ではでは。どうぞ、選びに選び抜かれた2001年度本格ミステリの精華、心ゆくまでご賞味ください。 |
対象作品/2000年12月〜2001年11月期に日本国内で出版された“狭義の本格ミステリ”
投票方式/各投票者が国内・海外の優秀作にそれぞれに持ち点10点を配分&投票 総回答数/36名様 |
順位 作品名 著者 出版社 票数 |
1 硝子細工のマトリョーシカ 黒田研二 講談社 44 |
2 未完成 古処誠二 講談社 33 |
3 ロシア幽霊軍艦事件 島田荘司 原書房 19 |
4 黒祠の島 小野不由美 祥伝社 17 |
5 暗黒童話 乙一 集英社 15 |
6 最後から二番目の真実 氷川 透 講談社 11 |
ミステリ・オペラ 山田正紀 早川書房 11 |
8 ハリウッド・サーティフィケイト 島田荘司 角川書店 10 |
9 たったひとつの 斎藤 肇 原書房 9 |
10 マリオネット園 霧舎 巧 講談社 8 |
次 紫骸城事件 上遠野浩平 講談社 6 |
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(順不同) ●「巫女の館の密室」● 「夏の夜会」●「絶叫城殺人事件」●「ペルソナ探偵」●「眠りの牢獄」●「失踪HOLIDAY」●「赤ちゃんをさがせ」●「共犯マジック」●「砂漠の薔薇」●「彼女は存在しない」●「六色金神殺人事件」●「とむらい機関車」●「恋霊館事件」●「神のふたつの貌」●「天使は探偵」●「饗宴 ソクラテス最後の事件」●「中空」●「R.P.G」●「孔雀狂想曲」●「煙か土か食い物」●「生存者、一名」 |
●硝子細工のマトリョーシカ
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G「未読だった『暗黒童話』の予想外の躍進をのぞけば、おおむね順当な結果でしょうか。1位の黒田さんはすっごい人気ですねー」
B「本格らしい本格というか、本格ならではの楽しさ・面白さという点ではやはりこいつがトップよ。でも、順当とは言いながら、選ばれた作者の顔ぶれはずいぶん入れ替わったわね。麻耶さんは……まあ、新作がないんだから仕方がないけど、西澤さん、柄刀さんといった常連組がきれいさっぱり姿を消し、多彩な新人がその穴を埋めた構図だね」 G「4位の小野さん、5位の乙一さん、6位の山田さん、そして次点の上遠野さんと、異ジャンルからの進出組の活躍も非常に目立ちますね」 B「たしかにいろんな形で、業界の新陳代謝がいちだんと活発になっている感じはあるな。まあ一方では、刊行した2長編を共に送り込んできた島田さんは、さすがの貫禄というか」 G「贔屓目かもしれませんが、島田さんがどっしり重石を据え、さらに若手と異業種越境組が競い合ういい感じのベストなんではないでしょうか」 B「まあそうなんだが、西澤さんを含め、新本格第一期生らの中堅どころがすっぽり抜けているのは、やはり物足りないといわざるをえないわよねえ。今年こそは彼らに奮起してもらわんとなあ」 G「まあ、綾辻さん法月さんは長編を連載してますからね。ただ、それが今年完結するかというと……さて」 B「ところで結果予想の方はどうよ。このランキングじゃ全問正解はいなかったんじゃないの?」 G「ええ、たしかにこのランキングは予想できませんよね。ですんで、前回同様正答率の高さで点数をつけて選ばせてもらいました」 B「しかし投票してくださるような方なら本格読みさんだろうし、賞品の『本格ミステリ・ベスト10』なんてもう持ってるんじゃないの?」 G「そうかもしれませんね。その場合はまた何か考えますよ。……じゃ、そろそろayaさんベスト、いきましょうか」 B「いいよ。例によって順位はなし」 |
未完成 古処誠二 講談社 |
硝子細工のマトリョ−シカ 黒田研二 講談社 |
ロシア幽霊軍艦事件 島田荘司 原書房 |
天使は探偵 笠井 潔 集英社 |
時の密室 芦辺 拓 立風書房 |
別 ミステリ・オペラ 山田正紀 早川書房 |
G「あ、笠井さんのなんてムチャクチャけなしてたのにい!」
B「まーねー、君子は豹変す! っていうか、ストレートな本格短編集としては、昨年のベストでしょ」 G「調子いいなあ……芦部さんもそうでしょうが」 B「芦辺さんは、まあ全く名前があがらないのは片手落ちという気がするんでね。これはちょっとガチャガチャしてるけど、意欲的な本格だと思うわ。で、きみはどうなの?」 G「はいはい、こんな感じで」 |
1 ロシア幽霊軍艦事件 島田荘司 原書房 |
2 未完成 古処誠二 講談社 |
3 硝子細工のマトリョ−シカ 黒田研二 講談社 |
4 紫骸城事件 上遠野遼平 講談社 |
5 巫女の館の密室 愛川 晶 原書房 |
6 黒祠の島 小野不由美 祥伝社 |
7 最後から二番目の真実 氷川 透 講談社 |
8 赤死病の館の殺人 芦辺 拓 光文社 |
9 共犯マジック 北森 鴻 徳間書店 |
10 たったひとつの 斎藤 肇 原書房 |
B「ふーむ、『共犯マジック』は本格かねぇ……」
G「いやまあ、ここに北森さんの名前がないのは寂しすぎるんで。本格ドンズバじゃないですけど、本格風の仕掛けはたっぷりあるし。あと、芦辺さんは、ぼくはこっちの短編集の方が本領発揮だと思うんで選ばせていただきました。短編集としては、笠井さんのもいいんですが……すいません、やっぱり苦手意識が拭いきれない」 B「なぜかJunk Landの読者さんには、芦辺さんはあまり人気がないなあ。一見、地味なようにみえて、あれでけっこう派手好きな作家さんのような気がするんだけどね」 G「そうそう、それに実はけっこうマニアックな作風ですしね。でもま、やっぱどこか地味な印象がつきまとってますよね。名探偵のキャラクタに魅力がないって話もありますが」 B「まあ、森江さんは、あれはあれでもうどうしようもないからどうでもいいけどさ、他にも名探偵キャラ作っちゃえばいいのにね〜。ま、新刊のたびに新しい名探偵を量産してくる、どこかの作家さんみたくなられちゃ堪らないけど」」 |
順位 作品名 著者 出版社 票数 |
1 最上階の殺人 アントニイ・バークリー 新樹社 22 |
2 ジャンピング・ジェニイ アントニイ・バークリー 国書刊行会 14 |
女占い師はなぜ死んでゆく サラ・コードウェル 早川書房 14 |
4 密室殺人コレクション 二階堂黎人・森英俊編 原書房 13 |
5 騙し絵の檻 ジル・マゴーン 東京創元社 12 |
6 第三の銃弾[完全版] カーター・ディクスン 早川書房 8 |
7 四人の申し分なき重罪人 G・K・チェスタトン 国書刊行会 7 |
8 学寮祭の夜 ドロシー・セイヤーズ 東京創元社 6 |
9 警察官よ汝を守れ ヘンリー・ウェイド 国書刊行会 5.5 |
10 死の殻 ニコラス・ブレイク 東京創元社 5 |
次 心の砕ける音 トマス・H・クック 文藝春秋 4.5 |
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(順不同) ●「エンプティ・チェアー」 ●「クリムゾン・リバー 」●「切り裂き魔ゴーレム」●「他言は無用」●「死のオブジェ」●「紙の迷宮」 |
●最上階の殺人
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G「昨年にも増して、古典発掘ブームが進行したということもあってか、やはり2001年もまた古典中心のラインナップになりましたね」
B「ふむ、古典発掘ブームは、いまや短編やブレイクなんかの新本格派まで広がってきたわけだけど、これはもうドンドンやっていただきたい。ただ、その一方で現代本格の紹介もきっちりやってほしいものだね。マゴーン、コールドウェル以外にも、良いものは沢山あるという話だし」 G「ちょっと前のことですが、イギリスでは歴史本格がかなりのブームだったらしいですね。このあたりの流れは、まだ本当に部分的にしか紹介されてないし、古典現代を問わず、海外本格の鉱脈はまだまだとてつもない広がりがありそうです」 B「ランキングに関しては、ほぼ順当というか、弾が無いから選びようがないというか……まあ、投票者さん自体が少ないしなあ」 G「やはり海外ものは読まれないんですかねえ」 B「前もいったけど、古典発掘関係の長篇が国書を中心とするハードカバーで出されることが多いのも痛いね。単純にコスト面でさ。バークリーの2作なんて、文庫で出されるべきだと思うね」 G「バークリーは、今年もいろんな版元から発掘が続くみたいですよ」 B「まあ、それはそれで楽しみといえば楽しみなんだけど……」 G「そりゃそうです! んじゃ、そろそろayaさんの海外ベストをうかがいましょうか」 B「ふむ。そうだね、ま、こんなところか」 G「順位は?」 B「なしなし」 |
密室殺人コレクション 二階堂黎人・森英俊篇 原書房 |
ジャンピング・ジェニイ アントニイ・バークリー 国書刊行会 |
騙し絵の檻 ジル・マゴーン 東京創元社 |
警察官よ汝を守れ ヘンリー・ウェイド 国書刊行会 |
第三の銃弾[完全版] カーター・ディクスン 早川書房 |
別 四人の申し分なき重罪人 G・K・チェスタトン 国書刊行会 |
G「え? 『猫の手』は……あ、対象期間から外れますね。とすれば、わりと順当かも」
B「だろー」 G「でも、やっぱ『最上階の殺人』が入ってない〜」 B「ジェニイがあまりにも面白かったからね。とりあえず、コレだけは押さえておきたい基本つう感じかな」 G「なるほどですね。では、ぼくの番ですね」 |
1 最上階の殺人 アントニイ・バークリー 新樹社 |
2 ジャンピング・ジェニイ アントニイ・バークリー 国書刊行会 |
3 密室殺人コレクション 二階堂黎人・森英俊篇 原書房 |
4 騙し絵の檻 ジル・マゴーン 東京創元社 |
5 警察官よ汝を守れ ヘンリー・ウェイド 国書刊行会 |
6 魔の淵 ヘイク・タルボット 早川書房 |
7 女占い師はなぜ死んでゆく サラ・コードウェル 早川書房 |
8 第三の銃弾[完全版] カーター・ディクスン 早川書房 |
9 四人の申し分なき重罪人 G・K・チェスタトン 国書刊行会 |
10 エンプティー・チェア ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 |
B「5位まではわりと真っ当だが、6位以下はグチャグチャだなあ。あ、『魔の淵』なんてゲテをいれてやがる!
ゆーまでもないけど、あれはトコトンしょうもない愚作よッ!」
G「うう、それはわかってるんですけど……好きなんですよ〜。雰囲気だけでも〜、たまらないんですううう」 B「きみってどーしてそうアノ手に弱いかねェ。それと10位のディヴァーもいかがなものかって感じよねえ。本格と呼べるのかねしらん?」 G「んんー、そりゃま真っ向勝負の本格か、っていわれるとツライんですが、ディヴァーは面白いですよ。ライムの謎解きも伏線の張りようも、本格ミステリの技法を十二分に心得た名人芸だと思いますし。まあ、ご勘弁を」 B「ま、いいけどね。ともかく今年も面白い本格ミステリをいっぱい読ませて欲しいものよね」 G「当面のミニブームは続いてるみたいですし、期待できるんじゃないですか?」 B「いや、私が言いたいのは、量的な問題じゃなくて質的なものよ。しょうもないもの10冊よりは傑作を一冊読んだ方が満足感は大きいんだからさ」 G「そりゃもちろんそうです! 作家の皆さんにはぜひぜひ頑張ってもらいたいですね!」 |