2002 GooBoo 本格ミステリ ベストセレクション
 
第1部 国内編
 
  作品名※カッコ内は票数 著者            出版社
1 鏡の中は日曜日 (55) 殊能将之      講談社
2 魔神の遊戯 (43) 島田荘司      文藝春秋
3 聯愁殺 (30) 西澤保彦      原書房
4 法月綸太郎の功績 (27) 法月綸太郎     講談社
5 見えない精霊 (22) 林 泰広      光文社
6 人魚とミノタウロス (18) 氷川 透      講談社
  グラン・ギニョール城 (18) 芦辺 拓      原書房
8 クビキリサイクル (15) 西尾維新      講談社
9 はじまりの島 (13) 柳 広司      朝日新聞社
10 21世紀本格 (12) 島田荘司編     光文社
次 GOTH (11) 乙一        角川書店
 
●GooBooおよびぐぶらんで紹介済みの作品は各タイトルから該当頁へ飛べます●
 
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(順不同)
 
「世界は密室でできている」 「撓田村事件」 「クビシメロマンチスト」 「影踏み鬼」 「『クロック城』殺人事件」 「嘘つきパズル」 「館という名の楽園で」 「捩れ屋敷の利鈍」 「人間動物園」 「ラッシュライフ」 「猫丸先輩の推測」 「オイディプス症候群」 「僧正の積木唄」 「首断ち六地蔵」 「私立『霧舎学園ミステリ白書』 四月は霧の∞密室」 「世界の終わり、あるいは始まり」 「ふたり探偵」 「『瑠璃城』殺人事件」 「バラバの方を」 「樒/榁」 「試験に負けない密室」 「奇蹟審問官アーサー」 「鷲尾三郎名作選」 「双月城の惨劇」 「まほろ市の殺人 秋」 「エナメルを塗った魂の比重」 「奇偶」 「名探偵Z」 「サロメの夢は血の夢」 「凍るタナトス」
 
【ベスト10作品解説】

1位●鏡の中は日曜日
2001年出版のハンディをモノともせず、堂々ぶっちぎりのベスト1を獲得したのは殊能さんの問題作。MYSCON3の読書会で課題図書となり、手前味噌ながら当サイトでも“ぐぶらん”させていただいたほどに、“議論したくなるタネがぎっしり詰めこまれた”傑作です。ともかくスバ抜けたセンスで仕立てられ、編み上げられた仕掛けは精緻かつ斬新、巧妙かつ大胆。目眩くサプライズとともに、本格ミステリという特殊な文学“形式”への鋭利な“批評”が浮かび上がります。
●ayaメモ
いいのか? ほんとーにいいのか? これがベストで。たしかにその技巧とセンスは、脱帽ものの一級品だけど、これはどう見たって“本格そのもの”というより“本格なるものの精緻な解剖図”。あるいはぶっちゃけ“本格世界の国境線に描かれた、センスのよすぎる落書き”よ。そう、これはカッコよすぎて消せない、最高のジョークなの!
●投票者さんのコメント
よくも悪くも本格推理小説について考えさせられる一冊。日に日に自分のなかで評価が高まりました/館シリーズとの絡め方がよかったです/意匠としての館の解体に爆笑しました。相変わらずくやしいけど評価せざるを得ないな。/本格を斜めから俯瞰したような作品/いろんな意見がありましょうが、私は本格ミステリだと思います。/これに最高点を付けるのは自分でもどうかと思うが、面白かったので……いやしかし……(逡巡)という本。あらゆる場所に付箋をつけて読み返した。
 
2位●魔神の遊戯
構えの大きな奇想をたっぷり盛り込んで、詩美性あふれる謎をつるべ打ち。しかして名刀一閃! 驚天動地の真相を解き明かす、名探偵の中の名探偵。……若者たちよ、これが本格だ! 黄金期古典本格への敬意と新本格への会釈と、もちろんお得意の脳科学ネタもたっぷり盛り込んで、巨匠が贈るゴージャスな最新作です。読了された方は、僭越ながらこの作品について論じた当サイトの“ぐぶらん”をぜひ。あなたが本格マニアであったら、この作品への評価が変わるかもしれません。
●ayaメモ
あっちゃこっちゃへ向かって暴走しまくる作者が、今回ばかりは手綱をぐっと引き、見やすく分かりやすくエンタテイメントに徹したシリーズ番外編。リーダビリティの高さとバランスの良さは、意外とこのあたりが島田作品への、あるいは本格ミステリへの入門書として最適の1冊であるかもね。
●投票者さんのコメント
島田荘司らしいようならしくないような佳作/「やられた!」と感じた作品がこれしかなかったので。/大きすぎた期待を微妙に外してくれたところが嬉しかった。島荘ってことでもちろん10点なんだけど、微妙に5点減点(笑)。/やはり一番本格「らしい」と言えばこれでしょう。/例の趣向には最後まで気付きませんでしたが、それでも十分楽しめる作品でした/例の構図に気付けなかったオレの負けです/久々に大御所の迫力に圧倒されました。
 
3位●聯愁殺
ホワイダニット・テーマの謎をネタに謎解き合戦を繰り広げる名探偵たち……いわゆる『毒チョコ』パターンの複数探偵多重解決方式の、これは21世紀型最新モード。てんこ盛りされたロジック、レトリック、憶測の数々が、目まぐるしく攻守所を変えつつ演出する逆転また逆転。いわば謎解きそのものの面白さを凝縮したような目眩く狂想曲のその果てには、しかし全てを無力化する驚愕の真相が待ちかまえています!
●ayaメモ
特異な設定ながら、濃厚な本格ミステリ臭と変化に富んだ謎解きを満喫できて、そこにはたしかに本格ミステリの楽しさが詰まっていると思うのだけれど。それでも最後の最後で、読者を後からバッサリ切り捨てずにはいられなかった作者は、やはり一筋縄では行かないね。手練れの職人であり同時にラディカリストでもある西澤さんの、真骨頂がここにある。
●投票者さんのコメント
アイデアも技巧も申し分なし。ミッシング・リンクを扱ったすべての本格ミステリの中でも屈指の傑作だと思う。/ラストの衝撃は疑いなく今年一番でした/裏『ABC殺人事件』/お得意のパターンですが、ラストが効いてます。/途中の謎解き合戦はけっこう憶測だらけで論理も何もないけど……/ミッシングリンクものとしても多重解決ものとしても非常に高度な達成。
 
4位●法月綸太郎の功績
ともかく新刊が出さえすれば、必ずといっていいほど高い順位でランクインしてくるハイクオリティな短編パズラーシリーズ、最新作の登場です。無駄なく綺麗にカットされ、丁寧に磨きあげられた5つの短編が収められたその様は、さながら本格ミステリの宝石箱といった風情。謎ー謎解きのワンセットに徹したピュアな本格として、いまや現代本格を代表するシリーズとなりました。
●ayaメモ
シリーズ評価に変わりはないが、前作に較べれば若干完成度が落ちるかな。ともあれ、このクオリティで・奇を衒わずに・ひたすら本格短編を書き続ける作者は、いまや貴重な存在。故に長篇なんか無理に書かんでよろしい! とは、まあいわないけどね。
●投票者さんのコメント
端正な本格推理小説。本格推理小説要素の含有率は今年一番だと考えています/短編は挙げたくないのですけど、これだけのレベルを見せつけられると/一番本格らしいと信じられた短編集/法月さんの短編は現代の宝です。/ネタが弱い場合はそれなりに、ネタが展開しがいのある場合はちゃんとひねって短編に仕立て上げている。非常に安定感のある本格ではないでしょうか。/パズルな一つ一つの物語が珠玉。久しぶりの法月綸太郎にご馳走様
 
5位●見えない精霊
Kappa One4人組からは林泰広さんがランクイン。怪物・西尾維新さんを擁するメフィスト勢を抑え、2002年の本格系新人のトップとして、ベスト5入りは見事な成績というべきでしょう。本格ミステリとしては論理パズル的な趣向の作品ですが、謎の演出や伏線の張り方、必然性の設定など細部の仕事が丁寧で、しかもセンスがいい。新人らしからぬ肩の力の抜けたスマートな本格への徹し方が好印象で、口当たりは軽いけれども強烈な本格スピリットを感じさせる作品となりました。
●ayaメモ
いっそ異世界本格と呼びたくなるような、奇矯な舞台設定や人工的な趣向の数々は万人受けするものとは言い難い。しかし、芸の無い安直論理パズラーモドキとは一線を画し、この作者はすでに自分がやりたいことを明確に認識し、そのために独自の世界を築き上げているのだと見た。まぁ無論、まだまだ手が追いついてない印象ではあるんだけどね。
●投票者さんのコメント
どうして見抜けなかったのか、と読んだ後一番悔しかったので/これぞ“狭義の本格ミステリ”だと思います。“クイズでしかない作品”との声も聞かれますが、“小説”が書ける(「本格推理」の短編で実証済み)作者が敢えて“本格スピリット”を前面に出した結果であり、その心意気には拍手を贈りたいと思います。/推薦者の泡坂先生にちょっと作風が似ている気がして/奇術っぽくて好きです。
 
6位●人魚とミノタウロス
氷川さんもいよいよランキングの常連さんになったでしょうか。シリーズ最新作のこの長篇は、やはり丁寧に張った伏線を丁寧に回収し、丁寧にロジック/レトリックを積みあげていく、ただそれだけの愚直なほど真っ当な正統派本格ミステリ。ワンパターンといえばその通り、たしかにそこには派手な仕掛けや人目を引くケレンはありませんが、精密に組み上げられた時計仕掛けの美しさは、分かる人には分かるもの。これでいいのだ!
●ayaメモ
たしかにノンシリーズのあの作品のう〜むぶりからすれば、シリーズだけ書いてりゃいいといいたくなる気持はわかる。がしかし、それでもなおノンシリーズ or 新シリーズへの挑戦はガンガンやるべきだと、私は思う。いや……まあね。シリーズのクオリティが落ちても困るからなぁ、“ガン”くらいでいいか。
●投票者さんのコメント
この氷川シリーズも安定している。クオリティ、高し/本格ファンなら、こういうのが読みたい時って定期的にあるんです/本格ミステリ談義が面白い/パズラーって点では、もうクイーンを超えてるのではないでしょうか。/原書房のハードカバーがイマイチだったのに比べ、こちらは相変わらずの氷川節炸裂。もしかしたら僕なりの本格の定義は「伏線」のあるなし、もしくはそれの正当な機能美かもしれないです
 
6位●グラン・ギニョール城
1930年代の欧州の古城アンデルナット城を舞台とする古式床しい連続殺人と、現代日本を舞台とする怪事件。「グラン・ギニョール城」というキーワードが、この大きく時空を隔てた2つの世界の2つの事件を結ぶ……。安易な入れ子構造のメタではなく、それを徹底して本格ミステリの地平で展開することにこだわった本格メタミステリとでも申しましょうか。力づくで実現される豪快なアイディアは、まさに作者一世一代の離れ業。正統を極めて革新に到る、真に驚嘆すべき一冊です。
●ayaメモ
ものすごいことを、真正面からやろうとして、やってしまった。いささか不器用というか大雑把というか、アイディアの凄さにテクニックが追いついてないというか。文句はいくらでも出てくるが、このアイディアは実現しただけでも凄いことよね。とにもかくにも作者の豪腕と、本格書きとしての誠実さに心からのエールを!
●投票者さんのコメント
大技は好きですが、ちょっと粗雑な印象もあります/芦辺さんって今ひとつ人気がない気がします。でも、こんなことができるのはこの人だけだと。/必ずしも成功しているとは言えませんが、これは誰がやっても成功しないでしょう。むしろここまでお話を作り上げたことを評価すべきではないでしょうか/アンチ・メタミステリの快作/ともかく驚きではこれが一番!
 
8位●クビキリサイクル
脱格は本格か。毀誉褒貶相半ばしつつも、新人ながらヒットを連発し破格の人気を誇る新世代作家は、もっともミステリ色・本格色のくっきりしたこのデビュー作品でランクイン。舞台、トリック、伏線、謎解き……いわゆる孤島もの本格ミステリの定形をきっちり踏まえ、それでいて従来のそれとはまったく異なる読み心地は、時代の気分にジャストフィット。すでにデビュー作から作者が独自の世界を築き上げていたことを示しています。
●ayaメモ
ビジュアル戦術を駆使したキャラクタービジネスの、これはミステリ界における本年最高の成功例。その後のシリーズ展開を見ると、質はどうあれ作者自身は“ミステリとして”の小説つくりにも、けっこう真面目に取り組んでいる気配が感じられないではない。しかし、シリーズの中ではビジネス的要請とのバランスが難しいのもまた事実で……。ノン・シリーズの長編を読んでみたいね。
●投票者さんのコメント
歪んだ世界の中で伏線があり、一応筋が通っていればそれはそれで良いと思うのですよね/イラスト込みで点を入れておきます/いきなり「狭義」に引っかかりまくっている気がしますが、今年のミステリ界において、いーちゃんを外すわけにはいかず、です/所謂ポスト新本格なミステリ世界構築の技として、戯言なる装飾を前面に押し出し、なおかつ芯はまっとうなミステリである、と言い切ってしまいます/いーちゃんがイイ!
 
9位●はじまりの島
歴史上の人物や小説作品のキャラクタを探偵役に据えたミステリを書き続けてきた作者が、昨年の『饗宴』以上に完成度の高い本格ミステリでついにランクイン。今回はガラパゴス諸島の孤島で発生した連続殺人の謎解きに、かの進化論のダーウィンが挑むという趣向です。この特異な舞台と登場人物による“異世界的世界観”が、クローズドサークル本格としてのアイディアに有機的に連携し、結末の意外性も含め、非常に完成度の高い仕上がり。今年の異世界本格ミステリを代表する一作です。
●ayaメモ
フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットそれぞれがよく練られ、本格として無駄のない作りが気持ちいい。本格としての発想は『非在』の鳥飼否宇さんに似ているが、完成度はこちらが一枚上手。裏返せば本格としてもう一つ突出したものがほしいと気がするけれど、これは贅沢な望みか。文章がしっかりしている作家だけに、いずれ別ジャンルに流れてしまいそうな危惧も。……って、なぜだ。なぜそう感じるんだ、私は!
●投票者さんのコメント
意外な犯人とその犯行動機には思わず膝を打ちました。鮮やかです/特殊な舞台や登場人物などすべてが真相に奉仕している傑作/読み終えて、あらためてタイトルの意味に納得。これしかないって感じの題名だと思います/犯人も意外だったんだけど、その犯人をあぶりだす謎解き論理が至極納得のいくものでした。納得度の高さに一票/単なるご都合主義やキャラ萌え狙いの異世界本格とは根本的に違う。正しい異世界本格。
 
10位●21世紀本格
トリを務めますのは、島田荘司さんの責任編集になる本格ミステリ短編のアンソロジー。同氏が提唱する次代の本格ミステリのあるべき方向、すなわち“21世紀本格”の理念に基づいて、氏が書き下ろし短編を執筆したのは響堂新、瀬名秀明、柄刀一、氷川透、松尾詩朗、麻耶雄嵩、森博嗣の7氏。もちろん“見本”を書いた島田さんを含め、顔ぶれも凄いのですが、なんせ島田氏直々の依頼のせいか、各作家とも力入りまくり。次代の本格の1つの方向を示唆する、挑戦的かつユニークなアンソロジーとなりました。
●ayaメモ
もっとも“次代”を感じさせたのは、瀬名さんに森さん。特に瀬名作品は必読よ。島田作品はまあ想像の通りだけど、クオリティはやっぱめちゃ高くて、こんなん見本に示されたら困るよなあ。また、ともあれ“21世紀本格”に真面目に取り組んだ柄刀さん、氷川さんも安定した仕上がりだが、依頼趣旨などどこ吹く風とばかりのマイペース男・麻耶さんの作品が、実はベストだったりするあたりがなんともはや。ほかの作品? なんかあったっけ!
●投票者さんのコメント
ちょっと反則ですが、麻耶さんと島田さんの短編に敬意を表して/アンソロジーも可であれば、ぜひ/21世紀本格という狙いが全て成功しているとはいえませんが、こういう挑戦は重要でしょう/クローンやバーチャルリアリティー等をネタにした物語達に今後の本格が見えてきた一冊。アナログな本格だけでなく、こういうデジタルな本格にも免疫をつけなければという事を痛感しました。豪華な顔ぶれだけあって一編一編のクオリティが高いと思います/次の本格として、少なくとも西尾や舞城の方向より納得が行く



【国内ベストGooBoo】
G「ここまで殊能さんが独走するとは思いませんでしたが、おおむね予想の範囲でしょうか。しかし乙一さんはもう少し順位を上げてくると思ったんですけどね」
B「うーん。西尾さんや舞城さんたち脱格組もそうだけど、やっぱ『GOTH』はキミが投票対象としてあげた『狭義の本格』というセリフに影響されて、投票するのを躊躇しちゃった人が多いんじゃないかな」
G「でも、あれは第1回から毎回使ってるセリフですよ」
B「今回はなぁ、みすらぼさんや他のところでもネタにされて、妙にクローズアップされた感じがあるからねえ(笑)」
G「そうなのかなあ。でも、西尾さんについては『クビシメロマンチスト』と票が割れてしまったのが、痛かった感じですよ。あと北山猛邦さんも『クロック城』と『瑠璃城』に割れて損をしてたし」
B「あと昨年の覇者・黒田研二さんは……まあこういっちゃなんだが、モロに多作が祟った感じ。ちょっと驚いたのは笠井さん。某ベスト1位の『オイディプス症候群』は、びっくりするほど票が入らなかったね〜。私はベスト10内ならあってもよい作品だと思うんだが」
G「それもぼくのせいですかあ?」
B「少なくとも私は、きみが言うほどどーしよーもない駄作だとは思わない。本格部分に限っていってもね。むろんリーダビリティにはむちゃくちゃ問題があると思うけどさ」
G「まあ、そのあたりは当ランキングの個性ということで……」
B「ついでにいえば、柄刀さんはなんでこんなに支持が少ないんだろうなあ。私的には、質量ともに芦部さんと並んでもっとも高値安定の本格書きさんだと思ってるんだが」
G「そうですねえ、マニア好きする作家さんのはずなんですが。『凍るタナトス』に『奇蹟審問官アーサー』はいずれもベスト級の力作だけど、長編だとやはりどうしても小説技術の点で留保が付いてしまう嫌いはありますね」
B「投票者数も増えているし、ゴリゴリの本格マニアではない“常識人のミステリ読み”さんも投票してくださるようになったのかもしれないね」
G「たしかに全体としてみると、マニアさんと一般的な読者さんの投票が程よく拮抗している感じはします。総体的なクオリティも高いし、バランスの取れたいい感じのランキングじゃないでしょうか」
B「こういうことで自画自賛するかな〜、キミが威張ることじゃないぞ。読者さんのおかげなんだからね。とはいえ1位にはやっぱ異論があるけどなあ」
G「まだそんなこといってる〜。じゃあ、そろそろayaさんのベストをうかがいましょうか」
B「よしきた、これでどうだ。例によって順不同だよ」
 
●ayaの国内ベスト
「はじまりの島」 柳 広司    朝日新聞社
「法月綸太郎の功績」 法月綸太郎   講談社
「凍るタナトス」 柄刀 一    文藝春秋
「グラン・ギニョール城」 芦辺 拓    原書房
「オイディプス症候群」 笠井 潔    光文社
別「撓田村事件」 小川勝己    新潮社
 
G「珍しく今回は堅いセンですね〜。しかし、別格に小川勝己さんを入れてらっしゃるのが気になるなあ」
B「まぁ、本格としてはまだまだなんだけどね。あの人がこれを書いたということ自体、かなりの驚きだったんだよ。横溝正史へのオマージュという点では山田作品とも共通するけど、こちらの方が紛れもなく本格。しかも、作者らしさがハッキリ出た“現代の作品”だ」
G「その割に、あまり読まれてない感じもしますしね。一方、柄刀さんは『アーサー』でなく『タナトス』ですか? あまり褒めている人を見たことが無い気がしますけど」
B「たしかに読みにくいよね。救いようが無いくらい小説下手だし。けどもこれこそ“21世紀本格”の力作! 現在までの『ミステリマスターズ』においてはこれがベストだと思う」
G「島田作品よりも?」
B「ったりめーじゃん! 『魔神』は島田作品としては中の上というところだよ!」
G「ふーん。んじゃ、次はぼくの方のベストをば」
 
●MAQの国内ベスト
1 「鏡の中は日曜日」 殊能将之    講談社
2 「人魚とミノタウロス」 氷川 透    講談社
3 「法月綸太郎の功績」 法月綸太郎   講談社
4 「魔神の遊戯」 島田荘司    文藝春秋
5 「はじまりの島」 柳 広司    朝日新聞社
6 「サロメの夢は血の夢」 平石貴樹    南雲堂
7 「聯愁殺」 西澤保彦    原書房
8 「バラバの方を」 飛鳥部勝則   徳間書店
9 「奇蹟審問官アーサー」 柄刀 一    講談社
10「名探偵Z 不可能推理」 芦辺 拓    角川春樹事務所
 
B「なんかランキングの下の方にゲテなものが、ぞろぞろ入ってる気がするが……」
G「うーん、西澤さんはともかく、6位以下はたしかに個人的偏愛リストっぽいかも。『サロメ』は、全編を犯人も含む登場人物の心理描写で描き、しかもフーダニットという離れ業。再読するとさらに膝連打! って感じの作品です」
B「狙いはともかく、あまり成功しているとは思えんがなあ。飛鳥部作品も、まあ処女作以来もっともストレートな本格ではあるけど、これも歪な作品だろ」
G「ヘンな作品なんですよね。名探偵の推理も異常だし……でも、これも本格としての壊れ方が好きな方向なんです。『アーサー』は奇想炸裂! ただそれだけッ! という潔さが最高ですね」
B「じゃあ『Z』はなんだよ。芦辺作品でこっちを選ぶなんてのは相当以上の根性曲がりだと思うぞ」
G「こりゃもう単純に今年いちばん笑えて、いちばん“本格ぅ!”って気分を味わえた作品だからです。バカトリックにバカロジックがぎっしり詰まっていますが、本格って本来こういうもんだと思う。なんだってそうだけどエラくなりすぎちゃダメだと思うんです。本格なんて、所詮バカなお遊びであることを忘れちゃあいけない」
B「なんかもっともらしいこといってるよ……」
 
第1部・完(2003.1.13脱稿)
 
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