2003 GooBoo 本格ミステリ ベストセレクション
 
第2部 海外編
 
  作品名※カッコ内は票数 著者                出版社
ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎(29) アントニイ・バークリー   晶文社
2 魔法人形 (27) マックス・アフォード    国書刊行会
半身  (21) サラ・ウォーターズ     東京創元社
死が招く  (18) ポール・アルテ       早川書房
歌うダイヤモンド (15) ヘレン・マクロイ      晶文社
捕虜収容所の死 (13) マイケル・ギルバート    東京創元社
  スモールボーン氏は不在  (13) マイケル・ギルバート    小学館
塩沢地の霧 (10) ヘンリー・ウェイド     国書刊行会
9 暗黒大陸の悪霊  (8) マイケル・スレイド     文藝春秋
10 闇に問いかける男 (7) トマス・H・クック     文藝春秋
 
●GooBooおよびぐぶらんで紹介済みの作品は各タイトルから該当頁へ飛べます●
 
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった11位以下の作品たち。(順不同)
 
「死のように静かな冬」「魔性の馬」「石の猿」「シティオブボーンズ」「女神の島の死」「幻影」「ヴェネツィア殺人事件」「死者との対話」「雷鳴の夜」「終止符」「パズルレディと赤いニシン」「探偵術教えます」「黒猫は殺人を見ていた」「青い虚空」
 
【ベスト10作品解説】

1位●ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎
海外ベスト1を制したのは、シェリンガムものの第3作にあたるバークリーの初期長編。本格ミステリとしては仕掛けも展開もごく軽い作品ですが、ツボを心得た過不足のない仕上がりはさすが。定型を軽々とひっくり返してニヤリと微笑む、ミステリマスターのしたり顔が目に浮かびます。探偵小説ジャンルに対する批評的な視線は例によって例の如しですが、品のいいユーモアと共にやはり群を抜いたセンスの良さを感じさせてくれますね。
●ayaメモ
バークリーの翻訳ラッシュもそろそろ弾切れで、徐々に凡作レベル以下の作品も邦訳され始めたようで。アンチミステリ的仕掛けは、今回それほど大仕掛けではないし、全体としてバークリー作品としては中の下くらいの出来だろうか。それでもともかく、本格――ことに名探偵という存在に対する皮肉に満ちたマニアックな試みを、これだけ軽く楽しく読ませられてしまうと、やっぱりベスト1選出にもそれなりに納得してしまうのよね。
●投票者さんのコメント
バークリーの中ではアベレージ以下と言っていいかもしれませんが、それでも十二分におもしろいと思います)/往年の傑作ほどの切れはないが、カントリーハウスものの定型を嬉々としてぶち壊す毒気は相変わらずで楽しめる/「やはりバークリーは凄かった」と今年もまた感じることできた。/ワトスン退場シーンに爆笑/バークリーに駄作なし!
 
2位●魔法人形
かねてより噂の高かった“オーストラリアの密室派”アフォードが、本邦初訳長編のこの作品で2位にランクインしました。噂にたがわぬ濃厚なオカルト趣味と不可能犯罪興味が全編に横溢し、古典本格ファンにはたまらなく魅力的――本格としての仕掛けがいささかストレートすぎる嫌いはあるものの、まずはその雰囲気だけでも大満足できるでしょう。解説を読むと、この作家さんは他にも気になる作品がたくさんある。さらに翻訳が進むのを期待したいところですね。
●ayaメモ
何しろ鳴り物入りの登場だし、タイトルもこれ以上ないくらい魅力的だし。むっちゃくちゃ期待したわけだけど、その割には本格として肩透かしな内容であったのは否定できない。設定も雰囲気もいうことなしなのに、肝心かなめの本格としての仕掛けは、いいとこせいぜい軽本格レベル。もったいないなあ!と、二十回くらいつぶやきたくなる。古典発掘には付き物の落とし穴といえばそれまでだけど、これは本当にもったいなかったわよう!
●投票者さんのコメント
なんだかほほえましいくらい古典的な割には、いろいろ詰め込まれていて、うれしくなりました/期待していたようなオカルトミステリではなかったが、正統派パズラーとしては上出来。/ブラックバーンに萌え/前評判ほどの内容ではなかったけど、人形殺人という趣向のおもしろさとタイトル買い/古きよき本格としての設定つくりや雰囲気つくりがとても巧くて、ノスタルジックな気分にひたれます
 
3位●半身
強いてカテゴライズするならば、ヴィクトリア朝英国を舞台に描くファンタジックな時代サスペンス――というところでしょうか。いずれにせよ本格ミステリと呼ぶには躊躇が残る作品なのですが、それでいてこの物語の強力な魅惑を無視できる本格読みさんは少ないでしょう。全編に充満する謎と秘密の濃密な味わい、そして隈なく精緻に張り巡らされた伏線の妙。時にエロティックなほどの芳香に満ちた、謎と謎解きの物語がここにあります。
●ayaメモ
トリックも、ミスディレクションも、サプライズも、全ては物語のために。――卓越したミステリ技巧を自在に操り、合理と非合理の曖昧な境界に念入りに構築されたサプライズ。しかし、そのサプライズはそのまま悲恋物語としてのクライマックスにシンクロし、本格ミステリを置き去りにする。名探偵のいない本格ミステリは、時にこれほど美しいのか。無論もはやそれは本格ミステリとは呼べないのだけれど。
●投票者さんのコメント
読んだ時はそれほどいいと思わなかったけど、じわじわきいてきました/力作/読み終わって思わず最初の方を読み返した。動きが激しいわけでもないのに、漂う緊張感もすごい/本格か、ホラーか、ファンタジーか。答えは読者自身の目で確かめてほしい
 
4位●死が招く
昨年、ブームを呼んだ“フランスのカー”ことポール・アルテの、邦訳第2作が4位にランクイン。一見クラシカルな装いに目を奪われがちですが、盛りだくさんのトリック&ガジェットがコンパクトにまとめられてテンポよく語られたこの作品は、じつはたいへん口当たりのいい現代の本格ミステリです。本格ものの作家の数ではフランスを凌駕する本邦でも、これだけストレートな本格書きさんは実はそれほど見当たりませんよね。
●ayaメモ
トリックは豊富だし、本格ミステリとしての骨格もしっかりしていてストレートだ。ツボを心得た作者の手になる達者な作品。ではあるものの、それ以上のものでもない。そもそもここまで徹底して軽量化されてしまうと、何か物足りない気もしてくるわけで。読むほどに、どこか大量生産品みたいな人工甘味料臭が漂ってくるのは気のせいか。
●投票者さんのコメント
直球ど真ん中で堂々と勝負しているところに好感が持てる。/ミステリネタの見本市/前回の『第四の扉』よりもこの方がストレートだし、初心者には特にお勧め。/ズバ抜けた傑作ではないが、これぐらいの質の作品ならどんどん続けて出してほしい。続けて出さなければ意味がない
 
5位●歌うダイヤモンド
『晶文社ミステリ』で出たヘレン・マクロイの短編集は、作者の自選短編8篇に中編1篇を加えたもの。内容的には、SFからファンタシィ、ホラー、スリラーなど様々なジャンルエンタテイメントが網羅され、作者の幅の広さを示す作品集となっています。本格ミステリ的には、かの名作長篇『暗い鏡の中に』の原形となった『鏡もて見るごとく』、トンデモSF本格の『歌うダイアモンド』、中編の『人生はいつも残酷』あたりに注目です。
●ayaメモ
マクロイという作家さんは、古典本格黄金期というよりその後の拡散と浸透の時代に位置づけられる作家さんで、その作品自体ストレートな本格というイメージはほとんどない。しかし、ミスディレクションなど本格ミステリ的な技巧を心得ていたのは確か。この作品集では、その技術を幅広いジャンルエンタテイメントで活かそうとしているようだ。いわば脱格のハシリみたいなものかな――私自身の好みは詩情あふれる終末SFの『風のない場所』ね。
●投票者さんのコメント
けっこう器用にいろいろ書いてた作家だったんだな、と再認識した。/珠玉の短編集(と帯に書いてあります)/いい小説を読んだなあ、という感想が残る。特に「風のない場所」は印象的/「歌うダイアモンド」のバカミスっぷりに1票!
 
6位●「捕虜収容所の死」&「スモールボーン氏は不在」
欧米ではミステリの大家とされているのに、日本ではどうもいまいち人気のなかった英国の巨匠の作品が2作続けて邦訳され、同率6位にランクインしました。第二次大戦下の捕虜収容所での脱走スリラーにフーダニット要素をプラスした異色作『捕虜収容所の死』は、文句無く楽しめるエンタテイメント作品。一方の『スモールボーン氏は不在』は、英国式ユーモアがちりばめられた渋い渋いフーダニットパズラー。全く作風を異にする2作ですが、どちらもよく練られて間然とするところの無い手だれの作品です。
●ayaメモ
入りやすさ、読みやすさでいうなら文句無く『捕虜収容所の死』。映画『大脱走』ばりのスリリングな設定を背景に置くことで、フーダニットにタイムリミットを付け、そこにサスペンスを生みだしているアイディアは秀逸だ。ただし本格としてはやはり飛び道具なネタよね。当然、本格として読むなら『スモールボーン氏は不在』の方がはるかに満足度が高い。地味すぎて少々読み難いし、ネタも小粒なのが難点といえば難点だが、縦横に張った伏線を自在に操るプロットワークは名匠の名に恥じぬ技の冴え。じっくり時間をかけて噛みしめつつ、読み解いていきたい本格ミステリだ。
●投票者さんのコメント(捕虜収容所の死)
スリリングなアクション映画を見ている感じで読み進めると、突然本格になる。ただそれだけで驚き/とにかく読んでいて楽しかった。現れてすぐ消えた某人物の伏線も見事/本格としては他愛ないんですが、アクションやサスペンスとのバランスが絶妙/設定の勝利です
●投票者さんのコメント(スモールボーン氏は不在)
いまいち地味な作品だったんですが(というか読み始めてしばらく何がなんだかわからない)終わりまで読むとそれなりに良くできていることがわかりました/地味だけど/丁寧な伏線がうまい。評価が分かれそうな動機も、個人的には面白いと思う/いかにも英国の本格。地味で渋いが味わいがある
 
8位●塩沢地の霧
国書刊行会からもう1冊。こちらは『リトモア誘拐事件』や『推定相続人』などで知られるヘンリー・ウェイドの作品ですね。警察小説の書き手というイメージですが、この作品ではお得意の“半倒叙スタイル”――いかにも犯人っぽい人物を主役に据えて前半を描き、犯行シーンは飛ばして後半は警察による捜査を主体に展開する――で描くサスペンス。倒叙でありながらフーダニット興味も満たすという、その技法自体には目新しさはありませんが、迫真の心理描写による宙吊りサスペンスはさすがの一言です。
●ayaメモ
謎はあるが謎解きはなく、本格ミステリとは呼びにくい作品だし、スリラーとしても、じつはびっくりするほど単純素朴。しかしながら、ひた押しに押してくるサスペンスの盛り上げ方は半端でなく、地味な話なのに私もほとんど一気読みしてしまったよ。英国特有の冷たくじっとり湿った情景描写とともに、主人公の強烈なキャラクタ造形が忘れ難い印象を残してくれるね。
●投票者さんのコメント
重くて暗い話ですが、これは面白い。ぐいぐいと読ませる作品です。/ミステリ的な部分はさほど目新しくはありませんでしたが、登場人物たちの描き方によってそれを感じさせませんでした/筆力だけで読ませる力がある
 
9位●暗黒大陸の悪霊
前作『髑髏島の惨劇』で飛びきりスプラッタなサイコスリラーであるにも関わらず、古典的な本格への“歪んだ愛情”を随所で感じさせてくれたスレイドが、とうとう本格ベストにランクインです。鬼畜なシリアルキラーが跳梁し血みどろの死体がゴロゴロ転がる“いつものアレ”ですが、最後の最後で炸裂する強力無比なドミノ式謎解き&どんでん返しといったら! いかなる名探偵も茫然自失必至な、これぞフィニッシング・ストローク。
●ayaメモ
飛びきりのバカミスネタを、飛びきり複雑なモジュラー型警察小説のプロットに載せ、飛びきり濃厚かつえげつないサイコスリラーの手法で語ったごった煮は、いうなれば肉食人種丸出しの“海の向こうの脱格”か。しかし、まずこの複雑に絡み合い縺れあったプロットをを読み解く苦痛に耐えなければ、そのキョーガクのラストには行き着けない。ヘタすりゃ壁本必至のギャンブルに挑戦する勇気が、キミにあるか?
●投票者さんのコメント
怒濤の、というより執念のどんでん返しの連発に呆れました。/えげつないほど凶悪な、本格……ですよね? なんか自信がなくなってきますが、たぶん/ヘンなことを考え、力づくで実現しているヘンな作品。ヘンな作品は好きかも(笑)
 
10位●闇に問いかける男
毎年――というわけではありませんが、微妙な位置でランキングに滑り込んでくることが多いクック作品。しかしこれまでとは趣向を変えたタイムリミットサスペンスのスタイルが新鮮でした。しかもお得意のフィニッシングストロークは“意外な犯人”の趣向が取り入れられた人工的な造りで、いつもより若干本格味増量なのかもしれません。ともあれ当代きっての実力派作家の手練の技、“感動のラスト”と共にご堪能ください。
●ayaメモ
クックといえばフィニッシングストローク。物語としてのエモーションときっちり連動した“衝撃のラスト”には、毎回キモを冷やされてきたけど――しかしなぁ、今回のそれは少々理に落ちすぎたというか、えげつないというか。早い話が出来過ぎた話なのよね。その手つきのあざとさが透けて見え、いささか興醒め。ま、巧いといえば抜群に巧いんだけどね。その巧さを読者に意識させないでほしいというのが、読者としての身勝手な期待なの!
●投票者さんのコメント
期待を裏切らない出来でした/終幕のどんでん返しが感動的。文学派の本格だと/本格としては微妙だけど、過不足無く楽しませてくれる上等なエンタメ



【海外ベストGooBoo】
G「というわけで、海外勢は今年も古典本格が中心で、やっぱりバークリー強し! という感じでしたね」
B「バークリー作品もじゃかすか邦訳が進んだからなあ。前述の通り今回の『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』は、この作家の作品としては中の下くらいの出来だろう。他の古典本格系も総じて小粒だったり、非本格との境界線上の作品だったりするし――晶文社の新叢書のラインナップなどを鑑みるに、やはりこの古典ブームも本格ジャンルについてはそろそろ弾切れなのかもね」
G「でも、『ミステリ作家事典〈本格派篇〉』や『ある中毒患者の告白』(by M.K.氏/300部限定の私家版で出た、未訳本中心の古典本格ミステリガイド)などを拝見すると、まだ見ぬ本格ミステリ作家は山のようにいらっしゃるじゃありませんか」
B「そりゃまあその通りなんだけど……実際に国書の世界探偵小説全集あたりから出てみると、やっぱ“期待していたほどではない”ケースが増えている気がするね。むろんそれでも――というか、それだからこそマニアは喜ぶわけだけど、ビジネス的な見地からすれば、本格メインというわけにはいかなくなってきた感じだ」
G「いわゆる“奇妙な味”の短編作家がどんどこ訳されたりして、それはそれで楽しいですけどね」
B「しかしまあ、今年度はランクインしたものにもギルバート作品が2つ入っているし、ランク外にはジョゼフィン・テイ作品もある。また、票は入らなかったけど、ポケミスの復刻ものやクリスティ文庫なんてのも始まった。古典本格再評価の流れは、けっこうきっちり根付いたといえるのかも。逆に現代作家のそれは、相変わらずお寒いかぎりだけどね」
G「今回のランク入り作品でいうと、驚異の新人サラ・ウォーターズさんにご存じアルテさん、そして掟破りのスレイドさんにクックさん。――いちおう4人いらっしゃいますが、純粋に本格ミステリ書きといえるのは、やはりアルテさんくらいでしょうか(ギルバートさんも現役ではありますが90歳を超えてらっしゃいますから……)」
B「そうだろうね。本格ミステリという形式を意識しているのは、アルテさんと、強いていえばスレイドさんくらい。他の方はあくまで“たまたま本格としても読める”ミステリを書いたということだろうな。まあ、それはそれで仕方がない。毎回いってることだけど、ジャンルとしての本格がこれだけ強く意識されているのは、わが国に限った特異現象なのかもしれない」
G「そのあたり、どうなんでしょうね。海外のミステリ読みさんたちの実感値が知りたいなあ」
B「Junkの英語版でも作って国際交流を図ればいいじゃん(笑)」
G「……そんなスキルがぼくにあるとお思いですか?」
B「ぜんっぜん思わないけどね。いずれそういうサイトも登場するかもしれない。新しくミステリサイトを作るなら狙い目かも(笑)」
G「戯けたこといってないで、そろそろayaさんのベストを聞きましょう」
B「了解了解。国産篇どうよう順位無しのベスト5だよ」
 
●ayaの海外ベスト
スモールボーン氏は不在 マイケル・ギルバート  小学館
ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎 アントニイ・バークリー 晶文社
死が招く ポール・アルテ     早川書房
死者との対話 レジナルド・ヒル    早川書房
魔法人形 マックス・アフォード  国書刊行会
別格)半身 サラ・ウォーターズ   東京創元社
 
G「うわー、渋いですねー。じっつに渋い。こりゃ初心者の人には簡単には勧められないベストだなー」
B「そんなこたぁない。ちゃんとアルテもいれてあるさ……が、まあ基本は英国系シブ目本格で固めてみた。というか、これ以上選ぶとどうしても非本格が入ってきちゃうのよね。非本格は『半身』だけあれば十分よ」
G「いいけど……ヒルの『死者との対話』なんて渋すぎでしょ。ぼくは2度くらい途中で挫折しましたよ〜。なんとか3度目で読みきったけど、正直辛かった(笑)」
B「まあ、本格としてのメインネタは邦訳ではちと辛いネタだし、全体に無駄に冗長だったりするけどさ、むしろそこがいいわけで(笑)。国産の新本格を読んでいると、こういうどっしり読み応えのある英国モノをじっくり読みたくなるんだよ」
G「なんだかな〜。じゃあぼくの方は、逆に読みやすさ優先の路線で攻めてみましょうかね」
 
●MAQの海外ベスト
1 死が招く ポール・アルテ      早川書房
2 捕虜収容所の死 マイケル・ギルバート   東京創元社
3 ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎 アントニイ・バークリー  晶文社
4 魔法人形 マックス・アフォード   国書刊行会
5 暗黒大陸の悪霊 マイケル・スレイド    文藝春秋
6 闇に問いかける男 トマス・H・クック    文藝春秋
7 歌うダイヤモンド ヘレン・マクロイ     晶文社
8 雷鳴の夜 ロバート・F・ヒューリック 早川書房
9 パズルレディと赤いニシン パーネル・ホール     早川書房
10 アイデンティティー ジェームズ・マンゴールド
 
B「あのな〜。映画を入れるなよ映画を!」
G「だって面白かったんだも〜ん! いいじゃないですか“別格”なんですから。ともかく新本格読みさんには、絶対外せない作品だと思いますよ」
B「じゃあ読みやすさ優先のベストっていってたけどさ、『暗黒大陸の悪霊』はむちゃくちゃ読み辛いだろーが!」
G「まあたしかに、あの作品はプロットがハンパでなく錯綜しまくってますけど、サイコスリラーの体裁は、今どきの若い方には馴染みやすいんじゃないですかね。よくわかりませんが、ともかくあの怒濤のどんでん返しは、これまた新本格読みさん必見かと」
B「ううむ、どうかなあ。壁本って気もするけどなあ。ついでにいえば8位9位あたりも本格ミステリとしてはユルユルの作品だ。員数合わせっぽい無理矢理なセレクトじゃないの?」
G「狄(ディー)判事シリーズ、好きなんですよ。むかし懐かしい探偵小説の匂いがいっぱいで。特にこの作品は“嵐の山荘もの”だし、なかなかトリッキーだし」
B「『パズルレディ』もそうだが、まぁ軽本格としちゃ悪くないけど……って感じでしょ」
G「海外の現代ミステリシーンにおける本格は、謎解き云々よりむしろ古典的な道具だてなど、“本格っぽいの雰囲気”の演出がメインであるような気がするんですね。実際、あちらではコージーミステリなどに代表される軽本格こそが、ジャンルとして確立されているわけですし。パズラーがどうということでなく、一種のノスタルジックな感傷を誘う“探偵小説の世界”が愛されているんじゃないでしょうか。本邦の本格読みからすれば食い足りないわけですが、それはそれとして、楽しめるものは楽しんだ方が得ですから(笑)」
B「やっぱキミの場合は、間口が広いというより節操がないってことだな!」
 
第2部・完(2004.2.29)
 
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