新春スペシャル

【2001年度】
GooBoo本格ミステリベストセレクション


 
【巻頭言】
 
いつの時代だってイチ読者たるぼくが求めるのは、ただ単純に面白いだけ、ただそれだけの本格ミステリ。文学として上等でもなく、高級でもなく、むろんナンボたくさん読んだからといって賢くもエラくもなれはしない、ただの読み捨てのエンタテイメント。けれど、そいつが与えてくれる喜びは、他では決して味わえないタカラモノ。この広い広い世界でただ一つ、本格ミステリだけが備えているヨロコビなのです。たとえどんなに時代が変わっても、それだけはけっして変わりはしないのです。むろん、それを愛するひとたちも、また。
てなわけで。そんな本格の中の本格を選び抜いた“GooBoo本格ミステリ ベストセレクション”、ここにメデタク第4回を迎えることができました。今回もまた、ただひたすらわき目もふらず本格らしい本格であり続けようとしている、嬉しくも頼もしい本格ミステリたちが集まってくれました。……これもひとえに、MAQのアホなお願いに快くお応えくださった、投票者さんたちのご協力あればこそ。あらためて皆様に心の底から感謝いたします。
ではでは。どうぞ、選びに選び抜かれた2001年度本格ミステリの精華、心ゆくまでご賞味ください。
 
作者敬白
 
対象作品/2000年12月〜2001年11月期に日本国内で出版された“狭義の本格ミステリ”
投票方式/各投票者が国内・海外の優秀作にそれぞれに持ち点10点を配分&投票
総回答数/36名様
 
過去GooBooで紹介済みの作品は各タイトルから該当頁へ飛べます

第1部 国内編
 
 順位   作品名            著者       出版社      票数
1  硝子細工のマトリョーシカ  黒田研二   講談社   44
2  未完成           古処誠二   講談社   33
3  ロシア幽霊軍艦事件     島田荘司   原書房   19
4  黒祠の島          小野不由美  祥伝社   17
5  暗黒童話          乙一     集英社   15
6  最後から二番目の真実    氷川 透   講談社   11
    ミステリ・オペラ      山田正紀   早川書房  11
8  ハリウッド・サーティフィケイト 島田荘司 角川書店  10
9  たったひとつの       斎藤 肇   原書房     9
10  マリオネット園       霧舎 巧   講談社     8
次    紫骸城事件          上遠野浩平  講談社       6
 
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(順不同)
 
「巫女の館の密室」● 「夏の夜会」●「絶叫城殺人事件」●「ペルソナ探偵」「眠りの牢獄」●「失踪HOLIDAY」●「赤ちゃんをさがせ」●「共犯マジック」「砂漠の薔薇」「彼女は存在しない」●「六色金神殺人事件」●「とむらい機関車」●「恋霊館事件」「神のふたつの貌」「天使は探偵」●「饗宴 ソクラテス最後の事件」●「中空」「R.P.G」●「孔雀狂想曲」●「煙か土か食い物」「生存者、一名」
 
【ベスト10作品解説】

●硝子細工のマトリョーシカ
一昨年彗星のごとく登場したポスト新本格の新星は、今年もその勢いをさらに加速。ついに今回、本ランキング史上最多得票! のブッちぎりにて、堂々のベスト1を獲得しました。入れ子構造を自在に操る斯界最強のメタの魔術師が、大技小技の豊富なトリックを惜しげもなくつぎ込んで描いた本作は、目眩くどんでん返しの饗宴。全ての読者を幻惑する、これぞまさしく超絶技巧。ポスト新本格派の1つの到達点がここにあります。
 
ayaメモ
細部にいささかの計算違いが無しとはしないが、この作品に潜められた膨大かつ複雑精妙な仕掛けの構図は読むもの全てを圧倒する。後は……いささかお粗末な小説作法の向上を期待するとともに、違った方向での技巧派ぶりを見たい。ぜひとも!
 
投票者さんのコメント
これまでの作品中では一番好きなんですが、やや複雑にしすぎた感が/作者の姿勢に好感が持てます。あの手法をきちんと処理しようとする意欲を買って(笑)……人物造形も凄い(爆)/ まさに技巧派の名にふさわしい作品/ラストの「えっ?」が一番大きかったのがこれ/ 騙しと、サプライズ・エンディングにかける意気込みは彼ならでは。予想以上のトリックには参りました/シリアスで本格なのに『解決ドミノ倒し』的な快感! 今年最もミステリ者の血を騒がせた傑作!/これもひとつのマニエリスムか?/今年はこれにつきます。新本格に蔓延する逃げのメタフィクションと見せかけて、全然違ったアプローチを取ったミステリです。読んでいる最中に混乱はあるけれど、それもまたおもしろさ/ちょっとでも触れ方を間違えると壊れてしまう精巧無比な硝子細工! 
 
●未完成
デビュー作『UNKNOWN』は昨年おしくもベスト10外でしたが、古処さんはシリーズ2作目の本作で2位にランクイン。南海の孤島にある自衛隊基地で1丁の小銃が消えた……誰が・なぜ・どうやって。ただそれだけの謎解きで貫いたストイックなパズラーです。地味な作品にも関わらず例年ならトップでもおかしくない得票数/支持の厚さは、謎解き自体が大きな広がりを持って、社会派風の重いテーマに無理なく連携しているからでしょう。
 
ayaメモ
単純でありながら密度の高い謎解きと奥深いテーマを融合した小説技巧は、新人ながらはや完成の域にある。作品としての完成度の高さは今回のランキングでも屈指の作といえるね。量産の難しい作風だが、そこを押して一刻も早く新作を!
 
投票者さんのコメント
上手い、の一言です/この舞台ならではの端正な謎解きと深く重いテーマが理想的な形で結びついた傑作/「小説がうまいから」という理由で推すのは心苦しいのだが、いまもっともリアルでバランスのよいミステリを書く人であることは間違いないと思う。「動機」に説得力があることもミステリ評価のポイントの一つなのだ/作品自体も良かったですが、現実がこういう状況になって、このシリーズの次回作がどうなるのか興味あります/完成度の高さはベテランなみ
 
●ロシア幽霊軍艦事件
一昨年『季刊 島田荘司』に一挙掲載され、その時点でGooBooBESTにも一度選ばれている作品ですが、大幅加筆&エピローグを付されて単行本化されて再びのランク入り。芦ノ湖に出現した巨大軍艦! の謎解きは、やがて世界史を変える巨大な秘密にたどりつきます。詩美性豊かな謎、奇想に満ちたトリック、そして雄大かつロマンチシズムあふれるストーリィテリングは、まさに作者の十八番。御手洗潔の颯爽たる活躍ぶりと共に、たっぷりお楽しみ下さい。
 
ayaメモ
島田氏が最近多用している、歴史がらみの謎ー最新科学による解法という構図は、同氏が提唱する“21世紀本格”の実践としても読むことができる。加筆部分はもっぱら“ドラマ”の部分なので、本格ミステリ的な骨格は、むしろ『季刊』掲載版の方がわかりやすかったかも。
 
投票者さんのコメント
『アトポス』に比べると、雰囲気作りに用いた文献などからの薀蓄も無理なく馴染んでおり、読みやすく、且つ読者の意表を突いてくる“島荘らしい”作品/去年投票できなかったので/御手洗物、久しぶりのヒット! でも、歴史ミステリってことで、ちょっと地味ですよねぇ/詩美性というのがなんだか分かったような気がします/島荘完全復活!
 
●黒祠の島
大河ファンタジー『十二国記』シリーズで絶大な人気を誇る小野さんが、その有り余る才能でもって挑んだ初の本格ミステリ長篇。因習に支配された孤島で起こる奇怪な連続殺人を描く、まさに本格ミステリの王道を行く作品です。シャレでもメタでもお笑いでもなく本格の定番コードを用い、“型”と正面から向きあって、しかもねじ伏せてしまう力技はさすが小説名人。これぞ“正しい”本格ミステリというべきでしょう。
 
ayaメモ
真っ向勝負の正しい本格であることは否定できないものの、同時に教科書を一歩も出ない型通りの展開がもどかしくもあり、退屈でもあり。巧すぎる人ゆえに“セオリーが見えすぎる”嫌いがあるのか。ここは一番、思いきった掟破りを。
 
投票者さんのコメント
本格テイストのホラーともとれる作品ですが、好きなので……/ 終盤のあのシーンはぞくぞくしました/初めての本格ものですが、正しく本格の様式は踏まれており、さすがだと思いました/この作品の魅力はやはりホラーなところ、なのですが/ 同じような系統の小説をまた書いてほしいです/賛否両論あった作品で、「ほんとーに優れた本格なのか?」と問い詰められればそりゃ、心に一点の曇りなしとはしない。しかし、あの探偵役にシビれてしまったのであえて推す
 
●暗黒童話
うわー、まいりました、やられました。まったくノーマークの作品のランクインです。いや、気になってはいたんですよ。しきりに噂を聞いてたし、これこうしてちゃんと買い込んでもいたのですが……未読。まだまだ未熟者であることを痛感した次第。未だ道遠し。一から勉強し直します!
 
ayaメモ
もしやとは思ったが、ここまで伸してくるとは! 横目で見ただけで通りすぎたツケが。YA作家なんてどーでもいいじゃんよー! といいたいところだが……あー、わかったわかった、私も読むよ!
 
投票者さんのコメント
今年、国産で真に驚嘆させられたのは、これだけでした。もっとミステリ系でも盛り上がって欲しい作家。来年も要注目です/ホラーとミステリの幸福な共存がここにありました。現実世界を浸食するホラーを用いていても、「物語世界」というリアルは破壊できるものなのです。それをさらりとやってしまう作者、まさしく天才、ですね/この人はスゴイ、と思います。もっともっと話題になっていいはずです/カバー紹介のホラーという言葉に騙されるなかれ!
 
●最後から二番目の真実
前回に引き続きランクインを決めた氷川さん。謎解きロジックにこだわりまくった作風は相変わらずですが、人工的な舞台の設定などパズル的傾向はさらに加速! しかもゲーデル問題に関する議論や、その解決法とも見える特異な名探偵の扱いなど、マニア心をくすぐる趣向が満載され、とてもゴージャスな作品になりました。これを読んで議論すればあなたも本格マニア! かも。
 
ayaメモ
マニアのマニアによるマニアのためのパズラーは、精緻なようにみえて実は結構強引で。自己満足とは言わないが、その謎解きロジックからは、解く快感どころか解かれていく快感も味わいにくい。希少な作風だけに、難しいことを簡単に、スマートに見せる技術を会得していただきたい今日この頃。
 
投票者さんのコメント
おそらく投票は伸びないであろうから/タイトル、作中の名探偵論にゲーテル問題論、楽しさ盛り沢山/アベレージヒッター/ 英文科大学院生兼名探偵・祐天寺美帆は魅力的なキャラだと思う。西之園萌絵に似てるけど。「後期クィーン問題」は上滑っていたと思うが、祐天寺美帆再登場を期待しつつ/メタ的な言及はややうるさいけれど、いかにもなパズラーは本格を読んだという気分を十分味わせてくれました/題名がカッコいいし、お嬢様探偵も良かったし
 
● ミステリ・オペラ
2001年最大の問題作である本格ミステリ大作は、作者にとってもこの分野におけるマスターピース的一作となりました。伝奇的ともSF的とも見える多重世界に、不可能興味満点の謎と膨大な本格ミステリ的ガジェットをぎっしり詰め込んだ様は、かの“三大奇書”を連想させる威容。してまたこの無数の謎を解き明かしていく超絶ロジックの奔流は、読者をして眩暈にも似た陶酔感に引きずり込みます。決め台詞の「探偵小説でしか語れない真実がある」は流行語にもなりましたね。
 
ayaメモ
本格ミステリのあらゆる意匠を片っ端から取り込んで、本格ミステリ的な楽しさがぎっしり詰め込まれたはずの大作ではあるものの、この作品には何か決定的なモノが欠けている。面白いには面白いが、どこまでいってもそれは本格の根本にある楽しさとは違うような気がしてならない。そう、ミステリ“で”語るのではなく、ミステリ“を”語ってほしいのよ!
 
投票者さんのコメント
処理し切きれてない部分もあるけど、”探偵小説でしか語れない真実もある”ことを示した今年の一冊/ダメトリックばかりでもこれだけ集めるとすごいことになる。量の質的変換ってやつ?/やっぱり今年を代表する本格はこれで決まりですね。質・量ともに文句無し/物量作戦もここまで徹底すれば大したもの
 
●ハリウッド・サーティフィケイト
島田作品からもう一作。なぜか巷間のベスト本からは無視されることが多い作品ですが、当ベストで堂々のランクイン! 御手洗シリーズのサブキャラであるハリウッド女優・レオナが、悪夢のようなLA暗黒世界を舞台に八面六臂の活躍を展開するハイテクスリラー大作……とはいえ、そこはシマソー。不可能興味あふれる謎やトリックもしこたま投入され、ヒロインのタフで華やかな活躍ぶりに目を奪われていると、飛び切りのサプライズエンディングに不意を衝かれること必至です!
 
ayaメモ
まー、これが本格かどうかは議論の分かれるところではあるが、とびきり面白くて刺激的なミステリであることは確かだね。タフでパワフルで、デモーニッシュでさえあるハリウッド女優レオナの魅力的なこと! 洋の東西を問わず、これほどリアルなハリウッド女優のヒロイン像というのは読んだことがないよ。
 
投票者さんのコメント
私、怒っているのです! 何故「このミス」でも「本ミス」でもこの作品はまったく無視状態、なのでしょう!!/島田信者ではありませんが、「やっぱりスゴイや」と思った作品/レオナ暴走/実は一番面白く読みました/ストーリーテラーとしての島田さんの実力を再認識しました
 
●たったひとつの
作者の斎藤肇さんは、かつての新本格派のお1人。当時からユニークな作風の本格を書いていた方ですが、今回長い沈黙を経て再びユニークな新作で復活してくださいました。一見名探偵を主人公にした連作短編、というありふれた体裁に見えて、各篇とも読者の予想をことごとく裏切るユニークな趣向がいっぱい。本格の定型を外しまくった、奇妙なとしかいいようのない謎解きの連打の後には、さらにこの作者らしいひねくれたサプライズがあなたを待っています。
 
ayaメモ
デビュー当時からすでに奇妙な、としかいいようのない個性的な作風の作家さんだったけど、この久しぶりの新作はさらに輪をかけてアヴァンギャルド。まともな本格を期待すると当然のように肩透かしを食らうけど、つかみ所のない飄々とした味わいはやはりこの作家さんならでは。むろん自己満足のきらいなしとはしないが、煩いことを言わずに悟りの境地で楽しむが吉。
 
投票者さんのコメント
よくわかんないけど、なんだかすごいことやってるような。ただ帯にもあったように、これはミステリの極北だと思うので、今後こういった手法のエピゴーネンが出ても評価しないだろう/なんとも趣味的ですが、こっち方面の作品ももっと書いて欲しいですね/ひねくれっぷりが好きです
 
● マリオネット園
新本格ミステリの直系・霧舎さんは、シリーズ4作目で初のランクインを決めました。ミス研(?)、館、クローズドサークル、新本格の定番ガジェットを頑なまでに遵守した器と、そこに盛り込んだ豊富多彩なトリックでつねに変わらぬ“定番の楽しさ”を満喫させてくれます。今回のそれはシリーズ一番の大技で、サブトリックも豊富。“いわゆる新本格”の楽しさが忘れられない読者さんには、最高の贈り物となるでしょう。
 
ayaメモ
新本格ミステリのいいトコドリといえば聞こえはいいが、要は本格テーマパークの趣き。相も変らぬ下手さ加減のせいで作品全体が安普請に見えてしまうのもいかがなものか。どこで・誰が・何を・やってるのかさえわからない一人合点で不親切な描写に、読者は途方にくれちゃうのよねぇ。
 
投票者さんのコメント
ひどいなあ、ひどいなあ、と思いながら読んでいたのだが、解決編では「感動した!」。少なくとも読者が最後まで読み通せるぐらいの「小説のうまさ」は必要だと思うぞ/トリックだけでもベスト10入りする価値はあるのでは/これでもう少し小説が上手ければなあ


G「未読だった『暗黒童話』の予想外の躍進をのぞけば、おおむね順当な結果でしょうか。1位の黒田さんはすっごい人気ですねー」
B「本格らしい本格というか、本格ならではの楽しさ・面白さという点ではやはりこいつがトップよ。でも、順当とは言いながら、選ばれた作者の顔ぶれはずいぶん入れ替わったわね。麻耶さんは……まあ、新作がないんだから仕方がないけど、西澤さん、柄刀さんといった常連組がきれいさっぱり姿を消し、多彩な新人がその穴を埋めた構図だね」
G「4位の小野さん、5位の乙一さん、6位の山田さん、そして次点の上遠野さんと、異ジャンルからの進出組の活躍も非常に目立ちますね」
B「たしかにいろんな形で、業界の新陳代謝がいちだんと活発になっている感じはあるな。まあ一方では、刊行した2長編を共に送り込んできた島田さんは、さすがの貫禄というか」
G「贔屓目かもしれませんが、島田さんがどっしり重石を据え、さらに若手と異業種越境組が競い合ういい感じのベストなんではないでしょうか」
B「まあそうなんだが、西澤さんを含め、新本格第一期生らの中堅どころがすっぽり抜けているのは、やはり物足りないといわざるをえないわよねえ。今年こそは彼らに奮起してもらわんとなあ」
G「まあ、綾辻さん法月さんは長編を連載してますからね。ただ、それが今年完結するかというと……さて」
B「ところで結果予想の方はどうよ。このランキングじゃ全問正解はいなかったんじゃないの?」
G「ええ、たしかにこのランキングは予想できませんよね。ですんで、前回同様正答率の高さで点数をつけて選ばせてもらいました」
B「しかし投票してくださるような方なら本格読みさんだろうし、賞品の『本格ミステリ・ベスト10』なんてもう持ってるんじゃないの?」
G「そうかもしれませんね。その場合はまた何か考えますよ。……じゃ、そろそろayaさんベスト、いきましょうか」
B「いいよ。例によって順位はなし」
 
ayaの国内ベスト
     未完成          古処誠二      講談社
       硝子細工のマトリョ−シカ 黒田研二      講談社
     ロシア幽霊軍艦事件    島田荘司      原書房
     天使は探偵        笠井 潔      集英社
     時の密室         芦辺 拓     立風書房
別   ミステリ・オペラ     山田正紀     早川書房
 
G「あ、笠井さんのなんてムチャクチャけなしてたのにい!」
B「まーねー、君子は豹変す! っていうか、ストレートな本格短編集としては、昨年のベストでしょ」
G「調子いいなあ……芦部さんもそうでしょうが」
B「芦辺さんは、まあ全く名前があがらないのは片手落ちという気がするんでね。これはちょっとガチャガチャしてるけど、意欲的な本格だと思うわ。で、きみはどうなの?」
G「はいはい、こんな感じで」
 
MAQの国内ベスト
1   ロシア幽霊軍艦事件    島田荘司      原書房
2   未完成          古処誠二      講談社
3   硝子細工のマトリョ−シカ 黒田研二      講談社
4   紫骸城事件        上遠野遼平     講談社
5   巫女の館の密室      愛川 晶      原書房
6     黒祠の島         小野不由美     祥伝社
7     最後から二番目の真実   氷川 透      講談社
8     赤死病の館の殺人     芦辺 拓      光文社
9     共犯マジック       北森 鴻     徳間書店
10       たったひとつの      斎藤 肇      原書房
 
 
B「ふーむ、『共犯マジック』は本格かねぇ……」
G「いやまあ、ここに北森さんの名前がないのは寂しすぎるんで。本格ドンズバじゃないですけど、本格風の仕掛けはたっぷりあるし。あと、芦辺さんは、ぼくはこっちの短編集の方が本領発揮だと思うんで選ばせていただきました。短編集としては、笠井さんのもいいんですが……すいません、やっぱり苦手意識が拭いきれない」
B「なぜかJunk Landの読者さんには、芦辺さんはあまり人気がないなあ。一見、地味なようにみえて、あれでけっこう派手好きな作家さんのような気がするんだけどね」
G「そうそう、それに実はけっこうマニアックな作風ですしね。でもま、やっぱどこか地味な印象がつきまとってますよね。名探偵のキャラクタに魅力がないって話もありますが」
B「まあ、森江さんは、あれはあれでもうどうしようもないからどうでもいいけどさ、他にも名探偵キャラ作っちゃえばいいのにね〜。ま、新刊のたびに新しい名探偵を量産してくる、どこかの作家さんみたくなられちゃ堪らないけど」」
 


 
第2部 海外編
 
順位   作品名            著者                 出版社            票数
1   最上階の殺人       アントニイ・バークリー   新樹社      22
2   ジャンピング・ジェニイ  アントニイ・バークリー   国書刊行会    14
     女占い師はなぜ死んでゆく サラ・コードウェル     早川書房     14
4   密室殺人コレクション   二階堂黎人・森英俊編    原書房      13
5   騙し絵の檻        ジル・マゴーン       東京創元社    12
6   第三の銃弾[完全版]   カーター・ディクスン    早川書房       8
7   四人の申し分なき重罪人  G・K・チェスタトン    国書刊行会      7
8   学寮祭の夜        ドロシー・セイヤーズ    東京創元社      6
9   警察官よ汝を守れ     ヘンリー・ウェイド     国書刊行会    5.5
10     死の殻          ニコラス・ブレイク     東京創元社      5
次  心の砕ける音       トマス・H・クック     文藝春秋     4.5
 
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(順不同)
 
●「エンプティ・チェアー」 ●「クリムゾン・リバー 」●「切り裂き魔ゴーレム」●「他言は無用」●「死のオブジェ」●「紙の迷宮」
 
【ベスト10作品解説】

●最上階の殺人
下馬評通り、古典本格黄金時代の異才バークリーの2作がワンツーフィニッシュを決めました。ちなみに2作はいずれも古典的な本格ミステリの“型”に対する痛烈な皮肉に満ちたマニア好みの作品。ですが、1位のこちらはギリギリのところでフーダニット・パズラーの領域に踏みとどまって、本格原理主義者の票を確保したようです。。一見ごく単純で地味で、謎など一切存在しないようにみえる老婆殺しも、バークリーの手にかかると二転三転、複雑精緻な謎解きロジックが紡ぎだされます。
 
ayaメモ
古典本格の限界に挑み続け、ついにはそのスタイル自体を破壊し尽くしたバークリーは、本格ミステリ史上最も重要な作家の1人。本格のスタイルとそこで求められる技巧と、そしてその弱点を知り尽くした作者ならではの一作。むろん必読だよ!
 
投票者さんのコメント
確かに『ジャンピング・ジェニイ』も良いんですが、スクリューボール・コメディ好きという自分の嗜好と、あちらは、しっかりパズラー的な面白さはありながらも、フーダニットとしては読者の解決可能性を無視しているところがあるので、こちらに/憎めない男、ロジャー・シェリンガム/バークリーらしからぬバランスの良さがマル。謎解きも楽しめるし
 
●ジャンピング・ジェニイ
こちらのバークリー作品は『最上階の殺人』とは打って変わって、古典本格の“型”を徹底して引っ繰り返し破壊し尽くしたアヴァンギャルドな作品です。有名殺人鬼の扮装という悪趣味な趣向の仮装パーティに、突如出現した自他殺不明の縊死死体。腹に一物の出席者たちが巻き起こす皮肉な笑いに満ちたドタバタ劇は、やる気の無いはずの名探偵をどんどん皮肉な立場に追い込んで……。本格ミステリとしては決定的に破綻しているにも関わらず、その本格味の濃厚にして豊潤なこと! まさにマニア心をくすぐりまくる、バークリーらしさあふれる1篇といえましょう。
 
ayaメモ
たしかに本格としてはとことん破綻している。これではもとより、読者に解けようはずもない。しかし……なんとまあその美しくも楽しい壊れ方であることよ! 全ての効果を精緻に計算し尽くした破綻という、爛熟をきわめた本格のカタチがここにある。
 
投票者さんのコメント
これだけ本格ミステリを解体しながら、理屈っぽくならずに面白く読ませるってのはさすがだな、と/知的ドタバタ劇というところでしょうか。こういうのもあり/パズラーとしては読めないのですが、本格の香りは強烈なほど/バークリーの真骨頂!/笑える本格としても超一流/バカ本格ですが、そんじょそこらのバカとは違う。とっても知的なバカです
 
●女占い師はなぜ死んでゆく
古典作品がならぶ海外ベストの一角に食い込み気を吐いたのは、現代英国女流本格の旗手、サラ・コードウェルの遺作でした。性別不明の名探偵・テイマー教授を主役とするシリーズ最終作となったこの作品は、地味ながら複雑精緻に組み上げられた精密時計のような作品。ことに、どう見ても無関係な幾つかの事件・事象が、テイマー教授の推理によって1つの物語に収束していく終盤の鮮やかさは、まさに現代本格ミステリの精華ともいうべき仕上がり。これが遺作になってしまったことが、返す返すも惜しまれます。
 
ayaメモ
派手なトリックはないし、テイマー教授の名探偵ぶりもけっして大向こうを唸らせるような派手な活躍ではない。しかし、押さえた筆致で語られる緻密な伏線と謎解きロジック、そして親しみやすいキャラクタ造形は、本格らしからぬバランスの良さを感じさせる。大人の本格、だな。
 
投票者さんのコメント
こんなに複雑な展開が最後に綺麗に解けていくとは予想だにしませんでした。惜しいのは作者の死/もっともっと読まれて然るべき現代本格の見本/ティマー教授シリーズは好きでずっと読んでます。これが遺作ですし
 
●密室殺人コレクション
現代もの、古典ものを問わず短編アンソロジーが盛んに編纂されたのも2001年の特色の一つでしたが、ランキング入りを決めたのはきわめつけの名作・珍品を集めた密室もののアンソロジーでした。密室というより不可能犯罪モノが中心という感じの収録作は、なんと6篇中5篇までが初紹介という貴重品ぞろい。しかも大らかなバカミスから超絶技巧のトリック作品までバラエティに富んでいて、海外もの・古典ものが苦手という読者もけっして飽きさせません。古典本格入門書としても最適の一冊ですね。
 
ayaメモ
どちらかというとバカミス濃度がかなり濃厚なアンソロジーなんだけど、実際に読んでみると、そのたっぷりの洒落っ気と大らかさにツクヅク昔のバカミスはよかったなあ、と。幸せな気分になれるんだね。うーん、二階堂さん、久方ぶりにいい仕事!
 
投票者さんのコメント
これは楽しかったです/読みたくても読めなかった作品がぎっしり。お得なアンソロジー/古典ばかりなんですが、読みにくくないし、古典の楽しさが凝縮されてる気がします/トリック命の二階堂さんらしい作品選定
 
●騙し絵の檻
現代本格の旗手、ジル・マゴーンの代表作が第5位に滑り込みました。二重殺人の冤罪で15年間もの服役を追えた男の復讐のための謎解き、いわば“復讐鬼”の名探偵という新趣向で語られる物語は、さながら重厚に組み上げられたハードサスペンスの趣き。不親切な一人称描写やカットバックの多用もあって、やや読みやすさを欠くものの、ラストの謎解きおけるどんでん返しは、まさに名刀一閃の鮮やかさ! 全ての手がかりが有機的に連携しながら全く別の絵を描きだすという、本格ミステリならではの強烈なサプライズがたっぷり堪能できます。
 
ayaメモ
誰からも期待されず、憎まれ、嫌われる復讐鬼。という、いまだかつてない名探偵像と共に、“現代における本格ミステリ・ストーリィ”のありようを示した1篇。トリックを排し、きわめて大胆なミスディレクション1本に絞った技巧面も優れているだけに、いたずらに読みにくさを増している感のある構成の悪凝りや描写面の手抜かりが惜しまれちゃうね。
 
投票者さんのコメント
最後に全てがひっくり返るあの感覚は凄い/ 驚いたので/端正な現代本格/ 正直言って、そんな面白くなかったんですが、文句なしの本格ミステリなので/重苦しくて読みにくくて好きではないのですが、ともかくラストのどんでん返しが強烈/大胆かつ巧妙なミスディレクションは現代本格の頂点クラス
 
●第三の銃弾[完全版]
かつて雑誌掲載時に大幅にカットされていカー作品が、新たに原型を復元され、短めの長篇として復活しました。警戒中の警官の面前で発生した判事射殺事件……被害者と同じ部屋で発砲直後の拳銃を構えていた容疑者が現行犯逮捕され、事件は一挙に解決かと思われました。が、捜査が進むに連れ次々と矛盾した証拠が出現。ついには、論理的に絶対にありえない不可能犯罪の様相を呈してきます。閉ざされた室内にいずこからともなく出現した銃弾を巡って展開される、巨匠カーの魔術的なテクニック! まさに黄金時代の息吹を今に伝える1作です。
 
ayaメモ
読み直してみると、カーのやっていることはかーなーりーの綱渡り。っていうか、ほとんど詐術めいたゴマカシで。読めば読むほどありえない真相に思えてきちゃうんだけれども……それもまたよし! と思わせちゃうあたりが、一番のカー・マジックだよね。
 
投票者さんのコメント
どこを切ってもカー印。万歳!/むちゃくちゃなんですがカーがやってるので許します/やっぱカーっていいよなあと、思わずしみじみしてしまった/離れ業というよりトンデモだけど、カーがやるとやっぱり素晴らしい
 
●四人の申し分なき重罪人
ブラウン神父シリーズで知られるチェスタトンの、これまた名のみ聞く短編連作が古典発掘ブームに乗って堂々登場。チェスタトンの神学者としての一面が色濃く漂う、寓話風の設定で展開される思弁小説ながら、大胆な逆説を柱に展開される華麗かつアクロバティックなロジック&形而上的トリックは、やはり紛れもなく豊潤な本格ミステリの香り。本格ミステリから謎解きロジックの楽しさだけを抜きだしたような、他では決して味わえない悦びを、どうぞたっぷりとご賞味あれ。
 
ayaメモ
本格ミステリの意匠をとことんはぎ取り、ロジックの楽しさという1点に絞り込んだ不純物ゼロの本格。いやしかし、これを本格と呼んでよいものか。おおいに躊躇いが残るものの、どこか仙境に遊ぶ心地よさめいたものがあったりする。ま、そうしてみると、やっぱ本格とはいえないか。
 
投票者さんのコメント
本格か、といわれるとかなり苦しい。いや、ミステリかと問われても……でも/チェスタトンの逆説には本格ミステリの神髄が凝縮されています/まさか日本語で読めるとは思わなかった
 
●学寮祭の夜
ストレートな本格ミステリから徐々に風俗小説色を強めていった古典本格の雄・セイヤーズの、後期を代表する畢生の大作。かつて妙訳で一度出ていたのですが、今回初めて完訳版が登場しました。ごぞんじピーター卿シリーズの1篇ながら、彼の思い人であるハリエットが主役。自身の母校で起こった陰湿な脅迫事件の謎解きに挑みます。前述の通り風俗小説的色彩の強い作品で、正直本格ミステリ的な趣向はごく薄口。ですが陰影濃く描かれた大学人たちの人物像や大学生活の楽しさ、面白さ、そして重たいテーマと密接に呼応しあう事件の背景など、読みどころは豊富です。
 
ayaメモ
とはいえ、本格ミステリ的な趣向はごく他愛ないというレベルだし、お楽しみの御前&パンターのマンザイも皆無。それより何よりなんぼ何でも長すぎる! 完訳はコレクターズアイテムか? って気も……まあちょっとだけ、しないではない。
 
投票者さんのコメント
この作品に感動したから、というのが理由のすべてではないが、とにかくセイヤーズにハマってオクスフォードまで行ったのだから、なにはともあれ入れておかないと。畢生の大作。傑作。必読 ! /地味ですし長いのですけれど、やはり外せないでしょう/ハリエットが好きなので
 
●警察官よ汝を守れ
ごぞんじ国書刊行会の探偵小説全集から、またもまだ見ぬ幻の傑作古典本格が登場です。作者のヘンリー・ウェイドは、誘拐ものの『リトモア誘拐事件』や倒叙の『推定相続人』で知られ、どちらかという変化球の作家というイメージでしたが、この作品はシンプルかつストレート、そしてトリッキーな本格ミステリです。田舎町の警察署内で発生した予告殺人は、その単純な外見にも関わらず二転三転。次々仮説が提出されては引っ繰り返されるデクスター風の展開が楽しめます。大胆な伏線に基づく犯人指摘のロジックの鮮やかさと共に、バランスのいい古典本格としてお勧めできる逸品です。
 
ayaメモ
トリックは子供騙し……とはいわないが、いずれにせよかなりの綱渡りであることは確か。ついでに伏線も大胆すぎてまるわかり。つまりパズラーとしてはよろずキレイに作られすぎて、読者にとっては見通しが良くなりすぎているキライがある。後半の因縁話も古臭いしー。文庫だったらお買い得だが……うーん。
 
投票者さんのコメント
古典らしからぬすっきりわかりやすい本格。トリックもシンプルだけどなかなか/古典本格のお手本みたいな作品です/ウェイドという作家への印象が、この1作でガラリと変わりました
 
●死の殻
本格黄金時代後期、つまりかつて新本格派と呼ばれたブレイク。黄金時代初期の華やかなケレンとは対局にある、いかにも英国風の、地味でしかしリアルかつ重厚な作風は、玄人好みの1品といえるでしょう。桂冠詩人としても有名な作家だけに文学作品の引用等も豊富で、真に楽しむには一定の文学的素養が必要とされることも。……とはいえ重い哀しみに満ちた犯人像は、読むもの全てに強烈な印象を与えます。名探偵ナイジェル・ストレンジウェイズの、物的証拠よりも関係者の性格分析を重視する独特の探偵法と共にお楽しみ下さい。
 
ayaメモ
『野獣死すべし』(大藪春彦じゃないぞ!)はそれでもけっこうトリッキーだったけど、その時のノリだけで読むとやはりけっこうツライかも。悪いけど、あたしゃ苦手だね。
 
投票者さんのコメント
これも自覚的な本格ミステリだと思うんですけど、気品がありますね/小説としての充実度で点を入れるのは趣旨から外れるのかもしれないが、良いものは良い/ブレイクはもっと読みたいし、未訳も沢山あるので


G「昨年にも増して、古典発掘ブームが進行したということもあってか、やはり2001年もまた古典中心のラインナップになりましたね」
B「ふむ、古典発掘ブームは、いまや短編やブレイクなんかの新本格派まで広がってきたわけだけど、これはもうドンドンやっていただきたい。ただ、その一方で現代本格の紹介もきっちりやってほしいものだね。マゴーン、コールドウェル以外にも、良いものは沢山あるという話だし」
G「ちょっと前のことですが、イギリスでは歴史本格がかなりのブームだったらしいですね。このあたりの流れは、まだ本当に部分的にしか紹介されてないし、古典現代を問わず、海外本格の鉱脈はまだまだとてつもない広がりがありそうです」
B「ランキングに関しては、ほぼ順当というか、弾が無いから選びようがないというか……まあ、投票者さん自体が少ないしなあ」
G「やはり海外ものは読まれないんですかねえ」
B「前もいったけど、古典発掘関係の長篇が国書を中心とするハードカバーで出されることが多いのも痛いね。単純にコスト面でさ。バークリーの2作なんて、文庫で出されるべきだと思うね」
G「バークリーは、今年もいろんな版元から発掘が続くみたいですよ」
B「まあ、それはそれで楽しみといえば楽しみなんだけど……」
G「そりゃそうです! んじゃ、そろそろayaさんの海外ベストをうかがいましょうか」
B「ふむ。そうだね、ま、こんなところか」
G「順位は?」
B「なしなし」
 
ayaの海外ベスト
  密室殺人コレクション   二階堂黎人・森英俊篇  原書房
  ジャンピング・ジェニイ  アントニイ・バークリー 国書刊行会
  騙し絵の檻        ジル・マゴーン     東京創元社
  警察官よ汝を守れ     ヘンリー・ウェイド   国書刊行会
  第三の銃弾[完全版]   カーター・ディクスン  早川書房
別 四人の申し分なき重罪人  G・K・チェスタトン  国書刊行会
 
G「え? 『猫の手』は……あ、対象期間から外れますね。とすれば、わりと順当かも」
B「だろー」
G「でも、やっぱ『最上階の殺人』が入ってない〜」
B「ジェニイがあまりにも面白かったからね。とりあえず、コレだけは押さえておきたい基本つう感じかな」
G「なるほどですね。では、ぼくの番ですね」
 
MAQの海外ベスト
1 最上階の殺人      アントニイ・バークリー  新樹社
2 ジャンピング・ジェニイ アントニイ・バークリー  国書刊行会
3 密室殺人コレクション  二階堂黎人・森英俊篇   原書房
4 騙し絵の檻       ジル・マゴーン      東京創元社
5 警察官よ汝を守れ    ヘンリー・ウェイド    国書刊行会
6 魔の淵         ヘイク・タルボット    早川書房
7 女占い師はなぜ死んでゆく サラ・コードウェル   早川書房
8 第三の銃弾[完全版]  カーター・ディクスン   早川書房
9 四人の申し分なき重罪人 G・K・チェスタトン   国書刊行会
10 エンプティー・チェア  ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋
  
B「5位まではわりと真っ当だが、6位以下はグチャグチャだなあ。あ、『魔の淵』なんてゲテをいれてやがる! ゆーまでもないけど、あれはトコトンしょうもない愚作よッ!」
G「うう、それはわかってるんですけど……好きなんですよ〜。雰囲気だけでも〜、たまらないんですううう」
B「きみってどーしてそうアノ手に弱いかねェ。それと10位のディヴァーもいかがなものかって感じよねえ。本格と呼べるのかねしらん?」
G「んんー、そりゃま真っ向勝負の本格か、っていわれるとツライんですが、ディヴァーは面白いですよ。ライムの謎解きも伏線の張りようも、本格ミステリの技法を十二分に心得た名人芸だと思いますし。まあ、ご勘弁を」
B「ま、いいけどね。ともかく今年も面白い本格ミステリをいっぱい読ませて欲しいものよね」
G「当面のミニブームは続いてるみたいですし、期待できるんじゃないですか?」
B「いや、私が言いたいのは、量的な問題じゃなくて質的なものよ。しょうもないもの10冊よりは傑作を一冊読んだ方が満足感は大きいんだからさ」
G「そりゃもちろんそうです! 作家の皆さんにはぜひぜひ頑張ってもらいたいですね!」
 
【2001年度 本格ミステリベスト 了】


HOME PAGETOP MAIL BOARD