎岳。そして笠ヶ岳がこれに次ぐ。薬師の山頂部に早くもガスが出ていた。今日は早くから崩れるのだろうか。
展望が開けると緩やかな道になり、青空の下の気分のいい歩きが楽しめる。朝の空気の中で、まさに北アルプスのど真ん中を歩いているいう雰囲気の最高の気分だ。小さな高みを過ぎると道は痩せてきて、左に黒部源流に落ちる斜面を見るようになると、三俣山荘への巻き道が見えてきた。分岐まで行って小休止。このあたりも花の多いところでもある。
分岐から山頂までは、思ったよりは距離があったが、ウスユキソウのような花が多く、それらを楽しみながら進んでいく。だんだん丸山が近づき、尾根と合流すれば、すでに幾人かの人々で賑わう山頂であった。
ここは3県境になるピークだが、意外とパッとしない印象をもったのは、ちょうどこの時曇ってったのと、回りを高い山に囲まれているからかもしれない。鷲羽岳はもちろんのこと、丸山よりも標高が低い。さすがに展望は良く、ここからは、北鎌と槍ヶ岳が良く見え、手前の硫黄尾根の赤茶けた色がよく目立っていた。
下りは双六小屋との分岐まで急坂を下りた後、三俣山荘への道に入る。道は広くなり、時々ハイマツの中に入ったりするが、比較的下りやすいところだ。約30分も下れば、平坦なテン場となり、小沢の流れるなかを少し行けば三俣山荘に着く。付近で花の写生をしている人を見て、なんとなくいいな..と思った。一度その様に贅沢な時間を過ごしてみたいし、ここはそれが出きる場所でもあると思う。

鷲羽岳

三俣山荘から見る鷲羽岳は実に雄大である。山頂まで一直線の登りが見えており、圧倒される。黒部五郎の登りと同じく、こういう登りは登れば登っただけ高くなっているという気がして、結構楽しみである。ハイマツの中を進んで、現在は廃道となっている伊藤新道の分岐を過ぎればいよいよ登高開始である。
ただ足を動かすことに集中する。どんな歩幅で、どんな速さでなどと考えたりしている。少し時間を置いて、どれだけ成果があったかなと、振り返ったり、上を覗いたり。さすがにこれだけあると、なかなか成果が現れない。すれ違う人たちに励まされつつ、とにかく上方に見える斜面が無くなるまで登った。
登り初めて1時間にならんとする頃、一瞬緩やかな道となり、鷲羽池への分岐となる。余裕が有れば、一度立ち寄ってみたいところである。上から眺めても、綺麗な景色には違いはないが。湖畔から見上げると、どういう風景になるのだろう。
すでに雲の平の山々よりも高くなり、山頂までは揺るやかな登りとなって、今回3つめの百名山、鷲羽岳登頂となった。確かに登ったという手応えを感じる山だ。雲の多い天気だが、幸いこの山頂では晴れて、ポカポカと暖かい。北の方には水晶岳へと続く尾根、もう見慣れた黒部五郎と薬師、相変わらずのいい展望が広がっていた。
一つ北のワリモ岳に向かう。鷲羽岳からは意外に下って、すっかりワリモ岳が高くなってしまったが、登りに変わればワリモ岳はすぐだった。山頂直下が岩場になっていて、岩に掴まってよじ登ってみたが、特に山頂を表す標識はなく、小広い平地で休憩した。鷲羽岳の山頂はガスがかかってしまい、あたりは少しづつ暗くなってきているようだ。
ワリモ岳から歩きにくいガワガラした所を降りると、登山道に出た。どうやら道は実は山頂を巻いていたらしい。ワリモ岳から下ってしまうと、ゆったりした道が続き、岩苔乗越への道を分ける。このあたりも花が多い道で、水晶小屋のある赤岳まではゆったりとした登りが続く。急激に、雨が降りそうなほどあたりが暗くなってきたので、足早に進んだが、小屋に着く前にザッとこられてしまった。あと少しなのでそのまま傘をさして歩いた。水晶小屋にはすぐ到着したが、さすがに北アルプスで一番小さい小屋ということで、行き先を訪ねられ、読売新道ということで泊めてもらった。ただし、横になれないかもしれませんよと釘を刺された。
今回初めての午前中の到着で、午後は小屋の中でゴロゴロして過ごし、夕食が終わるとすぐに布団がひかれた。40人弱の宿泊で、布団1枚に2人程度。あまり良く眠れなかったが、いつの間にか朝になっていた。話に聞くと読売新道のツアーというものがあって、この小屋で団体で泊まるらしい。その時は客が2倍になって、一畳に3〜4人になる。その様なツアーを組む旅行会社は罪なことをしていると思う。
室堂から同行していただいていた方は、夕方5時前に到着した。今日は3日のうちで一番疲れたとのこと。午後から一旦高天原に降りて登ってくれば、かなりの距離と標高差を歩くことになる。さすがである。私の方はこの日はそれほど大きな右足の反乱は起きなかったが、下りでの痛みは後半になると終始つきまとっていた。明日の赤牛岳は期待も大きいが、下りが心配ではある。

本文中の写真(順に)

  • 三俣蓮華岳全景
  • 三俣蓮華岳と三俣山荘を振り返る
  • ワリモ岳から水晶岳へと続く稜線

    1.室堂〜五色ヶ原〜越中沢岳〜スゴ乗越
    2.スゴ乗越〜薬師岳〜太郎兵衛平
    3.太郎兵衛平〜黒部五郎岳〜黒部五郎小舎
    5.水晶小屋〜水晶岳〜赤牛岳〜黒部ダム

    記録

    日 程

    2000年8月8日(火)

    天 候

    曇り時々晴れ(小屋に入ってから雨)

    コース

    0545 黒部五郎小舎 → 0655/0705 巻道分岐 → 0740/50 三俣蓮華岳 → 0825/45 三俣山荘 → 1005/20 鷲羽岳 → 1048/1100 ワリモ岳 → 1150 水晶小屋

    ワリモ岳への登りから鷲羽岳を振り返る


    参考図書・地図 その他のコース
    アルペンガイド 北アルプス
    アルペンガイド 上高地・槍・穂高
    エアリアマップ 立山・剣
    エアリアマップ 上高地・槍・穂高
    25000図 三俣蓮華岳
    50000図 槍ヶ岳
    新穂高温泉から双六岳を経て三俣蓮華岳に達することができる。
    大糸線方面からは、裏銀座ルートあるいは竹村新道経由での縦走となる。
    バス
    新穂高温泉へのバスは、濃飛乗合自動車松本電鉄のホームページをご参照下さい。
    七倉へは現在はバスが無く、タクシー利用となります。