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対象作品/98年12月〜99年11月期に日本国内で出版された狭義の「本格ミステリ」
投票方式/各投票者が国内・海外の優秀作にそれぞれに持ち点10点を配分&投票 総回答数/28名様 |
順位 作品名 著者 出版社 票数 |
1 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎 講談社 49 |
2 ハサミ男 殊能将之 講談社 36 |
3 そして二人だけになった 森 博嗣 新潮社 18 |
4 夢幻巡礼 西澤保彦 講談社 16 |
5 どんどん橋落ちた 綾辻行人 講談社 12 |
6 放浪探偵と七つの殺人 歌野晶午 講談社 11 |
7 涙流れるままに 島田荘司 光文社 10 |
象と耳鳴り 恩田陸 祥伝社 10 |
ドッペルゲンガー宮 霧舎 巧 講談社 10 |
10 念力密室! 西澤保彦 講談社 9 |
次 サタンの僧院 柄刀 一 原書房 8 |
【ランク外作品】
惜しくもランクインできなかった12位以下の作品たち。いかん! ぼくも未読が5冊ほど……。(順不同) ●「徳利長屋の怪」はやみねかおる/講談社青い鳥文庫 ●「MISSING」本多孝好/双葉社 ●「ペルシャ猫の謎」 有栖川有栖/講談社 ●鬼貫警部全事件(1〜3)鮎川哲也/出版芸術社 ●「QED 六歌仙の暗号」高田崇史/講談社 ●「夜想曲」依井貴裕/角川書店 ●「プリズム」貫井徳郎/実業之日本社 ●「沙羅は和子の名を呼ぶ」加納朋子/集英社 ●「盤上の敵」北村薫/講談社 ●「白夜行」東野圭吾/集英社 ●「バトル・ロワイアル」高見広春/太田出版 ●「Pの密室」島田荘司/講談社 ●「最後のディナー」島田荘司/原書房 ●「塔の断章」乾くるみ/講談社 ●「桜闇」篠田真由美/講談社 ●「悪霊館の殺人」篠田秀幸/角川春樹事務所 ●「巷説百物語」京極夏彦/角川書店 ●「幻獣遁走曲」倉知淳/東京創元社 ●「銀扇座事件(上・下)」太田忠司/徳間書店 ●「青の炎」貴志祐介/角川書店 ●「柔らかな頬」桐野夏生/講談社 |
●法月綸太郎の新冒険
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G「というわけで、今年は短編集によいものが多かったようですね。特に新本格一期生の作家さんたちが、揃ってパズラー集を出して下さったのは嬉しい驚きでした」
B「なんちゅうか、これはやはり彼らが本格書きとして誠実であることの現れだと思うわけよ。本格モノとしての検証を、これらの短編集でやっているという……」 G「ということは、その成果を活かして来年は続々と長篇を発表! ということになるんでしょうかね」 B「それはキミ、希望的観測というやつだよ。してまた、希望的観測は裏切られるためにしか存在しない、とね」 G「うーん、そうなのかなあ……ま、いいや。ayaさんのベストを聞きましょうか」 B「ふむ。そうだなあ、ま、こんなところか」 |
別 涙流れるままに 島田荘司 光文社 |
1 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎 講談社 |
2 どんどん橋落ちた 綾辻行人 講談社 |
3 サタンの僧院 柄刀 一 原書房 |
4 ハサミ男 殊能将之 講談社 |
5 念力密室! 西澤保彦 講談社 |
G「へー、今年はわりとまともですねえ。5作だけだけど。しかしあれだけ『本格として』疑問だしまくりだった『涙』をいけしゃしゃあとランクインさせてくるあたり……」
B「うっさいわねー、あんたはどうなのよお!」 G「ぼくは、あえて『涙』は外しました。入れたいのがいっぱいあったんで……」 |
1 サタンの僧院 柄刀 一 原書房 |
2 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎 講談社 |
3 念力密室! 西澤保彦 講談社 |
4 そして二人だけになった 森 博嗣 新潮社 |
5 どんどん橋落ちた 綾辻行人 講談社 |
6 夜想曲 依井貴裕 角川書店 |
7 ハサミ男 殊能将之 講談社 |
8 堕天使殺人事件 二階堂黎人ほか 角川書店 |
9 ミレイの囚人 土屋隆夫 光文社 |
10 QED 六歌仙の暗号 高田崇史 講談社 |
B「へえ、『サタン』が1位ね」
G「この作品は、あまり読まれてないような気がしたので、あえて。もちろん作品そのものも素晴らしいですよね。個人的には『島田さんの後継者』という地位にいちばん近いところにいるのが柄刀さんであり、そのことをはっきり証明したのが『サタンの僧院』だと思っています」 B「超ド級にぶっ飛んだ謎の数々。それを解き明かす超絶の三段跳び論法。そしてほとんどバカミス紙一重の大トリック。……まさにキミ好みではあるな」 G「ほとんど褒めてない感じですが……ayaさんだってランクインさせてるじゃないですか」 B「好きだよ、これは。ちょっと頑張りすぎて全体に余裕がないんだけど、愛すべき作品だと思う。今年も大いに期待したいね……しかし、ほかにも読者セレクトではあがってない作品がいくつもあるね」 G「あ、これは意識してます。できるだけ読者さんセレクトのベストと重ならないように選びました。もしこれも皆さんの読書のきっかけにしていただけるなら、できるだけたくさん上げておきたいですから」 B「しっかし『堕天使』なんてゲテなものまで〜?」 G「え〜、楽しかったですよう。ぼくは好きです。リレー小説って云う試みそのものが面白かったなあ。またやって欲しいです」 B「趣味悪〜」 |
順位 作品名 著者 出版社 票数 |
1 三人の名探偵のための事件 レオ・ブルース 新樹社 20 |
2 ポジオリ教授の事件簿 T・S・ストリブリング 翔泳社 18 |
3 編集室の床に落ちた顔 キャメロン・マケイブ 国書刊行会 17 |
4 悪魔を呼び起こせ デレック・スミス 国書刊行会 16 |
5 自殺の殺人 エリザベス・フェラーズ 東京創元社 14 |
6 グラン・ギニョール ジョン・ディクスン・カー 翔泳社 13 |
7 ペンギンは知っていた スチュアート・パーマー 新樹社 12 |
8 マッターホルンの殺人 グリン・カー 新樹社 11 |
不変の神の事件 ルーファス・キング 東京創元社 11 |
10 名探偵登場 ウォルター・サタスウェイト 東京創元社 10 |
次 幽霊が多すぎる ポール・ギャリコ 東京創元社 9 |
【ランク外作品】
●「娼婦殺し」アン・ペリー/集英社 ●「氷の家」ミネット・ウォルターズ/東京創元社(文庫化が99年ということでご投票いただきました) |
●三人の名探偵のための事件
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Goo「こちらは、そもそも候補作品そのものが少ないし、ほぼ予想通りというところでしょうか」
Boo「そうね。しかし、『ポジオリ』『編集室』がこんな上位に来るとはねー。想像してた以上にマニアックなランキングになったといえるかも」 Goo「昨年もそうでしたが「海外」だけ棄権ってヒトが多くて。結果として海外編に投票してくださったのは、どうしてもマニアな方が中心になってしまった観はありますね」 Boo「まあ、主要作品は国書刊行会をはじめ高価なハードカバーが中心だしねえ。馴染みのない作家ばかりじゃ、後回しにされても仕方がないのかな」 Goo「でも、創元社さんは文庫で頑張ってますよね。フェラーズに続き、キングやサタスウェイトといった未知の作家を紹介してくださっている」 Boo「そういう風に文庫での紹介が進めば、もっと読まれるようになるんでしょうからね」 Goo「あと、古典作家の未訳を紹介していただくばかりでなく、現代の海外本格も紹介してほしいですよね。そりゃ日本ほどではなくても、海外でもけっして皆無というわけではないみたいだし」 Boo「そうね。軽本格や歴史本格の書き手はけっこういるらしいわねー」 Goo「てなところで、そろそろayaさんの海外ベストは?」 Boo「はいはい、こんなところだわね」 |
悪魔を呼び起こせ デレック・スミス 国書刊行会 |
自殺の殺人 エリザベス・フェラーズ 東京創元社 |
三人の名探偵のための事件 レオ・ブルース 新樹社 |
ポジオリ教授の事件簿 T・S・ストリブリング 翔泳社 |
グラン・ギニョール ジョン・ディクスン・カー 翔泳社 |
Goo「やっぱり5つだけ? 『編集室』は入れないんですか?」
Boo「あれを本格として評価するのはつらいでしょ。あまりにもマニアックすぎるし、私自身、楽しめたとはいえないもん」 Goo「ふうん、面白かったけどな。それなりに」 Boo「面白かったというのと楽しめたというのは別のことでしょうが。で? キミは?」 Goo「まあまあ、こんなところですね」 |
1 悪魔を呼び起こせ デレック・スミス 国書刊行会 |
2 自殺の殺人 エリザベス・フェラーズ 東京創元社 |
3 三人の名探偵のための事件 レオ・ブルース 新樹社 |
4 ポジオリ教授の事件簿 T・S・ストリブリング 翔泳社 |
5 見つめる家 トム・サヴェージ 早川書房 |
6 グラン・ギニョール J・D・カー 翔泳社 |
5 編集室の床に落ちた顔 キャメロン・マケイブ 国書刊行会 |
8 ペンギンは知っていた スチュアート・パーマー 新樹社 |
9 マッターホルンの殺人 グリン・カー 新樹社 |
10 不変の神の事件 ルーファス・キング 東京創元社 |
Boo「おやぁ、また『見つめる家』なんて入れてる!」
Goo「いいでしょ、好きなんだもの」 Boo「あれが本格だなんていってるのは、世界中でキミ一人だと思うけどね〜」 Goo「そーかなぁ。ま、たしかにゴシック風味のサスペンスなんですが、あのトリックといい伏線といい、ぼくは本格マインドを感じてしまったんですから仕方がないでしょう」 Boo「うーん、まあたしかによくできちゃあいるが、あれはやっぱ謎の解かれていく過程からして本格ではないだろう」 Goo「それをいわれると辛いんですが、まあ好みということで」 Boo「いいけどね……」 Goo「ま、ともかく。20世紀最後の1年にふさわしいような、素晴らしい本格ミステリがいっぱい読めますように!」 Boo「ということで、今年もよろしく!」 |