以上、趣旨ご理解のうえ、じっくりたっぷりお楽しみいただければ幸いです。そしてもちろん、身勝手きわまりないMAQのお願いに快くお応えくださった投票者の皆様に、あらためて心より感謝を。 |
対象作品/1999年12月〜2000年11月期に日本国内で出版された“狭義の本格ミステリ”
投票方式/各投票者が国内・海外の優秀作にそれぞれに持ち点10点を配分&投票 総回答数/32名様 |
順位 作品名 著者 出版社 票数 |
1 木製の王子 麻耶雄嵩 講談社 32.5 |
2 ロシア幽霊軍艦事件 島田荘司 原書房 24 |
安達ヶ原の鬼密室 歌野晶午 講談社 24 |
4 依存 西澤保彦 幻冬舎 21 |
5 嘘をもうひとつだけ 東野圭吾 講談社 15 |
ウェディング・ドレス 黒田研二 講談社 15 |
アリア系銀河鉄道 柄刀 一 講談社 15 |
8 ifの迷宮 柄刀 一 光文社 14.5 |
9 ペルソナ探偵 黒田研二 講談社 13 |
10 密室は眠れないパズル 氷川 透 原書房 12 |
次 M.G.H 楽園の鏡像 三雲岳斗 徳間書店 9 |
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(得票順) ●「絢爛たる殺人」●「壺中の天国」●「根津愛(代理)探偵事務所」●「顔のない男」●奇術探偵 曽我佳城全集」●「アンソロジー・Yの悲劇」●「ヴィーナスの命題」●「怪人対名探偵」●「少年たちの密室」●「真っ暗な夜明け」●「脳男」●「魔剣天翔」●「死者の微笑」●「密室殺人大百科(上下)」●「UNKNOWN」●「山手の幽霊」●「金閣寺に密室」●「幽霊刑事」●「殺竜事件」●「遺品」●「美濃牛」●「ラグナロク洞」●「海底密室」●「倒錯の帰結」 |
●木製の王子
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G「今回は前回以上の大激戦でしたが、なんと黒田・柄刀の両氏が2作ずつランクイン。まあ、徹底して票が割れたって感じなんで、ホンの数票の差で明暗が分かれたって感じはありますが」
B「傑出した1作というのがなかったから、逆に話題作に平等にチャンスが与えられたという感じかね。1位は、どうなんだろうねえ。もう“この人の新作が出ちゃったら仕方がない”みたいな?」 G「そんなことはないでしょう。傑作だと思いますよ。なかなか万人に安心してお勧めできる作品とは、いいにくいですが」 B「ふん。まあ、2000年はなんちゅうか“仕込み”の年って感じだったのよね。既成作家は振り返り・足下を確かめ、新人もそれぞれ出るべき人はでて陣容を堅め……いよいよ今年2001年、本格ミステリ界の次なるステップが踏み出されるって感じかな。むろんこれも希望的観測だけどね」 G「個人的には今年は一期生に長編を出してほしいな。まあ、毎年いってることですが……」 B「そういえば、賞品付きベスト5当ての方は、どういう結果になったの?」 G「はい、あれはやっぱり難しかったようですね。全問正解者は無かったので、1・2・5位を当てて下さった方を優勝と云うことに」 B「それでも3つ当てれば大したものよね!」 G「ええ、来年は少し方式を変えて、たとえば順位無しで5作選ぶとか、そんな風にしようと思ってます」 B「なるほど。しかし、来年は賞品どうするつもり?」 G「んなこと、まだわかりませんよう! じゃ、そろそろayaさんのベストを聞きたいですね」 B「例年にもまして選びにくいんだけどね。ま、こんなところか。あ、順位はなしだ」 |
別 木製の王子 麻耶雄嵩 講談社 |
ロシア幽霊軍艦事件 島田荘司 原書房 |
密室は眠れないパズル 氷川 透 原書房 |
絢爛たる殺人 芦辺 拓・編 光文社 |
和時計の館の殺人 芦辺 拓 光文社 |
倒錯の帰結 折原 一 講談社 |
G「やっぱ『木製』は別格ですか……あ、『和時計』! めっちゃけなしてたじゃないですか〜」
B「いや、まあね。読み返すとけっこう正しい本格であるような気がしてさ。芦辺さんはなんか一冊入れておきたかったんでね」 G「まーったく調子いいんだよなあ。じゃ、ぼくの方です」 |
1 アリア系銀河鉄道 柄刀 一 講談社 |
2 ロシア幽霊軍艦事件 島田荘司 原書房 |
3 安達ヶ原の鬼密室 歌野晶午 講談社 |
4 ifの迷宮 柄刀 一 光文社 |
5 M.G.H 楽園の鏡像 三雲岳斗 徳間書店 |
6 密室は眠れないパズル 氷川 透 原書房 |
7 死者の微笑 尾崎諒馬 角川書店 |
8 ウェディング・ドレス 黒田研二 講談社 |
9 兇笑面 北森 鴻 新潮社 |
10 ヴィーナスの命題 真木武志 角川書店 |
B「順当って感じの上位はともかく、下位の方になんか妙な作品をザラザラだしてない?
まあ、『凶笑面』はいいとして、尾崎さん、真木さんあたりは……」
G「その2つはあからさまに個人的な趣味ですね。まさに本格ミステリに淫したって感じの尾崎作品。その遊び心は、いまやほとんど怪作の域に達していますね。真木作品は……これは本格ミステリとしてはもちろん、青春小説としてもけっこう思い入れがあるんで」 B「どちらもおよそ一般ウケする作品とは思えないけどね。ご贔屓のイチ押しSFミステリ『MGH』は、ベストの方ではほとんど票が入らなかったようだね」 G「なんだかミステリ系の読者にはほとんど読まれてないような感じですね。もったいないなあ」 B「あの作家は『海底密室』の方が、入りやすいんじゃないかね」 G「いや、作者の本領はやっぱよりSFSFした『MGH』の方だと思うんです。この作家は早く次の作品が読みたいですね」 B「真木さんは次作はどういうものを書くのか、とんと見当がつかないな。あのノリでもう一本というわけにもいくまいし」 G「ん〜、心情的にあの話はあれで終りって気がします。個人的にももっと別のものが読んでみたいし」 B「まー、“次”があるかどうかが問題って気もするが……」 |
順位 作品名 著者 出版社 票数 |
1 細工は流々 エリザベス・フェラーズ 東京創元社 18.5 |
2 殺人交叉点 フレッド・カサック 東京創元社 17 |
3 死体のない事件 レオ・ブルース 新樹社 16.5 |
4 連鎖反応 フレッド・カサック 東京創元社 15 |
5 さまよえる未亡人たち エリザベス・フェラーズ 東京創元社 14 |
6 九人と死で十人だ カーター・ディクスン 国書刊行会 11 |
7 他言は無用 リチャード・ハル 東京創元社 9.5 |
8 自殺じゃない! シリル・ヘアー 国書刊行会 8 |
タラント氏の事件簿 C・デイリー・キング 新樹社 8 |
10 死んだふり ダン・ゴードン 新潮社 5.5 |
次 冷えきった週末 ヒラリー・ウォー 東京創元社 3 |
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。(得票順) ●「結末のない事件」●「白鳥の歌」●「国会議事堂の死体」●「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」●「サム・ホーソーンの事件簿I」●「ベウラの頂」●「永久の別れのために」●「死を招く航海」●「猫の手」 |
●細工は流々
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Goo「さらに進んだ古典復刊&発掘ブームの影響でしょうか、今年は昨年以上に充実したランキングになりました」
Boo「そうね。なんせ海外ものの本格で取りこぼしをするとは思わなかった。まあ、それでも投票数は国産に比べると圧倒的に少ないんだろ?」 Goo「ええ、多分半分以下だと思います」 Boo「もったいないわよね。今年は特にバラエティ豊かな顔触れだし、クオリティも非常に高い。翻訳も、最近はそれほど無茶なものは少ないし、もっともっと読んで欲しいわよねえ」 Goo「古典発掘は、カーを中心とするビッグネームがほぼ堀尽くされて、ネームバリューのあまりない層に進んでいるので、その意味では海外古典に馴染みの薄い方にとっては、さらに敷居が高くなってしまっているのかも知れません」 Boo「ふむ。むしろ、カーの一連の新訳より最近紹介されているものの方が、新本格読者にも受け入れられやすい作品が多い気がするんだけどね」 Goo「英国の新本格派を中心とする作家ですね。たしかにネームバリューはないんですが、このあたりは新本格読者だけでなく、日本の新本格は幼稚で読むに堪えない、という方にもお勧めですね」 Boo「たしかにそうだね。まあ、国書や原書房、新樹社の頑張りには多いに敬意を表したいところだけど、そうした観点からすると、創元や早川が文庫で出してくれれば、ずいぶん状況は変わったかもしれないね」 Goo「てなところで、ayaさんの海外ベストいきましょう」 Boo「ふむ」 |
国会議事堂の死体 スタンリー・ハイランド 国書刊行会 |
結末のない事件 レオ・ブルース 新樹社 |
タラント氏の事件簿 C・デイリー・キング 新樹社 |
白鳥の歌 エドマンド・クリスピン 国書刊行会 |
夜の記憶 トマス・H・クック 文藝春秋 |
ドン・イシドロ・パロディ六つの難事件 ボルヘス&カサーレス 岩波書店 |
Goo「『イシドロ』って、本格ですかねえ?」
Boo「違うだろーけどね、ま、好みつーことで」 Goo「ブルースは『結末』の方ですか。なんかヒネくれてる」 Boo「古典本格への、というより本格そのものに対する皮肉な視線がとことんきわまった作品つう感じで面白い……まあ、一般的とはいわないけどね。で?キミの方は」 Goo「ぼくの方は正統派ですよ」 |
1 自殺じゃない! シリル・ヘアー 国書刊行会 |
2 死体のない事件 レオ・ブルース 新樹社 |
3 猫の手 ロジャー・スカーレット 新樹社 |
4 国会議事堂の死体 スタンリー・ハイランド 国書刊行会 |
5 永久の別れのために エドマンド・クリスピン 原書房 |
6 タラント氏の事件簿 C・デイリー・キング 新樹社 |
5 細工は流々 エリザベス・フェラーズ 東京創元社 |
8 サム・ホーソーンの事件簿I エドワード・D・ホック 東京創元社 |
9 死を招く航海 パトリック・クェンティン 新樹社 |
10 ベウラの頂 レジナルド・ヒル 早川書房 |
Boo「クリスピンは、なんで『永久』なのさ」
Goo「『白鳥』のトリックはわかりにくいし……『永久』はプロットがシンプルで分かりやすい。それにサスペンスもなかなかでしたから」 Boo「分かりにくいといえば『国会議事堂』もかなり手強いだろう。ま、私も1位に上げたけどね」 Goo「前段の詳細緻密な歴史ミステリ風味もぼくはけっこう好きなんです。あそこさえクリアしちゃえば、後半のトンデモなドンデン返しの連発は息もつかせぬ展開ですからね。いうほど読みにくくはないと思いますよ」 Boo「現代作家はヒルとホックだけか。デクスターは?」 Goo「ん〜。クオリティ的にはやはりねえ……敬意を表していれても仕方がないでしょ? モースファンはほっといたって読むでしょうし。だったらヒルの『ベウラ』を読んで欲しいかな」 Boo「なるほどね。しかしあれって本格としてはねえ……」 Goo「ま、ともかく。いよいよ21世紀というわけで……といっても、まあだからどうなるというものでもないんですが、新しい時代の息吹を感じられる作品に出会えることをおおいに期待したいですね」 Boo「ということで、今年もよろしく!」 |